王子様を放送します

本編

神鳥放し

ロシェは、自分達が愛情込めて育てた、めんどりを、ギュッと抱っこしてから、鳥籠に入れた。
お見合いして相性が良かったおんどりも、隣の鳥籠に入っている。ペアが混ざってしまうといけないので、ツガイの籠は同じ色のリボンで７色、見分けをつけてある。
荷車に乗せて、飛びトカゲ発着所まで、荷運びさんに引っ張ってもらう。
子供達と竜樹は、めんどりとおんどりの荷車にくっついて、見送りに。

「もりでも、げんきでねー！」
ニリヤが、てこてこ荷車の隣を歩きながら、ツガイに声をかける。
「ながいき、だよー。」
ちっちゃい子組のサンも、竜樹と手を繋いで歩きながら。
「強く生きろよ！」
とジェム。
「いっぱい広がれよー！」
ネクターも力づける。

飛びトカゲ発着所に、トカゲ７匹分の荷物配達人と、それぞれの都市へ向かう見届け人が、ピシッと背筋を伸ばして待っていた。
見届け人は、神関係という事で、ノノカ神殿長とファヴール教皇の推薦だ。神殿から３名、教会から４名。一番の年嵩の見届け人が、一歩前に出た。

「私共が、責任を持って、ちゃんと森まで届けますからね。７都市の領主達も狩人も、ワクワクと待っていますよ。神鳥放しの儀式をしようと、あちこちで準備をしています。これから毎年、ちょっとした地方の祭りになりそうです。」

そうなのだ。オーブによれば、まだまだたまごを産むから、時々ツガイを、森に届けて欲しいのだと。そうすれば、オーブの力が、代を経る毎に薄まるのを、プラスできる。
同じく、養鶏場へも、定期的にオーブのたまごから孵っためんどりを売ってほしいそうだ。
たまごを産む数は、代を経ても、一度に３個以下にはならない。でもオーブのたまごから生まれためんどりを入れれば、５個位産むようになるし、力も足してあげたいのだと。

オーブが死んじゃったら、どうするの？とジェムが心配すると、オーブは。
『わたし、こどもたちに可愛がってもらえてたら、たぶん死なないよ？』
だそうである。さすがの神鳥だ。

かくして、竜樹は、たまご事業で定期的にお金を貰える事になった。もちろんそのお金は、子供達の為に使う事に。

「「「では、行ってまいります！」」」
「「「行ってらっしゃーい！」」」

皆で見送って、飛びトカゲに手を振って。

７匹の飛びトカゲが、それぞれ小さな影になるまで、空を見上げていた。

「行っちゃった•••。」
ロシェが、ポツンと呟く。

「皆、寮に帰って、テレビを観ようよ。スーリール達が、神鳥放しの儀式を撮影に行っているから、夕方のニュースでやるよ。」
「みよう、みよう！」
「かえろ！」
オーブも待ってるよ。

寮に帰ると、オーブが庭で、コココと鳴いていた。ただいまー、と子供達が挨拶すると、コッコッ、と寄ってきた。
ロシェのズボンをクチバシで摘むと、くいくい、と小屋に連れて行こうとする。
「何かあるのかな？」
「オーブ、なに？」
引っ張られて小屋に行くと、真新しい藁で作られた巣に、たまごが５個。
オーブは巣に入ると、たまごを温める、かと思いきや。コロ、コロリン、とクチバシで押し、足で蹴って巣から出して。しゃがんだロシェの方へどんどん送ってきた。

「オーブ•••。」
「オーブの話、聞いてみるかい？」
竜樹がスマホを出すが。

「ううん。オーブ、これ、食べてね、ってこと、だよね。」

ココ！

コックリコックリ。
うん、スマホ出さなくても分かるよ。
「ロシェ、どうするかい？」