王子様を放送します

竹 美津

文字の大きさ
上 下
77 / 527
本編

夜明けのひよこ

しおりを挟む

「ししょう~!ひよこなの!」
「兄ちゃんに貰った!」

んん?
竜樹とオランネージュが、交流室の隅のテーブルで、新聞記者の募集要項をメモっていると。
ネクターとニリヤとジェム達が、手のひらにふわふわのひよこを乗せて、そうっと、そうっと、戻ってきた。

「遊びに行ったんじゃなかったのか?ひよこ?」
「ランセ神様からの、たまわりものです!」
ミランがカメラを回しつつ、補足する。

「そだててね、って。よわいこなの。だいじにする。」
「助けて欲しいって、貰ったんだよ。仕事で育てられないんだって。」
「たまご産むそうです。食べても増やしてもいい、とおっしゃってました。」
わぁわぁ、と興奮して喋ってくる子供達とミラン。

ピヨ。

それから、片足が、くの字に折れた、ひよこ。
「•••うん、うん、そうだ。子供って、生き物拾ってくるもんだった。みんな~、生き物育てるには、ちょこっと覚悟が必要です。」

かくご?

ニリヤの手のひらから、竜樹は、ひよこを受け取って、腿の間に乗っけて、そっと撫でた。あったかい、生命の鼓動を感じる。ピヨ。

「たとえば飽きちゃっても、毎日の餌やりや、面倒みるのをやめたら、ダメなんだぞ。死んじゃうから。」
俺達も手伝うけど、ちゃんと、みんなで、分担決めて、育てられるか?ひよこ。

子供達は、みんな口を開けて、大人しく竜樹の言葉を聞いていた。
「俺たちみたいに、捨てられたら、生きられない?ってこと?」
「そうだ。」
「すてないよ!だいじする!」
「うん、捨てない!」

約束できるか?

「やくそく、する!」
うんうん、と子供達みんな、真剣に頷く。

「じゃあ、育ててみようか。ひよこってどう育てるのかな?検索したら、わかるかな•••。」
今、調べてみるから、ひよこの名前をつけてあげて。

腿の間が温かいからか、ひよこは、ピヨとも鳴かなくなり、蹲ってふくふくになった。

「名前、何にしようか。」
「ふわふわだから、ふわふわちゃん!」
「えー。カッコいい名前がいいよ。」
「どんなの?」
「アレキサンダーII世とか。」
おいおい、初めてのひよこでⅡ世かよ。
竜樹はプフッと笑ったら、笑うな~!と怒られた。ごめんごめん。

「何か、温度が大事みたいだな。あったかくしないとだ。あとは、空気を新鮮に。うーん、あと、エサの事とか、ランセ神様に聞いてみようか。」
それがいいです、いいですよ!
ミランが激しく同意した。

竜樹
「ランセ神様。
もしよかったら、教えてください。
いただいた、ひよこ、エサや水など、
気をつける事ありますか?
今はみんなで、名前をつけてます。」

ぶるるん。

ランセ
『やあ。ひよこについて 教えるよ。
そのひよこは 温かくしてあげること
人の体温が とても必要な
寂しがりやの 鳥だよ。
いっぱい 抱っこしてあげて。
夜は ひよこの間は 湯たんぽでね。
新鮮な水と エサ
エサは 何でも食べるけど
乾いた穀物や 青い菜葉を食べるよ。
自分でも 草や 虫
砂や 大きくなったら
砕いた貝の殻なんかも 食べる。
人の 愛情が たっぷりあるほど
じょうぶに育つから
可愛がって あげてね。』

竜樹
「ありがとうございます!
大事に育てます。」

ランセ
『子供達を 守る 加護のある
ひよこだから みんなで飼うといい。
新聞の お店に 付いて行きたがったら
連れていくと いいよ。
トイレのしつけも 覚えるよ
朝と 夜 決まった場所に
トイレします』

竜樹
「わかりました!
子供達を見守ってくださり、
ありがとうございます。」

ランセ
『たくさん 頑張って
くれてるから これくらいはね。
では またね。』

やりとりを読み上げると、子供達は、ふおおお、と声上げて、驚いていた。
神様が、くれたんだ!とか、加護があるって!などと、顔を見合わせて。

「それで、名前は決まった?」
「オーブは、どう?夜明けの意味だよ。」
オランネージュが言うと、
「おーぶ。」
「オーブ。いいじゃん。」
「お日様色だもんね。」

「オーブに決まり!」

ひよこは、オーブ。
デカい巣箱をギコギコ木っ端を切って作ってやり、毛布の端切れを敷いてやり。
お水と餌とを準備してやると、そこでヒョコヒョコ、確かめるように動いて、水を飲み、エサを食べ、またふくふくになって寝た。
エサやりと、水換えの係を、交代で作って、ボードに書いて、カレンダーに丸をつけてチェックすることにした。

オーブは人肌が好きなようで、ほっとくとピヨピヨ寄ってくる。抱っこの順番も作り、遊びの合間にあたためてやることになった。
ジェム達は、新しい生活への変化で、不安に思っていたが、オーブを抱っこすることで、癒された。段々と落ち着いてくるだろう。

「かえりたくないの。おーぶとじぇむたちと、いっしょいるの。」
「温めてあげたいよ。今日も、寮に泊まろうよ。」
「私も、寮に泊まりたい。それで、募集要項の事とか、みんなで話しようよ。」

王子達は、ぐずぐず、寮にいたがった。

うーん。
落ち着くまでは、仕方ない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...