270 / 568
本編
13日 エフォールの正直な手紙と黄身しぐれ
しおりを挟む
ジェム達、王子達、と、エフォールの考えまとめ用の表を、床に広げてとっついて。今度はエフォールの手紙の下書きに、伝えたい事を箇条書きした後、本書きである。
今のお父様お母様への手紙は、スラスラ書けていたエフォールも。新しいお父様へは、まず名前も知らない所から、探り探りで書くしかなく、ジェム達や王子達に、どう思う?なんて聞きつつ、考え考え書いていた。
『新しいお父様へ
はじめまして、私はエフォールと言います。
今日は、会ったばっかりで、無視してジェム達の寮に遊びにきちゃって、ごめんなさい。急に会ったから、びっくりしました。気持ちがグチャグチャになって、どうしたらいいか、分からなくなったのです。
新しいお父様は、コリエさんとけっこんしてないの?どうして今まで、会ってくれなかったの?
お仕事は何をしてますか?働いてる?
新しいお父様の事、何も知らなくて、私はもっと知りたいな、って思いました。
育ててくれた、今のお父様とお母様が大好きだから、離れたくないです。新しいお父様は、私を今の家から連れてっちゃおうとしてますか?
おねがいします。私を、今の家族から、連れていっちゃわないでほしいです。家族と別れたくない。
赤ちゃんを間違えて取り違えて育ててしまった、2つの家の話を、竜樹様から聞きました。育てた子供も可愛いし、血のつながった子も可愛い。2つの家がどうしたかというと、隣同士の家に引っ越して、自由に行き来できるようにしたそうです。
引っ越しまでしなくても良いけど、そんなふうに、仲良くできたらいいのにな、って思いました。
今度、パンセのお家で、私に会いにきてくれませんか?
お話しがしたいです。まだ上手に歩けないから、外で会うのは、大変なのです。
私はお金も持ってないし、竜樹様へ紹介もできないけど、それでも良いですか?
私の事、新しいお父様、好き?
かぎ針編みで編んだ、ぬいぐるみや、お花のブローチは作れるし、フリーマーケットでも売ったりしたけど、まだお店をもてるほどではないです。将来、お兄様のお手伝いをしながら、小さな編み物のお店をしたいな、って思ってます。今の家族も、良いね!って言ってくれてる。
編み物大好きなのです。
友達のフェリスィテは、可愛いもの好きの仲間なのだけど、フェリスィテが将来なりたい騎士の、見習い達の仲間からは、時々からかわれたりするって。でも、好きなものを、あきらめない、って言ってます。私も、あきらめない、が良いと思います。
新しいお父様は、編み物、応援してくれますか?
コリエさんとも、お手紙してみたいな、って思っています。
もし良かったら、お返事ください。
お手紙、また私も書きます。
本当は、少し、新しいお父様と知り合うの、怖いって気持ちもあります。
友達のジェム達が、街で再婚したお姉さんと連れごのお家の話を教えてくれて、うまくいく家もあれば、叩いたり、凄く働かせたりして、うまくいかない家もある、って。
新しいお父様は、そんな人じゃ、ないよね?
