王子様を放送します

竹 美津

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本編

おでんわ、します

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「お父様!見えて聞こえますか?」

『おお、アルディ!見えてもいるし、聞こえているよ。お前のお母様もファング兄様もいるよ。元気でいるかい?』

ワイルドウルフ国のブレイブ王が、ラーヴ王妃とファング王太子を左右に座らせて、ソファにゆったりと寛いでいる。3人共、笑顔で手を振って。

ニコニコとアルディ王子はソファに座ったまま、尻尾をぶんぶんと振って、いいお返事をした。
「はい!元気です!今日は、いっぱいお話する事があって、あ、あ、ハルサ王様や、竜樹様、3人の王子殿下も一緒なんです!」

「すまぬな、ブレイブ王殿。私たちの国にも関係ある事を話すそうなので、お邪魔させてもらったよ。」
ハルサ王が言えば。
「こんにちは~!家族のお話に混ざらせてもらってすみません、説明する事があるので失礼します~。」
と竜樹が言い、オランネージュ、ネクター、ニリヤも、
「「「しつれいしますー!」」」
と声を揃えた。
もちろん大丈夫、とブレイブ王からの了解も得て。

「私、新しいお友だちができました!この間のテレビ、サンテ!の健康のやつ、お父様達、見られましたか?」

『ああ、見たとも!素晴らしい医療だな!私たちの国の、騎士や、その他の身体を使って仕事をする者達も、大きな怪我をしたりするから、あの医療は是非導入したい!魔法治療師をどう確保するかが課題だが•••ハルサ王とも、話をさせてもらおうと思っているよ。』
「後で詳しく話しましょうぞ。今は、アルディ殿下の話を。」

「はい!それで、あのテレビに出ていたエフォール君と、友だちになったのです!ほら、これ、ぬいぐるみを編んでくれたの。私なんだって!」
傍らに置いていた、アルディ王子の毛の色と同じ黒いクマちゃんを、ぎゅ、と抱いて、電話のカメラに差し出して見せる。

『おお、そうなのか!同じぜんそく仲間だものな。可愛らしいぬいぐるみだ!随分、器用な子なんだねえ。うんうん、仲良くなって良かった。楽しそうだね。』

「はい、楽しいです!お菓子、一緒作ったりしました!」
ウフフ、ふふふ、と3王子達とわちゃ、とダンゴになって。

「それで、今日は、こーでぃねーたの話もあって。」

『こーでぃねーた?』

子供新聞を作るため、街に出てアンケートを取った事。
そこに、ワイルドウルフ出身の獣人達が、話に来てくれた事。
そうして、身体能力の高い、力任せな獣人ばかりだと、人との間で考え方や行動に齟齬があり、お互い分かり合えずに問題が起こっている事。

「そこで、ワイルドウルフの国にいる、あまり力の強くない獣人達だったら、強い獣人達の習性や考え方に慣れているし、それで自分たちもちょうど良いように、付き合い慣れてるな、って話になって。」

『ふむふむ。そうかもしれぬ。私たちの王宮でも、調整役の文官は、弱い獣人である事が多いよ。』

「そうなのですね!そう、そんな風に、間に入ってくれたらな、て思ったんです。それがこーでぃねーたです!」

竜樹がここで、派遣の話をブレイブ王にした。
「派遣業では、元の派遣会社に人材を登録して、コーディネーターっていう役割の人が面倒をみてくれるんです。人材の能力に見合った仕事先と結びつけてくれたり、仕事上の悩みや、仕事の相手先との調整など、フォローしてくれます。出稼ぎが多いっていうワイルドウルフの国の獣人達なら、派遣の形で、コーディネーターを挟んだら、良いかもしれません。冒険者組合と仕事としては似てるけど、そこよりも、面倒見が手厚い感じですかね。」

『ふうむ。なるほど。人材に見合った仕事にさせて、同じ獣人がフォローもするとなったら、国を離れて働く獣人達も、安心して働けよう。雇い主も、仕事が上手くいけば、今後も獣人を贔屓にしてくれるだろうし。派遣に、こーでぃねーた、いいかもしれぬ。』

「お父様!では、こーでぃねーた、採用して下さいますか?」

『うむ。試しにやってみよう。』

やったー!
王子達で顔を見合わせて、手を挙げて喜び合う。
「今度出す、子供新聞に、こーでぃねーたの事、書いてもいいですか?」

『ああ。ただ、どんな風に書くか、事前に教えておくれ。情報をどんな風に出すかは、大切だからね。』

「はい!」

「後は、アルディ王子、温水プールと体育館の工事が、始まるから、ワイルドウルフの国の建築技術者に、参考にしてもらえるように、来てもらわなくちゃの話だよ。」
竜樹が促す。
温水プールは、水を魔石で浄化するので、取水口を作らなくて済む。ある程度したら、水は取り換えたいが、魔法で一気にできるのだ。取水口がないということは、事故の原因が1つ減るということだ。良かった良かった。

『ぜひとも、こちらの技術者を送らせていただきたい!ワイルドウルフとパシフィストの国の間は、小さな国を挟んでいるだけだから、飛びトカゲでおよそ3日もあればそちらへ着く。もう明日にでも送ってもいいのだろうか?』

「大丈夫ですよ。お待ちしています。」
ハルサ王が、うんうんと頷く。

「あの、奴隷じゃなかった魔法使いの、シャルム君が、大きな魔法で土台を作ってくれるそうです。魔法誓約書でお互いの国や人、獣人にも、損害を出すような事はできない、とした後、こちらの魔法院で魔法のコントロールを習っているから、実践で正確な大きさにプールを掘ってくれるそうなんです。」

「私たち、工事見に行ってもいい?」
竜樹に、オランネージュが聞いてくる。
「危ないから、少し遠くからなら、良いよ。一緒に行こう。」

わーい!
アルディ王子と3王子が盛り上がる。

『•••アルディ、本当に、元気になったわね。仲良しの友だちが、いっぱい、できたわね。良かった、良かったわ。』
しみじみとラーヴ王妃が言って、グスリと涙ぐむ。ブレイブ王が王妃の背中を撫でると、うん、と一つ頷いて、ハンカチで涙を拭きながら、王妃は笑った。
『嬉しい、嬉しいわ。はやくアルディに会いたいけど、楽しそうだから、ゆっくりでいいわ。新聞も、とっても楽しみよ。お母様は、アルディが楽しいと、すごく嬉しいの。』

「お母様!私も、お母様が、元気だと、嬉しいです!」

『アルディ!兄様も、嬉しいよ!こーでぃねーた、上手くいくといいな。こんな事調べてくれるなんて、すごく助かるよ。』

「兄様!お手伝い、少しはできたでしょうか?」

『とってもできてるよ!』

ウフフ。
照れて笑うアルディ王子に、ワイルドウルフの3人も、嬉しそうに笑った。
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