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本編
13日 パンセ家の皆とジャンドル
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一方、こちら、エフォールが出かけた後のパンセ伯爵家では。
どよ~ん、と効果音がつきそうな位、頭を抱えてソファにずっしり座り込み落ち込んだ、エフォールの血の繋がった新しい父、ベルジェ伯爵家ジャンドルが、まだ応接室にいた。
現在は、エフォールの育ての父母、エスポワール父とリオン母、そして、エフォールの今後の事を心配して、絶対お話聞かせてもらう!と、姉マルムラードと、兄アクシオンも一緒にいる。
皆、ソファに座り、お口をムンと一文字に、新たに父宣言したジャンドルを囲んでいる。
「や、やっぱり、唐突すぎたかな•••。」
暗いジャンドルの呟きに。
「ええ。唐突も唐突。エフォールは、頭の良い子だから、そして心も優しい子だから、ゆっくり話してやれば、多分貴方ともお話ししてくれたと思いますけど。」
リオン母が言えば。
「急にお父様だよ、なんて、びっくりするに決まってます!」
姉マルムラードも、追い討ちをかける。
兄アクシオンは、不思議そうに。
「それにしても、何で今まで、こちらに声をかけて来なかったんですか?エフォールの足が、治るとなってきた今になって。今までは厄介者の子供だったけど、竜樹様とも仲良しになったし、使えるかもって声かけてきた、って俺なんかは、邪推しちゃうんだけど。」
もしそうなら、2度とエフォールに会わせないし。兄アクシオンは、可愛い弟エフォールを守る!嫡男としても家族としても!フン!と意気込んだ。
「まさか!まさかそんな事は、ありませんよ!私だってエフォール君の事を知ってたら、直ぐにこちらへ出向きましたよ!父と母が、エフォール君がこちらで養子になり育てて貰っている事を、秘密にしているだなんて。コリエも、何故私に言ってくれなかったのか。あの、その、凄く可愛がって育てて下さった事、有り難く、感謝しています。」
ペコリ、と目をギュッと瞑り、頭を下げるジャンドルは、悪い奴では無さそうであるが。
「コリエさんも、貴方を信用しきれなかった、という事でしょう。まあ、貴方を、というよりは、貴方を囲む環境を、なのでしょうが。エフォールが貴方の家に引き取られたとしたら、きっとご両親は貴方に新しくお嫁さんをあてがったでしょうし、その時になれば婚外子であるエフォールが、しかも障がいを抱えて喘息もあるような子が、不遇な扱いをされてしまうかも。そんな賭けは出来ない、と考えたコリエさんは、やはり賢い方だと思いますわよ。」
ウンウン、とリオン母は頷く。
それなら、可愛がってくれる、最初から養子だと分かっていて、しかも健康な子供より手間のかかる子を、それでもと引き取ってくれたパンセ伯爵家に任せる、と決めたのも頷ける。
当時、リオン母のお腹にいた子が、残念ながら死産になってしまったので。そして今後も多分子供は見込めない、と医者にも言われて、落ち込んでいたエスポワール父は、コリエの事を、夜の街での洒脱な遊び好きな友達から聞いて、これは運命では?と、早速生まれたばかりの赤ん坊を貰い受け、しょんぼりした雰囲気漂う家に、連れて帰ってきたのだ。
リオン母は、赤ん坊を引き取る事は相談されたけれど、障がいもあると聞いていたので、大丈夫かな、と少し不安だった。しかし、小さな籠に入れられ、宝物のようにエスポワールが運んできた小さな赤ん坊を、ひゃー、と何とも言えない喜びの気持ちで抱いた。自分の全神経が、赤ちゃんに向かっているのが分かった。
とにかくエフォールを、小さな、そして生まれて直ぐに障がいを負ったエフォールを、抱いた瞬間から、愛おしく思った。ふにゃ、ふにゃ、と泣くと、母乳が滲み出てきて。含ませると、一生懸命に吸う。この赤ちゃんを、きっと幸せにする。生きられなかったあの子が、いてくれた意味はあったんだ、と、リオンは涙した。
エフォール1人がいるといないとでは、パンセ家の、皆の、明るさが違った。エフォールは幸せをもたらす子で、今やエフォールのいないパンセ家など、考えられない。
「そもそも、コリエさんとは、お話ししてるの?」
姉マルムラードはツッコミ。
「コリエとは、花街に行く事になった当初、話し合っていて•••。借金を私も返すのにお金を貯めるから、そしてそれは直ぐには無理だから、コリエが花街で働くのは、凄く嫌だったけど、現実的な解決策として、お互いの場所で頑張ろう、って。それ以来、手紙を書いて渡してもらっても返事はなくて、でも、私、ちゃんとお金を貯めて、コリエのいるお店にも繋いで、毎月借金を返しながら準備はしてて!」
