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本編
着々と物資が届く
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「神鳥さまの羽毛を、お布団にする布や針、糸については、私たちが国とそれぞれ調整して、こちらで調達致しましたわよ。今現在、少しのお布団はあるのですけれど、殆どのエルフには行き届かず、お布団で眠れていませんでしたから。これから季節も進みますし、それにせっかくの神鳥さまの羽毛ですもの。」
ニコ、とヴェリテ国の王女留学生、ナナンがバーニー君に笑う。一口、すす、と手に持ったお茶を飲む。
「エルフ5246人分のお布団の布が、どれだけ必要か、簡単に計算しました。勿論一つの国からだけではなくて。」
チラリ、とナナンは、隣にいる、白に小鳥の浴衣の、上品で生真面目そうな女性に目をやる。
言葉を引き取り、視線を受けて。マルミット国アルモニカ第二王女、エルフの森がある国からの留学生が、ちょっと目を伏せて。
「我が国からも、是非にと、手触りの気持ち良い織の、綿の布を出させてもらいました。」
ぱち、ぱち、瞬きをし、ふ、と息を漏らす。
「我が国は、せっかく住んでくれているエルフ達を、自国の商人の息子の手引きをもって、呪いから守れなかった、傷、があります。」
山鳩色の瞳が揺れる。
「だから、償いの為にも、救助の物資は出来るだけ潤沢に、送りたいのです。」
「うんうん。それは、気持ちとしてそうしたいよねえ。マルミットのお国は、これまで、エルフ達を尊重して、大切にしていた、と聞いていますよ。」
竜樹も、バーニー君も、頷く。
だからこそ、森にエルフが住んでいたのだ。でも、たった1人の咎人の為に、それを見逃したマルミットの国も、傷を負った。
「バーニーさんが昨日言ったのです。償いに、あまり必要でない品物を、押し付けるのではなくて。必要な物で、どの国もそれぞれ供出しやすいものを、都合をつけて、混乱なく素早くそしてちょうど良く、エルフ達が心地良いようにと。私もそうするべきだと思いました。だから、他のお国より、気持ち多く、すぐ出せる分を出させてもらった、くらいなんですけれど。」
グッとお茶のカップを両手で包む。
国の傷の関係には、竜樹は口を出せない。でも、償いという、マイナスからの出発も、何とかプラスにしていきたいから。
「勿論、物資も助けになりましょうけど。これから、マルミットのお国でも、エルフ達が楽しく働けて、お金を貰って、気持ち良く住んで、っていう、開いた未来のお話ができると良いですね。」
竜樹が言えば。
「ーーーはいっ!そうしたい、と言ってもらえるように、誠意を尽くしたいと思っています!」
きらり、とアルモニカの山鳩色の瞳が光ったから、エルフも、外交官、留学生達、皆もフッと、これからを心強く思った。
「まだ寒くはないから、まずは羽毛の、薄い敷パッドにしたら、って事だったね。」
フレが話題を変え、すすす、とお茶で音なく喉を湿らせる。テレビ電話で喋り通しだから、水分必須なのだ。
「ええ、もうすぐ布団作りの職人さんも来て、作り方を教えてくれるとの事ですよ。」
留学生の1人が応えて。
ふわ~、とバーニー君が目を見開く。
「••••••皆さん、流石です、手回しが素早い!昨夜は寝てしまって、すみませんでした!」
ペコリと頭を下げると、いえいえ私たちだって交代で寝ましたよ!と、にこやかにお茶を啜る、救助本部の面々なのである。ちなみに皆、床に寝るという体験をして、痛みを知り、エルフ達の布団事情には肩入れしたい気持ち満々である。
女性達は体育館の小さい別室で、護衛付きで。
「各国を繋げる、簡易的な魔法陣、できました~!」
チリと、エルフのファマロー魔法使い、そして魔法陣を作り上げたエルフの魔法使い達が、老若男女わらわらと救助本部にやってきた。
動線を鑑みて、体育館の別室、運びやすい一室に魔法陣が出来たとの事。
ササッと救助本部の皆がお茶を置き、臨戦体制になる。物資のリストを見つつ、運ぶ場所を指示。
荷物も多くは食料、そして衣類布類、その他、本やおもちゃまで。
威勢の良い荷物運び達と商人役人が、賑やかしくやって来た。
口々に、転移スゲ~的な事を言って、エルフの宰相だったイケオジ、サジタリアスのお礼を受けて、ニコニコと帰ってゆく。
あれよあれよという間に、必要な布や針と糸が運ばれて、布団職人さんもやってきた。
布団職人さんは、羽毛をぎゅ、と触ると、おおお!と叫び声をあげて。
「最高品質の羽毛!」
ギン!とまなこを鋭く。
エルフの裁縫得意な有志を募り、竜樹もエフォールも父のジャンドルも参加して、羽毛布団の作り方講座が始まった。まずは小さく、慣れる為にも赤ちゃん布団を作る事になった。
ニコ、とヴェリテ国の王女留学生、ナナンがバーニー君に笑う。一口、すす、と手に持ったお茶を飲む。
「エルフ5246人分のお布団の布が、どれだけ必要か、簡単に計算しました。勿論一つの国からだけではなくて。」
チラリ、とナナンは、隣にいる、白に小鳥の浴衣の、上品で生真面目そうな女性に目をやる。
言葉を引き取り、視線を受けて。マルミット国アルモニカ第二王女、エルフの森がある国からの留学生が、ちょっと目を伏せて。
「我が国からも、是非にと、手触りの気持ち良い織の、綿の布を出させてもらいました。」
ぱち、ぱち、瞬きをし、ふ、と息を漏らす。
「我が国は、せっかく住んでくれているエルフ達を、自国の商人の息子の手引きをもって、呪いから守れなかった、傷、があります。」
山鳩色の瞳が揺れる。
「だから、償いの為にも、救助の物資は出来るだけ潤沢に、送りたいのです。」
「うんうん。それは、気持ちとしてそうしたいよねえ。マルミットのお国は、これまで、エルフ達を尊重して、大切にしていた、と聞いていますよ。」
竜樹も、バーニー君も、頷く。
だからこそ、森にエルフが住んでいたのだ。でも、たった1人の咎人の為に、それを見逃したマルミットの国も、傷を負った。
「バーニーさんが昨日言ったのです。償いに、あまり必要でない品物を、押し付けるのではなくて。必要な物で、どの国もそれぞれ供出しやすいものを、都合をつけて、混乱なく素早くそしてちょうど良く、エルフ達が心地良いようにと。私もそうするべきだと思いました。だから、他のお国より、気持ち多く、すぐ出せる分を出させてもらった、くらいなんですけれど。」
グッとお茶のカップを両手で包む。
国の傷の関係には、竜樹は口を出せない。でも、償いという、マイナスからの出発も、何とかプラスにしていきたいから。
「勿論、物資も助けになりましょうけど。これから、マルミットのお国でも、エルフ達が楽しく働けて、お金を貰って、気持ち良く住んで、っていう、開いた未来のお話ができると良いですね。」
竜樹が言えば。
「ーーーはいっ!そうしたい、と言ってもらえるように、誠意を尽くしたいと思っています!」
きらり、とアルモニカの山鳩色の瞳が光ったから、エルフも、外交官、留学生達、皆もフッと、これからを心強く思った。
「まだ寒くはないから、まずは羽毛の、薄い敷パッドにしたら、って事だったね。」
フレが話題を変え、すすす、とお茶で音なく喉を湿らせる。テレビ電話で喋り通しだから、水分必須なのだ。
「ええ、もうすぐ布団作りの職人さんも来て、作り方を教えてくれるとの事ですよ。」
留学生の1人が応えて。
ふわ~、とバーニー君が目を見開く。
「••••••皆さん、流石です、手回しが素早い!昨夜は寝てしまって、すみませんでした!」
ペコリと頭を下げると、いえいえ私たちだって交代で寝ましたよ!と、にこやかにお茶を啜る、救助本部の面々なのである。ちなみに皆、床に寝るという体験をして、痛みを知り、エルフ達の布団事情には肩入れしたい気持ち満々である。
女性達は体育館の小さい別室で、護衛付きで。
「各国を繋げる、簡易的な魔法陣、できました~!」
チリと、エルフのファマロー魔法使い、そして魔法陣を作り上げたエルフの魔法使い達が、老若男女わらわらと救助本部にやってきた。
動線を鑑みて、体育館の別室、運びやすい一室に魔法陣が出来たとの事。
ササッと救助本部の皆がお茶を置き、臨戦体制になる。物資のリストを見つつ、運ぶ場所を指示。
荷物も多くは食料、そして衣類布類、その他、本やおもちゃまで。
威勢の良い荷物運び達と商人役人が、賑やかしくやって来た。
口々に、転移スゲ~的な事を言って、エルフの宰相だったイケオジ、サジタリアスのお礼を受けて、ニコニコと帰ってゆく。
あれよあれよという間に、必要な布や針と糸が運ばれて、布団職人さんもやってきた。
布団職人さんは、羽毛をぎゅ、と触ると、おおお!と叫び声をあげて。
「最高品質の羽毛!」
ギン!とまなこを鋭く。
エルフの裁縫得意な有志を募り、竜樹もエフォールも父のジャンドルも参加して、羽毛布団の作り方講座が始まった。まずは小さく、慣れる為にも赤ちゃん布団を作る事になった。
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