王子様を放送します

竹 美津

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本編

水着会議

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「フィルさん、新聞売りの制服、可愛いって、なかなか好評ですよ!」

竜樹が、3王子、そして王妃様と集まったご婦人方の前で、挨拶を終えたばかりのデザイナーのフィルに、話しかける。
傍らには、ベビーバスケットに、スヤスヤ寝ているツバメがいる。
今は午前中、ジェム達は新聞売りへ、アルディ王子はお勉強、エフォールも家で過ごしている。3王子達は、今日はデザインのお勉強だ、と竜樹にくっついてきた。

「ぼくのねこのおみみの、おぼうしも、かわいいからだいすきです!」
「動きやすくて、着やすい!」
「私達、お気に入りの遊び着にしてるんだ!」
3王子の制服姿は、王妃様も帽子が可愛いと、良く王子達を撫でている。

「今日は、水着のデザインの原案、よろしくお願いします。マルグリット王妃様と貴族のご婦人達も、どうぞよろしくご協力ください。一緒に、俺の世界の水着を画面で見ながら、ご要望も聞きながら、どんな水着がこの世界に合うかなって感じでやっていきたいです。平民用は、また後日、スーリールとかに来てもらって別でやりましょう。」

「はい!この度は、新しく水着の発注をいただけるということで、ありがとうございます。可能な限り、デザイン、機能、頑張らせていただきます。このような新しい仕事をいただけて、とても光栄に思います!」

えんじ色の長髪を、シルバーの飾りがついた皮紐で結んで、上着は濃紺の落ち着いたデザインながらも、シャツ襟に刺繍をワンポイント。華やかさを隠せない、さすがのデザイナー、フィルである。

「竜樹様、新しく水着のデザインを皆さんで話し合う、なんて、楽しい会議に参加できて、私も嬉しいですわ!早速、水着がどんなものなのか、見せて欲しいわ!」
王妃様がワクワクした様子で促す。
「はいー。では、画面に映しますね。」
竜樹は、スマホで集めた水着写真を、パッと映した。あまり破廉恥ではない、ワンピースタイプから。水着の上に羽織る、穿く、ラッシュガードも見せて、こちらの世界でも応用して使えそうなデザインを選んだ。その中に着るものとして、シンプルなビキニと、それからリゾートで着るような、スカートの長いものも見せた。
「この、羽織るものがあるのは良いですわね。見せたくない所は隠しつつ、中は可愛くできるし。」
「ええ、ええ!パッと見たら破廉恥なようですけれど、上に着るとなれば、下着と一緒ですものね。短くてもいいですわね!」
「柄が新鮮ですわ!」
「ファッションも、楽しんで頂いて良いのですけど、プールは泳ぐ為のものなので、さっき映した長いスカートのものなんかは、まぁ参考までにくらいで。海に行く時なんか良いですね。真剣に運動したい人向けの、シンプルなものもありますよ。」
竜樹が、パパッとスポーツ用の水着を見せると、やはりそちらより華やかなものがいいようだった。

「ギフトの御方様。今までに見た水着は、みな中はピッタリしたものですよね。生地はどのようなものなのですか?」
「うーん、生地ねえ。着ると伸びてフィットする感じで、水がよくきれるものかな。水を吸っても重くならないもの。あと女性は確か、中にインナーショーツと、胸にはパッドが入って、透けないようになってると思いましたよ。」
竜樹が女性の水着について知っているのは、妹のサチのを洗濯した事があるからである。

「ふむふむ。伸縮性のある、九つ目蜘蛛の糸がありますが、その糸で織った布なんかいいかもしれません。薄くて伸びる、軽くて水切れがいい布なんですよ。それと、柄が難しい。あんなにも鮮明に、色とりどりな柄とは!」
「あー、柄は、印刷を工夫したら何とかならないかなー。新聞作る時の、試行錯誤のあれこれで、布向きな印刷ができたりは。」
「印刷所に掛け合ってみます。あと羽織もの、ボタンで留めるのじゃないんですね。あの真っ直ぐな金具、型で作るんでしょうか?」
「ファスナーね。そうだね、鋳造で作れるみたいよ。詳しい構造は、こんな感じ。」
画面にファスナーの拡大図を映して見せる。フィルは、新しい留め具!今までにない、面白いデザインです!と嬉しそうだ。

「ぼく、おはなのやつがすてきとおもう。」
「後ろにリボンついてるのが、かわいい。」
「男性用のも、柄が入ったら素敵かなぁ。」
「ぅあぶ、あぶ。ぅえ、うええん!」
あらら、ツバメ、起きたのね。
タカラと子育て経験のある侍女さんがサササとツバメを抱っこして退出する。授乳とオムツの面倒、頼むよ~。
みんなが微笑ましそうに、ツバメを見送る。うちの子もあんな頃があったわ~、などと和やかに。

ご婦人達の話し合いで、水着は基本的にラッシュガード着用で、中はそれぞれ好みのビキニスタイル、という事に決まった。足はビキニの上にレギンスを履いて、その上にひらっとしたショートパンツや短いスカート。

「サイズはどうしますか?俺の所では、既製品が一般的で、水着なら伸縮性があるから、あらかじめ作っておいたある程度のサイズの中から好きなデザインを選ぶ、なんて出来ます。平民向けは、既製品から選ぶのが良いでしょうが、貴族のご婦人方は、やっぱりオーダーメイドがいいですか?」
「竜樹様の見せて下さったような、ある程度できたデザインを見ながら、オーダーメイドで作るのがいいですわ!」

ふむ、じゃあカタログ作っておく、みたいなことかな?
「フィルさん、写真でのカタログ作りをしましょうか。通販のカタログ、見本に見せますね。えーっとこんな感じに、出来上がりの写真と、色違いなんかの生地と•••。」
「何ですのつうはんとは!?こちらの服、写真の中から選んで買えるという事ですの?やはり写真だと、着た時のイメージが、とってもわかりやすいわ!それに素敵なデザイン、竜樹様の世界の女性は、とても軽々として自由な服を着てらっしゃるのね!」

王妃様が、カタログ通販に食いつきました。
ご婦人方も見たい見たいというので、webカタログをつつーと流して見ながら。フィルも熱い真剣な目をして、ファッションチェックである。
ああ~これは見始めたら止まらないよ。そういうものだもん。
王子達は、お茶を飲みながら、しりとりなんかして遊びはじめちゃった。

結局、午前中いっぱいカタログを見て、竜樹はぐったりと、王妃様とご婦人方はイキイキと、水着デザイン会議を終えた。
「ギフトの御方様、本当に、今日は私を呼んでいただけて、嬉しく思います!このような貴重な新しい服に触れて、私の頭の中は、今キラキラしたデザインでいっぱいです!ありがとうございます!」
フィルは感激して、興奮して、竜樹に礼をする。
「それに新しい柄の可能性、水着のカタログ作りと、ワクワクする事ばかりです!」
「良かったです~。プール開きまでに、頑張っていきましょう。」

そしてこのカタログ見たい会は、平民向けでも、開催されてしまうのだった。スーリールと平民のご婦人方、そしてフィルはもちろん嬉々としていたが。

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