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本編
15日 夜の庭で
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寮の庭で。
転移でジュヴールから逃げてきた、エルフ達を迎えるロテュス王子は。そろそろ今夜は寝たら、と言う同胞のイケオジ、サジタリアスの促しに、ふるふると頭を振った。
半目でふらふらしながら、立っている。
「夜中しか、逃げるタイミングがない者達も、いるかも、しれないから。」
「それは、私が対応を致しますから。」
5246人いる、とロテュス王子の共感覚で確認できる人数の内、5103人は避難してこれた。残りの143人は、タイミングを見計らっている者もいるかもしれないが、殆どは転移魔法が使えない程、衰弱していたり、まだ赤ちゃんか子供で、転移が使えず、連れて来てくれる大人のエルフが側にいなくて、隔離されている状態か。
それでも、ロテュス王子の呼びかけは伝わっているだろう。その存在が、早く皆に会いたい、と焦るような気持ちが、ロテュス王子には、ひしひしと感じられる。
今後の救出作戦は。
呪いで転移を使えなくしているはずなのに次々とエルフ達が消えていって、警戒しているであろうジュヴールへ、転移が出来るエルフ達が、罠に飛び込むようにして、残りのエルフを奪還してこなくてはならないだろう。
そうして、ジュヴールが絶対に離したくないであろう、父王も、その中に入っている。
「5246人の、たった1人でさえ、欠けてなるものか•••!」
「はい!私も同じ気持ちです!ですが、ロテュス殿下、貴方が倒れてしまっては、全員奪還の日も遠ざかるのですよ。」
サジタリアスが背中を摩る。温かくて、眠ってしまいたいのを、ロテュス王子は、フルフル、とまた頭を振った。
「俺もいますから。」
エルフの戦士で冒険者だった、フィラントが、自分も半目でふらつきながら言ってくる。
「お前も寝なさい。」
サジタリアスが、コツンとフィラントの頭を小突く。
「れも、誰かが、いないと•••。」
フィラントも、舌が回らず、こしこし目を擦り。
「あれ、まだ起きて対応してたんだね。お疲れ様、大丈夫かい?ロテュス殿下たち。」
3王子を連れた竜樹。皆、お湯に浸かりすぎで指をしわっしわにしながら、寮に帰ってきた。ニリヤはオネムで、竜樹に安定の抱っこである。
「ちょっと縁台に座って、お話しない?」
竜樹の誘いに、ロテュス王子は、コクリ、と頷き、隣同士に座った。ニリヤは抱っこのまま、オランネージュとネクターも、反対側に一緒に座る。
「今、5103人が、こちらに避難できた状態です。」
ロテュス王子が、状況を説明する。
残りの奪還は、極めて危険だが、やらずにはいられない事も。
「ウンウン。そうだね、落ち着いて、良く相談して、準備して、やろうよねぇ。」
頭、撫でないで。眠くなるから。
ロテュス王子は言いたかったが、何故か竜樹の手を、振り払う事は出来なかった。縁台に座ってしまったら、もう、そこに根が生えて、背中が丸く沈み込んで、立ち上がれない。
コココ、コケ!
「おや、オーブ。」
神鳥オーブが、今夜も小屋を抜け出して、コッコッ鳴きながら寄ってきた。
バササ、とロテュス王子の頭に乗っかる。そして、丸っと、うずくまる。
「うわ!」
一瞬驚いたが、夏でもひやりとした夜気の中、あたま、あったかい。
ポワポワに、頭が下がってくる。しまいには、ポテリ、と竜樹の膝に、頭が落ちた。
オーブは器用に位置取りして、上手い事横たわる頭の上を移動し、うずくまったままである。
ココケコ。ツンツン。
竜樹の、スマホの入ってる所を、首を揺らして指す。
コココ、コケ。
『残りのエルフ、奪還に、オーブも付いていく。』
「おー!本当、オーブ。頼もしいなぁ。」
竜樹が喜び、オランネージュとネクターも微笑む。エルフの2人、サジタリアスとフィラントも、力強くニンマリとする。
ココケケコケ、ケココ。
『だから、安心して、皆、今夜は寝なさい。』
オーブは親切な、良きめんどりである。
ロテュス王子は、緩やかに抗う。
「れも、わらしが、おきてないと。」
ココケッコ。ケココ!
