王子様を放送します

竹 美津

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本編

芋はもういい

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「それで布と針を用意してくれ、って訳なんだね?」

寮で、通訳スマホをかざしながら、オーブと会話した竜樹達は、昨夜の親切を知り、ニリヤの頭に乗ったオーブの背中を、それぞれ撫でてニコニコとした。

「うん、布団じゃない所で寝ると、身体がかた~くなっちゃうんだよねぇ。エルフ達に元気になってもらうのに、凄く良いと思う。」
かた~く、の所でとほほ、の顔。嘆く竜樹に。
「竜樹様でも、床などに寝た事が?」
ミランがカメラを回しつつ、突っ込む。

「うん。俺は元の世界では、本当に普通の人だからね。学生時代に、友達と集まってお酒やおつまみ、お菓子にジュースを飲みながら夜通し話したりして、そこらで雑魚寝を~、なんてやったよ。」
逆にミランとタカラは、そういう事なかったの?と聞けば、2人は低位貴族の出身だそうで。
泊まりに来た友達は、夜遅くまで話したりはしたけれど、最終的には客室にお迎えして、別々に寝ていた、との事であった。
それでも、きゃっきゃと仲良くした相手との語り合いは、なかなか楽しかったそうである。

「俺の場合は王宮が家だからなぁ。呼べなかったし行けなかったよ。固い寝床といえば、野営訓練ではテントの中で、地面にうっすーい布を敷いて寝たなぁ。あれって、眠りが浅くて、寝た気がしないんだよなぁ。」
とマルサがこぼす。

「ともだちと!ざこね!」
安定してオーブをふっくらと頭に乗せたまま、ニリヤが、キラキラした瞳で竜樹を見上げて。
「テントで、野営!外で寝るの?マルサ叔父様~!」
ネクターも、前に冒険者の本を読んでいた事もあって、憧れているのかウキウキ。
「羽毛に埋もれてみたぁい!」
オランネージュは羽毛に興味あり。

「イヤイヤニリヤ。君たち、毎日のように友達と雑魚寝はしてるでしょ、布団はあるけれども。ネクター、野営に興味あるなら、今度マルサ達と試してみるかい?秘密基地作ったりして。オランネージュ、これから体育館に行ってみて、羽毛には触れると思うよ。」

きゃっほ~い!
3王子が、ぴょこぴょこ!と昇竜拳をーーー知らないだろうけどーーーあげながら、喜び勇んだ。
「喜んで外に寝るなんて、ネクター様は物好きだなぁ。」
「だね~!」
ジェム達は、お家が安心なのである。

「あ~、外で、って言っても、寝袋とか作って、小さな家作るみたいにテント張ってさ。キャンプ、っていうか、どっちかというと、グランピングになっちゃうか。まぁジェム達は、キャンプみたいな事、やり慣れてるかな•••。」
竜樹は思い出す。
さつまいも甘くて美味しいから好きだ、という話を、若い子達と会社でしていた時。シルバー派遣の方が笑いながら。子供の頃は戦争があって、散々芋は食べたから、今は全然、食べたいと思わない。と、何でもなく言った事を。
美味しいとか美味しくないとかじゃなくて、多分子供の頃の、それでも食べられるだけ恵まれていただろう事、でも心は不自由だった世の中の思い出と共に、芋を欲さない。
う~ん。
ついつい、ジェムを撫でてしまうのである。

「でもあれですね、急いで止めないと、布団の用意を、救助要請を受けて、商人達がしてしまうかもですよ。まあ、オーブ様の羽毛布団が、全員分あるかは分からないですけど。体育館の物資支給担当者が、もう手は打ってるかな?」
ミランが、う~ん?と考えながら。
「体育館には、バーニー君がいますから、必要な物など把握してそうですが。」

あの!
と、オーブを送ってきたエルフのロテュス王子が、口を挟む。昨夜は竜樹達と寮で寝ず、一旦体育館へ帰って、寝ていたのである。
「あの、もし良かったら、布などを用意くださる前に、実際に行って体育館の様子を見ていただけませんか?その、バーニーさん、いてくださって何かしていたけれど、私はまだ把握してなくて。とにかく、モフモフで、視界がふわふわで、皆が寝ちゃってると、会いたい人と会えなくて。」

うむ。
「そうだね、百聞は一見にしかず。行ってみようか。」
「「「いこー!」」」

「ジェム達は、今日他の教会の子達と予定がなければ、遊びの支度をして、エルフの子供達と遊んでみて。何して遊ぶか、分からなかったり、まだ身体が元気になってなくて、遊ぶのを許されてなかった事もあって、手持ち無沙汰だったみたいだからね。」

ここの寮に来たばかりの頃の、本当に寮で、家の中で寝て良いのかな、と遊ぶ事を知らなかったジェム達なら、その気持ちが分かるんじゃない?

竜樹とーさの言葉に、ジェム達は、うん!とそれぞれ、目をくりっと張って、大きく頷いた。
「すぐに外で運動たくさんとかは、出来なかったよな、俺たち。」
「うんうん。弱ってた!トランプとか持っていく?」
「おー!遊ぶ道具、持っていこうぜ!」

準備準備。の一行なのだった。
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