王子様を放送します

竹 美津

文字の大きさ
上 下
46 / 555
本編

うたう

しおりを挟む

子供達が、はじめておつかいをする番組(毎度みる回は変えている。楽しく観たいから)を観て、バラン王兄は、う~んと唸った。

「これって、実に効果的に曲が使われているよね。ずっと流しっぱなしでも、うるさくなってしまう。ちょうど良い所で、ちょうど良い曲が、そしてあくまで主役は子供達で、でも、とても心動かされる•••。」

ふふ、ふんふふ、ふふ♪
鼻歌でテーマ曲を歌いつつ、上機嫌。

「それだけじゃなくて、たぶん、撮影するのに、音をどこ録れたらいいかとか。邪魔な音を目立たないようにしたり、又は聴きずらい小さな音を、聴きやすくしたり。でも、ある意味作り変えてしまうような、やり過ぎは良くないし。音に敏感な、バランス感覚の良い人が、必要なんですよね。」

「それは、私しかいないだろう!」
むふん、胸を張る。

しかしである。
「王兄様に、音響をやってもらうというのも良いんですけど、良くない所は良くないって俺たち言いますし、作るにあたっては、身分を慮りませんよ?」
「望むところだ!」
それに、ギフトの御方様が何を言うかね。よっぽど私より、身分は高かろう。
とととん、ととん♪   テーブルをフンフン叩く。

「いやあ、実際の権力はないですからね。」
竜樹は、図に乗らないスタイル。言いたい事は言うが、まだ公にはニリヤの保護者なだけだし、何の仕事の責任もない。自由はいいが、そんなに実績もないし、対価をもらう仕事もしてないのである。
それで権力だけあると言っても、押し出しが効かないというやつだろう。

『神の目』騒動はあったが、あれの功績は主に作ったチリと、国と神殿に任せたい。

「あとですね。やりたい事をやるのに、もし貴族達、だけじゃなく、外部で横やり、反対するだけじゃなくて、テレビって情報は力になるから、良いように使いたい人達がいたら、守ってもらいたいんですよね。ゆくゆくは。」
それって、王兄様ピッタリの仕事でしょ?

「むむーん、その仕事はあまり面白くないな。全然音楽的じゃない。」

「その代わり、音楽番組を作るとなったら、意見聞きますよ。自分の番組守るとなったら、やる気出ません?」

出る!

「作ってみたい!音楽番組!」

それでですね、音楽番組も色々あるけど、みんなが参加できるとなったら、こんなのがありますかね。

「みんなの、歌声を自慢しよう!っていう。素人参加型の番組です。」

司会者が、参加する人の細かい情報を伝えてくれて。時には会場で観てる家族に手を振り。何でこの曲を選んだのか、や、誰に伝えたいか。上手い人もいれば、ユニークな人もいる。衣装を工夫してみたり、お年寄りが震える声で歌ったり。
伴奏も、どんどん遅れて伸び伸びになっちゃう人に合わせて、ゆっくりに合わせてくれたり。

「うーん!いいね、いいね、面白い!音楽がみんなのものって、気がするね!」
でも、お祭りでやるには、素人参加型だと、大変そうだなぁ。

「まず、出てくれるかだよね。みんなで歌う歌はあっても、1人で歌う歌、というのは、吟遊詩人や歌手がやるものと思っていて、みんな楽器なども持っていないし、ちゃんと舞台で歌った経験がないだろうね。」

この番組に出ている人達みたいに、舞台で歌う、というのを見慣れていないと思うんだよ。緊張して黙ってしまったりするだろうし、それを、観られるように面白くするには、司会の腕もいるし、すぐには無理だよね。
「ゆくゆくは、誰でも歌や楽器が楽しめるようにしたいけれども。」

そして、この首都でやるとしたら、首都の住人しか出られなそうだ。なかなか、普通の平民は、住んでる土地から出られないから。作物や、牧畜の地に縛られていて。
色んな場所の歌が聴きたくないかい?
そして、それを、主要7都市だけでも、広げて届けたい。

