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わんこやにゃんこ達のお話:本編
2人何かを待つねぐら:ハイクロ、野良No.2になるサクナリと出会う
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灰黒のハイクロがねぐらに戻る。
月光ひんやり毛皮を照らして、闇よりほんの少しばかり、浮いた輪郭そろりと紛れ。今居た空気を残す。気配。
すん、と鼻を持ち上げて、伝わる、混ざる、工場の裏、木屑のこなこな。ここはハイクロの、大事なねぐらだ。
煙草の煙、の匂い。誰だ。
雌?かもしれない。ハイクロ達は揺らいでいるから、繁殖期までどっちかとも、分からないのも少なくない。
うるるる、る。
警戒にうるめく。向こうは向こうで、ハイクロの匂いを、嗅ぎあてて、ひゅと息飲んで、ひたり、動かず。間、間、間を置き探り宵闇、ちりり光った5つ。ハイクロと相手の目、そしてもう一つは。
動く、煙草の火、見えた!
小さいのだ。でも強い。
「誰。」
ハイクロ誰何する。
けほ、こほ。
返事は咳き込み。吸ってないのに当てられた。
すっと近付き、ぱんと叩けば火が飛ぶ、くるりと赤く尾を引き流れ星。
じりっとにじり消す。
力さんの工場が燃えたら、酷いじゃないか。
ねぐらに寝転び、頬杖ついて、ひゅひゅと引く息、咳は止まらず。
うん、げほっ。
「が、返してたばこ。」
図々しい。
「でてけ。」
「やだあ。」
「ナンデ。」
だってハイクロの場所だ。匂いで分かるだろ、他の犬のものだって。奪うなら、戦ったっていいけれど、だって工場の力さんが、野良でも吹きさらしじゃ、可哀想だって、ハイクロに作ってくれたんだ。
工場の端っこ、畳にお布団、一斗缶。それにお気に入りの。
「あはは!なんで?」
くふくふ、ぴたぴた。
ちっさいからってずるい。ハイクロは、ちっさいのには寛大だ。だって死ぬし。
目の前のはそうでもないが、やりすぎた時のぶったおれ、松坂さん家の煩い雄。ちっさいパピヨンぐったりパピヨン。挑まれ危うく警察沙汰。
ハイクロは焦った。それ以来、ちっさいのには寛大なのだ。
「•••なんで、ハイクロのねぐら!」
「たばこだからさあ。」
たばこ~?
火がね。けへこほ。
ちっちっ、とライター。くしゃくしゃの箱。
雨降ったとき、ねぐらがないと、消える。たばこ。
「吸える?」
火の向こう、吸い口寄越す。
ピッと取り、すくっと吸って、「ゲホッ、がっ、ごほ、くふっ!」ありゃ。
「あう。やっぱね。」
「•••なんでたばこ。」
「ひみつ。それあげる。」
たばこ。
けほこほ。咳もいがらっぽく、うう~と耳が下を向く。
貰い物、くしゃくしゃの箱のたばこは、力さんにあげよう。ハイクロは片手に火のついたたばこを持て余し。とりあえず、一斗缶の切った穴の下、灰を掻き分け道つけて、新聞紙、木っ端突っ込みたばこを落とした。
火が、ぽぽぽ、めらりと燃えてゆく。
「ラーメン食う?」
「くー。」
ひくん、と相手が震えて火を見てる。いや、もっとその上か。上手く火が着く。もくもく燻る。ずっと、ずっと見てる。
「何?」
火って見ちゃうよな。
ハイクロ、視線に聞いてみた。
「あたシ、サクナリ。」
「ハイクロ。」
つう、と目が追う。
「煙。」
「ああ。」
うふんと鳴いたサクナリは。
「ハイクロ、ずっとノラ?」
「うん。」
だと思った。あはは!
