王子様を放送します

竹 美津

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本編

おうたのれんしゅう

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「それでは、まずは簡単な、歌を歌って声の感じを見ようか。何を歌おうかな?そうだね、『春の花よ美し』にしてみよう。私の後を真似してみておくれ。」
ポロン♪

バラン王兄が、鍵盤を優美に叩いて、曲を紡ぎ出す。
オランネージュ第一王子とネクター第二王子とニリヤ、3人揃ってこのよき日、練習兼遊びのお時間である。
美声が
「はるの、はな~よ、うるわし~はなよ♪」

さん、はいっ

「はるの」「はるーのー」「はるの」

うんうん。

一曲流して、しばらく。んん?首を傾げる竜樹である。3人で確かに可愛いんだけど、なんか、特徴のある歌声が混じる。バラバラ感があるのだ。

「姿勢を良くしてね。喉だけで歌うんじゃなくて、お腹から声を出すんだよ。喉が苦しくないようにね。今度は1人ずつ歌ってみよう。上手く歌う必要はないからね。素直に、声を出してごらん。」
さん、はい

「はるの、はな~よ」
「はるの、はな~よ」
オランネージュの歌声は、上手いまではいかなくても、素直できれいな声だ。正確に音程をとっている。

「はい、ではネクター。歌ってごらん。」
さん、はい

「はるの、はな~よ」
「はるーの、はなぁよー」

むむ?半音下がっている?

ぱっ、とネクターが真面目な顔を歪ませて、俯いた。ほっぺたが赤くなっている。
めげずに一曲歌い通して、バラン王兄は、「良く歌いました、良かったよ。」褒めた。

「はるの、はな~よ」
「はるの、はな~よ」

ニリヤは元気に、歌えた。子供らしいストレートな歌声だ。

「はい、大体分かったよ。まずは、きれいに声を出すと、気持ちいいな、ってところから始めよう。ネクター、恥ずかしがらなくてもいいんだよ。まだちょっと歌っただけだろう。最初からみんな上手いことないんだからね。」

しょんぼり、手を前に組んで指をモジモジさせ、ネクターは、はぃ、と小さく返事した。

それから、徐々に声を出す練習をしたのだが、やっぱりネクターは、ちょっとだけズレていて、やればやるほど、元気を無くしていった。
あー、セレモニー的には、上手な方が良いのはいいが、多少下手でも可愛いから、良いと思うのだけど。

「だいじょうぶ、よ。いっしょにれんしゅうしたら、じょうずなるからね。」
ニリヤが肩をぽむぽむっと叩いて、慰める。

ぺちん!!

「調子に乗るな!ちょっと歌えたからって!!」
肩の手を振り払って、キレイに手首のスナップきかせて、ペン!とニリヤの頭をぶった。

ぱち、ぱち。
目を瞬いたと思ったら、「う、う、うええぇ。」
うりゅうりゅ、涙を滲ませ、ニリヤは竜樹の腹に突進した。
「なんだなんだ。ケンカ?」
竜樹が抱きしめて頭を撫でてやっていると。

「ちょっと歌えるからって。寝る時だって一緒に寝てもらって。私だけ1人。ひっ、ひとりでっ、うっ、うっ、うええええぇ!」
真っ赤な顔をくしゃくしゃに歪めて。

「おーどうしたどうした。ほら、こっちおいで。」
うわわわわん! ネクターも竜樹の腹に向かって、ポテポテ歩いてきて、ニリヤの反対側にひっついた。

「うわわわん?えーん。」
それを見ていたオランネージュも、泣きまねで竜樹の正面に抱きついた。

「おーおーみんなして。困った困った。」
オランネージュは、どうみても、泣く理由ないだろ。とは思ったが、3人泣き王子を抱き締める竜樹だった。
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