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本編
閑話 花の兄2
しおりを挟む「お~いコウキ~。今大丈夫かぁ?」
竜樹が日本の弟コウキをスマホで呼び出した。皆は繋げた大画面を見ている。今日は休みだったようで、コウキもサチも、そして養母マリコと養父タツヤも。珍しく一家揃っているし、コウキの嫁、女優の鏑木文さんとコウキと文さんの娘、千沙ちゃんもいる。
「大丈夫だよぉ~。今、皆でお茶しながら、結婚式とかの話してたんだぁ。」
「マリコさんが、ウェディングドレスを着させてあげて、結婚式を小さくてもちゃんしなさい、って言って下さって。私も、コリエさん達と結婚式のお話していて、憧れている気持ちがあったから、素直に嬉しいなって。写真だけでも勿論良いけれど、ケジメというか、3人でしてみたい、って思ったから•••。お金は、私たちの貯金と、タツヤさんマリコさんにも、貸していただく事になりました。」
コウキはテヘヘ、と照れたし、文さんもウフフ、と頬を染めてコウキの腕に寄り添った。千沙ちゃんも、わーい結婚式!と嬉しそうである。
「そうなんだぁ!何度も言うけど、おめでとう!春に向けて、良い事が沢山あるね。それで、今日はね。王子達とジェムや子供達が、お話したいんだって~ひみつで!」
「秘密で?」
「そうそう、俺に秘密で。」
ピーンときたコウキである。
だって、今年は竜樹兄のお誕生日、祝えなくて、寂しいね、なんて話を今さっきしていたところなのだ。サプライズといえば誕生日であろう。それかプロポーズ。あぁ、文さんのサプライズプロポーズ、素敵だったなぁ。
「分かった!みなまで言うな、聞きましょう。竜樹兄は、後ろ向いて、耳を塞いでいてください。」
「タカラが、魔法で耳を塞いでくれるそうです。」
はーい!と、むにゃむにゃ呪文をとなえて、ふわっとした風が竜樹の両耳に吹く。あ、完全に聞こえない訳じゃないんだな、とタカラとミランを見ると、しぃ~っ、と人差し指を立てた。
音がまるく遠くなって、聞こえるけれど、詳しくは分からなそうである。大体のところは分かりそうだが。
後でタカラとミランに聞いたところ。
「秘密にしてあげたいところなんですけど、せっかくのお誕生月ですから、コウキ様達にお聞きしただけだと、ちゃんとしたお誕生祝いができないかもしれません。ご馳走のレシピの事もありますし。竜樹様は、『詳しくは』知らない、といった感じで、私たちがあやふやな所は秘密でお教えください。お願いします!」
との事でした。
「コウキにいさま!ししょう、おたんじょうづきなんだって、きいたの。」
「それで、竜樹の国では、どんな事するの?って聞いたら、ごちそうたべたり、お祝いするって!」
「うたも~うたう~♪」
「プレゼントは、決まったんだぜ!」
「てぃーじの、かみそり、つくってもらうの、じいちゃまに!」
ヘェ~、T字のカミソリなかったんだなぁ、なんてふむふむする、コウキ達である。
オランネージュがまとめて。
「私たち、皆で、竜樹のお誕生月のお祝いしたいな、って思ったんだ!コウキ達、詳しく教えてくれる?」
コウキとサチと、そして畠中家の面々は、勿論だよ!とニッコリ笑った。
「歌はどんなのうたうの?」
「お誕生日の歌だよ。えーっとね。」
コウキは照れながら歌ったが、素朴な歌声すぎて、あまり伝わらなかった。
「キャハ!コウキ兄、相変わらず音痴すぎるぅ!」
サチが手を叩いて大ウケしている。
「うう。いつもカラオケでも点数あんまりとれないんだ。お笑い要員なんだ。音は外してないんだけど、技術が、あまりにも、ない。」
ガクリ。
そんなコウキさんも素敵よ、と文さんは慰めてくれる。
そして、文さんは、ふと、こんな事を言った。
