王子様を放送します

竹 美津

文字の大きさ
上 下
163 / 565
本編

オーブとお話

しおりを挟む
「じゃあみんな、オーブとお話してみような。」
「「「はーい!」」」

オーブの小屋の前で、子供達と王子達、アルディ王子とエフォールも集まって、足がちょっと曲がって繋がっているオーブに、スマホをかざす。
翻訳アプリをポチッと開いて。

「オーブ、俺のお話、分かりますか?」
オーブは、ん?と首を捻って。
ココ!ココココ?

画面に、文字が、パラパラと現れる。

オーブ
『分かるよ!いつも、みんなのことばも、分かってるよ?』

竜樹が読み上げる。
おお~!
皆して、スマホとオーブを見比べる。

「俺たち、今初めて、オーブの言葉、スマホで翻訳して分かったんだ。少しお話しても良いかい?」

オーブ
『いいよ!そうだ、たまご、あっためたやつが、大きくなったら、たまご産むから、こんどは食べてね!』

「おお~。オーブは、たまご、食べてほしいなって、産んだの?」

オーブ
『そうだよ!皆が、可愛がってくれたから、力を込めた、たまごをプレゼントしたの!』
コココッコ!とドヤ顔である。

ロシェが、ふにゅ~と口を曲げて、オーブに。
「たまご、せっかく産んだのに、食べちゃったら、かわいそうじゃない?」

オーブ
『うんうん。ロシェは、そう言ってくれるとおもった!』

「でしょ?たまご、育てるのでも、いい?」

オーブ
『うーん。いっぱい食べてほしくて産んだから、たぶん、めんどり、いっぱい増えちゃうよ?どうしたらいいかなぁ?』

オーブ、見切り発車で産んだんかい。
竜樹が、神様の言葉を伝える。

「神様は、普通の雄鶏と結婚したら、ちょうど良くなるって言ってたよ。売っても、食べても良いって。オーブは、めんどり達が、売られたり、食べられたりしても、いいのかな?」

オーブ
『そうなんだ!良かった!うんいいよ!食べて食べて~!このめんどり達は、わたしの力のカケラなの。わたしの子供って訳じゃないんだよ。でも、生き物は、命あるものを食べて大きくなるでしょ?おんどりと結婚しためんどりが産むたまごも、肉も、そこにわたしの力が流れて、ちょっとみんなの手助けできるとおもうの。』

複雑そうな顔をしたロシェは、やっぱりまだ思いきれず。
「でも、かわいがって育てたから、食べるのなんだか、むずかしいよ。」

オーブ
『うんうん。ロシェ、ありがとうねえ。じゃあ、そうだんね。ロシェ、ぜんぶは、育てられない。でも、ぜんぶ、食べちゃわなくてもいい。だって、食べきっちゃったら、命の繋ぎが終わっちゃうもんね。わたしのたまご達が、広がったら、うれしいな。これでどう?』

「う~ん•••。どういうこと?」
ロシェは首を傾げて。

オーブ
『めんどりと、おんどりと、一つのツガイを、主な7都市の近くの森に、放してほしいの。そこの鳥と混ざって、ふえるから、たぶん狩人が、狩るとおもう。美味しい鳥になるよ!森の動物達も、食べるかも?フンは、森のいい栄養になるしね!そして、ぜんぶは狩らないでくれたら、私の力の鳥が、森に生きるよ!そのためのめんどりを、ロシェ、みんな、育ててくれない?』

「森に生きるの?」
ふこ、とロシェは鼻息。
「たまごは、どうする?」
ジェムは、心配気にオーブに聞く。

オーブ
『森に放すめんどりと別に、鳥を育ててたまごをとる仕事の人に、めんどりを売ってくれたら、いいなあ。たまご、いっぱい産むよ。たまごを産まなくなったら、お肉にしても良いけど、たぶん、森に放した鳥を狩った方が美味しいと思う。でも、そこそこ食べられると思うから、命をムダにしないで、食べてほしい。畑にもフンを使ってね。』

ロシェは、むぐ、と口を結んで。
「やっぱり、食べるんだね。たまご。」

オーブは、ロシェに、トットッと近づく。そのふさふさの羽で、しゃがんで下ろしたロシェの手に、すりすりとやって。ロシェは、オーブの羽を、ふかふか、と撫でる。

オーブ
『ロシェ。ロシェは、時々、お腹痛くなるでしょ。そういうの、少なくなるよ。たまごを食べて、私の力を、どうかもらって。みんなにも、食べてもらいたいの。』

「うん•••。」
ロシェは、項垂れてオーブを抱っこする。
竜樹はロシェの背中を撫でる。
「ロシェ。今すぐじゃなくていいから。そうだろ?オーブ。ロシェや皆が、めんどりを育てて、森に放して、それからでも。』

オーブ
『あと、たまごを取る人に、めんどりを売ってからでもね。いつでもいいよ。ロシェ、一番かわいそうなのは、せっかくのたまごや鳥を、食べずに捨てちゃうことなんだ。土に帰ると思うけど、せっかくなら、食べてね。それと、今まで通り、私と仲良くしてね。」

「うん。うん。勇気が出たら、食べる。まっててね。」
ギュッとオーブを抱きしめて、羽に顔を埋めて、ロシェは一応、納得した。

それから、子供達は、オーブが温めて孵しためんどりを育てた。1度目のめんどりと、買ってきたおんどりをつがわせて、そこで産まれたひよこは、2か月かかって育ち、おんどりとめんどりになった。

竜樹達、大人は、「神様のめんどりが産んだ、たまごをたくさん産むめんどり」を、ちゃんと健康に育てて、たまごを取ってくれ、適正価格で売ってくれる人を募集した。いい業者を選び、「かみたまご」と命名したブランドたまごは、安くて美味しく提供できる。
オーブのたまご以外、次代のたまごは、おんどりとつがわないと、ひよこにならなかったので、べらぼうに増えるのは何とかなった。

「かみたまご」のめんどりは、一つの業者だけに専売させず、主要7都市の近郊養鶏場に下ろした。
小さくても、良心的な所には下ろすようにしたので、皆「かみたまご」のめんどりを欲しがり、その為に、養鶏の業種そのものが、ずいぶんいい方向に発達した。

かみたまごが流通し始めて、森に放すつがいも準備できた。狩人達に半年はめんどりとおんどりを狩らないよう、前もって通達を出した。そうすれば、きっと実入りになるから、とギフトの御方様が言うなら、試してみる価値はある。それに狩人達は、仕事柄、狩り尽くさない事を承知している。

今日は、森に放すつがいとの、お別れの日。
「げんきで、ふえるんだぞ!おまえたち!」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

処理中です...