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本編
大人の女性になりましょう
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私が、私がギフトを貰って、それで皆に認められて!
あなたみたいな平民の、そんなに綺麗でもない女が、私より前に出てくるんじゃないわよ!
妹シエルは、自分の思った通りに、囁き声ではあるが、ラフィネに抗議した。
すー、ふー。
ラフィネは、ジェムの側で。
頭に手枕をし、絵画の裸婦像のように、ゆるりとした寝転んだ姿勢になった。瞑り加減の緑の、今は暗がりでピカリと柔らかい灯の光がゆらゆらした瞳を、すっと、流して、妹シエルを見た。
口角は微笑の形に、わずかに上がって。
いつもは素の、温かくお母さんらしい、慈愛に満ちた表情なのに。
今は、散らばるベージュの髪も、女性らしい身体の線も、妖艶、である。
妹シエルと、ついでに姉エクレも、何となくドキッとして、ラフィネを見つめる。
「人が、悪口を言う時の顔って、醜いわ。」
「なっ•••!」
み、みにくい!?
私が!?
妹シエルは、くわっ、と口が開いたまま、固まった。
「•••て、竜樹様が言ってたわよ。シエルさん、貴女、竜樹様をモノにしたいのよね?」
「そ、そうよ!」
フン!と、ツン!と。顎を上げて、腕を組み、威嚇をするが、竜樹とラフィネ、大人2人からすれば、まるでキャンと鳴く小型犬感満載である。
「竜樹様が、何故貴女に靡かないか、何故子供扱い以上の興味が無いのか、教えてあげるわね。」
ななな、な!!!
ふすー!!!
怒りが頂点に達すると、人は喋れなくなるのだ。妹シエルは、初めて知った。
ラフィネは妹シエルの憤怒をサラッと流して。
「竜樹様は、周りの人、皆に、何か良い考えはないか、どうか教えてもらえないか、竜樹様のお力で。と期待されて、沢山の人に縋られているわ。そんな中で、良いモノちょうだいちょうだい、誰にもあげないで私だけにちょうだい、と、まとわりつくだなんて、周りに嫉妬して親におやつや愛情をねだる子供と、同じよね。ここの子なら、それすらしないわ。仲良しする事を知ってるもの。」
むぐっ。
「で、でも、私は特別な王女なのだから•••!」
「そんなモノ、竜樹様は要らないのよ。特別な王女より、もっと特別な人なんだもの。竜樹様が貴女や貴女の国に何か知識や情報をあげたとする。貴女は竜樹様に、何をあげられるの?貴女自身、なんて、それほど魅力的じゃないわよ。だって子供は、本物がもう沢山いるんだもの。それに貴女には良くても、竜樹様の立場になれば、おねだりをする独占欲の強い女性に付き纏われて、迷惑、ってとこじゃないかしら?」
「な!し、失礼よ!!」
「事実だわ。」
とん、とん、とジェムの背中を撫でながら、ラフィネは続ける。
「要は、竜樹様が欲しがるような女性になりなさい、と言っているのよ。ちゃんと欲しがられそうな自分になる、努力もしないで、私は特別なんだから、って言ったって、欲しくないものは欲しくないわ。」
ムギー!!!