「ご両親は、コリエさんとの事は、納得がいってない訳でしょう?」
むぐ。
口籠るジャンドルなのである。
「確かに、両親は、コリエとの事を反対しています。それに、今まで信用されずに存在まで伝えられなかった、至らない父親なのは、分かっていますーーー。でも、昨日、魂迎えで出会った、私にそっくりなエフォール君の事、知ってしまったら私は、私は。」
感情が振り切れて、パンセ家に訪問伺いもしないまま、唐突に会いに来てしまったのである。
あの、キョトンとした、口がフニュ、と山形になった表情。
顔はジャンドルにそっくりだけど、あの表情は、コリエが時折見せた、愛おしい表情にそっくりだった。
「全てはエフォール次第です。あの子の気持ちが、最優先です!あの子が貴方と交流を持ちたい気持ちがあれば、今後も会わせるのに否やはありません。でも、嫌だと、会いたくない、と言えば、私達は、全力でエフォールを守ります!勿論、エフォールを大事にしてくれる確証もない貴方のお家に、エフォールはやりませんからね!!」
フン!と腕組みして、リオン母はピシッと言った。
「会いたい、って言って欲しいぃぃ。」
しゅん、と落ち込みきったジャンドルは。「今度は、お伺い立ててから、来ます。でも、でも、諦めたくありません!
あの子との交流を。」
そう言って、しおしおと帰って行った。
竜樹は、大きな紙を出して、エフォールに示した。
「さあ、ここに、まず新しいお父様、今のお父様、お母様、って、丸で囲んで、3つ書いてごらん?」
? 便箋などでなくて?とエフォールは不思議に思ったけれど、言われた通りに、紙の真ん中に書いた。
「さあ、そしたら、この丸から線を引っ張って、新しいお父様に思ってる事、今のお父様お母様に思ってる事を、何でもいいから、そうだね、例えば、今のお父様はお酒を飲むとどうなるかな、とか、そんな普段思ってる事でいい、書いていってごらん。」
これは、考えを整理したり、広げたりする方法の一つだよ。
竜樹が言うので、ふむ、とエフォールは、一つ一つ、考えられる色々を、丸の側に書き足していった。
◯エスポワールお父様
お酒好き。でもあんまり沢山は飲まない。一回だけ、酔って帰ってきて、お母様に怒られた事ある。
通りすがりにエフォールを良く撫でてくれる。
お仕事に一生懸命。領地の皆に頼りにされてる。尊敬してる。
落ち着いてる。穏やか。
割と泣く。感動屋さん。
そんなにお話し沢山する方じゃないけど、必要な時は、きちんと、ゆっくり、分かりやすくお話しする所、凄いと思う。
一緒にいると、安心する。
お母様のことが、大好き。
仕事の意見を真剣にお母様に聞いて、取り入れてる。
結婚記念日を忘れない。
お兄様には、ちょっと雑な扱いをするけど、男同士のわかり合い、って感じで、少し羨ましい。
お姉様がお嫁に行くの、寂しそう。
いつでも遊びに来なさいね、と言って、お母様に呆れられてる。
白髪を気にしてるけど、染めるのは何か違う気がするって言って、そのままにしてる。
お母様は、渋くてカッコいいわよ、って言ってる。
私は、お父様、大好き。
新しいお父様がいても、エスポワールお父様と、離れたくないーーー。
沢山書き出して。
◯リオンお母様
お酒はたしなむていど。
甘いお酒がお好き。
いつも、りはびりする私を励ましてくれる。
私が歩けるようになる事を、人一倍喜んで待っててくれる。
一緒にいると、すごく安心する。
イタズラするお兄様には少し厳しいけど、ひょうきんな所に笑って、結局ゆるしちゃう。
お姉様とは、美味しいお菓子を食べ比べしてる。仲良しで、今度はあのお店に、とか良く話してる。
きれいなのに、あまりごてごて着飾るのは好きじゃなくて、シンプルなものがお好き。
私が編んで贈った、花のブーケブローチを、とても気に入って、良くつけている。
お茶会とかするけど、仲良しで上品で楽しいご婦人方と定期的に、みたい。
お話聞き上手だけど、あまりにも愚痴っぽい人の話を聞くのは苦手。ニコニコしてるけど、他の事を考えて黙ってるんだって。
あまり派手な方とは会わない。
社交は、大変よー、って言ってる。あまりお好きじゃないかも。
お家の事を切り盛りしたり、お父様の仕事の話を聞いて、意見したりする。
お父様と仲良し。時々、手を繋いで、ほっぺに、ちゅってしてる。
散歩や、運動大好き。一角馬に乗れる。時々乗りすぎて執事に怒られている。
お母様、大好き。
新しいお父様がいても、リオンお母様と、離れたくない。
そして。
◯新しいお父様
私とそっくり。
急にお父様って聞いてびっくりした。
何で、今まで、お父様って言わなかったんだろう?
私を、今の家族から、連れて行っちゃう気持ちしてるのかな。
それはやだな。
圧倒的に、新しいお父様についての情報が少ない。
「新しいお父様について、少ししか知らないんだねぇ。」
「はい、竜樹様。会ったばっかりで、何にも知らない。」
ウンウン、と竜樹も3王子も頷く。
「これから、知りたいと、思うかい?」
エフォールはーーーー。
その日、エフォールは、寮に泊まる、と竜樹が差配した、クラージュ印のメッセンジャーから伝言があった。
その際、エフォールが、エスポワール父とリオン母に宛てた、一通の手紙と。新しい父、ジャンドルに宛てて書いた、もう一通の手紙。そしてエフォールが書いた、気持ちを整理するために作った、大きな紙が渡された。それは、エフォール付きの従者が、満面の笑顔で、是非是非、お父様とお母様に、エフォール様が何を考えたか、伝えるためにその紙もお渡しください、と推したからだ。
絶対、喜ぶから!と従者は胸を叩いて請け負った。エフォール様が、何を考えているか、お父様とお母様は、知りたいのです!と。
先ずは大きな紙を、パンセ家の皆は広げてみた。
一つ一つ、指を指して読み上げていく内に、皆ほんわり温かい気持ちになり。感動屋のエスポワール父は涙を滲ませ。社交が苦手なの、バレてたわ、とリオン母は、くすくすと笑った。姉と兄は、よく見てるんだなぁ、と感心して、うふふ、と笑い合った。紙の端には、マルムラードお姉様、アクシオンお兄様、と丸が足されて、そこにも幾つものエフォールの思いが書かれていて。
そうだ。血は繋がらなくても、私たちには、一緒に過ごしてきた、確かな時間があるのだ。不安なんて、なにものぞ!
そして手紙を開く。
姉マルムラードと、兄アクシオンも、どれどれ、と覗き込む。
『お父様、お母様へ
私は、今日、新しいお父様と会って、気持ちがこんらんして、グチャグチャになってしまいました。
新しいお父様と、私、顔が似てるな、て少し嬉しかった。お兄様とお父様が似てるのが、ちょっと羨ましい、って思ってたから。
でも、その時、お父様とお母様が、悲しい顔をしていて、私、いけなかったかな、って、苦しくなったのです。
つい、寮に遊びにいく、って言っちゃって、竜樹様に相談したら、今の気持ちを、正直にお手紙書いてみよう、って誘われました。
大きな紙に、新しいお父様と、今のお父様お母様を丸で囲って書いて、思ってる事を沢山書いてみました。そうしたら、今のお父様お母様のことは、沢山書けるのに、新しいお父様の事は、私、ほとんど知らなかった。
知ってみたい?って竜樹様が言って、私は、知ってみたい、って思いました。
でも、今のお父様お母様と、お姉様とお兄様と、家族と離れるのは、いやです。ずっと一緒にいたい。
新しいお父様ができても、私は、お父様とお母様の子供でいても、良いですか?大好きだから、お願いします。
竜樹様は、昔、前の世界のテレビ番組で、こんなのを見た事があるよ、って教えてくれました。
竜樹様の世界では、赤ちゃんを産む時、お医者に皆行って産むんだって。お産専門のお医者があって、赤ちゃんもお母様も、沢山いて。
その事件では、赤ん坊の頃に、間違えて、交換されてお母様に渡された子供が、いたんだって。子供が大きくなってきて、似てないな、って不思議に思って、その事件が発覚したんだって。竜樹様の世界では、その子がその親の子供かどうか、確かめられる方法があるそうです。鑑定の魔法?って聞いたら、魔法じゃないんだって。不思議。
その2つの家では、今まで育ててきた、血のつながらない子供も可愛いし、でも、本当の子供にも気持ちがあるし、2人の取り違えられた子供自身も、今の家族と引き離されたくないよ、ってすごく悩んだって。
そうして、どうしたか、っていうと、お引越しして、隣同士のお家に住んで、2つのお家を自由に、行き来できるようにしたんだ、って。
私は、そのお話を聞いて、良いな、って思いました。気持ちが、痛いけど、どっちか片方に行く、って決めるんじゃなくて、真ん中で、悩みを、解決する方法が、あるなって、思って。
お父様とお母様に、どうかお願いしたいです。
まだ新しいお父様の事は良く知らないけど、もし新しいお父様が、良い人だったら。引っ越しまでしなくてもいいけど、そんなふうに、新しいお父様と、コリエさんとも、お手紙したり、時々会ってお話したり、怖いけど、してみたい。
魂迎えの時、ご先祖様の魂が、私にも寄ってきてくれて、本当に嬉しかった。
新しいお父様と仲良くしたら、お父様とお母様、悲しい顔、しちゃうかな。
それは、私も嫌な気がします。
お父様、お母様、悲しくさせてたら、ごめんなさい。
でも、私の正直な気持ちです。
まずは、思った事を伝える、ってしてみました。
明日は、家に帰ります。
今日は、少し王子殿下達やジェム達、ピティエ様と遊んで、話をして、落ち着きたいです。
元気なエフォールになって、帰ってくるから、待っててね。
エフォールより』
リオン母は。
「エフォールの気持ちは、良く分かったわ。私達が不安でいると、あの子も辛いのね。ジャンドル様が、あの子にどんな気持ちで、どこまで覚悟があって交流したいかは分からないけど、母として、応援してあげたいわ。」
キリッと真剣に、皆に目配せする。
「勿論、エフォールを悲しませるような事があったら、ただじゃおかないけど。」
姉マルムラードも、ニコーと笑顔で。
「私たち、エフォールのためなら、引っ越しするくらいの覚悟で、ジャンドル様と友好的にするわよ。見守るわ!」
ウンウン、ウン。
兄アクシオンも、父エスポワールも頷き、エフォールに良いように、と誓いをたてた。
そうして、ジャンドル宛の手紙を、絶対に本人に手渡すように!と、執事を使って正式に使いを出した。
ジャンドルの家では、手紙をわざわざパンセ家の執事が正式に渡してきたので、父と母が受け取って隠してしまう事はできず、難しい顔をしながらも。ジャンドルは、大喜びで手紙を受け取り、読んで、カクリ、と膝を折って手紙を拝んだ。神よ!!この幸運を感謝します!!
「私と、お話してみたい、って!お手紙も、やり取りしてみたい、私を知りたい、って!!」
ゆっくり、知り合いたい。
勿論、今の家族と、離れたくない。
という気持ちは、尊重する。
ジャンドルが行けば良いのだ。それだけの事だ。
それに、今まで可愛がって育てた、一番大変だった所を背負った人達から、奪うなんて、できようはずもない。
確かに、この家では、エフォールは大切にされないだろうし。
ジャンドルは、そこそこ現実的な男なので、それは重々に承知した。
後はコリエが、いてくれれば。
「実家出て、本当にパンセ家の近くに引っ越ししちゃおうかな!」
るふるふと、ご機嫌なジャンドル、息子を窺って、ベルジェ伯爵家の父と母は、頭が痛い様子を隠せなかった。
息子が、こうと決めたら、絶対に諦めないのを、知っている。
それにしても、花街の娘が、嫁かーーー。きっと、周り中の貴族から、好奇の目で見られるに違いない。
いや、いや、まだ望みはあるかも。
ある、か?
ふーっ、とため息を吐くこちらの両親は、コリエとエフォールの為なら、家など簡単に捨てそうな息子に、胃がキリキリした。
折角、エフォールの事を隠していたのに。テレビにエフォールが出た時も、息子は仕事で騎士団で働いている時間で、見なくて済んでホッとしたのに。
コリエの借金を返す為に、騎士団の給料だけでなく、稼げる副業も持った息子の手綱は、誰にも握れない。
そしてまたその副業が、貴族の男子ならぬ。
「高級ぬいぐるみ作家の、エルドラド、だなんて。」
男子なのに、可愛いもの作家なんて!
どよ~ん、と効果音がつきそうな位、頭を抱えてソファにずっしり座り込み落ち込んだ、エフォールの血の繋がった新しい父、ベルジェ伯爵家ジャンドルが、まだ応接室にいた。
現在は、エフォールの育ての父母、エスポワール父とリオン母、そして、エフォールの今後の事を心配して、絶対お話聞かせてもらう!と、姉マルムラードと、兄アクシオンも一緒にいる。
皆、ソファに座り、お口をムンと一文字に、新たに父宣言したジャンドルを囲んでいる。
「や、やっぱり、唐突すぎたかな•••。」
暗いジャンドルの呟きに。
「ええ。唐突も唐突。エフォールは、頭の良い子だから、そして心も優しい子だから、ゆっくり話してやれば、多分貴方ともお話ししてくれたと思いますけど。」
リオン母が言えば。
「急にお父様だよ、なんて、びっくりするに決まってます!」
姉マルムラードも、追い討ちをかける。
兄アクシオンは、不思議そうに。
「それにしても、何で今まで、こちらに声をかけて来なかったんですか?エフォールの足が、治るとなってきた今になって。今までは厄介者の子供だったけど、竜樹様とも仲良しになったし、使えるかもって声かけてきた、って俺なんかは、邪推しちゃうんだけど。」
もしそうなら、2度とエフォールに会わせないし。兄アクシオンは、可愛い弟エフォールを守る!嫡男としても家族としても!フン!と意気込んだ。
「まさか!まさかそんな事は、ありませんよ!私だってエフォール君の事を知ってたら、直ぐにこちらへ出向きましたよ!父と母が、エフォール君がこちらで養子になり育てて貰っている事を、秘密にしているだなんて。コリエも、何故私に言ってくれなかったのか。あの、その、凄く可愛がって育てて下さった事、有り難く、感謝しています。」
ペコリ、と目をギュッと瞑り、頭を下げるジャンドルは、悪い奴では無さそうであるが。
「コリエさんも、貴方を信用しきれなかった、という事でしょう。まあ、貴方を、というよりは、貴方を囲む環境を、なのでしょうが。エフォールが貴方の家に引き取られたとしたら、きっとご両親は貴方に新しくお嫁さんをあてがったでしょうし、その時になれば婚外子であるエフォールが、しかも障がいを抱えて喘息もあるような子が、不遇な扱いをされてしまうかも。そんな賭けは出来ない、と考えたコリエさんは、やはり賢い方だと思いますわよ。」
ウンウン、とリオン母は頷く。
それなら、可愛がってくれる、最初から養子だと分かっていて、しかも健康な子供より手間のかかる子を、それでもと引き取ってくれたパンセ伯爵家に任せる、と決めたのも頷ける。
当時、リオン母のお腹にいた子が、残念ながら死産になってしまったので。そして今後も多分子供は見込めない、と医者にも言われて、落ち込んでいたエスポワール父は、コリエの事を、夜の街での洒脱な遊び好きな友達から聞いて、これは運命では?と、早速生まれたばかりの赤ん坊を貰い受け、しょんぼりした雰囲気漂う家に、連れて帰ってきたのだ。
リオン母は、赤ん坊を引き取る事は相談されたけれど、障がいもあると聞いていたので、大丈夫かな、と少し不安だった。しかし、小さな籠に入れられ、宝物のようにエスポワールが運んできた小さな赤ん坊を、ひゃー、と何とも言えない喜びの気持ちで抱いた。自分の全神経が、赤ちゃんに向かっているのが分かった。
とにかくエフォールを、小さな、そして生まれて直ぐに障がいを負ったエフォールを、抱いた瞬間から、愛おしく思った。ふにゃ、ふにゃ、と泣くと、母乳が滲み出てきて。含ませると、一生懸命に吸う。この赤ちゃんを、きっと幸せにする。生きられなかったあの子が、いてくれた意味はあったんだ、と、リオンは涙した。
エフォール1人がいるといないとでは、パンセ家の、皆の、明るさが違った。エフォールは幸せをもたらす子で、今やエフォールのいないパンセ家など、考えられない。
「そもそも、コリエさんとは、お話ししてるの?」
姉マルムラードはツッコミ。
「コリエとは、花街に行く事になった当初、話し合っていて•••。借金を私も返すのにお金を貯めるから、そしてそれは直ぐには無理だから、コリエが花街で働くのは、凄く嫌だったけど、現実的な解決策として、お互いの場所で頑張ろう、って。それ以来、手紙を書いて渡してもらっても返事はなくて、でも、私、ちゃんとお金を貯めて、コリエのいるお店にも繋いで、毎月借金を返しながら準備はしてて!」
「ご両親は、コリエさんとの事は、納得がいってない訳でしょう?」
むぐ。
口籠るジャンドルなのである。
「確かに、両親は、コリエとの事を反対しています。それに、今まで信用されずに存在まで伝えられなかった、至らない父親なのは、分かっていますーーー。でも、昨日、魂迎えで出会った、私にそっくりなエフォール君の事、知ってしまったら私は、私は。」
感情が振り切れて、パンセ家に訪問伺いもしないまま、唐突に会いに来てしまったのである。
あの、キョトンとした、口がフニュ、と山形になった表情。
顔はジャンドルにそっくりだけど、あの表情は、コリエが時折見せた、愛おしい表情にそっくりだった。
「全てはエフォール次第です。あの子の気持ちが、最優先です!あの子が貴方と交流を持ちたい気持ちがあれば、今後も会わせるのに否やはありません。でも、嫌だと、会いたくない、と言えば、私達は、全力でエフォールを守ります!勿論、エフォールを大事にしてくれる確証もない貴方のお家に、エフォールはやりませんからね!!」
フン!と腕組みして、リオン母はピシッと言った。
「会いたい、って言って欲しいぃぃ。」
しゅん、と落ち込みきったジャンドルは。「今度は、お伺い立ててから、来ます。でも、でも、諦めたくありません!
あの子との交流を。」
そう言って、しおしおと帰って行った。
竜樹は、大きな紙を出して、エフォールに示した。
「さあ、ここに、まず新しいお父様、今のお父様、お母様、って、丸で囲んで、3つ書いてごらん?」
? 便箋などでなくて?とエフォールは不思議に思ったけれど、言われた通りに、紙の真ん中に書いた。
「さあ、そしたら、この丸から線を引っ張って、新しいお父様に思ってる事、今のお父様お母様に思ってる事を、何でもいいから、そうだね、例えば、今のお父様はお酒を飲むとどうなるかな、とか、そんな普段思ってる事でいい、書いていってごらん。」
これは、考えを整理したり、広げたりする方法の一つだよ。
竜樹が言うので、ふむ、とエフォールは、一つ一つ、考えられる色々を、丸の側に書き足していった。
◯エスポワールお父様
お酒好き。でもあんまり沢山は飲まない。一回だけ、酔って帰ってきて、お母様に怒られた事ある。
通りすがりにエフォールを良く撫でてくれる。
お仕事に一生懸命。領地の皆に頼りにされてる。尊敬してる。
落ち着いてる。穏やか。
割と泣く。感動屋さん。
そんなにお話し沢山する方じゃないけど、必要な時は、きちんと、ゆっくり、分かりやすくお話しする所、凄いと思う。
一緒にいると、安心する。
お母様のことが、大好き。
仕事の意見を真剣にお母様に聞いて、取り入れてる。
結婚記念日を忘れない。
お兄様には、ちょっと雑な扱いをするけど、男同士のわかり合い、って感じで、少し羨ましい。
お姉様がお嫁に行くの、寂しそう。
いつでも遊びに来なさいね、と言って、お母様に呆れられてる。
白髪を気にしてるけど、染めるのは何か違う気がするって言って、そのままにしてる。
お母様は、渋くてカッコいいわよ、って言ってる。
私は、お父様、大好き。
新しいお父様がいても、エスポワールお父様と、離れたくないーーー。
沢山書き出して。
◯リオンお母様
お酒はたしなむていど。
甘いお酒がお好き。
いつも、りはびりする私を励ましてくれる。
私が歩けるようになる事を、人一倍喜んで待っててくれる。
一緒にいると、すごく安心する。
イタズラするお兄様には少し厳しいけど、ひょうきんな所に笑って、結局ゆるしちゃう。
お姉様とは、美味しいお菓子を食べ比べしてる。仲良しで、今度はあのお店に、とか良く話してる。
きれいなのに、あまりごてごて着飾るのは好きじゃなくて、シンプルなものがお好き。
私が編んで贈った、花のブーケブローチを、とても気に入って、良くつけている。
お茶会とかするけど、仲良しで上品で楽しいご婦人方と定期的に、みたい。
お話聞き上手だけど、あまりにも愚痴っぽい人の話を聞くのは苦手。ニコニコしてるけど、他の事を考えて黙ってるんだって。
あまり派手な方とは会わない。
社交は、大変よー、って言ってる。あまりお好きじゃないかも。
お家の事を切り盛りしたり、お父様の仕事の話を聞いて、意見したりする。
お父様と仲良し。時々、手を繋いで、ほっぺに、ちゅってしてる。
散歩や、運動大好き。一角馬に乗れる。時々乗りすぎて執事に怒られている。
お母様、大好き。
新しいお父様がいても、リオンお母様と、離れたくない。
そして。
◯新しいお父様
私とそっくり。
急にお父様って聞いてびっくりした。
何で、今まで、お父様って言わなかったんだろう?
私を、今の家族から、連れて行っちゃう気持ちしてるのかな。
それはやだな。
圧倒的に、新しいお父様についての情報が少ない。
「新しいお父様について、少ししか知らないんだねぇ。」
「はい、竜樹様。会ったばっかりで、何にも知らない。」
ウンウン、と竜樹も3王子も頷く。
「これから、知りたいと、思うかい?」
エフォールはーーーー。
その日、エフォールは、寮に泊まる、と竜樹が差配した、クラージュ印のメッセンジャーから伝言があった。
その際、エフォールが、エスポワール父とリオン母に宛てた、一通の手紙と。新しい父、ジャンドルに宛てて書いた、もう一通の手紙。そしてエフォールが書いた、気持ちを整理するために作った、大きな紙が渡された。それは、エフォール付きの従者が、満面の笑顔で、是非是非、お父様とお母様に、エフォール様が何を考えたか、伝えるためにその紙もお渡しください、と推したからだ。
絶対、喜ぶから!と従者は胸を叩いて請け負った。エフォール様が、何を考えているか、お父様とお母様は、知りたいのです!と。
先ずは大きな紙を、パンセ家の皆は広げてみた。
一つ一つ、指を指して読み上げていく内に、皆ほんわり温かい気持ちになり。感動屋のエスポワール父は涙を滲ませ。社交が苦手なの、バレてたわ、とリオン母は、くすくすと笑った。姉と兄は、よく見てるんだなぁ、と感心して、うふふ、と笑い合った。紙の端には、マルムラードお姉様、アクシオンお兄様、と丸が足されて、そこにも幾つものエフォールの思いが書かれていて。
そうだ。血は繋がらなくても、私たちには、一緒に過ごしてきた、確かな時間があるのだ。不安なんて、なにものぞ!
そして手紙を開く。
姉マルムラードと、兄アクシオンも、どれどれ、と覗き込む。
『お父様、お母様へ
私は、今日、新しいお父様と会って、気持ちがこんらんして、グチャグチャになってしまいました。
新しいお父様と、私、顔が似てるな、て少し嬉しかった。お兄様とお父様が似てるのが、ちょっと羨ましい、って思ってたから。
でも、その時、お父様とお母様が、悲しい顔をしていて、私、いけなかったかな、って、苦しくなったのです。
つい、寮に遊びにいく、って言っちゃって、竜樹様に相談したら、今の気持ちを、正直にお手紙書いてみよう、って誘われました。
大きな紙に、新しいお父様と、今のお父様お母様を丸で囲って書いて、思ってる事を沢山書いてみました。そうしたら、今のお父様お母様のことは、沢山書けるのに、新しいお父様の事は、私、ほとんど知らなかった。
知ってみたい?って竜樹様が言って、私は、知ってみたい、って思いました。
でも、今のお父様お母様と、お姉様とお兄様と、家族と離れるのは、いやです。ずっと一緒にいたい。
新しいお父様ができても、私は、お父様とお母様の子供でいても、良いですか?大好きだから、お願いします。
竜樹様は、昔、前の世界のテレビ番組で、こんなのを見た事があるよ、って教えてくれました。
竜樹様の世界では、赤ちゃんを産む時、お医者に皆行って産むんだって。お産専門のお医者があって、赤ちゃんもお母様も、沢山いて。
その事件では、赤ん坊の頃に、間違えて、交換されてお母様に渡された子供が、いたんだって。子供が大きくなってきて、似てないな、って不思議に思って、その事件が発覚したんだって。竜樹様の世界では、その子がその親の子供かどうか、確かめられる方法があるそうです。鑑定の魔法?って聞いたら、魔法じゃないんだって。不思議。
その2つの家では、今まで育ててきた、血のつながらない子供も可愛いし、でも、本当の子供にも気持ちがあるし、2人の取り違えられた子供自身も、今の家族と引き離されたくないよ、ってすごく悩んだって。
そうして、どうしたか、っていうと、お引越しして、隣同士のお家に住んで、2つのお家を自由に、行き来できるようにしたんだ、って。
私は、そのお話を聞いて、良いな、って思いました。気持ちが、痛いけど、どっちか片方に行く、って決めるんじゃなくて、真ん中で、悩みを、解決する方法が、あるなって、思って。
お父様とお母様に、どうかお願いしたいです。
まだ新しいお父様の事は良く知らないけど、もし新しいお父様が、良い人だったら。引っ越しまでしなくてもいいけど、そんなふうに、新しいお父様と、コリエさんとも、お手紙したり、時々会ってお話したり、怖いけど、してみたい。
魂迎えの時、ご先祖様の魂が、私にも寄ってきてくれて、本当に嬉しかった。
新しいお父様と仲良くしたら、お父様とお母様、悲しい顔、しちゃうかな。
それは、私も嫌な気がします。
お父様、お母様、悲しくさせてたら、ごめんなさい。
でも、私の正直な気持ちです。
まずは、思った事を伝える、ってしてみました。
明日は、家に帰ります。
今日は、少し王子殿下達やジェム達、ピティエ様と遊んで、話をして、落ち着きたいです。
元気なエフォールになって、帰ってくるから、待っててね。
エフォールより』
リオン母は。
「エフォールの気持ちは、良く分かったわ。私達が不安でいると、あの子も辛いのね。ジャンドル様が、あの子にどんな気持ちで、どこまで覚悟があって交流したいかは分からないけど、母として、応援してあげたいわ。」
キリッと真剣に、皆に目配せする。
「勿論、エフォールを悲しませるような事があったら、ただじゃおかないけど。」
姉マルムラードも、ニコーと笑顔で。
「私たち、エフォールのためなら、引っ越しするくらいの覚悟で、ジャンドル様と友好的にするわよ。見守るわ!」
ウンウン、ウン。
兄アクシオンも、父エスポワールも頷き、エフォールに良いように、と誓いをたてた。
そうして、ジャンドル宛の手紙を、絶対に本人に手渡すように!と、執事を使って正式に使いを出した。
ジャンドルの家では、手紙をわざわざパンセ家の執事が正式に渡してきたので、父と母が受け取って隠してしまう事はできず、難しい顔をしながらも。ジャンドルは、大喜びで手紙を受け取り、読んで、カクリ、と膝を折って手紙を拝んだ。神よ!!この幸運を感謝します!!
「私と、お話してみたい、って!お手紙も、やり取りしてみたい、私を知りたい、って!!」
ゆっくり、知り合いたい。
勿論、今の家族と、離れたくない。
という気持ちは、尊重する。
ジャンドルが行けば良いのだ。それだけの事だ。
それに、今まで可愛がって育てた、一番大変だった所を背負った人達から、奪うなんて、できようはずもない。
確かに、この家では、エフォールは大切にされないだろうし。
ジャンドルは、そこそこ現実的な男なので、それは重々に承知した。
後はコリエが、いてくれれば。
「実家出て、本当にパンセ家の近くに引っ越ししちゃおうかな!」
るふるふと、ご機嫌なジャンドル、息子を窺って、ベルジェ伯爵家の父と母は、頭が痛い様子を隠せなかった。
息子が、こうと決めたら、絶対に諦めないのを、知っている。
それにしても、花街の娘が、嫁かーーー。きっと、周り中の貴族から、好奇の目で見られるに違いない。
いや、いや、まだ望みはあるかも。
ある、か?
ふーっ、とため息を吐くこちらの両親は、コリエとエフォールの為なら、家など簡単に捨てそうな息子に、胃がキリキリした。
折角、エフォールの事を隠していたのに。テレビにエフォールが出た時も、息子は仕事で騎士団で働いている時間で、見なくて済んでホッとしたのに。
コリエの借金を返す為に、騎士団の給料だけでなく、稼げる副業も持った息子の手綱は、誰にも握れない。
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「高級ぬいぐるみ作家の、エルドラド、だなんて。」
男子なのに、可愛いもの作家なんて!
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