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本編
迷子はいない
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午後のフリーマーケットは、初めての開催でちょこちょこと問題はあったが、大きな問題はなく、ほぼ順調に行われていた。
小さな問題は、やはり貴族と平民を混ぜたので、貴族側の子供からの、先に並ばせろだの、先に見つけたのだから買った商品をこちらに譲れだの。
それは運営が間に入って、従者に代わりに並んでもらって待ってもいいですよ、とか、お店側とも協議して、似たような商品があればそちらを薦めたり。無ければ、ジャンケンで勝負!と竜樹が言い出して、恨みっこなしよ、としたら、何だかそれが流行った。
迷子も何人か出た。テレビで呼びかけたら、大慌てで親が迎えにきて、くれた子はいいのだが。
「か、母ちゃんが、ギフトの、お、おんかたさまのところへ行けって。ヒック、うちでは、た、たべさせて、やれないって。」
6歳くらいのぐしぐし泣いている男の子と、手を繋いで黙って目を見張っている、お兄ちゃんより二回り小さい、妹らしき女の子。
お父さんは?と聞くと、「父ちゃんは、ぎょうしょうに行ったらかえってこなかった。もうずっといない。」と言う。
竜樹は迷子案内所で、ため息をつきたい気持ちを隠して、そっと笑った。
「そうか、そうか。俺がもう少し早く、片親のお父さんお母さんが相談できるところを作ってやったら良かったなぁ。ごめんなぁ。今から、テレビでお母さんに呼びかけてみようか。ギフトの人の俺が相談にのるから、はやまらないで子供の君たちを迎えにきて、ってな。」
「ウン。」
「かあたん、くる?」
女の子がはじめて口を開いた言葉に、竜樹は何と言ったらいいか。
「お母さん、くるといいな。」
撫で撫でして、抱っこしてやると、女の子は、こっくり頷いて、竜樹の肩に頭を乗っけると、親指をちゅうちゅうした。
テレビの司会、パージュさんに詳細を話して。真剣な顔で頷き、打ち合わせを終えると、マイクに向かって放送し出した。
『迷子の放送をいたします。迷子の放送をいたします。6歳の男の子、トール君と、妹の4歳のリニァちゃん。こちらの2人の兄妹のお母さん。どうぞ、本部の迷子案内所まで来てください。どうか早まらないで、ギフトの御方様が、お母さんと子供達が一緒にいられる方法を考えて下さいます。どうか2人をお迎えに来てください。』
竜樹も話す。
『お母さん、一人で子育てに、食べるための稼ぎにと、大変でしたね。俺で良ければ、相談にのりますから、どうか子供達を迎えに来てください。子供達はお母さんを待っています。一度離れてしまったら、なかなか会う事は難しいですよ。まだまだ親子3人で暮らしていける、そんな方法があります。思い直して、迷子案内所まで来てください。お母さんの側に誰かいたら、思い直すよう、話してみてください。俺は迷子案内所にいます。話をしましょう。聞かせてください。よろしくお願いします。』
「•••母ちゃん、きてくれるかなぁ。」
心配気に、母を探して人混みをキョロキョロ見回しているトール。竜樹は痩せている小さな2人に、タカラが持っていたお昼の残りのたい焼きを出して、飲み物を用意して、お腹を落ち着かせてやる。
しばらく2人と、迷子案内所で待っていると、トールが、ハッと一方を見て、タタッと駆け出した。
「母ちゃん!」
トールが引っ張ってくる女性は、痩せて顔色が悪く、俯いているのに目がギラギラして、疲れているのに興奮しているようだった。もう一人、年嵩の女性が母親の背中に手をやり、宥めながらこちらに向かってくる。
「かあたん!りにぁ、いいこちてた。」
「母ちゃん、ギフトのおんかたさまが、たすけてくれるって。」
話を聞いてみれば、お母さんは、夜は内職の繕い物をして、昼間は子供の世話に食堂の下働き、と、1日僅かしか睡眠をとっていなかった。食事も子供達にやってしまって、ほとんど食べられず。そんな状態ではまともな判断が出来ようはずもない。
その働いている食堂のおかみさんが、子供達を迷子案内所へ連れてくる時も、そして思い直して迎えに来る時も、付き添ってくれていて、親切に面倒をみていたらしかった。
まずは、親子は教会のお母さんシェルターにお世話になる事にして、子供達は昼間、教会に面倒を見てもらい、お母さんはゆっくり休むように、と手配をして。
「食堂のおかみさん、ひと月くらいは、お母さんは仕事をお休みさせてあげてください。ゆっくり休んで、子供達も安心して暮らしていける、ってなってから、昼間は食堂で働いてもいいし。」
「ええ、ええ。エフェはこの頃、顔色も悪いし、ふらついたりもして、心配していたんですよ。」
今日は食堂よりフリーマーケットに人が多く来るだろうから、時間が空いた事もあって。何だか思い詰めた様子のエフェ母さんに、寄り添ってくれた。迎えに行くよう、説得もしてくれた、と。
「ギフトの御方様、どうか、面倒を見てやってください。エフェは頑張ってきたんです。トールもリニァも良い子達です。離れ離れにならなくても、やっていけるようにしてやってください!」
人情に厚いおかみさんに。
「はい、分かりましたよ。まずは3人とも、ご飯をしっかり食べて、よく寝て、ゆっくり休んでね。」
教会の担当者を呼んで引き継ぎをして、竜樹は、促され教会の母子寮に向かっていく3人を見てため息をついた。
「これは、臨時相談所を開いた方がいいかなぁ。」
約束だった教会の出店に行き、午後出店担当の子供達に会って、フリフリぎゅっとのあと、助祭とも話して、少し臨時の相談所をやる事に。
子供新聞売りのブースも、本部に帰りがけに寄って、完売していて。ゆっくり休んでいる子供達に、侍女侍従さん達に付いてもらって遊んでおいで~と背中を押して。
本部に机を出して、広場のテレビでチョコっと放送したら、ポツポツと疲れた様子の親子が訪れた。
片親6名、子供8名。
それから、片親ではないけれど、母親が病気がちで貧しい親子に、ただ竜樹からお金を貰いたいだけの、酔っ払いの親と冷めた瞳の男の子供。
片親達には、日中子供を教会に預けられるよう配慮して、貧しい親子には、医者の手配と割りのいい仕事を斡旋する事に。子供には教会に勉強においでと伝えて。酔っ払いはとっ捕まえて隔離し、強制的に酒を抜く。冷めた瞳の男の子は、教会で面倒を見てもらう。
「教会大活躍だなぁ。お金を回さないとね。」
竜樹が息を吐いたその時、ちょうどテレビでスーリールが。
『皆さん、宝くじって知っていますか?銅貨3枚で1枚買える、番号の書かれたクジなんです!これが見本のクジですよ!』
ピラッと、魔法で番号の書き換えができなくした、キラキラしたクジ券を見せて。
『番号がぴたっと当たれば金貨200枚に。これで貴方も小金持ち!欲しかったあの家も買える、開きたかったお店の資金にも、なっちゃうかも!夏の宝くじ、太陽の月1日に発売!1等はたった1人にだけ当たります。ですが、1等を外しても、2等の金貨10枚や、3等の金貨1枚、4等の銀貨1枚もあります!外れた中から残念賞として、ジャムの詰め合わせが当たるかも。外れクジも、残念賞の発表まではとっておくといいですよ!さあ、銅貨3枚で小金持ちになるのは、だ~れ?発売日を、お楽しみに!』
ざわっとした会場に、金貨200枚だって!銅貨3枚で!?などと声が聞こえて。
「頼むぜ宝くじ。夢を沢山売って、子供達にご飯を食べさせてくれ。」
「きっと上手くいきますよ。皆、興味津々といった様子ですもの。」
手を組み祈る竜樹に、タカラが励ます。
結局それ以降、困っている親子は来なかった。竜樹は、まだまだ潜在的に困ってる家庭があるのかもなぁ、相談員を教会に準備すべきだな、そしてそれをテレビや新聞で流そう、と決めた。
「ししょう~!れぽーと、してきたよ!」
「してきた!」
「疲れたよー!」
「おおーニリヤ。プラン、サージュ。子供報道員は、もうお仕事終わったのか?」
おわったー、まださいごのあいさつあるよ、と言い合う後ろに、スーリール達ニュース隊。
「もうそろそろ、フリーマーケットも終わりですね。みんな、せっかく出した商品を持って帰りたくないから、値引きを始めてます。お買い得品、あるかもですよ!」
「おお~。スーリール達は、お買い物は?」
「レポートしながら、小さいものは買っちゃいました。平民側の出店で、木彫りのブローチ。石が嵌め込んであって、ニスでピカピカして、とっても綺麗なんですよ。」
ヘェ~。
未来のアクセサリー作家と交流をしてきたスーリールは、「お値引きお買い得、のお知らせしなきゃ!」とカメラマンのミランを置いていき。
いつものニュース隊で、お買い得のお知らせをすると、お客さんの波も、それぞれ目当てのお店に散って行った。
小さな問題は、やはり貴族と平民を混ぜたので、貴族側の子供からの、先に並ばせろだの、先に見つけたのだから買った商品をこちらに譲れだの。
それは運営が間に入って、従者に代わりに並んでもらって待ってもいいですよ、とか、お店側とも協議して、似たような商品があればそちらを薦めたり。無ければ、ジャンケンで勝負!と竜樹が言い出して、恨みっこなしよ、としたら、何だかそれが流行った。
迷子も何人か出た。テレビで呼びかけたら、大慌てで親が迎えにきて、くれた子はいいのだが。
「か、母ちゃんが、ギフトの、お、おんかたさまのところへ行けって。ヒック、うちでは、た、たべさせて、やれないって。」
6歳くらいのぐしぐし泣いている男の子と、手を繋いで黙って目を見張っている、お兄ちゃんより二回り小さい、妹らしき女の子。
お父さんは?と聞くと、「父ちゃんは、ぎょうしょうに行ったらかえってこなかった。もうずっといない。」と言う。
竜樹は迷子案内所で、ため息をつきたい気持ちを隠して、そっと笑った。
「そうか、そうか。俺がもう少し早く、片親のお父さんお母さんが相談できるところを作ってやったら良かったなぁ。ごめんなぁ。今から、テレビでお母さんに呼びかけてみようか。ギフトの人の俺が相談にのるから、はやまらないで子供の君たちを迎えにきて、ってな。」
「ウン。」
「かあたん、くる?」
女の子がはじめて口を開いた言葉に、竜樹は何と言ったらいいか。
「お母さん、くるといいな。」
撫で撫でして、抱っこしてやると、女の子は、こっくり頷いて、竜樹の肩に頭を乗っけると、親指をちゅうちゅうした。
テレビの司会、パージュさんに詳細を話して。真剣な顔で頷き、打ち合わせを終えると、マイクに向かって放送し出した。
『迷子の放送をいたします。迷子の放送をいたします。6歳の男の子、トール君と、妹の4歳のリニァちゃん。こちらの2人の兄妹のお母さん。どうぞ、本部の迷子案内所まで来てください。どうか早まらないで、ギフトの御方様が、お母さんと子供達が一緒にいられる方法を考えて下さいます。どうか2人をお迎えに来てください。』
竜樹も話す。
『お母さん、一人で子育てに、食べるための稼ぎにと、大変でしたね。俺で良ければ、相談にのりますから、どうか子供達を迎えに来てください。子供達はお母さんを待っています。一度離れてしまったら、なかなか会う事は難しいですよ。まだまだ親子3人で暮らしていける、そんな方法があります。思い直して、迷子案内所まで来てください。お母さんの側に誰かいたら、思い直すよう、話してみてください。俺は迷子案内所にいます。話をしましょう。聞かせてください。よろしくお願いします。』
「•••母ちゃん、きてくれるかなぁ。」
心配気に、母を探して人混みをキョロキョロ見回しているトール。竜樹は痩せている小さな2人に、タカラが持っていたお昼の残りのたい焼きを出して、飲み物を用意して、お腹を落ち着かせてやる。
しばらく2人と、迷子案内所で待っていると、トールが、ハッと一方を見て、タタッと駆け出した。
「母ちゃん!」
トールが引っ張ってくる女性は、痩せて顔色が悪く、俯いているのに目がギラギラして、疲れているのに興奮しているようだった。もう一人、年嵩の女性が母親の背中に手をやり、宥めながらこちらに向かってくる。
「かあたん!りにぁ、いいこちてた。」
「母ちゃん、ギフトのおんかたさまが、たすけてくれるって。」
話を聞いてみれば、お母さんは、夜は内職の繕い物をして、昼間は子供の世話に食堂の下働き、と、1日僅かしか睡眠をとっていなかった。食事も子供達にやってしまって、ほとんど食べられず。そんな状態ではまともな判断が出来ようはずもない。
その働いている食堂のおかみさんが、子供達を迷子案内所へ連れてくる時も、そして思い直して迎えに来る時も、付き添ってくれていて、親切に面倒をみていたらしかった。
まずは、親子は教会のお母さんシェルターにお世話になる事にして、子供達は昼間、教会に面倒を見てもらい、お母さんはゆっくり休むように、と手配をして。
