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1巻
1-2
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「大丈夫。私にどんと任せて」
そしてみゆりは即座に了承する。
胸を叩いてみせるみゆりに、さくらがふにゃっと気の抜けた顔をした。
呆れたというより、ずっこけてしまった感じである。
「さくらのためだったら、心臓でも肝臓でも売ってみせるよ」
「怖いから。重いから。あと心臓なくなったら死んじゃうから」
漫才のようなやりとりにくすりと笑ったあと、さくらが本題を切り出す。
「おじいちゃんの銭湯をなくさないでほしいのよ」
「へ?」
予想の外側にあったお願いに、思わずみゆりは間抜けな声を出す。
さくらと『昭和湯』との間には繋がりがない。
そもそも祖父の季太郞との面識だってないはずである。
「単刀直入に言うとね。みゅりに『昭和湯霊泉』の守り手になってほしいの」
「霊泉?」
昭和湯霊泉なんて聞いたこともない。昭和湯は水道水を沸かしているだけの普通の銭湯だ。いわゆる温泉ですらないのである。
「さくたちあやかしにとって気持ちのいい場所、という解釈で問題ないわ。ざっくりと」
「本当にざっくりだよ! びっくりだよ!」
いくらなんでも説明をはしょりすぎだろう。
「きちんと説明すると長くなっちゃうんだけど」
そう言い置いて、さくらはてしてしと後ろ足で頭を掻いた。
霊泉というのは、人間でいうところのパワースポットで、あやかしたちはそこからエネルギーを得ているのだという。
風呂に浸かって気持ちがいいというのは、人間でもあやかしでも神様でも変わらないらしいとみゆりは解釈しておく。けっこうふんわりとした理解度だ。
「えらく庶民的な話ね」
「でも判りやすいでしょ? で、『昭和湯霊泉』ってのは銭湯が霊泉っていう日本で唯一の場所なのよ」
消滅させてしまうのはもったいないし、霊泉から霊力を得ないと存在が保てなくて消えてしまうあやかしもいるのだと締めくくる。
「あれ? 『昭和湯』って三年くらい休業してるよ? おじいちゃん入院してたし」
「ええ。かなりまずい状況だといっていいわね。実際、消えかかってるあやかしもいるわ」
「なるほど……」
「ちなみに、さくも消滅するわよ。完全に霊泉がなくなってしまったら」
怖ろしいことを言うから、みゆりはぎょっと目を剥いた。
猫又は猫のあやかしなので風呂に浸かるということはないが、霊泉の近くに行って霊力を吸収しなくてはいけないのだという。
「もちろん、いますぐって話じゃないわ。さくは生まれたばかりだから充分に霊力を蓄えているし」
あやかしというのは誰かの願いや、共通認識などから生まれてくるのだとさくらが解説を始めるが、みゆりはまったく聞いていなかった。
「そういう問題じゃないでしょ」
思わずぐっとさくらに顔を近づけてしまう。
お願い、などという可愛らしい次元の話ではなく死活問題だ。
もとより聞き流すつもりはないが、絶対に見過ごすことはできない。
せっかく戻ってきてくれたさくらが消滅するなど、あってはならない事態だ。何を置いても阻止しなくてはならないのである。
「さくらと一緒にいるためなら私はなんでもやる。それが『昭和湯』の存続だというなら、喜んで引き受けるよ」
白い毛並みを一撫でして、みゆりは宣言した。
そのために必要なのが、まずは周囲の人々の説得だった。
みゆりの継承宣言によって、親戚たちはあっさりと相続権を放棄した。後で相続放棄の書類に署名と捺印をもらえば完了である。
問題は父親だ。
相続の関係上、父が『昭和湯』に関するすべてを相続することに決まったが、それを喜んでいる様子はまったくない。
むしろ娘の暴走に面食らっているようだ。
「お前、東京でなんかあったのか? 失恋でもして自棄になっているんじゃないのか?」
「恋人なんて、人生で一度もいたことがありません」
