125 / 527
本編
夜明けの聖歌
しおりを挟む「今日は、もう、本当に眠いから、バラン王兄様、讃美歌、このイヤホンで、ここで聞いて行ってくだせえ。」
「いやほん?この紐で繋がっているものを使うのかい?」
竜樹が元いた世界から持ち込んであったスマホのイヤホンは、コードレスではなかった。この世界で使うにも、見た目分かりやすいかもしれない。
差し込み口に端子を差し、バラン王兄の耳の片方に入れて。
竜樹の寝ている所で、子供達にまみれながら、バラン王兄も腹這いになって布団に横たわった。
「ここで、文字を入れます。さ、ん、び、か。で、検索して出て来たやつを、順々に聞いてみて下さい。はい、こっちの耳もイヤホン入れて。音は大きすぎませんか?このボタンで調整できますよ。」
「!!!ああ、大丈夫だ!•••~♪♪♪」
ずっとくすくすしているパージュさんは、眠くて、でもお客さんが来たから起きていたい、うにうにしている子供達を撫でて、布団の円の端っこに、パタンコと添い寝した。
うん、バラン王兄、すぐ終わりそうもないよね。そして、事実婚状態のバラン王兄がいれば、竜樹がいるが、子供達と寝てても大丈夫といえよう。
フッ と灯をタカラが消して、薄暗くなった中、バラン王兄の手元のスマホだけが、ぽわぁ、と光っている。
ああ、本当今日は長かった、な、あ。
竜樹は目を瞑り、あっという間に眠りの国へ落ちていった。
何度か、ツバメの授乳で起きて。
その度にバラン王兄の聞きたい音楽を、聖歌、で検索してみたり、讃美歌の説明の文章を出して読ませたり、パイプオルガンの曲を出したりして。
バラン王兄は、くつろいで上着を脱ぎ、すやすや寝ているパージュさんにかけておいて。フンフン、足をゆらゆら、音楽を聞いてご機嫌である。
竜樹は、そっと呟く。
「ツバメはよいこ、まだあんまりぐずらないねぇ。本当に生まれたてだったんかねぇ。誕生日聞いておけば良かったねぇ。いっぱいお乳を飲んで、どんどん元気に大きくおなり。」
よいよい、と抱っこして、タカラが用意してくれた哺乳瓶で授乳していると、バラン王兄が、ツバメの小さなおててをゆっくり握った。
「聖なるかな、愛し子達。少年達が合唱するものもあるんだね。とても、清らかで、荘厳で、神秘的で。神を讃える音楽とは、何と美しいものだろう。子供達と一緒に、ここで聞くというのも、また味がある。」
そっと、親指で、おててを撫でた。
「やる気が出るね。秋の音楽競演会や、音楽番組も、そろそろ形にしたいが、フリーマーケット後の方がいいだろう?聖歌を発表するのは、音楽番組じゃなくて教会の方が良いだろうなぁ。」
「生の音を、その場に行って聞く良さ、特別感も、ありますもんね。音楽番組では、広場がテレビに使われてしまった吟遊詩人達を、ぜひ特集して欲しいですね。」
もちろん。とバラン王兄。
ちゅむ、ちゅう。とお乳を飲み終わったツバメの背中をトントン、さすさすして。なかなかゲップしないのだが、けぷりとしたら、そっと布団の上に横たえる。吐いてもいいよう、顔を横に、そして布をツバメの布団の上には敷いてある。
「ああ、夜が明けてゆくね。」
「ねむい•••。」
起きたらバラン王兄とは、讃美歌や聖歌、パイプオルガンの曲を、いいね払いで別のタブレット魔道具にコピーして渡す事を約束した。
パージュさんは、寝起きの顔をバラン王兄に見られて照れていた。
子供達は、お姉さんが起きてもいたので、何となく嬉しそうだった。
嵐桃の試作を、桃兄弟のフリュイとタンジェリン、2人が住むラペーシュ村を治める領主のカリス子爵と、味わってみることになり。
ゼゼル料理長が作ったシェイクとパイとデニッシュを、3人は目を輝かせてパクついた。
貴族には大きなパイを、庶民向けには小さなデニッシュを。と決まり、カスタードを作って余る卵白を、ラングドシャやメレンゲクッキーにして売ることも合わせて決まった。
シェイクはどちらも買えるように。
それから、ツバメの面倒を、竜樹が夜疲れている時にみてくれるもう1人の侍女さんも決まった。
バラン王兄が、昼間活動しながら夜も赤子の面倒見では大変だろう、と、口添えをしてくれたらしい。
竜樹はツバメの面倒をなるべくみたいと思っているので、夜の前半と後半に分かれて、どちらかを侍女さんに任せる事とした。
忙しく過ごし、そして次の日。
今日は、ワイルドウルフから、アルディ王子の護衛クルーの、兄、辺境騎士団の団長が、両足の神経を繋ぐ治療をしにやってくる日だ。
45
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる