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本編
一緒に、あーそーぼ
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「3の4!ハートの12!」
「うっそ、まじ!••••••またアミューズに、してやられたーーー。」
アミューズの前の番だった、エルフのイフ。ストレートの前下がりのボブ、白みの強い銀髪の子である。片膝立てて体育館の床。神経衰弱、凄く良いカードを惜しく捲って、ああっと目を見張り、アミューズに塩を送って。
ムフフ。
「そこ、うろ覚えだったのに。ひっくり返してヒントありがとー。」
片手を床に付き、カードを取りつつふるふる、と落ちた髪を振って、ニ!と笑うアミューズ。黄土色の、最近伸ばしてちょいと後ろで縛った髪は、耳の前辺りにかかる中途半端な長さがまとめきれず、頬にかかっている。
後ろで観戦する、ゲームにあぶれた子供達。エルフ側は、ウム~と唸り、ジェム達3王子達側は、ムフりと微笑む。
アミューズは視力は弱いが、記憶力は強いのである。
エルフ組とパシフィスト組、3対3の対抗戦。アミューズが入るとパシフィスト組が有利すぎるから、他2名のメンバーは、ハンデ的に小っちゃい子から出ている。
「う!そこ!」「あぁ~!」「とれたぁ!」なんて声が響く。
ちなみに、ランダムにカードを置くとアミューズや、プレイヤード、ここにはいないピティエの目が不自由な3人が取りにくいし覚えにくいので。寮でのやり方は、7並べのように4段13枚づつと、ぴっちり並べて裏返し、めくったら読み上げである。
「アミューズ、凄いんだねぇ。頭いい。」
ロテュス王子よりも頭一つ分小さい、弟?カリス王子が感嘆する。
「それで、目、本当に見えてないの?」
不思議そうに、目を覗き込む。
「ウン。ぼや~っとしてるよ。」
ニコニコするアミューズは、取ったカードをムフムフと顎に当て、続いてカードを指名する。晴眼の、同チームな小ちゃい子、ロンが、手助けして裏返す。今度は揃わなくて、順番が次に回る。
最初はオドオドしていたエルフの子供達も、慣れているジェム達3王子達も。遊び始めれば1枚捲る事に、本気で一喜一憂である。
ここは体育館、ジェム達と3王子は竜樹の大人組と別れ、エルフの子供達に先ほど。
せーのーで。
「エルフのこどもたち、おれたち「私たち」「ぼくたち」と、あーそーぼー。」
と呼びかけたのだ。
「え、う?」
「あ、あそぶ?」
痩せ細って、手持ち無沙汰に。オーブの羽毛の山の端っこに、それぞれダルくしゃがんで、ちんまりじっとしていたのが。トトトと呼びかけに、仲間を守ろうと何事かと寄ってきた、エルフなのに黒髪のエクラ王子に、皆、どうしたらと頼りに目を遣って。
ジェムは堂々と声を張った。
「俺、ジェム。新聞売りしてるんだ。こっち、知ってるかもだけど、オランネージュ様に、ネクター様、ニリヤ様だよ。後は新聞売りの仲間だよ。竜樹父さんと一緒に来たんだ。なあ、あそぼうぜ、エルフ達。」
「ギフトの、竜樹様と!う、うん、わかった、あ、遊ぼう。」
竜樹の関係者だ、だからきっと大丈夫だ、うん、とエルフの子供達にエクラ王子が頷いて。こわごわ、サワサワ、何となく寄り集まって。ポツリポツリ加わり、今は観客含めてエルフの子供達は30人くらいになっている。
広い体育館の隅っこで、トランプ遊びを始めたところ。大人のエルフ達も、ニコニコして通りがかりに観戦しては、ムン?なんてちょっと考えたり。
