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本編
とーちゃとかーちゃは仲良しです
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「とーちゃ、おかーちゃ、なかよし?」
エルフのリュミエール王や、体育館のエルフ達と話している間、黙って竜樹の側にいた、ヴィオロ地方の教会の子、クー。そばかすも可愛い、赤い髪がくしゃくしゃの天然パーマ、5歳の男の子である。
ラフィネ母さんがお話に加わり、ジェムが2人を誇ったら、それを見ていて一言、言った。
竜樹は、愛しい心をもって、クーを見た。
クーは、仲の悪い夫婦の間に挟まって、いつもしょんぼりしていた子供だった。
「とーちゃ、おかーちゃ、いっぱいケンカ。クー、いやなの。」と。
教会に行って司祭に話したのは、子供ながらに、なかなか頭の良い事だった。家が教会のすぐ近くで、良く母がお祈りに行っていた事もあって、クーは、優しい司祭に、普段から親しんでいた。
司祭に呼び出された父と母は、家の中の事をクーにばらされて、2人今度は意見を合わせてクーを叱った。司祭が宥めて夫婦の話を聞けば、稼ぎが悪いの、家の中の事が乱雑だの、どこの夫婦にもあるような愚痴が、話せば話すほどヒートアップして語られた。
面食らった司祭だったが、クーのしょんぼり具合を見て、落ち着かせようと、一時的に、クーとお母さんを預かるから、少しお二人、離れて暮らしてみては?と提案し。
いやいや、と父は顔を振り。
「クーは、父さんが良いよな。」
「クーは、お母さんの方に来るわよね。」
2人を見上げて、クーは。
司祭に縋りついて。
「クー、ケンカいや。とーちゃも、おかーちゃも、いや。」
必死で言った本心の、その一言で、夫婦は教会にクーを預けて、憤懣やる方ない、といった様子で、右と左に別れて去った。
一時的に、という事だったはずなのに、結局どちらも、まだクーを迎えに来ない。風の噂ではどちらも再婚したらしい。
竜樹は夢で、クーの父方母方の祖母と祖父、4人との写真を預かって、クーを頼まれて。ではクーは俺がいただきましょう、と、教会の孤児院で本式に受け入れ、他の子と同じように養子とした。
体育館のエルフ達とお話し中だけれども、初めて夢じゃなくテレビ電話の画面でもなく、竜樹とラフィネ母さんと会ったクーには、それはとっても大事で、聞いておかねばならなかった事なのだろう。
竜樹はそう思って。
「竜樹父さんと、ラフィネ母さんは、仲良しだよー。ねー?」
と、握手、の手を差し出して、ラフィネ母さんにニッコリした。
ラフィネもニッコリして。
跪き、ふわっと、腕を開いて。
竜樹に、ハグ、ハグ、とゆるく抱きつき、背中をポンポンとした。
「そうよ、竜樹父さんとラフィネ母さんは、仲良しよ!」
ぱっちり。
小さい目を見開いて、ちょっとポポッとなった竜樹。少し良い匂いもして。
勿論ラフィネも、クーの事情を知っているからだ。竜樹からすぐ離れて、おずおずと、2人の間に入ってくるクーを挟んで、竜樹もラフィネも、もう一回ハグ、っとした。
クーは、むふ、と満面、笑って。
「なかよし。ねー。」
と竜樹とラフィネに、ふくふくした頬を見せた。
「アハハ。少し照れるな~。」
「てれる?」
「ウンウン。竜樹父さんは、ちょっと、はずかし!」
ギュッと今度はクーを抱きしめて、皆が、ふふふ、とか、ハハハ、とか笑ってる。
クーが欲しかったものは、今ここにあって、それはとても幸せなのだった。
「な、仲良しなのですね。竜樹様と、ラフィネさん。お父さんと、お母さん。」
俯いて、何故かしょんぼりしたロテュス王子。
「わ、私、竜樹様と、結婚したかった••••••。」
ええ!?とジェム達が驚いて、そうして。
ロテュス王子の頬を、涙がコロコロ、と滑り落ちた。
涙は丸く、粒となって、低いテーブルの上を、カッーン、コン、コロロ。と転がって落ちそうになった。
ロテュス王子がそれを、手で受けて。
涙が、固まった?
