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本編
16日 カッケーエルフ
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「たつき様。私たち、お風呂もすっごく気に入ったけど、他にも気に入ったものが、あるのよ。」
集まってきたお母さんエルフの内、ばぶばぶ、盛んにおしゃべりしてる赤ちゃんエルフを、抱っこした1人が。
「何だろ?」
竜樹が首を傾げる。
それはね。
フリフリ、と哺乳瓶を振る。
「粉ミルクよ!」
「ウンウン!良いよね!」
「欲しいだけ貰えたもん。」
興奮したエルフ達が、口々に。
「私たち、母乳が良く出なくて。食べるものが少なかったからだと思うんだけど、私たちは我慢できたとしても、いつもお腹空かせて、ぐずぐずしていたのよ、赤ちゃん達!」
「ねー!ミルクください、って何度も言っても、ジュヴールの男も女も、エルフだから長生きで丈夫なんだから大丈夫だろう、って!そんな訳ないじゃない!」
「パシフィストに来て、お願いだから赤ちゃんに何か、栄養になるもの下さい、って言ったら、たつき様が考案したっていう粉ミルク、いっぱい貰えた!」
「使いたい時に、自由に持って行って良いよ、って机にいつでも用意してあるの!お湯も魔道具のポットですぐちょうど良い温度になるし、浄化の機能もついてるから、簡単で、すごく嬉しい!」
「粉だったから、最初、驚いたよね!」
ヤギ乳のままだと、時止めの倉庫に入れて貯めておく事はできるけど、嵩張る。流通に、瓶や缶で、重くて都合も良くないし。
と思って、竜樹が粉ミルクの提案をしたのだ。霧状にしたヤギ乳を、魔法で瞬時に乾燥させると、サラサラした粉になる。それを、一定の大きさのキューブに固めて、一個入れたら哺乳瓶のこの目盛りまでお湯入れて、と、哺乳瓶も軽い樹脂のもので作り、セットで売り出ししよう、と準備をしていた所だった。勿論、竜樹はツバメのミルクとして、既に使っている。
販売に向けて作り溜めていた、その在庫を国が買い上げて、エルフ達に使ってもらう事にしたのだ。
粉ミルクを商売にと、やる気を見せてスカウトされ、頑張っていた商人は、昨夜エルフ達に自ら作り方を説明し、やって見せて。一生懸命に、グイグイとミルクを飲む、普通の子より小さな赤ちゃんエルフに、グスッ、と隠れて泣いたという。
「こういう仕事が、したかったんだ。」
とは、彼の談である。
「ねー!粉だと、時止めの魔法もなしに、長くもつし!」
「欲しい時に、欲しいだけ作れるもんね!」
「この子たち、生まれて初めてくらいに、お腹いっぱいになって、昨夜は良くねんねしたのよ。ねー?」
お母さんエルフ達は、嬉しそうに赤ちゃんをよいよいする。竜樹も3王子もスーリール達も、嬉しくなる。
「こういう、便利な新しいものがあるんだって分かったら、森にだけいないで、外に出ることを増やして良いな、って思った!」
「私も!何でも新しくすると、忙しくなっちゃいそうだけど、知らないでいるのと、知ってて選んでやめとくので、違うもん。」
「それに、新しい事を知るのは、楽しいよ~!」
ウンウン、と頷き合うエルフ達である。
お父さんエルフ達も、ご機嫌の赤ちゃん子供達に、微笑みである。
ヴェル妃から竜樹が聞いた、エルフの出産事情からすれば、お父さんエルフが可愛がっている子供達の大半が、そのお父さんエルフとは血が繋がっていない。そもそも、男性エルフと女性エルフを、離れさせていたと聞いた。
お母さんエルフ、お父さんエルフと子供のエルフは、そんな事情を少しも見せず、和やか。そもそも、子供達なら家族の垣根を問わず、可愛がっている様子のエルフである。
強い。カッケー!
エルフ達は、驚くほど、明るい。
酷い目に遭っていたんだろうし、それを嘆く気持ちも、ついた深い傷も、勿論あるのだろうけれど。
苦役苦痛から解放され、呪いもロテュス王子が解けた事で、半分覗き見されている感覚が残る位なのだそうだ。見てるんだ、と気持ち悪く思う。早く呪いを解いてやらねば。
未来が明るく見える事で、興奮しているのだろう。
これから、ジェム達の悪夢のように、思い出し痛む事もあるかもしれない。
今は苦痛を飲み込み、明るく過ごすエルフ達を、竜樹も3王子も、そしてパシフィストのエルフに関わった者達も、好ましく、助けになりたく思っている。
ちゃららんらん♪ ぶるるらる
ザザッ
お父さんお母さん子供エルフが、んん?と不思議そうに竜樹の懐から鳴るスマホの着信音に、耳を澄ます。
そして、何やかややっていた、チリとエルフの魔法使い達、の集団が、ものすごい視線で竜樹を。
「あ~、すみません、弟のコウキから電話です。ちょっと失礼。」
断って、ホチ、と一旦出る。
「コウキにいさま~!」
「コウキ~!」
「久しぶり~コウキ~!」
3王子達がコウキの名前に反応して、手をフリフリする。エルフの子供達は、えー、お話、できてる?誰と?など、興味ありげ。
「コウキ、今、酷く扱われてたエルフ達に、何かできないかボランティアに来た所でーーー。」
『え、エルフ!!!す、すごい!』
こちらも興奮の、竜樹の弟コウキである。
集まってきたお母さんエルフの内、ばぶばぶ、盛んにおしゃべりしてる赤ちゃんエルフを、抱っこした1人が。
「何だろ?」
竜樹が首を傾げる。
それはね。
フリフリ、と哺乳瓶を振る。
「粉ミルクよ!」
「ウンウン!良いよね!」
「欲しいだけ貰えたもん。」
興奮したエルフ達が、口々に。
「私たち、母乳が良く出なくて。食べるものが少なかったからだと思うんだけど、私たちは我慢できたとしても、いつもお腹空かせて、ぐずぐずしていたのよ、赤ちゃん達!」
「ねー!ミルクください、って何度も言っても、ジュヴールの男も女も、エルフだから長生きで丈夫なんだから大丈夫だろう、って!そんな訳ないじゃない!」
「パシフィストに来て、お願いだから赤ちゃんに何か、栄養になるもの下さい、って言ったら、たつき様が考案したっていう粉ミルク、いっぱい貰えた!」
「使いたい時に、自由に持って行って良いよ、って机にいつでも用意してあるの!お湯も魔道具のポットですぐちょうど良い温度になるし、浄化の機能もついてるから、簡単で、すごく嬉しい!」
「粉だったから、最初、驚いたよね!」
ヤギ乳のままだと、時止めの倉庫に入れて貯めておく事はできるけど、嵩張る。流通に、瓶や缶で、重くて都合も良くないし。
と思って、竜樹が粉ミルクの提案をしたのだ。霧状にしたヤギ乳を、魔法で瞬時に乾燥させると、サラサラした粉になる。それを、一定の大きさのキューブに固めて、一個入れたら哺乳瓶のこの目盛りまでお湯入れて、と、哺乳瓶も軽い樹脂のもので作り、セットで売り出ししよう、と準備をしていた所だった。勿論、竜樹はツバメのミルクとして、既に使っている。
販売に向けて作り溜めていた、その在庫を国が買い上げて、エルフ達に使ってもらう事にしたのだ。
粉ミルクを商売にと、やる気を見せてスカウトされ、頑張っていた商人は、昨夜エルフ達に自ら作り方を説明し、やって見せて。一生懸命に、グイグイとミルクを飲む、普通の子より小さな赤ちゃんエルフに、グスッ、と隠れて泣いたという。
「こういう仕事が、したかったんだ。」
とは、彼の談である。
「ねー!粉だと、時止めの魔法もなしに、長くもつし!」
「欲しい時に、欲しいだけ作れるもんね!」
「この子たち、生まれて初めてくらいに、お腹いっぱいになって、昨夜は良くねんねしたのよ。ねー?」
お母さんエルフ達は、嬉しそうに赤ちゃんをよいよいする。竜樹も3王子もスーリール達も、嬉しくなる。
「こういう、便利な新しいものがあるんだって分かったら、森にだけいないで、外に出ることを増やして良いな、って思った!」
「私も!何でも新しくすると、忙しくなっちゃいそうだけど、知らないでいるのと、知ってて選んでやめとくので、違うもん。」
「それに、新しい事を知るのは、楽しいよ~!」
ウンウン、と頷き合うエルフ達である。
お父さんエルフ達も、ご機嫌の赤ちゃん子供達に、微笑みである。
ヴェル妃から竜樹が聞いた、エルフの出産事情からすれば、お父さんエルフが可愛がっている子供達の大半が、そのお父さんエルフとは血が繋がっていない。そもそも、男性エルフと女性エルフを、離れさせていたと聞いた。
お母さんエルフ、お父さんエルフと子供のエルフは、そんな事情を少しも見せず、和やか。そもそも、子供達なら家族の垣根を問わず、可愛がっている様子のエルフである。
強い。カッケー!
エルフ達は、驚くほど、明るい。
酷い目に遭っていたんだろうし、それを嘆く気持ちも、ついた深い傷も、勿論あるのだろうけれど。
苦役苦痛から解放され、呪いもロテュス王子が解けた事で、半分覗き見されている感覚が残る位なのだそうだ。見てるんだ、と気持ち悪く思う。早く呪いを解いてやらねば。
未来が明るく見える事で、興奮しているのだろう。
これから、ジェム達の悪夢のように、思い出し痛む事もあるかもしれない。
今は苦痛を飲み込み、明るく過ごすエルフ達を、竜樹も3王子も、そしてパシフィストのエルフに関わった者達も、好ましく、助けになりたく思っている。
ちゃららんらん♪ ぶるるらる
ザザッ
お父さんお母さん子供エルフが、んん?と不思議そうに竜樹の懐から鳴るスマホの着信音に、耳を澄ます。
そして、何やかややっていた、チリとエルフの魔法使い達、の集団が、ものすごい視線で竜樹を。
「あ~、すみません、弟のコウキから電話です。ちょっと失礼。」
断って、ホチ、と一旦出る。
「コウキにいさま~!」
「コウキ~!」
「久しぶり~コウキ~!」
3王子達がコウキの名前に反応して、手をフリフリする。エルフの子供達は、えー、お話、できてる?誰と?など、興味ありげ。
「コウキ、今、酷く扱われてたエルフ達に、何かできないかボランティアに来た所でーーー。」
『え、エルフ!!!す、すごい!』
こちらも興奮の、竜樹の弟コウキである。
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