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本編
歴史の中のスターエルフ フィエルテ
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絵画を鑑賞する事をキッカケに、様々な事を、人は話し出すのだなぁ。
竜樹達がボンの美術館でーーー館長は祖父のオルディネールが務めてくれているのだが、運営は、ほぼほぼボンが、美術好き家族に総ツッコミされながらも好きにやっているーーー絵画の鑑賞をしていくのに付き添って、ボンはヒシヒシと、美術館の価値、心へ齎す影響の深さ、仕事への高い満足感と尽きない情熱を感じていた。
「ここからは、また違うエルフの絵画になりますよ。」
ニコリ、と促し、ボンは静かに後ろからついていく。来館者を見ている時は、イヤホンガイドどうかな、この絵の順番で良かったろうか、あの絵が借りられればもっと•••!など、とても気持ちが忙しい。
ニリヤのイヤホンに、初代イストワールのガイドが続く。
『まだまだ、スターエルフの時代が続くぞ。他のエルフ達は、皆、秀でているスターエルフに引っ張られて、調停者として手伝っていくという形になっていたのじゃよ。さあ、次のエルフは、フィエルテじゃ。女性のエルフじゃぞ。それはもう、絶世の美女、おいそれとは触れられないほど、清らかな美しさだったらしい!《天から星が落ち、その眼差しに地の花が咲き乱れる》と5代目イストワールも書いておる。画家が絵を描くにも、力が入ろうというものじゃな!』
美女美女。どれどれ。
護衛だが、王族としての身分もあり、一緒にガイドを聞いていたマルサが、何となく目を輝かせて絵を見る。大人用イヤホンガイドも、フィエルテが美人だという情報をお知らせしたようだ。
最初は、フィエルテが目を少し伏せて、耳にストレートの銀髪を、ツイと、かけながら、手紙を読む肖像画である。
ふぅ~うぅ!ふす!
ため息と鼻息を洩らすニリヤ王子である。
「フィエルテ、きれいね!」
「美人だね~。」
「エルフって、本当にため息出るほど美しいよね~。中身は、のんびりさんが多いけど。」
「うんうん。」
綺麗なお姉さんは、子供でも好きです。
当のエルフ達は、先達の歴史と残った絵画に、「そういやひいひいじいさまが、小さい頃に会ったけどエルフの中でもフィエルテは本当に美人だった、そして適当な男達には非常に厳しかった、たまに輝く笑顔一つで言う事きかせていた、と。そんな事言っていたな。」「へぇ~そうなの?お父様!」などの情報を挟みつつ、興味津々である。さすが長寿なエルフ達は、歴史的出来事の証言者に、近しく触れているのだ。
『フィエルテが凄かったのは、美人なだけじゃない。とても賢かったのじゃ。エルフ達は、神様に調停者を頼まれて、喜んで役目を果たしていた。しかし、その喜びだけでエルフが調停者を続けるのには、無理がある。争いも頻繁に起こるしなぁ。調停者だって、疲れちゃうじゃろ、前の絵で出てきたオグルもそうじゃったが。何かエルフにも、具体的な得が欲しい、調停する側される側、お互いに得をする仕組みがあれば、争いを避けやすい、とね。フィエルテはまず、神に許しを得るため、聖なる湖に赴き、そこに身体を浸して祈った。100日水垢離を続け、やっと神託を授かった。そうして神のお墨付きをもらい、この大陸の各国に赴き、国同士で争いがない事の利を説き、時には美貌を使い、神の言葉を伝えていった。権力者達の尻を引っ叩き、蹴っ飛ばして、それはようやく成った。』
『それが、古の盟約じゃ。エルフはこの大陸の国々に、争いが起きそうになったら、なんなら事前に起きないように、調停者として働く。その働きに感謝して、もしエルフにひとたび難あれば、各国は力を合わせて助ける。救助要請を、いつでもして良い、とな。魔法で、救助要請宣言は空に響き、各国にも伝わるのじゃよ。一番近くにいる各国々出身の者は、誰であっても臨時の代理であり、即座に救助要請を承らなくてはならないのじゃ。これ、街中の子供でも知っとる、とっても有名な話じゃね。』
『フィエルテの水垢離。これも沢山の画家が描いておる。中でも女性を描かせたら天下一品、と言われる、ピュールの絵が有名じゃな。神託を得て、輝く美貌のフィエルテじゃ。古の盟約を結んだ場面もかっこいいぞ、これは歴史的な場面をドラマチックに描くならこの画家、オルロージュ。』
ふわぁ。
数々の絵画達に、みんな圧倒される。
ーーーーーーーーーーーーー
もう少しだけ、エルフの絵画にお付き合いください。
ボン渾身の特別展であります。
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