「テレビって、こんなふうに持ち運べるなら、色々な所で観られるのだろう?」

竜樹は、ピッタリはまる感覚を覚えて、パチン!手を打った。

「そう、そう、そうなんですよ。ヨーグルトの時に思ったけど、この世界って、都市から地方、地方から都市への情報が、届いていない事結構あるのじゃないかな?地方に、面白い事やいい情報が、埋もれてるんじゃないかな?って。」

俺のスマホの情報を、みんな斬新がるけど、この世界の中に、面白い事は沢山、芽吹いてるんじゃないか。

「俺発信で、なんでも開発するより、勿論、良い事を内緒にしておこうとかではないけど、双方向でやった方が良いんじゃないかな?」
これが、自分達の、世界だ!って気がするでしょ。

うんうん。
王兄は頷くが、他の者達は、今ひとつ分かりかねる表情である。

「俺も地方に討伐に行った事があるが、地方は、畑や牧草地や森ばっかりだと思うぞ。都市に持ってこれるような情報なんて、あるかな?」
マルサは、懐疑的である。

「その、畑や牧草地や森ばっかりな所がいいんだよ。住んでるのは人で、その地ならではの情報が必ずある。ヨーグルトだってそうだったろ?歌だってあるだろうよね。きっと。」

「ヨーグルトは、美味しいですよね。」
チリがにこーとした。
「お通じも、良かったんですよね、今日。お通じがいい、それだけで、こんなにも爽快です。そんな情報が、他にもあるなら、知りたいですねえ。」

つんつん。服の裾が引っ張られて、竜樹は横のニリヤを見た。
キラキラした目、小鼻が膨らんで、フン!と息が出た。

「ぼくも、うたいたい!このせかいの、おうたを!」

そうか、歌いたいか!
むーん、ニリヤだったら、国歌なんかどうかな?
お祭りが始まる時に、王子達が3人で、国歌を歌ったりしたら、かわいいよね。

「国歌?」
バラン王兄、国歌はないのですか。

「ちょうど太陽と星と月なんだし、それらが空にあってみんなを見守っているよー、つつがなく暮らせるように協力して頑張るよー、なんていう曲、作ったらどうです?」

「おさなごの言祝ぎ!作詞作曲!いいねいいね!それは私より適任者がいるから、私が頼もう。任せておいてくれ!」
「あと、王兄様だけが音響担当だと、仕事いっぱいすぎるから、あと1人くらい担当する人欲しいです。」

「それも任せておきたまえ!ちょっと風変わりだが、ピッタリな者がいるよ。」

いやーいい感じ。
パン!とバラン王兄と竜樹が、手を打ち合わせれば、そこに一言。

「素晴らしいですけど。それは、一体、どうやって採算が、見合うのですか?」

バーニー君が、眠たそうな目で。
ぽつりと言った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

無能と蔑まれた七男、前世は史上最強の魔法使いだった!?

青空一夏
ファンタジー
ケアニー辺境伯爵家の七男カイルは、生まれつき魔法を使えず、家族から蔑まれて育った。しかし、ある日彼の前世の記憶が蘇る――その正体は、かつて世界を支配した史上最強の大魔法使いアーサー。戸惑いながらも、カイルはアーサーの知識と力を身につけていき、次第に自らの道を切り拓く。 魔法を操れぬはずの少年が最強の魔法を駆使し、自分を信じてくれる商店街の仲間のために立ち上げる。やがてそれは貴族社会すら揺るがす存在へと成長していくのだった。こちらは無自覚モテモテの最強青年になっていく、ケアニー辺境伯爵家の七男カイルの物語。 ※こちらは「異世界ファンタジー × ラブコメ」要素を兼ね備えた作品です。メインは「異世界ファンタジー」ですが、恋愛要素やコメディ要素も兼ねた「ラブコメ寄りの異世界ファンタジー」になっています。カイルは複数の女性にもてますが、主人公が最終的には選ぶのは一人の女性です。一夫多妻のようなハーレム系の結末ではありませんので、女性の方にも共感できる内容になっています。異世界ファンタジーで男性主人公なので男性向けとしましたが、男女関係なく楽しめる内容を心がけて書いていきたいです。よろしくお願いします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...