ジェム達も3王子達も意識していないが。エルフの子供達の中には、ジュヴールのキャッセ王と、エルフのヴェルテュー妃との間に生まれた、複雑な出自の3人の王子?王女?が、普通にいる。エルフは成人するまで性が確定していないので、何となく王子寄りの2人、エクラ王子とカリス王子。それから何となく少女の趣きのある、ウィエ王女だ。エクラ王子は黒髪で大まかにはジュヴールのキャッセ王に似ているが、下の2人は髪と同じバサっとした金の睫の間から、翠と碧のうるうる瞳。髪は栄養が伴っていなかったからか、パサつきがあり、そして光の強い、細い金髪。それぞれカリスはストレートを毛先内向きに、ウィエはクルクルカールのミディアムヘア。2人ともいかにもエルフな、透ける肌に清廉な面立ち。ヴェルテュー妃に似て、周りのエルフの子供達の中でも、秀でて美しい。
上がり目下り目、金髪銀髪。同じようでいて違うエルフ達を、まだ全部覚えてはいないけれど。エルフ達だって、ジェム達をそんなに知らないけれど。名前が何だって、「あーそーぼー!」と言えば、子供達は仲良く遊べるのだ。
「ジェムちゃん達や王子殿下達は、楽しそうにやってるわね!」
エルフ達の今をお届けしようと、取材に来たスーリール達ニュース隊も、ムフフと再び、エルフ達奪還の昨夜とは違う戦意が湧いてくる。
寮に帰って寝たら、今日にはもう体育館は羽毛だらけで、まだまだニュースに事欠かないエルフ達。
羽毛の件も竜樹達にインタビューしたいが、この、遊ぶ子供達は見逃せない。
スーリールは、子供達の遊びを、じっくりと撮るよう、カメラマンのプリュネルに指示を出した。
少し離れた所から、またグッとアップで、疲れていた目に段々と輝きと力が入ってきた、これからを仲良くと、再生の芽を見せるエルフとパシフィストの子供達の交流を捉える。
テレビで、ありのままの、不恰好でも真摯な希望を、伝えたい。
スーリールは、ニュース隊の仕事が、大好きだ。
「うっそ、まじ!••••••またアミューズに、してやられたーーー。」
アミューズの前の番だった、エルフのイフ。ストレートの前下がりのボブ、白みの強い銀髪の子である。片膝立てて体育館の床。神経衰弱、凄く良いカードを惜しく捲って、ああっと目を見張り、アミューズに塩を送って。
ムフフ。
「そこ、うろ覚えだったのに。ひっくり返してヒントありがとー。」
片手を床に付き、カードを取りつつふるふる、と落ちた髪を振って、ニ!と笑うアミューズ。黄土色の、最近伸ばしてちょいと後ろで縛った髪は、耳の前辺りにかかる中途半端な長さがまとめきれず、頬にかかっている。
後ろで観戦する、ゲームにあぶれた子供達。エルフ側は、ウム~と唸り、ジェム達3王子達側は、ムフりと微笑む。
アミューズは視力は弱いが、記憶力は強いのである。
エルフ組とパシフィスト組、3対3の対抗戦。アミューズが入るとパシフィスト組が有利すぎるから、他2名のメンバーは、ハンデ的に小っちゃい子から出ている。
「う!そこ!」「あぁ~!」「とれたぁ!」なんて声が響く。
ちなみに、ランダムにカードを置くとアミューズや、プレイヤード、ここにはいないピティエの目が不自由な3人が取りにくいし覚えにくいので。寮でのやり方は、7並べのように4段13枚づつと、ぴっちり並べて裏返し、めくったら読み上げである。
「アミューズ、凄いんだねぇ。頭いい。」
ロテュス王子よりも頭一つ分小さい、弟?カリス王子が感嘆する。
「それで、目、本当に見えてないの?」
不思議そうに、目を覗き込む。
「ウン。ぼや~っとしてるよ。」
ニコニコするアミューズは、取ったカードをムフムフと顎に当て、続いてカードを指名する。晴眼の、同チームな小ちゃい子、ロンが、手助けして裏返す。今度は揃わなくて、順番が次に回る。
最初はオドオドしていたエルフの子供達も、慣れているジェム達3王子達も。遊び始めれば1枚捲る事に、本気で一喜一憂である。
ここは体育館、ジェム達と3王子は竜樹の大人組と別れ、エルフの子供達に先ほど。
せーのーで。
「エルフのこどもたち、おれたち「私たち」「ぼくたち」と、あーそーぼー。」
と呼びかけたのだ。
「え、う?」
「あ、あそぶ?」
痩せ細って、手持ち無沙汰に。オーブの羽毛の山の端っこに、それぞれダルくしゃがんで、ちんまりじっとしていたのが。トトトと呼びかけに、仲間を守ろうと何事かと寄ってきた、エルフなのに黒髪のエクラ王子に、皆、どうしたらと頼りに目を遣って。
ジェムは堂々と声を張った。
「俺、ジェム。新聞売りしてるんだ。こっち、知ってるかもだけど、オランネージュ様に、ネクター様、ニリヤ様だよ。後は新聞売りの仲間だよ。竜樹父さんと一緒に来たんだ。なあ、あそぼうぜ、エルフ達。」
「ギフトの、竜樹様と!う、うん、わかった、あ、遊ぼう。」
竜樹の関係者だ、だからきっと大丈夫だ、うん、とエルフの子供達にエクラ王子が頷いて。こわごわ、サワサワ、何となく寄り集まって。ポツリポツリ加わり、今は観客含めてエルフの子供達は30人くらいになっている。
広い体育館の隅っこで、トランプ遊びを始めたところ。大人のエルフ達も、ニコニコして通りがかりに観戦しては、ムン?なんてちょっと考えたり。
ジェム達も3王子達も意識していないが。エルフの子供達の中には、ジュヴールのキャッセ王と、エルフのヴェルテュー妃との間に生まれた、複雑な出自の3人の王子?王女?が、普通にいる。エルフは成人するまで性が確定していないので、何となく王子寄りの2人、エクラ王子とカリス王子。それから何となく少女の趣きのある、ウィエ王女だ。エクラ王子は黒髪で大まかにはジュヴールのキャッセ王に似ているが、下の2人は髪と同じバサっとした金の睫の間から、翠と碧のうるうる瞳。髪は栄養が伴っていなかったからか、パサつきがあり、そして光の強い、細い金髪。それぞれカリスはストレートを毛先内向きに、ウィエはクルクルカールのミディアムヘア。2人ともいかにもエルフな、透ける肌に清廉な面立ち。ヴェルテュー妃に似て、周りのエルフの子供達の中でも、秀でて美しい。
上がり目下り目、金髪銀髪。同じようでいて違うエルフ達を、まだ全部覚えてはいないけれど。エルフ達だって、ジェム達をそんなに知らないけれど。名前が何だって、「あーそーぼー!」と言えば、子供達は仲良く遊べるのだ。
「ジェムちゃん達や王子殿下達は、楽しそうにやってるわね!」
エルフ達の今をお届けしようと、取材に来たスーリール達ニュース隊も、ムフフと再び、エルフ達奪還の昨夜とは違う戦意が湧いてくる。
寮に帰って寝たら、今日にはもう体育館は羽毛だらけで、まだまだニュースに事欠かないエルフ達。
羽毛の件も竜樹達にインタビューしたいが、この、遊ぶ子供達は見逃せない。
スーリールは、子供達の遊びを、じっくりと撮るよう、カメラマンのプリュネルに指示を出した。
少し離れた所から、またグッとアップで、疲れていた目に段々と輝きと力が入ってきた、これからを仲良くと、再生の芽を見せるエルフとパシフィストの子供達の交流を捉える。
テレビで、ありのままの、不恰好でも真摯な希望を、伝えたい。
スーリールは、ニュース隊の仕事が、大好きだ。
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