「ハッピーバースデーといえば、昔、マリリン・モンローが、ハッピーバースデーミスター大統領って歌ったわね。こ~んな感じに、超色っぽく。」
~♪
~~~♪♪
甘ぁく、妖艶に。女優、鏑木文は、またもその魅力をふんだんに活かして、うっとりと歌った。じっとり、熟した果物のような色香。それでいて鮮やか。
「!」
ニリヤが、目をクリリン!と見張って、ぽぽぽ、とほっぺを赤くした。ネクターも、下を向いてお手てで目を覆っている。ジェムは、ちょっと、目を見張ったが、ヒュー♪と口笛を吹いて手を叩いた。すげえ、ふみさん、いろっぺえ!とか、ぜんぜん母ちゃんみたいじゃない、とか、おとなりにいた、おねえさんみたいだなぁ、とかとか。外にいた子供達と王子達とでは、人生経験が違いすぎる。
オランネージュは、はっ、とするまでしばらく、じっと文さんを見つめていたが、その後ポポッとなった。
タカラ、ミランは、いかんこれはいけませんよ!子供達の教育にいけません!と頬を赤らめつつもそわそわし、マルサとルディは、ニヤリとしたり、驚きながらも表情を変えなかったりした。
クスクス!とラフィネは密かに見ていて、笑った。
オランネージュは、もじもじして。
「お誕生日の歌、ちょっと、その、こどもが歌うのには、よろしくないんじゃない?」
「いやいやいや、別に普通に平気だから。お誕生日の歌、幼稚園生でも歌えるくらいだから。ね、文さん!」
「ええ、ええ、ごめんなさい、ちょっと調子にのっちゃったわね!大丈夫なのよ~!」
焦る文さんである。後ろで千沙ちゃんが、色っぽく真似している。
マリコ母は、文さんモンローそっくり!と華やいでいるし、タツヤ父は、流石文さんだなあ!とニコニコ音のしない拍手。
「うむ。何だ。すごく良いものを見逃した感じがする。」
ボソ、と竜樹が言ったが、誰も聞いていなかった。
「歌は、歌の競演会の時みたいに、私たちの誕生月のうたを、つくって歌おうよ。そしたらネクターも、ラプタで参加したら良いし。」
オランネージュは、大人過ぎる文さんのハッピーバースデーのイメージが、忘れられないようである。
「良いね!良いね!秋に歌った、こっか、みたいのだろ?俺たちの歌が、できるじゃん!」
「うけつ~ごおぉぉう~♪とわのきぼうをぉ♪」
「バラン伯父様よぶ?」
ネクターが、首を傾げて皆に聞く。
「バラン王兄様、一緒にしてくれるかなぁ?」
「ろぺらよぼうよ。」
サンが、チョコ、と口を出す。
「ロペラ!竜樹とーさの歌といったら、ロペラじゃんね!?」
「うたーロペラ~!」
ロペラは、ギフトの御方様の歌を作り、皆がお願いをする時に花を贈るようになった、キッカケを作った吟遊詩人である。リュートで歌う。
ジェムは、あの時俺、竜樹とーさんに石投げたんだよなぁ。と思い出した。今考えれば、よくあんな事したもんだ。絶対ダメな事だった。でもーーーそれで、こんなふうに息子にしてもらえた、生活を、寄っかかって、世話してもらえたのだ。新聞売りの仕事もくれたし。
不思議だなぁ、としみじみ思う。
「ウン。ロペラとバラン伯父様を呼ぼう。バラン伯父様呼ばないと、たぶん何でぇ~!?って伯父様じたじたするから。いいかなぁ?」
「「「いいよー!」」」
うん。まぁ、良い感じになりそうな予感がするから、そちらの世界のバラン伯父様?とロペラ?に頼んで作詞作曲するのは、良いのでは。結果オーライ、コウキ達はホッとして、ニハ、と笑った。文さんも、素敵ね!と手を組み、握っている。
「あとは、ごちそう!どんなごちそう?コウキにいさま。」
ニリヤが、ふんふん、と鼻息荒く。
ーーーーーーーー⭐︎
ハッピーバースデーは、著作権調べたんですけど、大丈夫そう?です。念の為、内容などは詳しく書きませんでした。日本語版だとまだ著作権あるらしい。ビビリ竹美津。
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