110 / 510
本編
水着会議
しおりを挟む「フィルさん、新聞売りの制服、可愛いって、なかなか好評ですよ!」
竜樹が、3王子、そして王妃様と集まったご婦人方の前で、挨拶を終えたばかりのデザイナーのフィルに、話しかける。
傍らには、ベビーバスケットに、スヤスヤ寝ているツバメがいる。
今は午前中、ジェム達は新聞売りへ、アルディ王子はお勉強、エフォールも家で過ごしている。3王子達は、今日はデザインのお勉強だ、と竜樹にくっついてきた。
「ぼくのねこのおみみの、おぼうしも、かわいいからだいすきです!」
「動きやすくて、着やすい!」
「私達、お気に入りの遊び着にしてるんだ!」
3王子の制服姿は、王妃様も帽子が可愛いと、良く王子達を撫でている。
「今日は、水着のデザインの原案、よろしくお願いします。マルグリット王妃様と貴族のご婦人達も、どうぞよろしくご協力ください。一緒に、俺の世界の水着を画面で見ながら、ご要望も聞きながら、どんな水着がこの世界に合うかなって感じでやっていきたいです。平民用は、また後日、スーリールとかに来てもらって別でやりましょう。」
「はい!この度は、新しく水着の発注をいただけるということで、ありがとうございます。可能な限り、デザイン、機能、頑張らせていただきます。このような新しい仕事をいただけて、とても光栄に思います!」
えんじ色の長髪を、シルバーの飾りがついた皮紐で結んで、上着は濃紺の落ち着いたデザインながらも、シャツ襟に刺繍をワンポイント。華やかさを隠せない、さすがのデザイナー、フィルである。
「竜樹様、新しく水着のデザインを皆さんで話し合う、なんて、楽しい会議に参加できて、私も嬉しいですわ!早速、水着がどんなものなのか、見せて欲しいわ!」
王妃様がワクワクした様子で促す。
「はいー。では、画面に映しますね。」
竜樹は、スマホで集めた水着写真を、パッと映した。あまり破廉恥ではない、ワンピースタイプから。水着の上に羽織る、穿く、ラッシュガードも見せて、こちらの世界でも応用して使えそうなデザインを選んだ。その中に着るものとして、シンプルなビキニと、それからリゾートで着るような、スカートの長いものも見せた。
「この、羽織るものがあるのは良いですわね。見せたくない所は隠しつつ、中は可愛くできるし。」
「ええ、ええ!パッと見たら破廉恥なようですけれど、上に着るとなれば、下着と一緒ですものね。短くてもいいですわね!」
「柄が新鮮ですわ!」
「ファッションも、楽しんで頂いて良いのですけど、プールは泳ぐ為のものなので、さっき映した長いスカートのものなんかは、まぁ参考までにくらいで。海に行く時なんか良いですね。真剣に運動したい人向けの、シンプルなものもありますよ。」
竜樹が、パパッとスポーツ用の水着を見せると、やはりそちらより華やかなものがいいようだった。
「ギフトの御方様。今までに見た水着は、みな中はピッタリしたものですよね。生地はどのようなものなのですか?」
「うーん、生地ねえ。着ると伸びてフィットする感じで、水がよくきれるものかな。水を吸っても重くならないもの。あと女性は確か、中にインナーショーツと、胸にはパッドが入って、透けないようになってると思いましたよ。」
竜樹が女性の水着について知っているのは、妹のサチのを洗濯した事があるからである。
「ふむふむ。伸縮性のある、九つ目蜘蛛の糸がありますが、その糸で織った布なんかいいかもしれません。薄くて伸びる、軽くて水切れがいい布なんですよ。それと、柄が難しい。あんなにも鮮明に、色とりどりな柄とは!」
「あー、柄は、印刷を工夫したら何とかならないかなー。新聞作る時の、試行錯誤のあれこれで、布向きな印刷ができたりは。」
「印刷所に掛け合ってみます。あと羽織もの、ボタンで留めるのじゃないんですね。あの真っ直ぐな金具、型で作るんでしょうか?」
「ファスナーね。そうだね、鋳造で作れるみたいよ。詳しい構造は、こんな感じ。」
画面にファスナーの拡大図を映して見せる。フィルは、新しい留め具!今までにない、面白いデザインです!と嬉しそうだ。
「ぼく、おはなのやつがすてきとおもう。」
「後ろにリボンついてるのが、かわいい。」