『大丈夫。ほら、今も、頼れる大人が、残りの人数の内、52人のエルフの子供達を連れて、やって来るよ。』
キラキラ、庭が今までの転移より、一層強く大きく光る。
現れたのは、基本美貌のエルフの中でも、これまた美しい、ドレス姿ーーー少しやつれてはいるけれどーーの女性と、手を繋いだり、抱っこしたりで、寄り添い合って転移してきた、赤ちゃんや子供のエルフ達だった。
「お母様ーーー。」
ロテュス王子は、竜樹の膝に頭を乗っけたまま、弱々と腕を伸ばして、じわ、と涙ぐむ。
ロテュス王子のお母様と子供達は、わっと縁台に寄って、ロテュス王子を取り囲む。
お助け侍女侍従ズが、うずうずと、お助けしたくてそっと待っている。
跪き、ロテュス王子の手を取り、背中を撫でるお母様ーーーエルフのお妃様は、金のストレートの髪に、優しく強い、碧い目をして、どこか清廉な雰囲気。
「ロテュス。良く頑張りました。お母様も、頑張って、子供達を、これでもかと転移で集めまくって、連れてきてやったわ!」
残り、91人である。
「ロテュス王子のお母様。初めまして、ギフトの人、畠中竜樹です。竜樹と呼んで下さい。」
「竜樹様。エルフの王妃、ロテュスの母、ヴェルテューと申します。皆は、ヴェル妃と呼びますわ。ロテュスに優しくしてくださって、ありがとうございます。」
「竜樹様が、ロテュス殿下の呪いも解いて下さったのですよ。」
サジタリアスの説明に。
「まあ•••まあ!では、貴方は、エルフ達、皆の、命の恩人でもあるわ!!ありがとう、本当に、ありがとうございます!」
「いえいえ!俺もなんで自分が呪いを解けるのか、分からないんだけど、きっと神様のお助けもあるのかな、って思ってます。」
ココケコケココ!
『そうだよ。神器をずっと持っていて、ちょくちょく神と対話できる竜樹は、なんていうか神の力が宿る場になってるんだ、身体が。』
おお、そうなのか。
手のひらを見るが、特に変哲もない、少しガサついた、おじさんの手である。
コケコケ、ケケコ。
『出来るのは、触って呪い解除か、なんとなく陰なパワーを払って、ポワポワ良い気分になるくらいの事なんだけどね。』
「それだけできりゃ、普通のおじさんには充分な力だよ、オーブ。」
パワー!と手をかざすが、特に何も、光とかは出ない。
ヴェル妃は、ウンウンと頷き。
「だから貴方の周りは、春の日差しのような、ポカポカした心地よい温かさが満ちているのね。」
と、納得がいった風である。
やり取りを霞む目で見ながら、ロテュス王子は、お母様ぁ、と弱々しい声を出して、コロリと一粒、涙を溢すと、安心して、すうっ、と眠った。もう起きていられなかった。
「大丈夫よ。私がいるわ。ゆっくりおやすみなさい。」
優しい声は、眠りの中にもトロリと響く。
お助け侍女侍従ズが、そわそわと寄ってきて、竜樹様、と声をかける。子供達や赤ちゃんに、少し果実水やミルクを飲ませて、早く休ませてやりたいのだ。
「頼みます、お助け隊の皆さん!子供達、ここにいるお兄さんお姉さんは、味方だからね。少し美味しいものをもらって、休んだら、体育館、っていう広い建物にエルフの皆がいるから、連れてってあげるからね。」
「大丈夫よ、皆、この人達は、親切で安全よ。」
「ヴェル様は、いっしょしないの?」
尖り耳を、ヒコッと動かして、オランネージュ程の年齢に見えるエルフの子が、不安そうに聞く。今までの状況を鑑みれば、当然の不安だろう。
「少し、竜樹様とお話があるわ。美味しいものを、もらってらっしゃい。私も体育館に、一緒に行くわよ。安心してね。」
はあい、と、ヴェル妃のお墨付きに、もじもじしていた子供達も、やっとお助け侍女侍従ズの、広げた手に近寄っていく。
ヴェル妃は、竜樹達が座っているのの、隣の縁台の端っこに腰かけると、ふうー、深く、息を吐いた。そしてキリッとする。
「竜樹様。我が同胞、エルフ達を助けて下さって、この上、お願いをするのは、心苦しくはあるのですけど。」
眉を寄せるが、その後、ニコッとする。
「私、仮にも王族ですから、欲しいものがある時は、非常にわがままなの。何としても手に入れます。強欲なんですよ。」
「はあ。」
強欲とは全く縁がなさそうな、純な顔をして、ヴェル妃は続ける。
「私、エルフの王妃ですけど、ジュヴールでの扱いは、ジュヴール王の慰み者でしたわ。」
側妃でも、愛妾でもなく、ただ本当に手をつけたというだけの。エルフの王妃だというだけで、汚し貶める為に、笑ってジュヴール王はそうした。
「•••酷いですね。平凡なおじさんの、俺なんかには、女性の受ける、その苦しみは、想像を絶するのですが•••それでも、お心お察し致します。」
何とも言えず、竜樹は俯いて、ポツポツと応えた。
「いえいえ。貴方は誠実な方ね。半端に分かったような顔をなさらない。」
清らかな表情は。月明かりと、庭を明るくしてエルフ達を受け入れようと灯された、幾つものランプに照らされて、ゆらゆら光を受けている。
瞳が、強く輝く。
「それでね。強欲っていうのは、子供の事なの。私がジュヴール王の慰みものになってから、12年程経つかしら。エルフは人と交わると、エルフ同士の交わりよりも、子供が産まれやすいのよ。」
「•••ジュヴール王との間に、お子さんが?」
ニッコリと微笑みは、深い。
「ええ。3人程、産まれました。その子達は、誰が何と言おうと、私の子供、エルフの子よ。エルフが産んだ子は、皆、エルフのもの。ここにも2人、連れてきているわ。」
金髪で、碧い瞳、顔立ちも、尖り耳も、細身の身体も、共感覚によって繋がれている所も、エルフの特徴そのものなの。
「1人、置いてこられたんですね。」
竜樹は、ヴェル妃の願いが、分かってきた。
「ええ。その子は、エルフが産んだ子の中では、珍しく黒髪で、目は私に似た碧だけれど、耳は尖らず、骨太な所も、人の特徴ーーーええ、ジュヴール王の系統に、似ているわ。ジュヴール王よりずっとカッコいいけど!」
ふふふ、笑う。ウンウン、母は強欲でなければ。見かけの繊細さを裏切って、肝っ玉母ちゃん。その強さに、竜樹も、フフッと笑う。
「その子を、連れて来たいんですね?」
「ええ!エクラは、私の子!エルフの子です!共感覚も、他の子よりは薄いかもしれないけど、ちゃんと受けているのよ。エルフの子の証拠です!」
でも、と悲しい顔。
「あの子は、ジュヴールの皆が蔑むエルフの子だと低く扱われ、かと言って私たちエルフにも似ていない。周りもそう言うし、自分から、心を塞いで、ひとりぼっちになっているの。私達を逃す為に色々騒ぎを起こしたりして、逃げるタイミングを作ってくれたくせに、悲しいのに笑って、お母様達は、逃げて下さい、私は一緒に行けません。なんて、言うのよ!」
分かった大人のふりするなんて、まだ10歳、エルフにとっては赤ん坊のようなものなのに、生意気だと、思わない!?
そっ、とお助け侍女さんに差し出された果実水を、ありがとう、と貰い。一口飲んだら、とまらなくなって、ごく、ごくとヴェル妃は喉を鳴らして飲む。
ぷはっ!
「あー、私、喉が乾いていたのだわ!今やっと気づいたわ。」
お代わりがすぐに渡される。
「逃げてくるのに、緊張もされたでしょう。落ち着いて、飲みながら、お話して下さい。」
「ありがとう、ありがとう。でね、私は、生意気な息子を、取り戻したいの!私の夫もよ!きっと彼なら、エクラを、ヴェルの子なら私の子だ、って心から言ってくれるわ!」
エルフ王のリュミエールは、ジュヴールの国の、農地を豊かにさせる為に、力を殆ど吸い取られて、大地に送っているのだという。
「共感覚で、私達が逃げたのは知っているでしょうが、魔法の呪いや鎖で、雁字搦めなの。」
そこで、ニヤリ、と悪い顔をする。
「ジュヴールの国は、馬鹿な事をしたわ。ちゃんと、大地の力を生かすように、栄養を足して、土を作って、回るように育てれば、この先も農地を豊かに使えたでしょうけど。目先の富にくらんで、強制的に大地の力を使っているから。」
ああ~、と竜樹にも、その先が分かった。使い捨て、不毛の地になるのだ。雑誌でそんな土地の写真を、見た事がある。
「夫のリュミエールが、植物を育てる力を流さなくなれば、実りは乏しく、土は疲れ果てて、一気に食糧事情が悪くなると思うわよ。」
「ああ~、でも、リュミエール王を奪還するのですね。」
当然よ。
「ふふ。私、強欲な上に、悪い女かしら?ジュヴールの民、全員が悪い訳ではないけれど、困ると知っていても、やるわよ。」
「それは当然の権利だと思いますね。」
ありがとう、ありがとう。
うん、うん、とヴェル妃は満足気に頷く。
「ジュヴールの国、相当悪い事になってるわよ。国民は、監視の呪いと、エルフを蔑む考えを刷り込まれているせいで、奴隷のようにエルフを使う事に、疑問を持たせてもらえないのよ。監視役の魔法使い達、呪いで紐付けられた管理者は、今頃、強制解除された呪いを返されて、痛みをくらっているのよね。逆恨み、しそうだわぁ~。」
労働力のほとんどを担うエルフが、急に消えたら、あの国、どうするのかしらね?
