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本編
12日夜 竜樹とチリと子供達
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「チリ、転移って魔法ある?」
おぼんのお迎えに向かう途中で、ヒソ、と竜樹がチリに聞いた時。
「ありますよ!前に、犬獣人の魔法使い、シャルムに魔法で呼ばれた事があったじゃないですか。」
全然音量を気にしない声で、チリが応えた。
そう、大きすぎる魔法で、エフォールの実母、花街のコリエを呼んだのだ。それに巻き込まれて、子供新聞のアンケートをとっていたジェム達や、3王子、アルディ王子、竜樹も呼ばれて、一瞬で、オルビット伯爵家の地下室に移動させられたのだった。
「あー、そうそう、確かにそれはあった!でもあれって、転移というより、召喚みたいな感じじゃない?何かコリエさんの髪飾りから、本人を呼び出す、っていう。」
おー。チリは、目をパチパチして。
「召喚!そうですね、実に言い得て妙。竜樹様は、どんな転移を想像してるんです?」
護衛で王弟のマルサと、侍従タカラと、カメラマンで侍従のミランも、「転移?」と首を傾げた。うん、極秘なんだけどな。もむもむ、口をむごむごしていると、ミランが。
「竜樹様、この前の花火みたいに、きっと便利でも危ないものが、私たちに害をなさないか、と、ご心配をされているのではないですか?」
にん、と静かに笑って。
「う、うん。まあ。神様案件でもあるし、ミランも、シィ~で、ね?」
竜樹が、口の前に指を立てる。
タカラは不安そうにしているし、ミランは、半笑顔で、フウ、とため息。
「••••••竜樹様、確かに、詳しく情報を頂いた時、使いようで危険になるものも、あるでしょう。私や、タカラは、竜樹様が悩んでいるものを、いかにこの国の民、ハルサ王様に仕えているとはいえ、竜樹様の意向に反して、情報を流したりしません。だから、安心して、何でも相談して下さい。そのための私たちなのです。」
聞いてみて、こちらの世界でどうしたらいいか、相談もできますから。
真剣な顔で、ぽむ、とカメラを背負って片手で胸を叩くミランに、タカラも、うんうん、ポム!と胸を叩いた。
うん、ミラン達を信じてないみたいになっちゃったか。
「ごめんね。」
竜樹が苦笑いで謝ると、ふるる、とタカラもミランも、顔を振った。
「それほどに考えて下さってるのですよね、こちらの事を。嬉しく思いますし、もっと頼って頂けるように、頑張りますね。ーーーでは、転移とは、どんな風にイメージしてらっしゃるので?」
「えーとね。」
魔法陣があって。
書いてある魔法陣から、もう一方の魔法陣へと、人も荷物も一瞬で転移できるような。
「前の世界では、実現してないけど、お話の中ではあった概念なんだよ。」
16地方と王都の教会、寮を、転移で繋げられたら、って思ったのが最初だけど、国に広げたら、便利で発展しそう。行きにくい、山間の村や、国の端っこまで、人やモノが行き渡る。
「でも、危険も孕んでる。この国がしなくても、よその国にも広まるって事になったら、どこかの国が軍事に利用したり。運送、道の神、ルート神様が、転移する前に誓約をさせて、悪用されるのを防ぐよ、と仰ってくれたんだけど。」
うんうん、とタカラ、ミラン。そして護衛のマルサは眉を顰める。転移の危険性を、仕事柄、身近く感じたのだ。
「それだけじゃなくて、転移の魔法陣がある街は良くても、ない街や村は、荷物や情報、人が届かなくならないかな?今まで営んできた宿屋や、旅をする人向けの商店、運送、飛びトカゲ便が、衰退しちゃわない?良く考えて仕組みを作らないと、国の手足に血がいかなくなるよね?」
大きな変革で、衰退したり繁栄したりは、仕方ない事ではあるけれど。
仕方ない、と言って、強引に、大きな力のある者ばかりに有利に変えてしまっては、小さな者が、押しつぶされてしまうだろう。
「何かそれは、俺は、嫌でさぁ。変化はあるかもしれないけど、何とかこれまでやってきた、小さな商売や、飛びトカゲ便を活かして、かつ、安全に便利にしたいなぁ、って。」
チリ、タカラ、ミラン、マルサは、それを聞いて、ふ、と嬉しそうに笑った。
竜樹は、こういう所が良い。
本人は、この国で大きな力を持ってしまっただろうが、小さな所への配慮を忘れない。
それは時に、煮え切らないし面倒事を背負うとも感じるが、即断即決の考えなし、独りよがりの、自分が讃えられる事ばかり優先するより、もっとずっと、信頼できるし、好感がもてる。
「ま、魔法陣で、場所から場所へ転移するのは、出来なくはないです。森のエルフ達が使っているので、教えを乞えば、魔法陣の描き方や、より良い運営方法のコツも、あれば教えてくれるかもしれません。エルフは魔法使いとしては優秀で、その知恵には尊敬します。ーーーでも、その、森のエルフに接触をするのが、本当に、大変なんですよね~。」
チリが指をとんとん、と唇に当てつつ考えて。
「ああ~、エルフ。」
「エルフかぁ~。」
ミランもマルサも、すんっと、真顔になる。
「エルフ、何で大変?人嫌いとか?」
「人嫌いでもないんですが。」
チリが、唇トントンを速めて。
森に住むエルフは、基本、外に出てこない。決めた商売の相手にしか、会わない。
「そうして、街にいるエルフは、魔法に関して人に教える事がない、んですよね。エルフの中での決まり事というのがあるらしく、人の中にあっても、エルフの矜持は忘れません。」
そして。
「今、街のエルフ達は、大体がジュヴールの国にいます。何故かそこ以外には、いません。で、そのジュヴールなんですけど、なんていうか、あー、閉鎖的でありつつ、よその国に軽い喧嘩ばっかりふっかける、オラオラな国なんですよねえ。」
むむ、む。
転移、前途多難では。
「しかし、私にかかれば、転移の魔法陣、きっとモノにしますよ!エルフにも会えます!きっと!絶対!大丈夫!」
だから今夜は、寮に泊めて下さい!
チリが自信満々に、胸に手を当てウンウンする。
「今日の夕飯は、手巻き寿司だから、お楽しみにね。」
「や、やったー!てまきずし?って何ですか?」
と、言う事が、あったおぼんの晩。
子供達に転移をバラしたチリは、竜樹のこめかみグリグリに。
「あ、痛い、いたたた!だって私、魔法や魔法陣に関しては考えられますけど、実際運用する事にかけては、全く力になりませんよ!でも今回は、制限を魔法に盛り込まなきゃでしょ!その部分、こ、子供達が、きっと上手いこと考えてくれますって!何でも実現バーニー君も、明日呼びましょう!ね、ね、実際に使う、子供達の意見、絶対必要ですって!!」
「ううむ、確かに。」
今すぐ実現するものでもないし。
実現しなければ危険もないか。
子供達は、フォークを持ったままだったり、まだ食べながらだったりしながらも、侃侃諤諤。
「お金、転移の時は、沢山とれば良いんじゃない?」
「たくさん遠い時は、たくさんお金、もらう!」
「それ、転移のトクが、減るじゃん。すぐ行けて、泊まったり飛びトカゲに乗ったりのお金もないのが、便利じゃん。」
「途中の宿屋、潰れちゃう。泊まってもらうには、どうしたらいいの?」
「荷物運びの、護衛の冒険者も、お仕事なくなるよね。何かお仕事、欲しいよね!」
シェルシェ地方の、トリコ少年が、口を開く。
「•••俺の、死んじゃった父ちゃん、馬車で旅する商人の護衛してたんだけど。道があるお陰で、獣達が街や村まで来ないんだって。転移ばっかりになったら、道がなくなって、危険じゃないの?」
おお、それは新しい意見だね。
「でもさぁ、やっぱり、教会には転移の魔法陣、ほしいよね!」
「うん、ほしいー。」
「会いたいよ、竜樹とーさん。」
「「「会いたーい!!」」」
口を揃えて言う少年少女達に。
「ありがとう。俺も、皆に会いたいよ!」
竜樹も、ひらひら、と手を振る。
