王子様を放送します

竹 美津

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本編

死と再生

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竜樹が、何だろとスマホを懐の内ポケットから取り出して、「神々の庭だ。」と眺め出したので。
お茶していた王様、王妃様は黙ってそれを待ったし、王子達も、つつつと顔を寄せて見たがった。


モール
『おぼん、採用。
私はモール神。死を司る神。』

レナトゥス
『うんうん、採用だ!
私は再生の神、レナトゥス。』

モール
『おぼん、5日もあれば良いだろう。
来月、陽炎の月12日から16日ほどでどうだ?1と月準備ができるだろう。』

レナトゥス
『そうそう、縁が途絶えて、身寄りのない魂達の分も、他にも動物、植物、虫達、全ての魂の分も、王家には迎え火送り火してもらってね。』

モール
『これで魂達も、今世への執着を、早めに解放できよう!』

レナトゥス
『そうだよね、基本的に、今の魂で二度と今世に来られないから、執着するのだもんね。』

おおう。
何か話が進んでいる。

竜樹
「初めまして、モール神様、レナトゥス神様。畠中竜樹といいます。お盆、採用、ですか?魂が里帰りすると?俺には馴染みの行事ですが、急にやって、魂やこの世界の人達的には、大丈夫でしょうか。あの•••この世界では、神様達や亡くなった方の魂が、俺の世界よりも近しい感じだから。良い魂ばかり、良い人ばかりでは、ないでしょうし。』

死が隔てて、きっと区切りがついた物事も、あったりすると思うのだ。

モール
『大丈夫ではない。が、いや、それが、竜樹のいいねを使って、顕現できると知った一部の魂達が、もしかして自分も!と期待してしまって。』

レナトゥス
『そう、今すっごく冥界と呼べる場所で、竜樹は注目されてるよ。』

竜樹
「そ、それは、神様的にも、この世の人達的にも、その魂的にも、困った事になってるんじゃ?」

モール
『そうなのだ。』

レナトゥス
『そうなんだよ。生きとし生けるもの全ては、死して魂になり、段々と浄化されて、生まれ変わってまたこの世に誕生するのだけど。』

モール
『浄化されるのを、嫌がる魂が増えてしまったのだ。元々、自然に、個々に必要な時をかけて、浄化されていくのを見守るのが私の役目の一つでもあったのだが、歪みが出てきていてな。』

レナトゥス
『すぐに大事にはならないと思うけど、生まれ変わる頃合いの魂が、なかなか浄化されてこないのは、困るね。』

竜樹
「そうなのですか•••。ご迷惑をおかけして、すみません。」

モール
『いやいや、解決策も竜樹が教えてくれたぞ。おぼんを取り入れれば、まだ執着がある魂達も気が済むし。無理に浄化するのは、剥ぎ取られた記憶や心の傷のカケラが残ったりして、魂達にとっても、あまり良くないからな。自然に、自然に、磨くようにが良いのだ。』

レナトゥス
『こちらにおぼんで渡る魂には、門を通る時、ちゃんと制限をかけるよ。生きている者の生命の光眩しく、世界は輝いているんだ。魂達は、そもそも比べればとても弱くて。ちょっとしたイタズラはできても、本格的な悪さはできないように。そして、自然にがモットーだけど、穢れを貯めた魂は、目印とお目付け役をつけて、そのままでは通さないようにするし、キチンとおぼんが終わったら回収するから。』

モール
『夏の何日か冥界の門を開けるだけで、今世に焦がれる魂達の気がすめば、それにかかる労力など安いものだ。』

レナトゥス
『今世でも、亡くした魂に寄り添い想う事は、きっと心に良いと思うよ。精一杯生きて、そして皆、同じ所へ行くのだと。』

竜樹
「わかりました、精一杯、魂達をお迎えしたいと思います。」

モール
『うむうむ。迎えてくれるか。ありがとう竜樹。魂達は、歪んだものさえ、全て私たちの心をかける、かわいいもの達だ。皆、無事に生まれ変わって、次の生、「生きる」をやって欲しいと願っている。それには、今までを大事にして、されてが必要なのだ。』

レナトゥス
『頼んだよ、竜樹。この世界の全ての国で、おぼんに魂が降り、そして過ぎれば戻る。しかるべきものに、神託をしておくから、竜樹達はこの国の事をすれば良いよ。具体的には、それぞれの国で、しっくりくるやり方にすれば良いから。』

モール
『私たちは、おぼんに力を使う関係上、いいねは送ってやれないが。』

レナトゥス
『何か問題があったら、いつでも対応するから、メッセージを送っておいで。』

ランセ
『•••という訳で、おぼんをやる事になったけど、なんだか悪かったね、竜樹。他の魂への影響までは、考えてなかったな~。』

竜樹
「いえいえ、こうなったら、お盆と夏休み、楽しみましょう!」

ランセ
『うんうん。死を思う時、生も際立つと思うから。魂送りは、きっと綺麗だから、楽しみにね。では、またね。』

竜樹
「はーい、また!!」



「と、いう事のようです。」

竜樹が読み上げたメッセージに、ハルサ王様は、ググっと拳に力を入れて、うん、うん、と頷いた。
「おぼん、やろうではないか!竜樹殿、マルグリット、盛大に!」
「はい!やってやりましょう!」
「ええ!やりましょう!」
「「「おぼん、やる~っ!!!」」」

そこからが大変だった。
神託を受けたファヴール教皇とノノカ神殿長の、面会の要請もあり。
何しろ準備期間が1つ月しかないのだから、てんやわんやだ。

「ビーサン、サンダル、ミュール、やりましょう。浴衣でファッションショーも!一人のデザイナーで、浴衣1着か2着なら、それほど重荷でもないでしょう?実際に身につけて夜会などは来年からにしても、発表は今年しておきたいわ。」
うふ、とマルグリット王妃様の魅惑の笑顔。
「や、やりますか。」
竜樹は、本気の女性には逆らわないと決めている。
宰相、貴族向けと庶民向けのデザイナー、靴職人たち、商人たち、そしてファヴール教皇にノノカ神殿長、バラン王兄もいる、ここは中広間、スクリーンに浴衣や、履き物、おぼん絡みの情報をザッと流して。

初めて会う人としては、離宮から呼んだ、先王と王太后もいる。先王はハルサ王様よりガッシリした、金髪に白髪まじりの、威厳のあるおじいさまで、王太后はこれまた金髪を、品良く纏めて、モデルかよ!というくらい、口がニコ!と大きくて目がアーモンド型の美人、だったであろう、しゃんとした美おばあさまだ。
お二人は、あまり口出しをしないが、おぼんの概念の説明時には、ああ、ご先祖様にご挨拶ができるんだね、と嬉しそうで。ミュールの説明時には、キラキラ!と王太后様の目が光った。

「ぼんおどり、っていうのがあるのよね?」
マルグリット王妃が人差し指でトントン、とテーブルを叩きつつ。
踊ります。音楽が必要とあれば、バラン王兄。
「任せなさい!きっと、魂達も、心慰められるに違いない。音楽も踊りも、神にも魂にも、捧げられるものだから!」
場所は大画面広場で。

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