「男性用のも、柄が入ったら素敵かなぁ。」
「ぅあぶ、あぶ。ぅえ、うええん!」
あらら、ツバメ、起きたのね。
タカラと子育て経験のある侍女さんがサササとツバメを抱っこして退出する。授乳とオムツの面倒、頼むよ~。
みんなが微笑ましそうに、ツバメを見送る。うちの子もあんな頃があったわ~、などと和やかに。
ご婦人達の話し合いで、水着は基本的にラッシュガード着用で、中はそれぞれ好みのビキニスタイル、という事に決まった。足はビキニの上にレギンスを履いて、その上にひらっとしたショートパンツや短いスカート。
「サイズはどうしますか?俺の所では、既製品が一般的で、水着なら伸縮性があるから、あらかじめ作っておいたある程度のサイズの中から好きなデザインを選ぶ、なんて出来ます。平民向けは、既製品から選ぶのが良いでしょうが、貴族のご婦人方は、やっぱりオーダーメイドがいいですか?」
「竜樹様の見せて下さったような、ある程度できたデザインを見ながら、オーダーメイドで作るのがいいですわ!」
ふむ、じゃあカタログ作っておく、みたいなことかな?
「フィルさん、写真でのカタログ作りをしましょうか。通販のカタログ、見本に見せますね。えーっとこんな感じに、出来上がりの写真と、色違いなんかの生地と•••。」
「何ですのつうはんとは!?こちらの服、写真の中から選んで買えるという事ですの?やはり写真だと、着た時のイメージが、とってもわかりやすいわ!それに素敵なデザイン、竜樹様の世界の女性は、とても軽々として自由な服を着てらっしゃるのね!」
王妃様が、カタログ通販に食いつきました。
ご婦人方も見たい見たいというので、webカタログをつつーと流して見ながら。フィルも熱い真剣な目をして、ファッションチェックである。
ああ~これは見始めたら止まらないよ。そういうものだもん。
王子達は、お茶を飲みながら、しりとりなんかして遊びはじめちゃった。
結局、午前中いっぱいカタログを見て、竜樹はぐったりと、王妃様とご婦人方はイキイキと、水着デザイン会議を終えた。
「ギフトの御方様、本当に、今日は私を呼んでいただけて、嬉しく思います!このような貴重な新しい服に触れて、私の頭の中は、今キラキラしたデザインでいっぱいです!ありがとうございます!」
フィルは感激して、興奮して、竜樹に礼をする。
「それに新しい柄の可能性、水着のカタログ作りと、ワクワクする事ばかりです!」
「良かったです~。プール開きまでに、頑張っていきましょう。」
そしてこのカタログ見たい会は、平民向けでも、開催されてしまうのだった。スーリールと平民のご婦人方、そしてフィルはもちろん嬉々としていたが。
43
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
異世界で双子の勇者の保護者になりました
ななくさ ゆう
ファンタジー
【ちびっ子育成冒険ファンタジー! 未来の勇者兄妹はとってもかわいい!】
就活生の朱鳥翔斗(ショート)は、幼子をかばってトラックにひかれ半死半生の状態になる。
ショートが蘇生する条件は、異世界で未来の勇者を育てあげること。
異世界に転移し、奴隷商人から未来の勇者兄妹を助け出すショート。
だが、未来の勇者アレルとフロルはまだ5歳の幼児だった!!
とってもかわいい双子のちびっ子兄妹を育成しながら、異世界で冒険者として活動を始めるショート。
はたして、彼は無事双子を勇者に育て上げることができるのか!?
ちびっ子育成冒険ファンタジー小説開幕!!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
1話2000~3000文字前後になるように意識して執筆しています(例外あり)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カクヨムとノベリズムにも投稿しています
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~
明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる