王子様を放送します

竹 美津

文字の大きさ
上 下
15 / 561
本編

ミランはワクワクしている

しおりを挟む

自由にして良いと言われているので、今日の予定はとりあえず王宮を探索する事にした。メールも送れて受け取れると確かめて寝た、次の日である。
因みに職場には、体調が悪いと休みの連絡をした。何か聞きたい事があったら連絡してね、と職場の後輩にもメールし、今後徐々にフェードアウトする方法を考え中である。

朝ミランが、ぴらぴら~っとした洋服を出してきたので、もっと地味なやつ。ある?と聞けば、「やっぱりそうですよね。男性のギフトの御方は大体そう仰るそうです。」などと、後ろからおおよそ茶系統の服を出してきた。それよそれ。あるじゃない、普通のやつ。
「ですが、マントだけはこちらの御方様用の留め具がついた物をお使い下さい。身分がわからず、不躾な事をされてしまうのを防ぐために。」

エメラルド?多分。緑色の宝石がデッカくついた、金の留め具に、これまた金の縁取り、ふさがチョンと端で揺れる、ベージュのマントである。
マントってあったかいね、思ったより。竜樹が呟くと、ミランは、魔法防御が入ってるやつなんですよ、温度も調節します。ふふふ、と嬉しそうにした。

「おーおはよう。何だ地味だな。折角だから派手派手なのにすればいいのに。一応服飾費も結構出てると思うぜ。」
「ごく普通顔のアジア人男子にぴらぴらは、ない。マルサこそ似合うんじゃないの?」
「趣味じゃないんだ、邪魔っぽくて。さらっとしたやつがいい、さらっと。」
同感です。ベーシックなの、最高ですよね。こっちのベーシックがぴらぴらかもだけど。
「そういえば、竜樹様が渡られた時に着ていた服、あれも面白いですよね。襟が剣の様で、こう、2つ胸の下で交わるようになっていて。」
ああスーツね、こちらの上着って見たところ襟が無いもんね。結んだリボンやシャツのひらひらを邪魔しないように、だそうだが、謁見の間で見た騎士団長だけは詰襟ぽい形の服を着ていた。首を守る為にだろうか。

「あの形に、ボタンで留めて、シンプルなシャツに、光沢のある縞々柄物のタイ。斬新です。流行るんじゃないですか、あれは。お針子呼びますか?」
ワクワクした様子のミランだが、洋服無双をしたい訳ではない。いや、流行ってもいいけど、服飾の知識はそれほどない。webがあるか。いやしかし。異世界にスーツ。逡巡していると、
「なんてね。竜樹様がいらっしゃる事で、私たちも刺激を受けているんですよ。無理にしなくてもいいのです。雨の雫が竜樹様で、周りにいる私たちは波紋の役目。自然と、影響を受けて広がっていきます。自分達に合わせた形でね。」
「そうだね。なんか、アレンジしてくれると嬉しいよ。だって折角の飾り、職人さん達の都合もあるんじゃないの。それに、俺のいた日本て国では、世界各国の料理を取り入れて、日本人好みの味にした店がいっぱいあったよ。そんな感じで、服もこちらのテイストと混ざるといいな。快適に暮らせる感じとかで。」
ファッションて一回廃れてもまた時代ごとに進化して流行り直したりしたよ、俺らの世界では。
喋りつつ、朝食である。

パンはパンだし、スープもさらりとしたコンソメチックな物で美味しく食べられる。野菜は生では食べないそうで、炒め物の葉っぱが副菜だ。そして肉。ソテーであるが、赤身のさっぱりしたかみごたえのある肉である。隠し包丁が入っていて、食べやすいし、味を噛み締めて食べたい方向とするならば、良いのではなかろうか。何でも甘い柔らかい溶けるがいい訳じゃないし。
パンは全粒粉なんだねえ、と言えば、全粒粉て何ですか、とミラン。
「小麦の粒から、皮を取らないで全部粉にしたやつ。」
「え、皮って竜樹様のお国では取れるんですか、大変じゃないです?どうやって取るんです?」
波紋は、朝から広がっている様である。
「詳しくは知らないけど、スマホで調べられるかも。全粒粉のパンもお菓子も美味しいから好きだけど、そうじゃないのもあっていいかもね。」
スポンジケーキとか。
「すまほって凄いんですね!スポンジケーキって何ですか?」
ふわふわで、甘くて、すっとした口溶けで。
「食べてみたいです!」
スマホでレシピサイトの写真を見せながら説明した。甘くて柔らかくて溶ける話になってしまった。

「まあ竜樹もまずは朝飯食えよ。ミランも落ち着け。」
すみません!ミランはピッと姿勢を正し、竜樹はモゴモゴと肉を頬張った。
でも厨房に行くのはいいかもしれない。単に朝食のお礼を言うのでもいいし、王宮なら実験的な料理も受け入れてもらいやすいかも。
竜樹は普通の事務職だったので、職務で役に立てる事は、パッとは浮かばない。まあ、現場に立てばなんかあるかもしれないが。
それよりも、竜樹が得意なのは、家事全般である。何しろ養母が、お手伝いするとそれはそれは褒めてくれたのだ。施設では助け合いが当たり前、何も言われなかった食器洗いでさえ、助かる!嬉しい!と言われればやる気が出る。炊事洗濯、家を整え維持すること。ちゃんとやればかなりの重労働なそれが、竜樹の趣味とも言えた。
さらに、環境が整うと、弟妹が落ち着いた様子になるのである。荒んだ環境は、心を失わせる。一緒になって家事をして、竜樹の家族は家族になっていった。

「厨房に行ってみたいです。」
おお!早速ですか、ありがとうございます!食後のお茶を淹れるミランに、ご相伴にあずかったマルサがスマホのスポンジケーキを見ながら、なんか面白そうだなガハハと笑った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子
ファンタジー
 神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。  お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。  チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO! ーーーーーーーーー  これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。  ご都合主義、あるかもしれません。  一話一話が短いです。  週一回を目標に投稿したと思います。  面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。  誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。  感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)  

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...