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本編
生姜焼き
しおりを挟む結論から言って、生姜焼きはアルディ王子に好評だった。
テレビと郵便の力を使って、お米も見つけた竜樹だったので、(やっぱり地方にあった。そして醤油に使う麹菌も、地方で醤油の原型のような調味料作ってて見つけた)安心の生姜焼き定食である。
白い粒々の穀物を探しています!
お水を入れて加熱すると、ほっくり炊けて美味しいものです!
育っている時は、こんな形になっていて、私の国では、米っていいます!
知っている方は、王宮宛ハタナカタツキ食探し係まで!ギフトの御方様宛食探し係でも届くよ!
他に、調味料も、おらが土地の、こんなのあるよ、っていうの、教えて下さ~い!
ささやかだけど、教えてくれた人の中から有力な情報に、謝礼も出るよ。
とやったら、ドワッと郵便がきた。
色々な調味料、これから取材するのが楽しみである。
ちなみに謝礼は、米農家のルリさんに。お米の購入代金に上乗せして払った。
これから、結果発表としても、お米の料理をテレビで放送する予定がある。
ミランは、今も、生姜焼き定食のブツ撮りをしている。
「美味しいね!」
運動もして、お腹が減って。
モグモグ肉とご飯を食べるアルディ王子に、ブレイブ王も笑って、「本当にこの肉の料理は、美味しいな。」と満足そうだ。
勿論、浄化したキャベツの千切りもお皿に添えて。
「やっぱり調理法で、結構お肉を食べられるかもしれないね。臭みを抜いた、塊じゃなく、なるべく薄切りのお肉がいいかなぁ。しかしうまい。」
モグ、と肉と玉ねぎとキャベツをご飯に乗っけて、頬張りながら竜樹は考察する。
フォークに乗せた肉とご飯を、パクッと食べたニリヤの、頬についた米粒をとってやりながら。
「肉の種類とかは、お好みがありますか?」
「血抜きの不十分な肉は、嫌なようだ。種類は、どれが良くてどれが悪いということもなく、食べられる物がその日によって違うのだ。」
「こちらの世界では、お肉って育ててます?狩ってます?」
あー。
「育てて食べる肉は、高価だが、ある。一般的には、獣を狩ったものだね。狩らないと、増えるし、襲われるから、必要だ。」
「私の国でも、普段食べる肉は狩った肉だな。」
「あー、じゃあ、日によって、状態が違うかもですね。そうだったのか•••気づかなかったなぁ。まぁ、特別な物を食べるより、普段食べる肉でいきましょう。調理する前の下ごしらえで、血抜きと、臭み抜きをして、やってみようかな。あとは、肉じゃないタンパク質の食品も。食べるのが嫌になったらダメだから、美味しく、バランス良くね。」
お料理も、やってみるかい?王子達と。
アルディ王子に聞けば、きょろ、と3王子達を見て。
「一緒?」
「一緒!」
「あのね、じゃむつくったの。」
「片付けまでが、お料理なんだよ!」
うんうん、と頷く3王子。
「一緒に、やってみたいです!」
ふこ、と鼻息を荒くするアルディ王子に、じゃあ明日のお昼を作ってみようか、みんなで。という事になった。
大体食べ終わって、アルディ王子も一食分平らげて。食後のお茶を飲みながら、ちょっとゆっくりする。
「明日は、午前中と午後、お勉強もしてな。昼寝と遊びもやって。ジェム達が働くみたいに、王子達は、お勉強や色んな事を知って、やってみて、何かの役に立つお仕事の準備するのが、務めだな?」
うんうん、頷く王子達。
「ぼく、おらんねーじゅにいさまと、ねくたーにいさまの、おてつだいして、おくにのしごと、する。あと、てれびのばんぐみ、やる!」
「じゃあ、情報のお仕事したらいいかねぇ。テレビでお知らせしたり、楽しくしたりするような。」
「じょうほうの、おしごとする!」
「私は、何しようかなぁ。」
ネクターが、首を捻って考える。
「ネクターは、数字が得意だし、経理とか商売とか、どうなの?今度、フリーマーケットとかして、向いてるか試してみようか?」
「ふりーまーけっと?」
「みんなが、今は使ってないよ、でも捨てるのは勿体無いなー、っていうものを持ち寄って、それを欲しい人に販売するんだ。お値段は、自分がつけて良いんだよ。高いと、なかなか買われないかもだけど、安く売れば買ってくれるってもんでもない。お客さんとお話したりもして、それが楽しかったりもするし、必要な人に、必要なものが渡るのがいいよね。何か作って売っても良いんじゃない?」
どう?興味ある?
「ふりーまーけっと、やってみたい!」
うんうん。色々やってみるが良いよね。
「私もフリーマーケットやりたい。良いな、みんな。なりたい物、決められる。私は、王様になるから、やじゃないけど、ちょっとつまんない。勉強かぁ。」
「オランネージュは、どういう王様になるか?をこれから、学んでくんだろ?王様って、ワイルドカードだぞ。どんなふうにでもなれる。何に注目して、力を入れて、とか、国それぞれ、王様それぞれ違うんだ。だから、何が得意かなーとか、結構重要だぞ。」
ふぉ。そうか。
「私も、これからなんだね。」
「そうだよ、オランネージュ。」
王子達の話を聞いていて、アルディ王子は、コホ、と咳をした。
ぴくり、ブレイブ王が反応して、心配気に見守る。
「私は、私、何になったら良いか、わからない•••。お咳も出るし、運動も今までできなかったし。本読んだり、勉強は、好きだけど、みんなみたいに、兄様のお手伝いなんて•••。」
兄様、何でも出来るし。
コホ、コホ。
思い出して、緊張するのだろうか、咳が出始めた。ルルーが、すかさず、少しだけ癒しの魔法を喉に当てる。そして、手を握り、もみ、もみ、とした。マッサージで緊張を緩和。ルルーさん、グッジョブ!