「•••エルフを誘拐した、唆した、って、パシフィストに文句言ってきそうですね。」
「絶対に言うわね。でも私、譲らないわよ。迷惑かけて、ごめんなさい。でも諦めない。だから、強欲な、お願いなの。」
強い眼差しは、真っ直ぐに。
「貴方はジュヴールの民達にも、心を痛めるのでしょう。ギフトの御方様は、そうした方だと聞いています。それでも、私達エルフを、見捨てないで、とお願いするしかありません。力をお貸しください。ギフトの御方様。」
低く、低く、頭を下げて頼むヴェル妃、エルフのお母さん、なのだ。
竜樹は、どうか頭を上げて下さい、と。考え考え、応える。
「俺は、神様でも万能でもない、ただのおじさんなので、ジュヴールのお国を、助けてあげようとかは、ないんですけど。まあ、その力があるか、って言ったら、ないんだけど。」
ご謙遜を、とヴェル妃は思ったが、黙って一つ、頷く。
「こういう時に頼もしい、神様がいらっしゃるじゃあ、ありませんか。」
竜樹は、ニッと笑う。悪い笑顔くらい、できるのだ。
「エルフ達は神様から、調停者を頼まれた。そのエルフが害されたのだから、神様も、ジュヴールと森のエルフ達、そしてエルフを救助するリーダーのパシフィストや、各国代表の間で、成り行きを見届けて、調停者を、やってくれるかも?」
「神様が、調停を?」
ええ。
「クレル・ディアローグ神様。諍いと対話の神様です。雨降って地、固まる。膿は出し切らないと、癒えるものも癒えません。」
チラリ ハラリ。
真っ白な大きな花が、パッと咲いて揺れて、落ちてきた。
ネクターが、落ちてくる花を、キレイにキャッチした。
「神様と、お話だね!」
オランネージュが、楽し気に。
クレル・ディアローグ
『私を頼るか、竜樹!そうか、そうか、私の力が必要か!』
竜樹
「はい!この案件は、クレル・ディアローグ神様でなければ、お任せできません!どうか、エルフ達や、悪く落ちてしまったジュヴールの国が、良く話し合いできるように、お力をお貸し下さい。いいねを、勿論、使ってくださいね!」
クレル・ディアローグ
『ふむふむ、良いだろう、良いだろう。竜樹には、名前をつけてもらった縁もあるしな。この私に、任せなさい。それで、落とし所は、どんなふうに?』
竜樹
「エクラ君?は、パシフィストで真っ当に育てて、将来的に、ジュヴールの王様になったりしないかな?辛い所をお任せで、申し訳ないけれど、真っ当な人に、頼みたいものね。それまでは、各国が、睨みをきかせて介入して。だって、食料事情が悪くなるなら、周りの国と、いがみ合ってる場合じゃないですもんね。食料を買うなりして、輸入しないと。その対価を、持っているのかな?対価がなくて、援助を望むなら、他国が介入する、良い理由になるのでは?そして、大地の力を取り戻すには、エルフ達を奴隷のように使うのではなく、尊敬してその力を請わねばならないですよね?それが出来る国民にならなければ、いつまでも不毛の地は、そのままでしょう。そしてエルフ達は、今までより、もう少し、各国と仲良くして、何か有事の際には、皆に気づいてもらえるようにしたらどうかな。って所を、まあ、素人考えですけど、落とし所に~。」
クレル・ディアローグ
『うむうむ。良いだろう。良いだろう。雨を降らせ、地を固めようではないか!』
竜樹
「よろしくお願いします!」
クレル・ディアローグ
『任せておけ。時がくれば、顕現し調停しよう。待っているぞ!』
ランセ
『落とし所に落とし込むには、情報、大事だよ。成り行き、見守っているからね!』
竜樹
『ありがとうございます!がんばります!』
本当に、ご謙遜だったわね。
ヴェル妃は、ゆっくり一口、果実水を飲むと、ふーっと肩の力を抜いて。
ああ、眠い。
何もかも、揉めるけれども、きっとうまくいくわ。
そうよね、エクラ。
だからもう少し、辛いだろうけれど、母様を、待っていてね。
転移でジュヴールから逃げてきた、エルフ達を迎えるロテュス王子は。そろそろ今夜は寝たら、と言う同胞のイケオジ、サジタリアスの促しに、ふるふると頭を振った。
半目でふらふらしながら、立っている。
「夜中しか、逃げるタイミングがない者達も、いるかも、しれないから。」
「それは、私が対応を致しますから。」
5246人いる、とロテュス王子の共感覚で確認できる人数の内、5103人は避難してこれた。残りの143人は、タイミングを見計らっている者もいるかもしれないが、殆どは転移魔法が使えない程、衰弱していたり、まだ赤ちゃんか子供で、転移が使えず、連れて来てくれる大人のエルフが側にいなくて、隔離されている状態か。
それでも、ロテュス王子の呼びかけは伝わっているだろう。その存在が、早く皆に会いたい、と焦るような気持ちが、ロテュス王子には、ひしひしと感じられる。
今後の救出作戦は。
呪いで転移を使えなくしているはずなのに次々とエルフ達が消えていって、警戒しているであろうジュヴールへ、転移が出来るエルフ達が、罠に飛び込むようにして、残りのエルフを奪還してこなくてはならないだろう。
そうして、ジュヴールが絶対に離したくないであろう、父王も、その中に入っている。
「5246人の、たった1人でさえ、欠けてなるものか•••!」
「はい!私も同じ気持ちです!ですが、ロテュス殿下、貴方が倒れてしまっては、全員奪還の日も遠ざかるのですよ。」
サジタリアスが背中を摩る。温かくて、眠ってしまいたいのを、ロテュス王子は、フルフル、とまた頭を振った。
「俺もいますから。」
エルフの戦士で冒険者だった、フィラントが、自分も半目でふらつきながら言ってくる。
「お前も寝なさい。」
サジタリアスが、コツンとフィラントの頭を小突く。
「れも、誰かが、いないと•••。」
フィラントも、舌が回らず、こしこし目を擦り。
「あれ、まだ起きて対応してたんだね。お疲れ様、大丈夫かい?ロテュス殿下たち。」
3王子を連れた竜樹。皆、お湯に浸かりすぎで指をしわっしわにしながら、寮に帰ってきた。ニリヤはオネムで、竜樹に安定の抱っこである。
「ちょっと縁台に座って、お話しない?」
竜樹の誘いに、ロテュス王子は、コクリ、と頷き、隣同士に座った。ニリヤは抱っこのまま、オランネージュとネクターも、反対側に一緒に座る。
「今、5103人が、こちらに避難できた状態です。」
ロテュス王子が、状況を説明する。
残りの奪還は、極めて危険だが、やらずにはいられない事も。
「ウンウン。そうだね、落ち着いて、良く相談して、準備して、やろうよねぇ。」
頭、撫でないで。眠くなるから。
ロテュス王子は言いたかったが、何故か竜樹の手を、振り払う事は出来なかった。縁台に座ってしまったら、もう、そこに根が生えて、背中が丸く沈み込んで、立ち上がれない。
コココ、コケ!
「おや、オーブ。」
神鳥オーブが、今夜も小屋を抜け出して、コッコッ鳴きながら寄ってきた。
バササ、とロテュス王子の頭に乗っかる。そして、丸っと、うずくまる。
「うわ!」
一瞬驚いたが、夏でもひやりとした夜気の中、あたま、あったかい。
ポワポワに、頭が下がってくる。しまいには、ポテリ、と竜樹の膝に、頭が落ちた。
オーブは器用に位置取りして、上手い事横たわる頭の上を移動し、うずくまったままである。
ココケコ。ツンツン。
竜樹の、スマホの入ってる所を、首を揺らして指す。
コココ、コケ。
『残りのエルフ、奪還に、オーブも付いていく。』
「おー!本当、オーブ。頼もしいなぁ。」
竜樹が喜び、オランネージュとネクターも微笑む。エルフの2人、サジタリアスとフィラントも、力強くニンマリとする。
ココケケコケ、ケココ。
『だから、安心して、皆、今夜は寝なさい。』
オーブは親切な、良きめんどりである。
ロテュス王子は、緩やかに抗う。
「れも、わらしが、おきてないと。」
ココケッコ。ケココ!
『大丈夫。ほら、今も、頼れる大人が、残りの人数の内、52人のエルフの子供達を連れて、やって来るよ。』
キラキラ、庭が今までの転移より、一層強く大きく光る。
現れたのは、基本美貌のエルフの中でも、これまた美しい、ドレス姿ーーー少しやつれてはいるけれどーーの女性と、手を繋いだり、抱っこしたりで、寄り添い合って転移してきた、赤ちゃんや子供のエルフ達だった。
「お母様ーーー。」
ロテュス王子は、竜樹の膝に頭を乗っけたまま、弱々と腕を伸ばして、じわ、と涙ぐむ。
ロテュス王子のお母様と子供達は、わっと縁台に寄って、ロテュス王子を取り囲む。
お助け侍女侍従ズが、うずうずと、お助けしたくてそっと待っている。
跪き、ロテュス王子の手を取り、背中を撫でるお母様ーーーエルフのお妃様は、金のストレートの髪に、優しく強い、碧い目をして、どこか清廉な雰囲気。
「ロテュス。良く頑張りました。お母様も、頑張って、子供達を、これでもかと転移で集めまくって、連れてきてやったわ!」
残り、91人である。
「ロテュス王子のお母様。初めまして、ギフトの人、畠中竜樹です。竜樹と呼んで下さい。」
「竜樹様。エルフの王妃、ロテュスの母、ヴェルテューと申します。皆は、ヴェル妃と呼びますわ。ロテュスに優しくしてくださって、ありがとうございます。」
「竜樹様が、ロテュス殿下の呪いも解いて下さったのですよ。」
サジタリアスの説明に。
「まあ•••まあ!では、貴方は、エルフ達、皆の、命の恩人でもあるわ!!ありがとう、本当に、ありがとうございます!」
「いえいえ!俺もなんで自分が呪いを解けるのか、分からないんだけど、きっと神様のお助けもあるのかな、って思ってます。」
ココケコケココ!
『そうだよ。神器をずっと持っていて、ちょくちょく神と対話できる竜樹は、なんていうか神の力が宿る場になってるんだ、身体が。』
おお、そうなのか。
手のひらを見るが、特に変哲もない、少しガサついた、おじさんの手である。
コケコケ、ケケコ。
『出来るのは、触って呪い解除か、なんとなく陰なパワーを払って、ポワポワ良い気分になるくらいの事なんだけどね。』
「それだけできりゃ、普通のおじさんには充分な力だよ、オーブ。」
パワー!と手をかざすが、特に何も、光とかは出ない。
ヴェル妃は、ウンウンと頷き。
「だから貴方の周りは、春の日差しのような、ポカポカした心地よい温かさが満ちているのね。」
と、納得がいった風である。
やり取りを霞む目で見ながら、ロテュス王子は、お母様ぁ、と弱々しい声を出して、コロリと一粒、涙を溢すと、安心して、すうっ、と眠った。もう起きていられなかった。
「大丈夫よ。私がいるわ。ゆっくりおやすみなさい。」
優しい声は、眠りの中にもトロリと響く。
お助け侍女侍従ズが、そわそわと寄ってきて、竜樹様、と声をかける。子供達や赤ちゃんに、少し果実水やミルクを飲ませて、早く休ませてやりたいのだ。
「頼みます、お助け隊の皆さん!子供達、ここにいるお兄さんお姉さんは、味方だからね。少し美味しいものをもらって、休んだら、体育館、っていう広い建物にエルフの皆がいるから、連れてってあげるからね。」
「大丈夫よ、皆、この人達は、親切で安全よ。」
「ヴェル様は、いっしょしないの?」
尖り耳を、ヒコッと動かして、オランネージュ程の年齢に見えるエルフの子が、不安そうに聞く。今までの状況を鑑みれば、当然の不安だろう。
「少し、竜樹様とお話があるわ。美味しいものを、もらってらっしゃい。私も体育館に、一緒に行くわよ。安心してね。」
はあい、と、ヴェル妃のお墨付きに、もじもじしていた子供達も、やっとお助け侍女侍従ズの、広げた手に近寄っていく。
ヴェル妃は、竜樹達が座っているのの、隣の縁台の端っこに腰かけると、ふうー、深く、息を吐いた。そしてキリッとする。
「竜樹様。我が同胞、エルフ達を助けて下さって、この上、お願いをするのは、心苦しくはあるのですけど。」
眉を寄せるが、その後、ニコッとする。
「私、仮にも王族ですから、欲しいものがある時は、非常にわがままなの。何としても手に入れます。強欲なんですよ。」
「はあ。」
強欲とは全く縁がなさそうな、純な顔をして、ヴェル妃は続ける。
「私、エルフの王妃ですけど、ジュヴールでの扱いは、ジュヴール王の慰み者でしたわ。」
側妃でも、愛妾でもなく、ただ本当に手をつけたというだけの。エルフの王妃だというだけで、汚し貶める為に、笑ってジュヴール王はそうした。
「•••酷いですね。平凡なおじさんの、俺なんかには、女性の受ける、その苦しみは、想像を絶するのですが•••それでも、お心お察し致します。」
何とも言えず、竜樹は俯いて、ポツポツと応えた。
「いえいえ。貴方は誠実な方ね。半端に分かったような顔をなさらない。」
清らかな表情は。月明かりと、庭を明るくしてエルフ達を受け入れようと灯された、幾つものランプに照らされて、ゆらゆら光を受けている。
瞳が、強く輝く。
「それでね。強欲っていうのは、子供の事なの。私がジュヴール王の慰みものになってから、12年程経つかしら。エルフは人と交わると、エルフ同士の交わりよりも、子供が産まれやすいのよ。」
「•••ジュヴール王との間に、お子さんが?」
ニッコリと微笑みは、深い。
「ええ。3人程、産まれました。その子達は、誰が何と言おうと、私の子供、エルフの子よ。エルフが産んだ子は、皆、エルフのもの。ここにも2人、連れてきているわ。」
金髪で、碧い瞳、顔立ちも、尖り耳も、細身の身体も、共感覚によって繋がれている所も、エルフの特徴そのものなの。
「1人、置いてこられたんですね。」
竜樹は、ヴェル妃の願いが、分かってきた。
「ええ。その子は、エルフが産んだ子の中では、珍しく黒髪で、目は私に似た碧だけれど、耳は尖らず、骨太な所も、人の特徴ーーーええ、ジュヴール王の系統に、似ているわ。ジュヴール王よりずっとカッコいいけど!」
ふふふ、笑う。ウンウン、母は強欲でなければ。見かけの繊細さを裏切って、肝っ玉母ちゃん。その強さに、竜樹も、フフッと笑う。
「その子を、連れて来たいんですね?」
「ええ!エクラは、私の子!エルフの子です!共感覚も、他の子よりは薄いかもしれないけど、ちゃんと受けているのよ。エルフの子の証拠です!」
でも、と悲しい顔。
「あの子は、ジュヴールの皆が蔑むエルフの子だと低く扱われ、かと言って私たちエルフにも似ていない。周りもそう言うし、自分から、心を塞いで、ひとりぼっちになっているの。私達を逃す為に色々騒ぎを起こしたりして、逃げるタイミングを作ってくれたくせに、悲しいのに笑って、お母様達は、逃げて下さい、私は一緒に行けません。なんて、言うのよ!」
分かった大人のふりするなんて、まだ10歳、エルフにとっては赤ん坊のようなものなのに、生意気だと、思わない!?
そっ、とお助け侍女さんに差し出された果実水を、ありがとう、と貰い。一口飲んだら、とまらなくなって、ごく、ごくとヴェル妃は喉を鳴らして飲む。
ぷはっ!
「あー、私、喉が乾いていたのだわ!今やっと気づいたわ。」
お代わりがすぐに渡される。
「逃げてくるのに、緊張もされたでしょう。落ち着いて、飲みながら、お話して下さい。」
「ありがとう、ありがとう。でね、私は、生意気な息子を、取り戻したいの!私の夫もよ!きっと彼なら、エクラを、ヴェルの子なら私の子だ、って心から言ってくれるわ!」
エルフ王のリュミエールは、ジュヴールの国の、農地を豊かにさせる為に、力を殆ど吸い取られて、大地に送っているのだという。
「共感覚で、私達が逃げたのは知っているでしょうが、魔法の呪いや鎖で、雁字搦めなの。」
そこで、ニヤリ、と悪い顔をする。
「ジュヴールの国は、馬鹿な事をしたわ。ちゃんと、大地の力を生かすように、栄養を足して、土を作って、回るように育てれば、この先も農地を豊かに使えたでしょうけど。目先の富にくらんで、強制的に大地の力を使っているから。」
ああ~、と竜樹にも、その先が分かった。使い捨て、不毛の地になるのだ。雑誌でそんな土地の写真を、見た事がある。
「夫のリュミエールが、植物を育てる力を流さなくなれば、実りは乏しく、土は疲れ果てて、一気に食糧事情が悪くなると思うわよ。」
「ああ~、でも、リュミエール王を奪還するのですね。」
当然よ。
「ふふ。私、強欲な上に、悪い女かしら?ジュヴールの民、全員が悪い訳ではないけれど、困ると知っていても、やるわよ。」
「それは当然の権利だと思いますね。」
ありがとう、ありがとう。
うん、うん、とヴェル妃は満足気に頷く。
「ジュヴールの国、相当悪い事になってるわよ。国民は、監視の呪いと、エルフを蔑む考えを刷り込まれているせいで、奴隷のようにエルフを使う事に、疑問を持たせてもらえないのよ。監視役の魔法使い達、呪いで紐付けられた管理者は、今頃、強制解除された呪いを返されて、痛みをくらっているのよね。逆恨み、しそうだわぁ~。」
労働力のほとんどを担うエルフが、急に消えたら、あの国、どうするのかしらね?
