王子様を放送します

竹 美津

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本編

こーぢねーたー

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「バレちゃった。」

てへへ、とアルディ王子が舌を出す。

「みんな、楽にして。今日はお忍びだから、どうか普通に接してね。意見が聞きたくて、連れてきてもらったんだ。」

はっ、はい!
獣人3人、それぞれ、キジトラ猫耳オレンジ毛男子「お、おれ、私はパーシモンと言います。」、茶髪獅子耳男子「マロンです。」、金髪に黒毛混じり熊耳女子「ノワールです。」は、恐れ多い、といった風で、縮こまりつつも立ち上がった。

「よく、私のかお、わかったね。」
「はい、テレビ、あの、『みんなの健康』俺たちも観て。ご病気、良くなったですか?」
パーシモンが、眉を下げて聞いてきた。
「この病気は、すぐ治るっていうのじゃないんだ。でも、今までは何も出来なかったけど、こんどは咳出た時は、おさえる魔道具、これができて、だいぶ楽になったの。」首にかけた魔道具を見せる。

そうですかー、よかったー、とうんうん頷き。

「私達、初めてアルディ様のご病気知って。」
ノワールが、ためらいつつも話しかけ。

マロンも。
「俺たち頑丈だから、病気とかよく分かんなかったけど、そういえば故郷に、身体の弱い知り合い、結構いたな、なんて話し合ったりもして。」

「アルディ様のご病気が、よくなって、俺たちの国にも、何かいい事あったら、嬉しいなって。」
「アルディ様が、お試し治療してくださってるの、応援してます。」
「一人でも多く、よくなるといいです。」

「ありがとう!」
アルディ王子は、ふくふくっと尻尾が膨らむのを感じる。嬉しい、嬉しい。
「みんなは、この国に働きに来たの?」

そうです、とパーシモンが言う。
獣人達は、主に身体能力を使って、春から秋までの間、出稼ぎに出る。土建業者や冒険者として、身体が動くうちは外国にも出て働く。歳をとった者や、子供、子持ちの女性、大人しい獣人などが、国内の事を回している。

「俺たち、冒険者やってます。」
「そうなの。この国と友好条約を結んだから、これからも働きやすいといいんだけど。困ってることはない?」

あー。と3人、顔を見合わせて。
「そんなに差別とかはないけど、何か、やっぱり、人と比べると、何でも力任せで、やってみりゃいいじゃん、てなりがちみたいで。」
「人のが弱いから、良く、待って待って、良く考えて、って言われる。合同チーム組む時とか、意見が食い違って、困る事あります。」
「土建の方が、そう言う事でぶつかるの多いみたい。人のが、一回動いてやり直し、とかに体力使うから、慎重だよね。かかる時間と人足で、お金違うって。」

そうなんだ•••。
アルディ王子と、その周りで聞いていた3王子やジェム達は、へえーなるほど、とふむふむ聞いた。竜樹もである。
「故郷にいた時は、ウサギ系獣人のダチとかが、待って待って、って言って説明してた事が、ここに来て何となくわかるようになった気がします。」
「そうだよね。私も、ネズミ獣人の友達に、ノワールちゃんと同じにはできないよ~、って言われてたの、思い出すよ。」

アルディ王子は、そうなんだ、私は弱いと思ってたけど、私だけじゃなくて、獣人だからって、みんながみんな強い訳じゃないんだ。と、認識を新たにする。
「大人しい系の獣人たちは、人の弱さが、わかるんだね。」

「考えたら、大体同じくらいの力のなさですもんね。」
「その代わり、考えたり、細かい事が得意だよねぇ。」
「人もそうだよな。」

「そしたら、大人しい系獣人に、真ん中に入ってもらったら、人と獣人の気持ち、両方、分かるんじゃないかなぁ。」
アルディ王子は、ふと思いついた事を言ってみた。

「すごいな、アルディ王子。コーディネーターだね。真ん中で調整する役。それ、父王様に言ってみたら?」
竜樹が、横からちょろっとアドバイスする。
ひえっ!そのマントの留め具、ギフトの御方様!と獣人3人は、びっくり恐れ入った。

「ごめんごめん、横入りして。でも、なんかいい案に思ったからさ。3人とも、話し慣れた大人しい獣人に説明してもらったら、分かりやすいって思うかい?」
ピャッとしながらも、考えて答えて。
「お、思います!」
「私達の習性なんかも、分かってくれてるし。人に説明するの、興奮してると、その場だと焦って上手く出来なかったりするんです。」
「別に暴力振るうつもりなくても、俺なんか最初から怖がられてるし。」

へえ~。
子供達も、初めて聞く話に、何とも納得である。

「みんな、話してくれてありがとう。きなこ飴、もらっていってね。私、こーぢねーたーの案、お父様に話してみるね。」
「はい、お願いします。」
「そうなったら、助かります。」
「ありがとうございます!」

飴係の小さい子が、3つずつ、きなこ飴を獣人3人組の手のひらに乗せていく。うわー本当にお菓子もらえたぁ、と嬉しそうだ。

それを遠目に見ながら、狐系獣人護衛のクルーが、チッと舌打ちした。
何だよ。あのヒョロイ王子が、何だか生き生きとしてて。冒険者の獣人と仲良く話なんかして。何だかムカつく。
ムダ話してないで、持って帰って食えよ。ここで食うな!

何にムカついているのか、自分でも分からないままに、足で小石を蹴る。

そこに。

シャラン
シャラン

鈴の音がして。

「王子様方、ギフトの御方様、新聞売りの子供達がいる、というのは、こちらでしょうか?」

華やかな、ドレスを纏った一団。

ふわふわのフリルのワンピースを着た、10才位の少女が先頭に花を持って、アンケートとってる子供達と竜樹の顔を窺った。
警護の騎士団が、ピリッと緊張をする。
それを知ってか、近づき過ぎずに、少女と、その後ろの華やかな女性達が、ゆっくりと礼をする。

「本日は、王子様方、ギフトの御方様が、新聞売りの子供達といらっしゃる、そう聞いて、この花街の花、私達一同、お礼に参りました。」
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