王子様を放送します

竹 美津

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本編

黒歴史にズキズキ

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竜樹が、ゴソゴソ。皆で見られる簡易スクリーンを設置して、タカラに魔法で空中に留めてもらったり、動画の資料を確認、準備していると。

今使っている体育館の部屋へ、両開きの扉をバーン!と開けて、入ってきたのは。

「ギフトの、たつきさま!」
「竜樹お父さん!」

「•••おお、おおお。リーヴ。クーラン!元気そうだね!」

竜樹が、タタタと入ってきた、ネクターと同じ年頃の少女、父子家庭のリーヴと、10代半ば辺りのもう1人、花街でもうすぐ散らされる所だったクーラン、2人を優しい笑顔で迎えた。

満面の笑顔で、ガバッと抱きついてきた、ピンクベージュ髪の美少女リーヴを、グイッと持ち上げて抱っこ。もう1人の少女クーランも、照れくさそうに、竜樹のマントの端っこを握って、見上げてくる。
竜樹はリーヴを抱っこしながら、クーランの肩を、ポンポン、とした。
ニコリニコリと、嬉しそうな少女2人は、素朴な服だが、清潔に洗濯してあって、パッと若さの華がある。

男の子も可愛面白いけど、女の子も、素敵だよなあ。
竜樹の顔は、ホワッと緩む。

リーヴは新聞の印刷工、イルの娘である。元王女エクレとシエルの、ギフト取り込み作戦で、誘拐脅迫の被害者となったが、父親イルと職場の人々の、諦めない頑張りもあって、竜樹達に助けられた。
リーヴは父子家庭の生活の崩壊の中、父と共に教会のお母さんシェルターに引き取らせて、面倒見してくれた竜樹の事を、助けてくれる人!と親しく好きだと思っている。
クーランも、竜樹の姓をもらった教会の子であるから、竜樹を父と慕っている。

「2人共、良く来てくれたね。特にリーヴは、怖くはなかったかい?大丈夫?」
リーヴは、うん、と頷きながら、元王女エクレとシエルを、チラッと、冷ややかに見た。

ギクリ。

エクレ、シエル姉妹の眉間、罪の戒めオーブの足跡が、ズキンズキン、鈍く痛む。
人の痛みに鈍感で、好き勝手やった、その罪悪感を今更感じたって、時は戻せない。

ぷいっ!

リーヴは元王女達から顔を背けて、竜樹の、首っ玉に埋める。

ガーン!

分かってはいたが、拒絶はショックだ。毎日子供達とわちゃわちゃしているから、子供に嫌われるのって。それが当然の理由も分かっているけれど。
ショボ、と姉妹元王女はしょげる。

「リーヴ、知ってるのよ。あの人たち、平民になったんだって。たつきさまが、こらしめてくれたのよ。そんなら、全然こわくないわ!」
私、モデル、できる!

デザイナーの人が、竜樹のツテで、女の子のモデルを探しに教会に来て、リーヴとクーランを良いな、と選んだ時。
給与も発生する契約を結ぶには、まず話をと、一緒に様子見に同行した文官が、元王女とリーヴのあれこれ経緯を知っている者だったので、リーヴには事前に確認してあった。

あの、リーヴに悪い事した、怖いお姉さん達も一緒だけど、大丈夫?
いや、今は、メッされて、大分大人しいけれど、それでも怖くない?と。

リーヴは竜樹に恩返しがしたかった。
リーヴとイル父さんを助けてくれたのだもの、リーヴがモデルをやる事で、たつきさまが助かるなら、やるわ!と鼻息荒くフンスと意気込んだ。

本当は今日ここに来るまで、ちょっと怖かったけど、チラリ見た感じでは、あの傲慢な、上から目線の態度は大分なくなっているから、いける、やれる、と。

ツン!としたリーヴに、ソワソワ、謝りたいような何を言えばいいのか分からないような、複雑な姉妹。

(どうしたら良いのよ。)
(わ、分からないわ!こういう時•••。)

「リーヴ、クーラン、ししょうと、なかよし?」
「仲良しよ!」
「お父さんだもの。」

ぼくも、なかよしなの!
ぎゅむ!と後ろからくっついてくるニリヤは、場を和ませる。
「私も仲良しー!」
「私もだよ!」
3王子と、少女2人と、だまになって竜樹は、ハハ、と笑いつつ、さてさて、とリーヴを下ろした。

開かれた扉からは、何人か、王宮の侍女さんや侍従さんも入ってきた。
共に、リーヴを連れてきたであろう教会の助祭や、デザイナー組の3人。年配のトラディシオン、女性のクロース、若い男子トロンも。

「遅くなってすいません、仮に着る浴衣、持ってきました!大分普通の服と着心地が違うので、着て練習してもらえたら、と。布は普通の綿素材です。」
「履き物も、下駄というんでしたか?本番では、半分は、サンダルになりそうですが、これから作りますので。今日は、これを。」
出されたのは、ビーサンだった。
うん、間違っちゃいない。似てる。うん。

情報が漏れると良くないので、毎回練習の時に、私共デザイナーが、浴衣と履き物を、持って参ります。

了解です!と皆で頷いて、まずは竜樹の差し出す資料、モデル歩きの動画を見る事になった。


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