怖いけど、知りたい。
新しいお父様が、良い人だったら良いな、って、思ってます。
私にそっくりな、新しいお父様を、少し嬉しいな、って思ったから。
お返事、待ってます。
エフォールより』
出来上がった手紙を、満足そうに眺めて、ジェム達王子達も、ふす!と意気込んで。
「正直に言いたい事が、書けたら、スッキリするよね。」
竜樹が頭を撫でれば、エフォールは、気持ちよさそうに目を閉じて。
「ウン!これ、お父様達に、出してみる!」
とニッコリした。
「じゃあ、クラージュ印のメッセンジャーを頼もうか。タカラ、お願いできる?」
はい!と、タカラも事の成り行きを見守っていた者として、嬉しく使いを務めるのだった。
お昼寝組と、だるまさんが転んだを始めた遊び組とがいて、3おばあさまも、昼寝している小っちゃい子の背中をトントンしたり、だるまさんがこ、ろ、ん、だ!ピタッ 止まったり。
エフォールも、試しに予備を置いていた歩行車を使って、だるまさん転んだ仲間で、カタタンと楽しく遊んで。
「リベリュールおばあさま、動いたぁ!」
「むむむ、残念!」
鬼と手を繋いで。
「ピティエ、カフェインレスの玉露、良く作ったね。午前中もらったお茶、味も遜色なくて、美味しかったよ。」
竜樹が褒めると、本来のジェム達に持ってきたお茶を、淹れる準備に、魔道具ケトルでお湯沸かしをしているピティエは、ふふ、良かった!と笑った。
竜樹が、湯が沸いたらピーッと笛が鳴るケトルの話をしていて、それは良い、と作ってもらったのだ。午前中は、慌ててしまい、ラフィネに普通に沸かしてもらった。
「昨日、ウチに来た親戚が、分離が使える、っていうから、やってもらったんです。朝一番に鑑定してもらって、安全で美味しいお茶が、出来ました!」
王子殿下達には、眠れなくてゴロゴロの、辛い夜を過ごさせてしまったけれど。妊婦さんや眠れてない人なんかに、お茶を提供する前に分かって、良かったです。これからも、口に入るものには、気をつけて提供したいです。
ピティエは、しみじみ頷きつつ、コンコルドと協力して、また低いテーブルを出した。
オヤツは、干菓子じゃなくて、今度は黄身しぐれを用意。お皿も小さな、黄身しぐれの色を引き立てる、漆黒の陶器。
干菓子は、竜樹が、漆塗りの小さな入れ物に入れて、売ったら良いんじゃない?とピティエにアイデアを示唆したものである。試しに出来たものを持ってきていたので、皆に味わってもらえた。
干菓子は教会の子供達が売るお菓子としては、上品すぎるし、数も作れないだろうから、ちょっと良いお茶が飲めるピティエのお店で、食べてもらいつつ売ったら、買ってもらえそうかも?となったのだ。綺麗な入れ物とセットだから、ちょっとした贈り物にも使える。
もぞもぞ、と昼寝の子達も起きだす頃。
「おーい、皆ー。おやつとお茶の時間だよ~。」
「「「は~い!!!」」」
「わ、きれいなおかし。」
「黄身しぐれ、って言います。」
菓子切りは、黒文字もどき。鑑定のお仕事の彼は、本当に良い仕事をする。竜樹から貰った、タブレットに植物図鑑、キノコ図鑑、役にたつ植物、という電子書籍などを見ては、参考にして使えるものをどんどこ発見している。
森の中を、護衛の冒険者達とガシガシ歩いては、鑑定しまくるのが、楽しくて仕方ないそうだ。
クラージュ商会の葉っぱ部門も、ホクホクである。
オール先王達も、御相伴に預かり。
そして、まだハルサ王様とマルグリット王妃様もいるのだった。
「だって、お休みなんですもの。子供達と一緒にいたいわ。」
「おぼん休み、だよなぁ。」
お昼寝から覚めて、目をショボショボさせ、瞼を擦るニリヤを抱き、クッションに身体をもたせかけて、顔を見合わせ、頷き合う夫婦である。
つくづく、余分にお菓子を持ってきて良かったピティエである。ちなみに、沢山ものが入る、例の、4次元ポケット的な魔道具カバンを、コンコルドが持って道具とお菓子、お茶を入れてきたのだ。流石にそのまま手持ちでは、これだけの道具やお菓子を持って来られない。
竜樹にも用意されて持っているが、それはタカラが代わりに持って何でも出してくれるし、貰った花なども、しまっておいてくれる。
転移の魔法陣で輸入や輸出、運送をする際にも、役立ちそうなアイテムである。
そして、中に入ってる物リストを他人に見えるようにも表示する事ができるので、荷物の検査時に中身を取り出さなくても大丈夫。