ロテュス王子は、黙って俯いて、その涙の粒をじい、と眺めていたが。
ふいに顔を上げて、ニッコリすると。
竜樹の麦茶のコップに、ぽちゃん、と涙を入れた。
えーと。
竜樹は、どうしたら良いのかな、と思いつつ、麦茶のコップを、持ち上げて飲む仕草をして見せた。
ウン、ウン。
ニコニコしたロテュス王子が頷くので、竜樹は涙入りの麦茶を、グイッと飲んだ。
カッ ポワワワン
光は竜樹の身体から。
護衛のマルサが、あ、という顔をしていた。
エルフのリュミエール王や、体育館のエルフ達と話している間、黙って竜樹の側にいた、ヴィオロ地方の教会の子、クー。そばかすも可愛い、赤い髪がくしゃくしゃの天然パーマ、5歳の男の子である。
ラフィネ母さんがお話に加わり、ジェムが2人を誇ったら、それを見ていて一言、言った。
竜樹は、愛しい心をもって、クーを見た。
クーは、仲の悪い夫婦の間に挟まって、いつもしょんぼりしていた子供だった。
「とーちゃ、おかーちゃ、いっぱいケンカ。クー、いやなの。」と。
教会に行って司祭に話したのは、子供ながらに、なかなか頭の良い事だった。家が教会のすぐ近くで、良く母がお祈りに行っていた事もあって、クーは、優しい司祭に、普段から親しんでいた。
司祭に呼び出された父と母は、家の中の事をクーにばらされて、2人今度は意見を合わせてクーを叱った。司祭が宥めて夫婦の話を聞けば、稼ぎが悪いの、家の中の事が乱雑だの、どこの夫婦にもあるような愚痴が、話せば話すほどヒートアップして語られた。
面食らった司祭だったが、クーのしょんぼり具合を見て、落ち着かせようと、一時的に、クーとお母さんを預かるから、少しお二人、離れて暮らしてみては?と提案し。
いやいや、と父は顔を振り。
「クーは、父さんが良いよな。」
「クーは、お母さんの方に来るわよね。」
2人を見上げて、クーは。
司祭に縋りついて。
「クー、ケンカいや。とーちゃも、おかーちゃも、いや。」
必死で言った本心の、その一言で、夫婦は教会にクーを預けて、憤懣やる方ない、といった様子で、右と左に別れて去った。
一時的に、という事だったはずなのに、結局どちらも、まだクーを迎えに来ない。風の噂ではどちらも再婚したらしい。
竜樹は夢で、クーの父方母方の祖母と祖父、4人との写真を預かって、クーを頼まれて。ではクーは俺がいただきましょう、と、教会の孤児院で本式に受け入れ、他の子と同じように養子とした。
体育館のエルフ達とお話し中だけれども、初めて夢じゃなくテレビ電話の画面でもなく、竜樹とラフィネ母さんと会ったクーには、それはとっても大事で、聞いておかねばならなかった事なのだろう。
竜樹はそう思って。
「竜樹父さんと、ラフィネ母さんは、仲良しだよー。ねー?」
と、握手、の手を差し出して、ラフィネ母さんにニッコリした。
ラフィネもニッコリして。
跪き、ふわっと、腕を開いて。
竜樹に、ハグ、ハグ、とゆるく抱きつき、背中をポンポンとした。
「そうよ、竜樹父さんとラフィネ母さんは、仲良しよ!」
ぱっちり。
小さい目を見開いて、ちょっとポポッとなった竜樹。少し良い匂いもして。
勿論ラフィネも、クーの事情を知っているからだ。竜樹からすぐ離れて、おずおずと、2人の間に入ってくるクーを挟んで、竜樹もラフィネも、もう一回ハグ、っとした。
クーは、むふ、と満面、笑って。
「なかよし。ねー。」
と竜樹とラフィネに、ふくふくした頬を見せた。
「アハハ。少し照れるな~。」
「てれる?」
「ウンウン。竜樹父さんは、ちょっと、はずかし!」
ギュッと今度はクーを抱きしめて、皆が、ふふふ、とか、ハハハ、とか笑ってる。
クーが欲しかったものは、今ここにあって、それはとても幸せなのだった。
「な、仲良しなのですね。竜樹様と、ラフィネさん。お父さんと、お母さん。」
俯いて、何故かしょんぼりしたロテュス王子。
「わ、私、竜樹様と、結婚したかった••••••。」
ええ!?とジェム達が驚いて、そうして。
ロテュス王子の頬を、涙がコロコロ、と滑り落ちた。
涙は丸く、粒となって、低いテーブルの上を、カッーン、コン、コロロ。と転がって落ちそうになった。
ロテュス王子がそれを、手で受けて。
涙が、固まった?
ロテュス王子は、黙って俯いて、その涙の粒をじい、と眺めていたが。
ふいに顔を上げて、ニッコリすると。
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えーと。
竜樹は、どうしたら良いのかな、と思いつつ、麦茶のコップを、持ち上げて飲む仕草をして見せた。
ウン、ウン。
ニコニコしたロテュス王子が頷くので、竜樹は涙入りの麦茶を、グイッと飲んだ。
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