「欲しがられそうな女性ってどんなよ!この私よりも魅力的なんて、そうそういないわ!」
「いるわよ。ーーー私が。」
ラフィネは、強気に、ふふふ、と笑う。
さらり、ジェムの髪を掬って撫でて。
「竜樹様に、頼って甘える人は、沢山いるわ。いすぎて、いすぎて。子供みたいに保護してもらう、何かしてもらうつもりでいたら、モノにするなんて、いつまでたっても無理よ。じゃあ、竜樹様が頼る事ができて、一緒の目線で仕事できる人がいたら?きっと、その人のところで、ホッとして仕事したり、休んだりできるわね。私がお母さんなのは、大人だからよ。包容力の差ね。」
ほうようりょく。
むぎぎ。確かにそれは、妹シエルにはない。
「それも丁度、竜樹様と対等に、役割分担できるような。子供と張り合ってるようじゃ、まだまだ遠いわ。私は、竜樹様に、お母さんになって、と頼まれたの。竜樹様は、頼まれる事はあっても、頼む事は、その力がある人にでなければ、しないわ。信用された、という事よね。私はお母さんをやるの。それも、楽しくね。子供達は可愛いし、お母さんやるの、とても嬉しいのよ。」
「何で、あなたばっかり!!」
妹シエルは、図星を刺されて、痛みと嫉妬とで、息が荒くなる。
「さあ、何でかしら?私ね、結婚経験もあるし、出産経験もあるし、花街で働いていた事もあるの。だからね。」
異性との関係は、プロだったのよ?
ふふふ、とラフィネは軽やかに笑う。
「だから、良かったら、プロとして貴女達に、大人の女性とはどんなモノか、教えてあげてもいいわよ。」
「貴女なんかに「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥、なんですってよ?竜樹様が言うには。」
妹シエルは、腹が立って腹が立って、胸の中がトゲトゲだ。
「•••何よ何よ!大人の女性って、おばさんて事じゃないの!私の方が若くて可愛いわ!」
「若くて可愛い人は、この世に沢山いるわ。竜樹様は、よりどりできるお立場よ。それに、今だけの、時が経ったら失われる魅力より、大人になって魅力的な女性の方が、息が長いと思わない?」
うぬぬぬぬ。ぬぬー!
「私は大人になりたいわ。ラフィネさんに教わりたいわ。」
エクレ姉が、ポツリと言う。
素直になった方がスッキリすると分かったし、変に嫉妬して意地を張っている妹のシエル、確かに醜いな。エクレ姉は、冷静に、そんな風に思う。
「お、お姉様ばっかり、ずるいわよ!」
「じゃあ貴女も教われば?私たちがプロに教わる機会なんて、ここでしかないわよ。」
さあ、どうする。
「•••私、貴女に命令はされないわ!」
「大人の女性は、命令なんてしないわ。お願いするだけよ。」
ジェムの、寝てるはずの口が、ふにゃりぐぐぐ、と笑い堪えた。
包容力。シエルがそれを得られれば、うまくいくだろうか?
「•••お、教わってやっても、いいわよ。」
ニッコリ!
ラフィネが満面の笑みを浮かべて。
「ならこれからは、私についていらっしゃい。そうそう、子供達の面倒一つもみられない女性には、竜樹様は頼る事ができないわよ。竜樹様は子供好きだから、そこを押さえたら結構いい点とれるわよ。竜樹様だけじゃなくて、他の男性も、よく見る所よ。」
「わ、分かったわ。」
「分かったわよ!」
むぐぐ。
ジェムとツバメの隣で、竜樹の口も、笑いたくてムグムグしている。
ラフィネさん、上手い事言って姉妹を従えた。
竜樹の肩が笑いを堪えて震えているので、ラフィネはそっと人差し指を口の前に立てて、ふふ、と笑った。
「さあ、明日から忙しいわよ。皆、今日は寝ましょう。この部屋の隅に余った布団があるから、持ってきて横になるといいわ。おやすみなさい、エクレ、シエル。」
「おやすみなさい。」
「フンッ!お、おやすみ!」
姉エクレと妹シエルは、子供達の寝ている周りの一角に布団を敷き、コロンと横になり、眠った。シエルは興奮していたので、なかなか寝付けず、竜樹がツバメを、夜に何度もお乳あげたり、泣いてるのをよいよいしたり、しているのを知った。
赤ちゃんて、大変なんだなー、うるさい。と。
朝になったら、シエルの腹の上に、子供の足が乗っかっていた。朝からムッとしたが、シエルは大人になるのだ。多分大人の女性は、子供をそんな事で怒ったりしない。
なんて優しいの、私!
シエルは自分で自分に褒めてやった。
あなたみたいな平民の、そんなに綺麗でもない女が、私より前に出てくるんじゃないわよ!
妹シエルは、自分の思った通りに、囁き声ではあるが、ラフィネに抗議した。
すー、ふー。
ラフィネは、ジェムの側で。
頭に手枕をし、絵画の裸婦像のように、ゆるりとした寝転んだ姿勢になった。瞑り加減の緑の、今は暗がりでピカリと柔らかい灯の光がゆらゆらした瞳を、すっと、流して、妹シエルを見た。
口角は微笑の形に、わずかに上がって。
いつもは素の、温かくお母さんらしい、慈愛に満ちた表情なのに。
今は、散らばるベージュの髪も、女性らしい身体の線も、妖艶、である。
妹シエルと、ついでに姉エクレも、何となくドキッとして、ラフィネを見つめる。
「人が、悪口を言う時の顔って、醜いわ。」
「なっ•••!」
み、みにくい!?
私が!?
妹シエルは、くわっ、と口が開いたまま、固まった。
「•••て、竜樹様が言ってたわよ。シエルさん、貴女、竜樹様をモノにしたいのよね?」
「そ、そうよ!」
フン!と、ツン!と。顎を上げて、腕を組み、威嚇をするが、竜樹とラフィネ、大人2人からすれば、まるでキャンと鳴く小型犬感満載である。
「竜樹様が、何故貴女に靡かないか、何故子供扱い以上の興味が無いのか、教えてあげるわね。」
ななな、な!!!
ふすー!!!
怒りが頂点に達すると、人は喋れなくなるのだ。妹シエルは、初めて知った。
ラフィネは妹シエルの憤怒をサラッと流して。
「竜樹様は、周りの人、皆に、何か良い考えはないか、どうか教えてもらえないか、竜樹様のお力で。と期待されて、沢山の人に縋られているわ。そんな中で、良いモノちょうだいちょうだい、誰にもあげないで私だけにちょうだい、と、まとわりつくだなんて、周りに嫉妬して親におやつや愛情をねだる子供と、同じよね。ここの子なら、それすらしないわ。仲良しする事を知ってるもの。」
むぐっ。
「で、でも、私は特別な王女なのだから•••!」
「そんなモノ、竜樹様は要らないのよ。特別な王女より、もっと特別な人なんだもの。竜樹様が貴女や貴女の国に何か知識や情報をあげたとする。貴女は竜樹様に、何をあげられるの?貴女自身、なんて、それほど魅力的じゃないわよ。だって子供は、本物がもう沢山いるんだもの。それに貴女には良くても、竜樹様の立場になれば、おねだりをする独占欲の強い女性に付き纏われて、迷惑、ってとこじゃないかしら?」
「な!し、失礼よ!!」
「事実だわ。」
とん、とん、とジェムの背中を撫でながら、ラフィネは続ける。
「要は、竜樹様が欲しがるような女性になりなさい、と言っているのよ。ちゃんと欲しがられそうな自分になる、努力もしないで、私は特別なんだから、って言ったって、欲しくないものは欲しくないわ。」
ムギー!!!
「欲しがられそうな女性ってどんなよ!この私よりも魅力的なんて、そうそういないわ!」
「いるわよ。ーーー私が。」
ラフィネは、強気に、ふふふ、と笑う。
さらり、ジェムの髪を掬って撫でて。
「竜樹様に、頼って甘える人は、沢山いるわ。いすぎて、いすぎて。子供みたいに保護してもらう、何かしてもらうつもりでいたら、モノにするなんて、いつまでたっても無理よ。じゃあ、竜樹様が頼る事ができて、一緒の目線で仕事できる人がいたら?きっと、その人のところで、ホッとして仕事したり、休んだりできるわね。私がお母さんなのは、大人だからよ。包容力の差ね。」
ほうようりょく。
むぎぎ。確かにそれは、妹シエルにはない。
「それも丁度、竜樹様と対等に、役割分担できるような。子供と張り合ってるようじゃ、まだまだ遠いわ。私は、竜樹様に、お母さんになって、と頼まれたの。竜樹様は、頼まれる事はあっても、頼む事は、その力がある人にでなければ、しないわ。信用された、という事よね。私はお母さんをやるの。それも、楽しくね。子供達は可愛いし、お母さんやるの、とても嬉しいのよ。」
「何で、あなたばっかり!!」
妹シエルは、図星を刺されて、痛みと嫉妬とで、息が荒くなる。
「さあ、何でかしら?私ね、結婚経験もあるし、出産経験もあるし、花街で働いていた事もあるの。だからね。」
異性との関係は、プロだったのよ?
ふふふ、とラフィネは軽やかに笑う。
「だから、良かったら、プロとして貴女達に、大人の女性とはどんなモノか、教えてあげてもいいわよ。」
「貴女なんかに「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥、なんですってよ?竜樹様が言うには。」
妹シエルは、腹が立って腹が立って、胸の中がトゲトゲだ。
「•••何よ何よ!大人の女性って、おばさんて事じゃないの!私の方が若くて可愛いわ!」
「若くて可愛い人は、この世に沢山いるわ。竜樹様は、よりどりできるお立場よ。それに、今だけの、時が経ったら失われる魅力より、大人になって魅力的な女性の方が、息が長いと思わない?」
うぬぬぬぬ。ぬぬー!
「私は大人になりたいわ。ラフィネさんに教わりたいわ。」
エクレ姉が、ポツリと言う。
素直になった方がスッキリすると分かったし、変に嫉妬して意地を張っている妹のシエル、確かに醜いな。エクレ姉は、冷静に、そんな風に思う。
「お、お姉様ばっかり、ずるいわよ!」
「じゃあ貴女も教われば?私たちがプロに教わる機会なんて、ここでしかないわよ。」
さあ、どうする。
「•••私、貴女に命令はされないわ!」
「大人の女性は、命令なんてしないわ。お願いするだけよ。」
ジェムの、寝てるはずの口が、ふにゃりぐぐぐ、と笑い堪えた。
包容力。シエルがそれを得られれば、うまくいくだろうか?
「•••お、教わってやっても、いいわよ。」
ニッコリ!
ラフィネが満面の笑みを浮かべて。
「ならこれからは、私についていらっしゃい。そうそう、子供達の面倒一つもみられない女性には、竜樹様は頼る事ができないわよ。竜樹様は子供好きだから、そこを押さえたら結構いい点とれるわよ。竜樹様だけじゃなくて、他の男性も、よく見る所よ。」
「わ、分かったわ。」
「分かったわよ!」
むぐぐ。
ジェムとツバメの隣で、竜樹の口も、笑いたくてムグムグしている。
ラフィネさん、上手い事言って姉妹を従えた。
竜樹の肩が笑いを堪えて震えているので、ラフィネはそっと人差し指を口の前に立てて、ふふ、と笑った。
「さあ、明日から忙しいわよ。皆、今日は寝ましょう。この部屋の隅に余った布団があるから、持ってきて横になるといいわ。おやすみなさい、エクレ、シエル。」
「おやすみなさい。」
「フンッ!お、おやすみ!」
姉エクレと妹シエルは、子供達の寝ている周りの一角に布団を敷き、コロンと横になり、眠った。シエルは興奮していたので、なかなか寝付けず、竜樹がツバメを、夜に何度もお乳あげたり、泣いてるのをよいよいしたり、しているのを知った。
赤ちゃんて、大変なんだなー、うるさい。と。
朝になったら、シエルの腹の上に、子供の足が乗っかっていた。朝からムッとしたが、シエルは大人になるのだ。多分大人の女性は、子供をそんな事で怒ったりしない。
なんて優しいの、私!
シエルは自分で自分に褒めてやった。
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