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本編
ジェムとのおはなし
しおりを挟むアルディ王子は、ジェム達とも仲良くなり、午後一緒に遊んだりするようになった。
ジェム達の仲間の中には、身体が弱い者や、まだ小さい子もいたりするので、みんな同じ力ではない事に慣れている。アルディ王子も、無理なく楽しく身体を動かす事ができた。
「それで、アルディ様は、治すようすを、テレビや電話で、家族に知らせてるのか。」
ジェムは、ミニサッカーをやる小さい子達の為に、石畳の上で点数とりながら、アルディ王子と話をしていた。
「うん。私が、出来る事、そのくらいだから。」
頑張るんだ。ふこっ、と鼻息荒く耳ピンと、意気込むアルディ王子。
「ヘェ~良いじゃん。運がいいよ、竜樹の魔法の板に、治し方載ってて。良かったじゃん。俺らみたいに、具合悪くなったら終わり、って奴が減るなら、俺も手伝うぜ。」
ピクン、と耳を震わせて、アルディ王子は目を見張る。
「具合悪くなったら終わり?お医者には?」
「家も親もなかった俺たちじゃ、医者に診てもらう金なんてないぜ。あ、今は、竜樹が、呼んでくれるか。ここにきたすぐの時、竜樹が、弱ってる仲間のために医者呼んでくれて、すげえ助かったんだ。」
具合悪くなったら、本当、すぐ死んじゃう。外に寝てると、弱るの速いんだ。飯もあんまり食べられなかったし。
「まぁでも、今は、全然いいよ。家もあって、3食食べられるなんて、夢みたいだ。俺、勉強して、大人になったら新聞作るんだ。」
俺たち街に詳しいし、竜樹の、役にも立つと思うから。
「そう•••。みんな、なりたいもの、あるのだね。わたし、私、何にもできなくて、兄様の、お手伝いしたいのにできないなんて、ジェム達は、笑っちゃうかな。」
もじもじ、手を揉みながら、アルディ王子は俯いた。
「何だよ、手伝いたいなら、やりゃ良いじゃん。何でも1人でやるよか、協力してやった方が、速くいっぱい出来るぜ。アルディ様の兄ちゃんも、助かるんじゃねーか?あ、赤チーム1点!」
ちびっこが、ゴールにボールを入れて。
「できるかな•••お手伝い。」
「できるだろ。今もしてるんじゃね?病気治す方法とか、偉い人が考える事だ。それに協力してるんだろ?」
うーん、とアルディ王子は唸る。
「それって、自分が治って良いことばっかりだから。良いのかな、って気がする。何か、役に立ってるなー、って感じのすることしたいかな?」
そうかぁ?とジェムは、語尾を伸ばして疑問の声をあげた。
「竜樹がよ、俺たちに、家をくれた時、俺たちばっかり得で、竜樹は損じゃん、って、俺言ったんだ。」
「うん。」
「青に1点!•••でも、俺たちが良くなると、竜樹は得なんだって言われた。でもそうだよな、何もしなかったら、俺たちは野垂れ死ぬだけだ。具合が悪けりゃ、何の手伝いもできない。俺たちが幸せになることで、将来、やれることも増えるし、みんなの幸せが増えるんだ、って。だから、幸せになって、良いんだって。むしろそれから始まる、って言ってた。」
幸せになっていい•••。
「何か役に立つ事したいなら、俺たちと新聞作ってみるか?竜樹が、練習に、子供新聞作ってみれば、って言ってくれたんだ。何か役に立つって、すぐに考えつかないだろ。」
試しにさぁ。
「新聞は、役に立つぜ。情報って、知ってるか知らないかで、本当に違うからさ。どこの屋台が、安くて美味くて量が多いか、なんて、知ってて損はないぜ。」
「こどもしんぶん~?ぼくもつくりたい!」
ニリヤが、ぴょんぴょん跳ねて、ジェムとアルディ王子の話に入ってきた。
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