「この、一本の木の楊枝で、切ったり刺したりして、上品にお菓子を食べるのが、お茶のやり方だよ。皆、おじょうひん、出来るかなぁ~?」
「「「できるぅ~!!」」」
すました顔して、テーブルの上の黄身しぐれを切っては、食べる子供達に、大人はニコッとしつつ、お茶と甘味のマリアージュを楽しんだ。
ぽろっとお皿に崩れて、こぼれたカケラを、短い指で摘んで食べる子供達は、ご愛嬌。手も洗ったから、良いでしょう。
「美味しいよ!ピティエ様!」
「おいし~い!あんこ、入ってる!」
「おちゃも、合うね!」
「緑のお茶、きれ~い。」
「ふふ、良かった!私のお店で出す、お菓子とお茶だよ。こんな感じ、って、分かってくれた?」
ピティエがニコニコ、自分もお茶を啜って、黄身しぐれの味を確かめて。
「うん!美味しいし、きれいだし、おしゃれな喫茶室なんだな、って伝わった!」
「大人になったら、絶対いくもん。」
ねー!と仲良し。
「これ、ねむくならないのがない、お茶なのね?」
「ねむくなるのがない、のがない?えーと、眠れなくならない!」
「カフェインレス、なんだって。」
王子達も、眠れなくなった事など全然気にせず。まあその時は竜樹がよいよいし、お話しをしてやり、それも楽しかったようなので、嫌な気持ちがしていないのだった。
ほうほう。
うまうまお菓子を食べてゆっくりしていた、しかしここで、ピン、と閃くバーニー君。
「それ、分離した後の、カフェインという物質は、もしかして、眠っちゃいけないお仕事なんかの時に、役立ちませんか?」
「う~ん、バーニー君、きみがカフェインを使ったら、仕事しすぎて身体をボロボロにする未来しか予測できないけど、まあ確かにそういうお薬ですよ、カフェインは。」
普通にお茶なんかに入ってるから、紅茶を飲んで頑張ったり、そういう事してるんじゃない?
「ふむ。用法、容量に注意、という事ですね。何でもそうだけど、便利なものも万能ではなくて、使い方ですよねぇ。所でそのカフェインは、売る気ありますか?」
ピティエに商いを持ちかけるバーニー君。彼は、何でも実現の名に恥じず、未完成で関わったものを、形にせずにはいられないのだった。
だから使われてしまうのだよ、バーニー君。という哀れみの目のオール先王とハルサ王様に、含み笑いを受けつつ、こういう人、壊れないように、危ない所にツッコミすぎないように守りつつ、ちゃんと休ませて、そして気持ち良く働かせてあげないとな、と竜樹は思った。
その辺、チリ魔法院長が睨みをきかせているらしい。時に大人のやり取り、駆け引き、常識をぶっ壊してでも剛力で守る、のだそうだ。ミラン情報。
だから魔法院長をやって、めちゃくちゃでも、心の底では部下に慕われている、との事。ぶっちゃけ長なんてのは、気持ち良く働かせてくれて、大事な所の責任をとってくれれば良いのである。
チリ魔法院長は、その上で発明丸投げ案件があるが。
カフェインを鑑定で詳しく調べて、その上で薬局にて、薬師からの指導を受けた者にしか売らない、という確約をつけつつ、ピティエとの商談を済ませて、バーニー君は黄身しぐれを美味しくパクつく。今日はチリと一緒に、寮で美味しいご飯をいただき、ゆっくりしようという算段のようだ。王様達が一緒でもくつろげる、バーニー君とチリ魔法院長は、たぶん心が強い。
「賑やかなおぼんになるね。所で、その分離が出来る親戚、俺に紹介してもらう事、できる?お酒から、アルコールを分離したくて。」
ピティエは、一瞬で、硬い表情になり、ふるふる、と首を振った。
「その家の者が、竜樹様に紹介してもらえ、と下心満載で送ってよこした親戚なんです。」
ピティエの、正直で信頼できる性格を、竜樹はやっぱり、可愛いな、と思って微笑んだ。
今のお父様お母様への手紙は、スラスラ書けていたエフォールも。新しいお父様へは、まず名前も知らない所から、探り探りで書くしかなく、ジェム達や王子達に、どう思う?なんて聞きつつ、考え考え書いていた。
『新しいお父様へ
はじめまして、私はエフォールと言います。
今日は、会ったばっかりで、無視してジェム達の寮に遊びにきちゃって、ごめんなさい。急に会ったから、びっくりしました。気持ちがグチャグチャになって、どうしたらいいか、分からなくなったのです。
新しいお父様は、コリエさんとけっこんしてないの?どうして今まで、会ってくれなかったの?
お仕事は何をしてますか?働いてる?
新しいお父様の事、何も知らなくて、私はもっと知りたいな、って思いました。
育ててくれた、今のお父様とお母様が大好きだから、離れたくないです。新しいお父様は、私を今の家から連れてっちゃおうとしてますか?
おねがいします。私を、今の家族から、連れていっちゃわないでほしいです。家族と別れたくない。
赤ちゃんを間違えて取り違えて育ててしまった、2つの家の話を、竜樹様から聞きました。育てた子供も可愛いし、血のつながった子も可愛い。2つの家がどうしたかというと、隣同士の家に引っ越して、自由に行き来できるようにしたそうです。
引っ越しまでしなくても良いけど、そんなふうに、仲良くできたらいいのにな、って思いました。
今度、パンセのお家で、私に会いにきてくれませんか?
お話しがしたいです。まだ上手に歩けないから、外で会うのは、大変なのです。
私はお金も持ってないし、竜樹様へ紹介もできないけど、それでも良いですか?
私の事、新しいお父様、好き?
かぎ針編みで編んだ、ぬいぐるみや、お花のブローチは作れるし、フリーマーケットでも売ったりしたけど、まだお店をもてるほどではないです。将来、お兄様のお手伝いをしながら、小さな編み物のお店をしたいな、って思ってます。今の家族も、良いね!って言ってくれてる。
編み物大好きなのです。
友達のフェリスィテは、可愛いもの好きの仲間なのだけど、フェリスィテが将来なりたい騎士の、見習い達の仲間からは、時々からかわれたりするって。でも、好きなものを、あきらめない、って言ってます。私も、あきらめない、が良いと思います。
新しいお父様は、編み物、応援してくれますか?
コリエさんとも、お手紙してみたいな、って思っています。
もし良かったら、お返事ください。
お手紙、また私も書きます。
本当は、少し、新しいお父様と知り合うの、怖いって気持ちもあります。
友達のジェム達が、街で再婚したお姉さんと連れごのお家の話を教えてくれて、うまくいく家もあれば、叩いたり、凄く働かせたりして、うまくいかない家もある、って。
新しいお父様は、そんな人じゃ、ないよね?
怖いけど、知りたい。
新しいお父様が、良い人だったら良いな、って、思ってます。
私にそっくりな、新しいお父様を、少し嬉しいな、って思ったから。
お返事、待ってます。
エフォールより』
出来上がった手紙を、満足そうに眺めて、ジェム達王子達も、ふす!と意気込んで。
「正直に言いたい事が、書けたら、スッキリするよね。」
竜樹が頭を撫でれば、エフォールは、気持ちよさそうに目を閉じて。
「ウン!これ、お父様達に、出してみる!」
とニッコリした。
「じゃあ、クラージュ印のメッセンジャーを頼もうか。タカラ、お願いできる?」
はい!と、タカラも事の成り行きを見守っていた者として、嬉しく使いを務めるのだった。
お昼寝組と、だるまさんが転んだを始めた遊び組とがいて、3おばあさまも、昼寝している小っちゃい子の背中をトントンしたり、だるまさんがこ、ろ、ん、だ!ピタッ 止まったり。
エフォールも、試しに予備を置いていた歩行車を使って、だるまさん転んだ仲間で、カタタンと楽しく遊んで。
「リベリュールおばあさま、動いたぁ!」
「むむむ、残念!」
鬼と手を繋いで。
「ピティエ、カフェインレスの玉露、良く作ったね。午前中もらったお茶、味も遜色なくて、美味しかったよ。」
竜樹が褒めると、本来のジェム達に持ってきたお茶を、淹れる準備に、魔道具ケトルでお湯沸かしをしているピティエは、ふふ、良かった!と笑った。
竜樹が、湯が沸いたらピーッと笛が鳴るケトルの話をしていて、それは良い、と作ってもらったのだ。午前中は、慌ててしまい、ラフィネに普通に沸かしてもらった。
「昨日、ウチに来た親戚が、分離が使える、っていうから、やってもらったんです。朝一番に鑑定してもらって、安全で美味しいお茶が、出来ました!」
王子殿下達には、眠れなくてゴロゴロの、辛い夜を過ごさせてしまったけれど。妊婦さんや眠れてない人なんかに、お茶を提供する前に分かって、良かったです。これからも、口に入るものには、気をつけて提供したいです。
ピティエは、しみじみ頷きつつ、コンコルドと協力して、また低いテーブルを出した。
オヤツは、干菓子じゃなくて、今度は黄身しぐれを用意。お皿も小さな、黄身しぐれの色を引き立てる、漆黒の陶器。
干菓子は、竜樹が、漆塗りの小さな入れ物に入れて、売ったら良いんじゃない?とピティエにアイデアを示唆したものである。試しに出来たものを持ってきていたので、皆に味わってもらえた。
干菓子は教会の子供達が売るお菓子としては、上品すぎるし、数も作れないだろうから、ちょっと良いお茶が飲めるピティエのお店で、食べてもらいつつ売ったら、買ってもらえそうかも?となったのだ。綺麗な入れ物とセットだから、ちょっとした贈り物にも使える。
もぞもぞ、と昼寝の子達も起きだす頃。
「おーい、皆ー。おやつとお茶の時間だよ~。」
「「「は~い!!!」」」
「わ、きれいなおかし。」
「黄身しぐれ、って言います。」
菓子切りは、黒文字もどき。鑑定のお仕事の彼は、本当に良い仕事をする。竜樹から貰った、タブレットに植物図鑑、キノコ図鑑、役にたつ植物、という電子書籍などを見ては、参考にして使えるものをどんどこ発見している。
森の中を、護衛の冒険者達とガシガシ歩いては、鑑定しまくるのが、楽しくて仕方ないそうだ。
クラージュ商会の葉っぱ部門も、ホクホクである。
オール先王達も、御相伴に預かり。
そして、まだハルサ王様とマルグリット王妃様もいるのだった。
「だって、お休みなんですもの。子供達と一緒にいたいわ。」
「おぼん休み、だよなぁ。」
お昼寝から覚めて、目をショボショボさせ、瞼を擦るニリヤを抱き、クッションに身体をもたせかけて、顔を見合わせ、頷き合う夫婦である。
つくづく、余分にお菓子を持ってきて良かったピティエである。ちなみに、沢山ものが入る、例の、4次元ポケット的な魔道具カバンを、コンコルドが持って道具とお菓子、お茶を入れてきたのだ。流石にそのまま手持ちでは、これだけの道具やお菓子を持って来られない。
竜樹にも用意されて持っているが、それはタカラが代わりに持って何でも出してくれるし、貰った花なども、しまっておいてくれる。