「うれしょん出るよ。会うと。」
「ええー!?」
ああ~んて。なるから。
くふふ、ふ。なんて笑うので。
どきどきハイクロは正座して、ずずいっとできたラーメンを、サクナリに差し出した。
「う、うれしょん?」
「うん。あとねー、ごろってなる。」
う~んのああ~んできゅんきゅんのぱったぱた、だよ。
おおお。
ラーメン食べ食べ。
その日からサクナリは、ハイクロのねぐらに住み着いた。
「それは返して。」
「う?」
お気に入り。兄弟の匂いつき破れクッション。
「いーよ。」
「うん。」
でっかいのとちっさいの。仲良く一畳。
2人、何かを待つねぐら。
月光ひんやり毛皮を照らして、闇よりほんの少しばかり、浮いた輪郭そろりと紛れ。今居た空気を残す。気配。
すん、と鼻を持ち上げて、伝わる、混ざる、工場の裏、木屑のこなこな。ここはハイクロの、大事なねぐらだ。
煙草の煙、の匂い。誰だ。
雌?かもしれない。ハイクロ達は揺らいでいるから、繁殖期までどっちかとも、分からないのも少なくない。
うるるる、る。
警戒にうるめく。向こうは向こうで、ハイクロの匂いを、嗅ぎあてて、ひゅと息飲んで、ひたり、動かず。間、間、間を置き探り宵闇、ちりり光った5つ。ハイクロと相手の目、そしてもう一つは。
動く、煙草の火、見えた!
小さいのだ。でも強い。
「誰。」
ハイクロ誰何する。
けほ、こほ。
返事は咳き込み。吸ってないのに当てられた。
すっと近付き、ぱんと叩けば火が飛ぶ、くるりと赤く尾を引き流れ星。
じりっとにじり消す。
力さんの工場が燃えたら、酷いじゃないか。
ねぐらに寝転び、頬杖ついて、ひゅひゅと引く息、咳は止まらず。
うん、げほっ。
「が、返してたばこ。」
図々しい。
「でてけ。」
「やだあ。」
「ナンデ。」
だってハイクロの場所だ。匂いで分かるだろ、他の犬のものだって。奪うなら、戦ったっていいけれど、だって工場の力さんが、野良でも吹きさらしじゃ、可哀想だって、ハイクロに作ってくれたんだ。
工場の端っこ、畳にお布団、一斗缶。それにお気に入りの。
「あはは!なんで?」
くふくふ、ぴたぴた。
ちっさいからってずるい。ハイクロは、ちっさいのには寛大だ。だって死ぬし。
目の前のはそうでもないが、やりすぎた時のぶったおれ、松坂さん家の煩い雄。ちっさいパピヨンぐったりパピヨン。挑まれ危うく警察沙汰。
ハイクロは焦った。それ以来、ちっさいのには寛大なのだ。
「•••なんで、ハイクロのねぐら!」
「たばこだからさあ。」
たばこ~?
火がね。けへこほ。
ちっちっ、とライター。くしゃくしゃの箱。
雨降ったとき、ねぐらがないと、消える。たばこ。
「吸える?」
火の向こう、吸い口寄越す。
ピッと取り、すくっと吸って、「ゲホッ、がっ、ごほ、くふっ!」ありゃ。
「あう。やっぱね。」
「•••なんでたばこ。」
「ひみつ。それあげる。」
たばこ。
けほこほ。咳もいがらっぽく、うう~と耳が下を向く。
貰い物、くしゃくしゃの箱のたばこは、力さんにあげよう。ハイクロは片手に火のついたたばこを持て余し。とりあえず、一斗缶の切った穴の下、灰を掻き分け道つけて、新聞紙、木っ端突っ込みたばこを落とした。
火が、ぽぽぽ、めらりと燃えてゆく。
「ラーメン食う?」
「くー。」
ひくん、と相手が震えて火を見てる。いや、もっとその上か。上手く火が着く。もくもく燻る。ずっと、ずっと見てる。
「何?」
火って見ちゃうよな。
ハイクロ、視線に聞いてみた。
「あたシ、サクナリ。」
「ハイクロ。」
つう、と目が追う。
「煙。」
「ああ。」
うふんと鳴いたサクナリは。
「ハイクロ、ずっとノラ?」
「うん。」
だと思った。あはは!
「うれしょん出るよ。会うと。」
「ええー!?」
ああ~んて。なるから。
くふふ、ふ。なんて笑うので。
どきどきハイクロは正座して、ずずいっとできたラーメンを、サクナリに差し出した。
「う、うれしょん?」
「うん。あとねー、ごろってなる。」
う~んのああ~んできゅんきゅんのぱったぱた、だよ。
おおお。
ラーメン食べ食べ。
その日からサクナリは、ハイクロのねぐらに住み着いた。
「それは返して。」
「う?」
お気に入り。兄弟の匂いつき破れクッション。
「いーよ。」
「うん。」
でっかいのとちっさいの。仲良く一畳。
2人、何かを待つねぐら。
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