「リラックス、リラックス。まだ決まらなくたって、全然いいよ。これから、これから。それに、兄様が何でも出来るからって、全部任せたら、兄様は、ひとりぼっちの王様になっちゃうな。」
王様って、みんなに助けてもらって、する職業だろ?
「助けて、もらう?ひとりぼっち?私が、ひとりぼっちなんじゃなくて?」
「アルディ•••。」
ブレイブ王が、辛そうだ。
親元から離れて育ったのだろうから、ひとりぼっちにも思えるだろう。
「アルディ殿下がひとりぼっちの時、アルディ殿下がいないんだから、兄様もひとりぼっちだろ?兄弟でも仲良くない人もいるけど、もし兄様がアルディ殿下のお手伝いが嬉しいと思ってくれて、仲良くできたら、協力できるかも?」
勿論、他の方法もあるから、アルディ殿下のやってみたい方法で、良いんだよ。
「後は、アルディ殿下は、できない人の気持ちがわかるだろ。この世界は、何でも出来る人だけが生きてるんじゃないよね?」
「そ、そう、かも?」
アルディ殿下みたいな病気の人の気持ちを伝えたり、それを治していけたら、その方法を伝えたり。
「アルディ王子が、王子っていう、みんなに見られる立場だから、この病気になった事を、逆手にとってみんなの役に立つようにできる。やってみたければ、だけどね。」
無理はしないでね。
「そうだ、アルディ。我が国の為に、少しだけ、このパシフィストの国で、ギフトの御方様、竜樹殿や、王子殿下達と、お咳の病気を治すお試しをしてみてくれないか?父様は、お国に戻って、アルディが、戻ってきても、大丈夫なように、たいいくかん、や、おんすいぷーる、を作ったり、母様や兄様に、アルディのお咳について、教えてあげたりするつもりだ。お国にも、アルディと同じ病気の子供がいるのは、調べてわかっているんだ。アルディが良くなる事で、その子達のためにもなる。」
「お父様、私•••。」
ぐぐっ、と、不安を堪えた顔をして、アルディ王子は、応える。
「•••はいっ!私、お咳を治す、お試ししてみます!もし良くなれば、みんなのためになって、お国に、帰れるのですよね?」
「いつだって帰ってきて良い。でも、治ればその方が良い。アルディが、この先、辛くならない道を、私も模索するから、時間をおくれ。アルディ、一緒に暮らしてやれなくて、すまない。」
「お父様、私、がんばります!」
手を取り合う親子に、竜樹は、あれを出すしかあるまい、と思った。
「これからお見せするのは、量産の目処はたってなくて、チリが簡単には作るの難しいって言ってるものなんですが。タカラ、電話持ってきて。」
「はい、かしこまりました。」
タブレット形の画面が、2つ、タカラによって持ち込まれる。
竜樹が、片方の魔石を触って、画面が光る。そうして、アルディ王子を呼んで、同じ部屋の中でも、テーブルの端から端まで、ブレイブ王と離れて、ピッ、とあるアドレス宛に電話をかける。
プルルルル。
「えっ、わっ、これはどうすれば。」
ブレイブ王の持っているタブレットが、光って、丸いマークが出た。その下には、タツキ、と名前が書かれている。
「がめん、おすのです。まるい、しるしのとこ。」
ニリヤが、側に寄って、教えてあげる。躊躇いながら、ブレイブ王が印を押す。
ポチ。
「お父様!お父様が見える!」
『お父様!お父様が見える!』
タブレットから声が出て、ブレイブ王の持っている方には、アルディ王子が映っていた。
「アルディ、こちらには、アルディが映っているよ。」
『アルディ、こちらには、アルディが映っているよ。』
タブレットを持ったまま、竜樹とアルディ王子は、部屋を出て歩いてみる。
『遠くても、お話できるんだね!』
「国を跨いでも、繋がると?」
『チリが、魔石の波は、何でも通すから、かなり遠くても繋がると言ってましたね。それこそ、この世界の果てまでも。』
ブレイブ王は、ハルサ王に振り向いて。
「このような貴重なものを、まさか、貸していただけると!?」
「それがギフトの御方の望みですから。」
ニコリ、とハルサ王が笑みを返す。
欲のないギフトの御方の、望みを叶えれば、それ以上の繁栄がもたらされるという。
「それに、国を跨いでお話できるかの実験になります。量産はできなくても、要所に使う事ができれば、便利になりますね。我が国にとっても、良い話ではありますよ。」
「ハルサ王•••!」
『私、これで、淋しくない!お話、できる!』
キラキラとした瞳で、アルディ王子は、竜樹とどんどん歩いていく。
「だからといって、せっかく一緒にいる時に、あまり遠くへ行かないでおくれ。戻っておいで、アルディ。」
ブレイブ王は、じんわり涙目で、アルディ王子を呼んだ。
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