転移の魔法陣で輸入や輸出、運送をする際にも、役立ちそうなアイテムである。
そして、中に入ってる物リストを他人に見えるようにも表示する事ができるので、荷物の検査時に中身を取り出さなくても大丈夫。
「この、一本の木の楊枝で、切ったり刺したりして、上品にお菓子を食べるのが、お茶のやり方だよ。皆、おじょうひん、出来るかなぁ~?」
「「「できるぅ~!!」」」
すました顔して、テーブルの上の黄身しぐれを切っては、食べる子供達に、大人はニコッとしつつ、お茶と甘味のマリアージュを楽しんだ。
ぽろっとお皿に崩れて、こぼれたカケラを、短い指で摘んで食べる子供達は、ご愛嬌。手も洗ったから、良いでしょう。
「美味しいよ!ピティエ様!」
「おいし~い!あんこ、入ってる!」
「おちゃも、合うね!」
「緑のお茶、きれ~い。」
「ふふ、良かった!私のお店で出す、お菓子とお茶だよ。こんな感じ、って、分かってくれた?」
ピティエがニコニコ、自分もお茶を啜って、黄身しぐれの味を確かめて。
「うん!美味しいし、きれいだし、おしゃれな喫茶室なんだな、って伝わった!」
「大人になったら、絶対いくもん。」
ねー!と仲良し。
「これ、ねむくならないのがない、お茶なのね?」
「ねむくなるのがない、のがない?えーと、眠れなくならない!」
「カフェインレス、なんだって。」
王子達も、眠れなくなった事など全然気にせず。まあその時は竜樹がよいよいし、お話しをしてやり、それも楽しかったようなので、嫌な気持ちがしていないのだった。
ほうほう。
うまうまお菓子を食べてゆっくりしていた、しかしここで、ピン、と閃くバーニー君。
「それ、分離した後の、カフェインという物質は、もしかして、眠っちゃいけないお仕事なんかの時に、役立ちませんか?」
「う~ん、バーニー君、きみがカフェインを使ったら、仕事しすぎて身体をボロボロにする未来しか予測できないけど、まあ確かにそういうお薬ですよ、カフェインは。」
普通にお茶なんかに入ってるから、紅茶を飲んで頑張ったり、そういう事してるんじゃない?
「ふむ。用法、容量に注意、という事ですね。何でもそうだけど、便利なものも万能ではなくて、使い方ですよねぇ。所でそのカフェインは、売る気ありますか?」
ピティエに商いを持ちかけるバーニー君。彼は、何でも実現の名に恥じず、未完成で関わったものを、形にせずにはいられないのだった。
だから使われてしまうのだよ、バーニー君。という哀れみの目のオール先王とハルサ王様に、含み笑いを受けつつ、こういう人、壊れないように、危ない所にツッコミすぎないように守りつつ、ちゃんと休ませて、そして気持ち良く働かせてあげないとな、と竜樹は思った。
その辺、チリ魔法院長が睨みをきかせているらしい。時に大人のやり取り、駆け引き、常識をぶっ壊してでも剛力で守る、のだそうだ。ミラン情報。
だから魔法院長をやって、めちゃくちゃでも、心の底では部下に慕われている、との事。ぶっちゃけ長なんてのは、気持ち良く働かせてくれて、大事な所の責任をとってくれれば良いのである。
チリ魔法院長は、その上で発明丸投げ案件があるが。
カフェインを鑑定で詳しく調べて、その上で薬局にて、薬師からの指導を受けた者にしか売らない、という確約をつけつつ、ピティエとの商談を済ませて、バーニー君は黄身しぐれを美味しくパクつく。今日はチリと一緒に、寮で美味しいご飯をいただき、ゆっくりしようという算段のようだ。王様達が一緒でもくつろげる、バーニー君とチリ魔法院長は、たぶん心が強い。
「賑やかなおぼんになるね。所で、その分離が出来る親戚、俺に紹介してもらう事、できる?お酒から、アルコールを分離したくて。」
ピティエは、一瞬で、硬い表情になり、ふるふる、と首を振った。
「その家の者が、竜樹様に紹介してもらえ、と下心満載で送ってよこした親戚なんです。」
ピティエの、正直で信頼できる性格を、竜樹はやっぱり、可愛いな、と思って微笑んだ。
34
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる