王子様を放送します

竹 美津

文字の大きさ
上 下
328 / 510
本編

歴史の中のスターエルフ フィエルテ

しおりを挟む



絵画を鑑賞する事をキッカケに、様々な事を、人は話し出すのだなぁ。

竜樹達がボンの美術館でーーー館長は祖父のオルディネールが務めてくれているのだが、運営は、ほぼほぼボンが、美術好き家族に総ツッコミされながらも好きにやっているーーー絵画の鑑賞をしていくのに付き添って、ボンはヒシヒシと、美術館の価値、心へ齎す影響の深さ、仕事への高い満足感と尽きない情熱を感じていた。

「ここからは、また違うエルフの絵画になりますよ。」
ニコリ、と促し、ボンは静かに後ろからついていく。来館者を見ている時は、イヤホンガイドどうかな、この絵の順番で良かったろうか、あの絵が借りられればもっと•••!など、とても気持ちが忙しい。

ニリヤのイヤホンに、初代イストワールのガイドが続く。

『まだまだ、スターエルフの時代が続くぞ。他のエルフ達は、皆、秀でているスターエルフに引っ張られて、調停者として手伝っていくという形になっていたのじゃよ。さあ、次のエルフは、フィエルテじゃ。女性のエルフじゃぞ。それはもう、絶世の美女、おいそれとは触れられないほど、清らかな美しさだったらしい!《天から星が落ち、その眼差しに地の花が咲き乱れる》と5代目イストワールも書いておる。画家が絵を描くにも、力が入ろうというものじゃな!』

美女美女。どれどれ。
護衛だが、王族としての身分もあり、一緒にガイドを聞いていたマルサが、何となく目を輝かせて絵を見る。大人用イヤホンガイドも、フィエルテが美人だという情報をお知らせしたようだ。

最初は、フィエルテが目を少し伏せて、耳にストレートの銀髪を、ツイと、かけながら、手紙を読む肖像画である。

ふぅ~うぅ!ふす!
ため息と鼻息を洩らすニリヤ王子である。

「フィエルテ、きれいね!」
「美人だね~。」
「エルフって、本当にため息出るほど美しいよね~。中身は、のんびりさんが多いけど。」
「うんうん。」
綺麗なお姉さんは、子供でも好きです。

当のエルフ達は、先達の歴史と残った絵画に、「そういやひいひいじいさまが、小さい頃に会ったけどエルフの中でもフィエルテは本当に美人だった、そして適当な男達には非常に厳しかった、たまに輝く笑顔一つで言う事きかせていた、と。そんな事言っていたな。」「へぇ~そうなの?お父様!」などの情報を挟みつつ、興味津々である。さすが長寿なエルフ達は、歴史的出来事の証言者に、近しく触れているのだ。

『フィエルテが凄かったのは、美人なだけじゃない。とても賢かったのじゃ。エルフ達は、神様に調停者を頼まれて、喜んで役目を果たしていた。しかし、その喜びだけでエルフが調停者を続けるのには、無理がある。争いも頻繁に起こるしなぁ。調停者だって、疲れちゃうじゃろ、前の絵で出てきたオグルもそうじゃったが。何かエルフにも、具体的な得が欲しい、調停する側される側、お互いに得をする仕組みがあれば、争いを避けやすい、とね。フィエルテはまず、神に許しを得るため、聖なる湖に赴き、そこに身体を浸して祈った。100日水垢離を続け、やっと神託を授かった。そうして神のお墨付きをもらい、この大陸の各国に赴き、国同士で争いがない事の利を説き、時には美貌を使い、神の言葉を伝えていった。権力者達の尻を引っ叩き、蹴っ飛ばして、それはようやく成った。』

『それが、古の盟約じゃ。エルフはこの大陸の国々に、争いが起きそうになったら、なんなら事前に起きないように、調停者として働く。その働きに感謝して、もしエルフにひとたび難あれば、各国は力を合わせて助ける。救助要請を、いつでもして良い、とな。魔法で、救助要請宣言は空に響き、各国にも伝わるのじゃよ。一番近くにいる各国々出身の者は、誰であっても臨時の代理であり、即座に救助要請を承らなくてはならないのじゃ。これ、街中の子供でも知っとる、とっても有名な話じゃね。』

『フィエルテの水垢離。これも沢山の画家が描いておる。中でも女性を描かせたら天下一品、と言われる、ピュールの絵が有名じゃな。神託を得て、輝く美貌のフィエルテじゃ。古の盟約を結んだ場面もかっこいいぞ、これは歴史的な場面をドラマチックに描くならこの画家、オルロージュ。』

ふわぁ。
数々の絵画達に、みんな圧倒される。




ーーーーーーーーーーーーー

もう少しだけ、エルフの絵画にお付き合いください。
ボン渾身の特別展であります。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で双子の勇者の保護者になりました

ななくさ ゆう
ファンタジー
【ちびっ子育成冒険ファンタジー! 未来の勇者兄妹はとってもかわいい!】 就活生の朱鳥翔斗(ショート)は、幼子をかばってトラックにひかれ半死半生の状態になる。 ショートが蘇生する条件は、異世界で未来の勇者を育てあげること。 異世界に転移し、奴隷商人から未来の勇者兄妹を助け出すショート。 だが、未来の勇者アレルとフロルはまだ5歳の幼児だった!! とってもかわいい双子のちびっ子兄妹を育成しながら、異世界で冒険者として活動を始めるショート。 はたして、彼は無事双子を勇者に育て上げることができるのか!? ちびっ子育成冒険ファンタジー小説開幕!!  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 1話2000~3000文字前後になるように意識して執筆しています(例外あり)  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ カクヨムとノベリズムにも投稿しています

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

処理中です...