「食堂のおかみさん、ひと月くらいは、お母さんは仕事をお休みさせてあげてください。ゆっくり休んで、子供達も安心して暮らしていける、ってなってから、昼間は食堂で働いてもいいし。」
「ええ、ええ。エフェはこの頃、顔色も悪いし、ふらついたりもして、心配していたんですよ。」
今日は食堂よりフリーマーケットに人が多く来るだろうから、時間が空いた事もあって。何だか思い詰めた様子のエフェ母さんに、寄り添ってくれた。迎えに行くよう、説得もしてくれた、と。
「ギフトの御方様、どうか、面倒を見てやってください。エフェは頑張ってきたんです。トールもリニァも良い子達です。離れ離れにならなくても、やっていけるようにしてやってください!」
人情に厚いおかみさんに。
「はい、分かりましたよ。まずは3人とも、ご飯をしっかり食べて、よく寝て、ゆっくり休んでね。」
教会の担当者を呼んで引き継ぎをして、竜樹は、促され教会の母子寮に向かっていく3人を見てため息をついた。
「これは、臨時相談所を開いた方がいいかなぁ。」
約束だった教会の出店に行き、午後出店担当の子供達に会って、フリフリぎゅっとのあと、助祭とも話して、少し臨時の相談所をやる事に。
子供新聞売りのブースも、本部に帰りがけに寄って、完売していて。ゆっくり休んでいる子供達に、侍女侍従さん達に付いてもらって遊んでおいで~と背中を押して。
本部に机を出して、広場のテレビでチョコっと放送したら、ポツポツと疲れた様子の親子が訪れた。
片親6名、子供8名。
それから、片親ではないけれど、母親が病気がちで貧しい親子に、ただ竜樹からお金を貰いたいだけの、酔っ払いの親と冷めた瞳の男の子供。
片親達には、日中子供を教会に預けられるよう配慮して、貧しい親子には、医者の手配と割りのいい仕事を斡旋する事に。子供には教会に勉強においでと伝えて。酔っ払いはとっ捕まえて隔離し、強制的に酒を抜く。冷めた瞳の男の子は、教会で面倒を見てもらう。
「教会大活躍だなぁ。お金を回さないとね。」
竜樹が息を吐いたその時、ちょうどテレビでスーリールが。
『皆さん、宝くじって知っていますか?銅貨3枚で1枚買える、番号の書かれたクジなんです!これが見本のクジですよ!』
ピラッと、魔法で番号の書き換えができなくした、キラキラしたクジ券を見せて。
『番号がぴたっと当たれば金貨200枚に。これで貴方も小金持ち!欲しかったあの家も買える、開きたかったお店の資金にも、なっちゃうかも!夏の宝くじ、太陽の月1日に発売!1等はたった1人にだけ当たります。ですが、1等を外しても、2等の金貨10枚や、3等の金貨1枚、4等の銀貨1枚もあります!外れた中から残念賞として、ジャムの詰め合わせが当たるかも。外れクジも、残念賞の発表まではとっておくといいですよ!さあ、銅貨3枚で小金持ちになるのは、だ~れ?発売日を、お楽しみに!』
ざわっとした会場に、金貨200枚だって!銅貨3枚で!?などと声が聞こえて。
「頼むぜ宝くじ。夢を沢山売って、子供達にご飯を食べさせてくれ。」
「きっと上手くいきますよ。皆、興味津々といった様子ですもの。」
手を組み祈る竜樹に、タカラが励ます。
結局それ以降、困っている親子は来なかった。竜樹は、まだまだ潜在的に困ってる家庭があるのかもなぁ、相談員を教会に準備すべきだな、そしてそれをテレビや新聞で流そう、と決めた。
「ししょう~!れぽーと、してきたよ!」
「してきた!」
「疲れたよー!」
「おおーニリヤ。プラン、サージュ。子供報道員は、もうお仕事終わったのか?」
おわったー、まださいごのあいさつあるよ、と言い合う後ろに、スーリール達ニュース隊。
「もうそろそろ、フリーマーケットも終わりですね。みんな、せっかく出した商品を持って帰りたくないから、値引きを始めてます。お買い得品、あるかもですよ!」
「おお~。スーリール達は、お買い物は?」
「レポートしながら、小さいものは買っちゃいました。平民側の出店で、木彫りのブローチ。石が嵌め込んであって、ニスでピカピカして、とっても綺麗なんですよ。」
ヘェ~。
未来のアクセサリー作家と交流をしてきたスーリールは、「お値引きお買い得、のお知らせしなきゃ!」とカメラマンのミランを置いていき。
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