「•••エルフを誘拐した、唆した、って、パシフィストに文句言ってきそうですね。」
「絶対に言うわね。でも私、譲らないわよ。迷惑かけて、ごめんなさい。でも諦めない。だから、強欲な、お願いなの。」
強い眼差しは、真っ直ぐに。
「貴方はジュヴールの民達にも、心を痛めるのでしょう。ギフトの御方様は、そうした方だと聞いています。それでも、私達エルフを、見捨てないで、とお願いするしかありません。力をお貸しください。ギフトの御方様。」
低く、低く、頭を下げて頼むヴェル妃、エルフのお母さん、なのだ。
竜樹は、どうか頭を上げて下さい、と。考え考え、応える。
「俺は、神様でも万能でもない、ただのおじさんなので、ジュヴールのお国を、助けてあげようとかは、ないんですけど。まあ、その力があるか、って言ったら、ないんだけど。」
ご謙遜を、とヴェル妃は思ったが、黙って一つ、頷く。
「こういう時に頼もしい、神様がいらっしゃるじゃあ、ありませんか。」
竜樹は、ニッと笑う。悪い笑顔くらい、できるのだ。
「エルフ達は神様から、調停者を頼まれた。そのエルフが害されたのだから、神様も、ジュヴールと森のエルフ達、そしてエルフを救助するリーダーのパシフィストや、各国代表の間で、成り行きを見届けて、調停者を、やってくれるかも?」
「神様が、調停を?」
ええ。
「クレル・ディアローグ神様。諍いと対話の神様です。雨降って地、固まる。膿は出し切らないと、癒えるものも癒えません。」
チラリ ハラリ。
真っ白な大きな花が、パッと咲いて揺れて、落ちてきた。
ネクターが、落ちてくる花を、キレイにキャッチした。
「神様と、お話だね!」
オランネージュが、楽し気に。
クレル・ディアローグ
『私を頼るか、竜樹!そうか、そうか、私の力が必要か!』
竜樹
「はい!この案件は、クレル・ディアローグ神様でなければ、お任せできません!どうか、エルフ達や、悪く落ちてしまったジュヴールの国が、良く話し合いできるように、お力をお貸し下さい。いいねを、勿論、使ってくださいね!」
クレル・ディアローグ
『ふむふむ、良いだろう、良いだろう。竜樹には、名前をつけてもらった縁もあるしな。この私に、任せなさい。それで、落とし所は、どんなふうに?』
竜樹
「エクラ君?は、パシフィストで真っ当に育てて、将来的に、ジュヴールの王様になったりしないかな?辛い所をお任せで、申し訳ないけれど、真っ当な人に、頼みたいものね。それまでは、各国が、睨みをきかせて介入して。だって、食料事情が悪くなるなら、周りの国と、いがみ合ってる場合じゃないですもんね。食料を買うなりして、輸入しないと。その対価を、持っているのかな?対価がなくて、援助を望むなら、他国が介入する、良い理由になるのでは?そして、大地の力を取り戻すには、エルフ達を奴隷のように使うのではなく、尊敬してその力を請わねばならないですよね?それが出来る国民にならなければ、いつまでも不毛の地は、そのままでしょう。そしてエルフ達は、今までより、もう少し、各国と仲良くして、何か有事の際には、皆に気づいてもらえるようにしたらどうかな。って所を、まあ、素人考えですけど、落とし所に~。」
クレル・ディアローグ
『うむうむ。良いだろう。良いだろう。雨を降らせ、地を固めようではないか!』
竜樹
「よろしくお願いします!」
クレル・ディアローグ
『任せておけ。時がくれば、顕現し調停しよう。待っているぞ!』
ランセ
『落とし所に落とし込むには、情報、大事だよ。成り行き、見守っているからね!』
竜樹
『ありがとうございます!がんばります!』
本当に、ご謙遜だったわね。
ヴェル妃は、ゆっくり一口、果実水を飲むと、ふーっと肩の力を抜いて。
ああ、眠い。
何もかも、揉めるけれども、きっとうまくいくわ。
そうよね、エクラ。
だからもう少し、辛いだろうけれど、母様を、待っていてね。
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