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わんこやにゃんこ達のお話:本編

256の濃淡よりずっと深い奥まで:フロー

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256の濃淡よりずっと深い奥まで、見通せる者だけに開かれる、灰。霞。膨大な無駄。

「ごめんな。」

あやまってくれたけどいやだ。
咎めないなら、許すのできないから。これ、諦めっていうね。

本を読んでなさいって、言ったんだ。
そのうち、寂しくなって、鼻が鳴った。したら、キョウさん振り返った。キイと椅子、肘掛けふかふか。天から降るみたいな目は、奥の奥の濃い色。

怒ってるって、すぐ分かった。

ちらちら、縞模様、流れるモニタ。フローは見てた。産まれてお乳はもう飲まなくて、でも時々は、むぐまぐしたい頃の事。
キョウさんはフローを抱いてくれなかった。モニタを見てた。しましま模様の。ずっと。

フローは3回やるまえに、邪魔するのが駄目ってわかった。だからいつも待ってた。椅子の後ろ、ぺたんと座って、キョウさんの頭とモニタ。面白かったよ。本は時々読んだかな。

キョウさんが何してるかは良くしらなくて、ぱかぱか開く窓や線や灰色の絵が、素敵にフローに花咲いた。

ごめんなって言うのいやだ。どうして連れてってくれないの。コンパニオンドッグだって、一緒に出てっていいはずでしょ。知ってるよ。読んだもの。後ろで収監者の権利ファイルを最後まで、キョウさん一生懸命読んでたじゃない。

「ごめんな。••••••。」

連れてってよ、て。それ駄目かったから、どう吠えていいか、良くわかんなかった。



フローの窓を開けてみる。今は後ろからじゃない。椅子に座ってるの。
窓から悪いのつかまえる。それがお仕事。

フローには分かる。いつも見てたから。
でもね、キョウさんの、頭で隠れた少しのとこが、見えてたら少し、絵が変わったんじゃないかって、思うんだ。

フローは欠けてる犬だって。でも見える、灰の256よりずっと奥、あの湿り、目の中。怒った光の底に沈む、フローを待っている血のにじみ。

フロー。
本を読みなさい。
絵を見なさい。
たくさん見なさい。あらゆるものを。人も、辛くないなら、アツク痛くならないなら。

お前が欠けている犬なら、そこにはたくさんの人からのものを。
遠く小さく、少しずつ埋めていくのがいいからね。

キョウさんは、フローはいい犬になると言ったよ。だからたぶん、そうなってるよ。

「フロー、今月の報告書ここね。」

ひゅーん。

いろんな皆と一緒いっしょの、お仕事わんこになったんだよ。





ーーーーーー


赤い光がちかちかと。
フローの画面にきっと赤。赤は地味な色溶ける色。でもフローには、256の1でも分かるから、ちかちかしてるのすぐわかった。

何だろう?

開くと絵。絵だ。

原始犬と人が仲良く走ってる。人はメスで裸だ。そんなのはどうでもいい。
コピーライトにキョウさんのサイン。

256の深く、こんなとこに生きてる、キョウさんの欠片。

フローの目は走る。
流れる情報がかかる、フローの欠けたくぼみは、きっとこのために。

集めたデータはメールの切れ端。

キョウさん、フローに一体、何が言いたいの?
窓の中、一体どれだけ、キョウさんの欠片があるの?

ーーーーー
キョウさんは響さん。
ネットに欠片をばら撒いて、遠くで悪い事をしながら、フローを待ってる。
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