「転移、使うことにするなら、どこかで、じっけんしないとだよね?」
エポック地方の、目を眇めたミディが、お口をムンとしつつ言う。
「どうせじっけんするなら、16この教会でやったら良いんじゃない?」
ムフフ。
眼鏡があったとしたら、つ、と持ち上げて言っただろう。ミディは、何だかドヤ顔だ。
チリが、ピピン!と耳を立てるかのように反応する。
「良いね良いね、君!」
「俺、ミディです。」
「み、ミディ!確かに実験は必要だ!その案、採用する!」
わわ、わ~っ、とチリに子供達がバンザイ。
「良いのかよ、チリ~。」
「良いのです!ふふふ、やっちまえば、こっちのもんです。」
ま、まあ、まだエルフに会ってないしな。
竜樹は、ふー、と息を吐き。
ミランは、くふ、と笑って。
タカラも、ニコニコ。
マルサは、仕事が増えそうだなぁ、と顎をぽりぽりした。
おぼんの祭壇に、魂達がふわふわ寄っている。子供達は、嬉しそうに、飾られた親やご先祖様との写真を眺めては、胸元にふわりとする魂を、そっと触ったりしつつ、夕飯の片付けを始めた。
買った魔道具ランプが、祭壇の周りで光を放っている。
食後すぐお風呂は、お腹が落ち着かないから、少し時間を置くために、竜樹は物語の本を読むことにした。読み聞かせである。
バスチアン少年が出てくる、不思議の国の物語。あかがねいろの本、の現物があれば、もっと良かったかな。
今日から、この本をちょっとずつ読んでみよう。
サンが竜樹の膝元に寄っかかって手に汗を握り。
ロシェ達が、竜樹の背中に張り付いて声を聴き。
ジェムは小ちゃいこ組をまとめて抱っこし。
そしてチリが、ワクワクと物語を楽しんで。
「はい、今日はここまで。お風呂に入って、のんびりして、寝ましょ。」
「「「ええ~っ!?」」」
魂達も、震えてスマホに集まり、ピカピカ抗議。
タカラもミランもマルサも、物語にハマったか、残念そうな顔してる。ラフィネもシエルもエクレもである。
「お風呂の後も、読んでえ!」
「「「読んでー!!」」」
竜樹はご要望に、しっかと応えた。
ラフィネが、子供達がねむねむになるのを待って、竜樹のおやすみ、の言葉で、テレビ電話をふつ、とオフした。
おぼんのお迎えに向かう途中で、ヒソ、と竜樹がチリに聞いた時。
「ありますよ!前に、犬獣人の魔法使い、シャルムに魔法で呼ばれた事があったじゃないですか。」
全然音量を気にしない声で、チリが応えた。
そう、大きすぎる魔法で、エフォールの実母、花街のコリエを呼んだのだ。それに巻き込まれて、子供新聞のアンケートをとっていたジェム達や、3王子、アルディ王子、竜樹も呼ばれて、一瞬で、オルビット伯爵家の地下室に移動させられたのだった。
「あー、そうそう、確かにそれはあった!でもあれって、転移というより、召喚みたいな感じじゃない?何かコリエさんの髪飾りから、本人を呼び出す、っていう。」
おー。チリは、目をパチパチして。
「召喚!そうですね、実に言い得て妙。竜樹様は、どんな転移を想像してるんです?」
護衛で王弟のマルサと、侍従タカラと、カメラマンで侍従のミランも、「転移?」と首を傾げた。うん、極秘なんだけどな。もむもむ、口をむごむごしていると、ミランが。
「竜樹様、この前の花火みたいに、きっと便利でも危ないものが、私たちに害をなさないか、と、ご心配をされているのではないですか?」
にん、と静かに笑って。
「う、うん。まあ。神様案件でもあるし、ミランも、シィ~で、ね?」
竜樹が、口の前に指を立てる。
タカラは不安そうにしているし、ミランは、半笑顔で、フウ、とため息。
「••••••竜樹様、確かに、詳しく情報を頂いた時、使いようで危険になるものも、あるでしょう。私や、タカラは、竜樹様が悩んでいるものを、いかにこの国の民、ハルサ王様に仕えているとはいえ、竜樹様の意向に反して、情報を流したりしません。だから、安心して、何でも相談して下さい。そのための私たちなのです。」
聞いてみて、こちらの世界でどうしたらいいか、相談もできますから。
真剣な顔で、ぽむ、とカメラを背負って片手で胸を叩くミランに、タカラも、うんうん、ポム!と胸を叩いた。
うん、ミラン達を信じてないみたいになっちゃったか。
「ごめんね。」
竜樹が苦笑いで謝ると、ふるる、とタカラもミランも、顔を振った。
「それほどに考えて下さってるのですよね、こちらの事を。嬉しく思いますし、もっと頼って頂けるように、頑張りますね。ーーーでは、転移とは、どんな風にイメージしてらっしゃるので?」
「えーとね。」
魔法陣があって。
書いてある魔法陣から、もう一方の魔法陣へと、人も荷物も一瞬で転移できるような。
「前の世界では、実現してないけど、お話の中ではあった概念なんだよ。」
16地方と王都の教会、寮を、転移で繋げられたら、って思ったのが最初だけど、国に広げたら、便利で発展しそう。行きにくい、山間の村や、国の端っこまで、人やモノが行き渡る。
「でも、危険も孕んでる。この国がしなくても、よその国にも広まるって事になったら、どこかの国が軍事に利用したり。運送、道の神、ルート神様が、転移する前に誓約をさせて、悪用されるのを防ぐよ、と仰ってくれたんだけど。」
うんうん、とタカラ、ミラン。そして護衛のマルサは眉を顰める。転移の危険性を、仕事柄、身近く感じたのだ。
「それだけじゃなくて、転移の魔法陣がある街は良くても、ない街や村は、荷物や情報、人が届かなくならないかな?今まで営んできた宿屋や、旅をする人向けの商店、運送、飛びトカゲ便が、衰退しちゃわない?良く考えて仕組みを作らないと、国の手足に血がいかなくなるよね?」
大きな変革で、衰退したり繁栄したりは、仕方ない事ではあるけれど。
仕方ない、と言って、強引に、大きな力のある者ばかりに有利に変えてしまっては、小さな者が、押しつぶされてしまうだろう。
「何かそれは、俺は、嫌でさぁ。変化はあるかもしれないけど、何とかこれまでやってきた、小さな商売や、飛びトカゲ便を活かして、かつ、安全に便利にしたいなぁ、って。」
チリ、タカラ、ミラン、マルサは、それを聞いて、ふ、と嬉しそうに笑った。
竜樹は、こういう所が良い。
本人は、この国で大きな力を持ってしまっただろうが、小さな所への配慮を忘れない。
それは時に、煮え切らないし面倒事を背負うとも感じるが、即断即決の考えなし、独りよがりの、自分が讃えられる事ばかり優先するより、もっとずっと、信頼できるし、好感がもてる。
「ま、魔法陣で、場所から場所へ転移するのは、出来なくはないです。森のエルフ達が使っているので、教えを乞えば、魔法陣の描き方や、より良い運営方法のコツも、あれば教えてくれるかもしれません。エルフは魔法使いとしては優秀で、その知恵には尊敬します。ーーーでも、その、森のエルフに接触をするのが、本当に、大変なんですよね~。」
チリが指をとんとん、と唇に当てつつ考えて。
「ああ~、エルフ。」
「エルフかぁ~。」
ミランもマルサも、すんっと、真顔になる。
「エルフ、何で大変?人嫌いとか?」
「人嫌いでもないんですが。」
チリが、唇トントンを速めて。
森に住むエルフは、基本、外に出てこない。決めた商売の相手にしか、会わない。
「そうして、街にいるエルフは、魔法に関して人に教える事がない、んですよね。エルフの中での決まり事というのがあるらしく、人の中にあっても、エルフの矜持は忘れません。」
そして。
「今、街のエルフ達は、大体がジュヴールの国にいます。何故かそこ以外には、いません。で、そのジュヴールなんですけど、なんていうか、あー、閉鎖的でありつつ、よその国に軽い喧嘩ばっかりふっかける、オラオラな国なんですよねえ。」
むむ、む。
転移、前途多難では。
「しかし、私にかかれば、転移の魔法陣、きっとモノにしますよ!エルフにも会えます!きっと!絶対!大丈夫!」
だから今夜は、寮に泊めて下さい!
チリが自信満々に、胸に手を当てウンウンする。
「今日の夕飯は、手巻き寿司だから、お楽しみにね。」
「や、やったー!てまきずし?って何ですか?」
と、言う事が、あったおぼんの晩。
子供達に転移をバラしたチリは、竜樹のこめかみグリグリに。
「あ、痛い、いたたた!だって私、魔法や魔法陣に関しては考えられますけど、実際運用する事にかけては、全く力になりませんよ!でも今回は、制限を魔法に盛り込まなきゃでしょ!その部分、こ、子供達が、きっと上手いこと考えてくれますって!何でも実現バーニー君も、明日呼びましょう!ね、ね、実際に使う、子供達の意見、絶対必要ですって!!」
「ううむ、確かに。」
今すぐ実現するものでもないし。
実現しなければ危険もないか。
子供達は、フォークを持ったままだったり、まだ食べながらだったりしながらも、侃侃諤諤。
「お金、転移の時は、沢山とれば良いんじゃない?」
「たくさん遠い時は、たくさんお金、もらう!」
「それ、転移のトクが、減るじゃん。すぐ行けて、泊まったり飛びトカゲに乗ったりのお金もないのが、便利じゃん。」
「途中の宿屋、潰れちゃう。泊まってもらうには、どうしたらいいの?」
「荷物運びの、護衛の冒険者も、お仕事なくなるよね。何かお仕事、欲しいよね!」
シェルシェ地方の、トリコ少年が、口を開く。
「•••俺の、死んじゃった父ちゃん、馬車で旅する商人の護衛してたんだけど。道があるお陰で、獣達が街や村まで来ないんだって。転移ばっかりになったら、道がなくなって、危険じゃないの?」
おお、それは新しい意見だね。
「でもさぁ、やっぱり、教会には転移の魔法陣、ほしいよね!」
「うん、ほしいー。」
「会いたいよ、竜樹とーさん。」
「「「会いたーい!!」」」
口を揃えて言う少年少女達に。
「ありがとう。俺も、皆に会いたいよ!」
竜樹も、ひらひら、と手を振る。
「転移、使うことにするなら、どこかで、じっけんしないとだよね?」
エポック地方の、目を眇めたミディが、お口をムンとしつつ言う。
「どうせじっけんするなら、16この教会でやったら良いんじゃない?」
ムフフ。
眼鏡があったとしたら、つ、と持ち上げて言っただろう。ミディは、何だかドヤ顔だ。
チリが、ピピン!と耳を立てるかのように反応する。
「良いね良いね、君!」
「俺、ミディです。」
「み、ミディ!確かに実験は必要だ!その案、採用する!」
わわ、わ~っ、とチリに子供達がバンザイ。
「良いのかよ、チリ~。」
「良いのです!ふふふ、やっちまえば、こっちのもんです。」
ま、まあ、まだエルフに会ってないしな。
竜樹は、ふー、と息を吐き。
ミランは、くふ、と笑って。
タカラも、ニコニコ。
マルサは、仕事が増えそうだなぁ、と顎をぽりぽりした。
おぼんの祭壇に、魂達がふわふわ寄っている。子供達は、嬉しそうに、飾られた親やご先祖様との写真を眺めては、胸元にふわりとする魂を、そっと触ったりしつつ、夕飯の片付けを始めた。
買った魔道具ランプが、祭壇の周りで光を放っている。
食後すぐお風呂は、お腹が落ち着かないから、少し時間を置くために、竜樹は物語の本を読むことにした。読み聞かせである。
バスチアン少年が出てくる、不思議の国の物語。あかがねいろの本、の現物があれば、もっと良かったかな。
今日から、この本をちょっとずつ読んでみよう。
サンが竜樹の膝元に寄っかかって手に汗を握り。
ロシェ達が、竜樹の背中に張り付いて声を聴き。
ジェムは小ちゃいこ組をまとめて抱っこし。
そしてチリが、ワクワクと物語を楽しんで。
「はい、今日はここまで。お風呂に入って、のんびりして、寝ましょ。」
「「「ええ~っ!?」」」
魂達も、震えてスマホに集まり、ピカピカ抗議。
タカラもミランもマルサも、物語にハマったか、残念そうな顔してる。ラフィネもシエルもエクレもである。
「お風呂の後も、読んでえ!」
「「「読んでー!!」」」
竜樹はご要望に、しっかと応えた。
ラフィネが、子供達がねむねむになるのを待って、竜樹のおやすみ、の言葉で、テレビ電話をふつ、とオフした。
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