王子様を放送します

竹 美津

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本編

かわいいこ

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じゅわ!と揚がったヤングコーン。交流室にテーブルを組み立てて、席についた皆に配る。ヒゲもカリッと。ナスにお芋2種類、とり天も3個つけて。サラダとご飯と。

吟遊詩人のロペラも御相伴に預かって、ワクワクと味に期待している。手元にはフォーク。子供達はお箸である。最近は使い方も教えて、ぎこちないながらも皆、使えるようになっている。
いただきま~す!とパクリ、噛み締めれば、油のコクと塩味で増幅された、シャクリとコーンの甘み。

「おいしいねえ。やんぐこーん。」
カリコリ、とニリヤが先っぽから食べ。
「本当だねぇ。」
「私これ好きだなぁ。」
ネクターとオランネージュも、ニコニコはぐはぐと食べて。
「もし硬い所があったら、残していいからね。」
軸は取ったが、時々そこら辺が硬い。

サンが、モグモグと、衣に味をつけたとり天を齧り、竜樹にこんな事を聞く。

「たつきとーさ、サンかわいい?」
さっきピティエに、可愛いと思っている、と言ったからだろう。真面目な顔で聞いてくる。
ラフィネが、くくく、とご飯を口に入れてから、忍び笑い。

「うんうん。可愛いなぁ。」
余った揚げ物を配りつつ、くりくり、と食べているサンを撫でてやると、セリューとロンの小ちゃい子組が、俺は、おれはぁ?と聞いてくるから、竜樹はそれぞれ、可愛い可愛い、と撫でてやった。撫でられて、小ちゃい子組はそれぞれ、むふ、と嬉しそうだ。

「ししょう!ぼ、ぼくは?かわい?」
ニリヤが、ぶん!と振り返り聞いてくる。「私は?」「私も、可愛いでしょ?」ネクターとオランネージュも、便乗して。
「うんうん。可愛いねぇ~。」

竜樹は皆を、可愛い可愛い、と撫で撫でして回った。アルディ王子は、お耳が撫でやすいように後ろに折れて、尻尾がブンブンしていたし、ジェムなどは、俺はかっこいい、が良い、とか言っていたので、カッコ可愛い!と言っておいた。
エフォールとプレイヤードも、私達はカッコ可愛いで!とニコニコ。
ピティエもカッコ可愛いよと撫でると、ちょっと恥ずかしそうにしたが、大人しく撫でられていた。

子供が他意なく愛される。ただそれだけで、幸せの匂いがする。
吟遊詩人のロペラは、自分が小さかった時の、もういない師匠を懐かしく思い出して、痛く嬉しくなった。竜樹は会うたびロペラを嬉しくさせる魔法を、何故か持っている。ご飯も美味しい。

「•••はぐ、ちょっとぉ、私たちは!?」
元王女の妹シエルが、むむう、とした目で竜樹に見落としを責めた。

「可愛い、って言ったら、なんといってもそれは私たち女性の事でしょう!?」
「そ、そうね。私だって可愛いと呼ばれる事は、別に嫌じゃないわよ。」
元王女姉エクレも、つん、としながらちょっと頬を赤くしている。

「女性は、可愛いじゃなくて、綺麗が良いかもねぇ~。」
竜樹がスラリと言い抜けると、ラフィネがまた、くく、と笑う。
「そ、そうね!私達は確かに、この寮の中で一番綺麗よ!」
「きっと滲み出る高貴さがあるのよね!」
「うん、キレイだねぇ~。」
よしよし、と言いたげな、子供扱いの竜樹の言葉だったが、元王女達は満足そうだ。

ご飯が終われば、食休みの後、小ちゃい子組はお昼寝だし、大っきい子組は遊びだ。
その時間を使って、ピティエとプレイヤードとアミューズは、試験のラジオ番組の録音だ。ロペラも一緒に、寮の空いている個室に入った。
子供達は、邪魔しちゃいけませんよ~、と竜樹に言われて、「は~い!」と良い子のお返事をしたが、興味津々で、個室の前の廊下で、くすくすしつつ、耳をドアにくっつけていた。
元王女姉妹まで、何となく一緒にそろりとドア前にて耳をそばだてて。

「聞こえないね。」
「うん、きこえない!」
「何の話してるのかな?」
眠いのにニリヤまで、半目をぱちぱちしてドアに寄りかかっている。
「おもしろい、•••ばんぐみ?」

「はいは~い。おねむのニリヤはこっちだよ。皆、そっとしといてあげて。こっち、こっち。」
竜樹がニリヤを抱き上げて、そうして子供達を散らし促す。交流室まで連れてきて、しばらく。

3人と1人のラジオは、順調に、とはいかないが。突発的な出来事も飲み込んで、まあるく録音されていったのだ。

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