「一度もって……いや、べつに良いけどな」
はっきりと言い切ったみゆりに父親がため息を吐く。年頃の娘としてそれは寂しすぎると思ったのだろう。
「べつに東京の仕事で悪いことがあったわけじゃないよ。良いことがあったわけでもないけど」
「嫌なことがあったわけでもないのに、そんでも仕事を辞めて戻ってくるってか? 『昭和湯』に対して、みゆりはそったらに思い入れがあったか?」
「……うん」
一拍の沈黙を挟む。
大切なのは『昭和湯』ではなくさくらだ、と、まさか言うわけにはいかない。
その沈黙の意味を、父は少しだけ誤解したらしい。
やはり東京で仕事を辞めて郷里に逃げ帰りたくなるような出来事があったのだろう。だから銭湯を継ぐなどと突飛なことを言い出したのだ、とでもいうような表情が父の顔をよぎった。
正面切って訊ねても、みゆりの口に見えないかんぬきをかけるだけだと思ったのだろう、口にしたのは別のことだ。
「まあ、やってみればいいっしょ」
「へ?」
さきほどまでとは違う暖かな父のまなざしに、今度はみゆりが面食らった。
強硬に反対されるものだろうと思っていたし、最悪、大げんかをしてでも奪い取ろうと決めていた。
「でもな、銭湯の経営ってのはお前が考えてるよりずっと厳しいんだぞ。俺はガキの頃から親父を見てきたからよく知ってんだ」
「うん。覚悟はしてるつもりだよ」
「したらやってみ。なんでも経験だからな。ただ、いつまでも無制限にってわけにはいかないぞ。一年で軌道に乗せてみれ。具体的には黒字で終わるってことだな」
「一年……」
「できなかったら『昭和湯』は取り壊して更地に戻す。んで、お前は函館で仕事に就けばいいべさ。口きいてやっから」
「ちょっと条件厳しくない? お父さん」
「お前はむかしっからケツに火がつかねえと本気を出さないからなあ」
笑いながら父親が言う。
ぐう、と、みゆりは黙り込んだ。
昔のことを持ち出されては分が悪い。
ともあれ、『昭和湯』を手に入れるという目的は達することができた。
しかし、それは新たなミッションの幕開けも意味する。
斜陽産業である銭湯を、一年後黒字決算で〆るという、なかなかにインポッシブルなミッションだ。
そしてみゆりは会社を辞めて函館に戻る。七年ぶりの、一時的ではない帰郷だった。
◇
さくらによると、霊泉というのは日本各地にあるという。
形状もさまざまで、たとえば『道後霊泉』などは温泉が霊泉になっているし、『富士五湖霊泉』は湖が霊泉だ。
遠野では土地そのものが霊泉としての機能を持っている。
その中にあって『昭和湯霊泉』は唯一無二の人工的に作られた霊泉だった。
そんな昭和湯を潰してしまうのは日本全体の損失になる。なぜなら、立花季太郞がどのようにして人工霊泉を作り上げたかというノウハウも伝わっていないから。
これを維持し次代に伝えなくてはいけないのだとさくらは話した。
「ごめんね。東京の生活を捨てさせてしまって」
話し終えたさくらが申し訳なさそうに頭を下げた。
「いまさらそんなこと気にしなくていいよ」
デッキブラシで浴室の床をゴシゴシ掃除しながらみゆりが笑う。
もう一度さくらを失うなど耐えられない。今度こそ本当に心が壊れてしまうだろう。
「もちろん、未練がないって言ったら嘘になるけどさ」
東京にはなんでもあった。
比較してしまったら、函館など何もないと評したほうがしっくりくるほどだ。
もちろんそれは、函館という都市に魅力がないという意味ではない。
景色は良いし、土地も広いし、ガイドブックに記載されるような観光スポットだっていくつもある。
函館山からの夜景は、タイヤメーカーが発行している有名なガイドブックで三つ星を獲得しているほどだ。
金と時間をかけて出向く価値がある、という最高評価である。
しかし、それこそがこの街が暮らす場所ではなく観光地であるという、なによりの証明だろう。
生活をするという部分に絞って話をすれば、職業選択の幅、教育機関や医療機関の充実度、福祉施設の数や公共サービスの質、どれを取っても函館は東京に遠く及ばない。
それでもみゆりは東京の生活を捨てた。
「さくらと一緒に暮らせるなら、私は東京なんて簡単に捨てられるよ」
「みゅりって微妙に重い女ね」
「誰かに取られるくらいなら、さくらを殺して私も死ぬ!」
「それは重いを通り越してサイコパスよ」
やや重くなりそうな話題を冗談で紛らわし、みゆりは風呂掃除を続ける。
みゆりどころか、父が生まれるはるか前からある『昭和湯』の建物は、築百年に届こうかという老兵だ。
もともと祖父の季太郞が創業したのではなく、誰かから譲り受けたらしいということを、先日父から聞かされている。
しかし、古い建物なのに汚らしいや、怖いなどといった感想を抱いたことは、子供の頃から一度もなかった。
色あせた紺色の暖簾も、昔ながらのタイル張りの浴室の床も、男女ひとつずつしかない浴槽も、固定式のシャワーがついた洗い場がずらりと並んでいる様子や、壁に描かれた函館山だって、いつもみゆりの心を温かくしてくれた。
それは、祖父が真剣に、愛情をもってこの銭湯を手入れしていたからなのだろう。おそらく入院するその直前まで。
無骨で不器用だが、けっして仕事に手を抜かない季太郞の為人が、そのまま現れたような場所だった。
だからみゆりの思い出の中にある『昭和湯』は、いつもぴかぴかに清潔で良い匂いのする最高にくつろげる場所だった。あやかしや神様にとってもくつろげる場所だというのも充分に納得できる。
ふと、ブラシを動かすみゆりの手が止まった。
高校の頃まで、みゆりは優秀な生徒だった。地元で一番の進学校に通っていたし、成績の順位は学年一桁より下がったことなど一度もなかった。
神童といえば褒めすぎだが、両親も彼女の将来に期待してくれていた。
だから札幌ではなく東京を進学先に選んだのだ。
しかし東京の大学には、みゆり程度の優秀さを持った学生などいくらでもいて、自分が井の中の蛙だったことを思い知らされた。
首席からはほど遠い平凡な成績で卒業し、就職先は小さなイベント企画会社だった。第一志望の会社ではなかったが、それでも就職浪人するよりはマシとの思いで入社した。
そして朝早くから夜遅くまで働く。
ブラック企業というわけではないけれど、小さな会社というのは往々にして社員一人一人の負担が大きい。
もともとやりたかった広告デザインの仕事など、ほとんどできないまま雑用に追いまくられる日々。
そんな中でもめきめきと頭角を現し、もっと華やかな会社へと移っていく同期や後輩。
結局のところ、みゆりにはそこまでの能力はなかったのだ。
十人並み、十把一絡げ、一山いくらで売っているような、表現はいろいろあるが、ようするにみゆりに突出した才能などは何もなかった。
であれば一生懸命さや真面目さでアピールするしかない。
誰よりも早く出勤し、誰よりも多くの仕事をこなす。
そんな生活が三年。
いつしか、自分でも気づかないうちに疲れ果てていた。
退職するのも時間の問題だったかもしれない。
そのタイミングで登場したのがさくらだった。
自分はさくらの願いを口実にして逃げたのだろうか、と、そんなことまで考えてしまう。
「どうしたの? みゅり」
床からさくらが見上げている。
やや心配そうな顔だ。
「なんでもないよ」
世界で一番説得力のない言葉を吐いて、みゆりはふたたびブラシを動かし始める。
その姿を、さくらは青い瞳に優しげな光を浮かべて見つめていた。
猫又となったさくらが、どうしてみゆりを頼ったのか。
程度の差こそあれ、立花家の人々は誰しもさくらを愛しているのだから、父親でも母親でも、いっそ弟でも良かったのである。
しかしさくらは、みゆりに白羽の矢を立てた。
このままでは、彼女の大切な妹は焼き切れてしまうと思ったから。
もちろんその思いにみゆりは気づいていないし、さくらも口にするつもりはない。
「つらくなったら、いつでもいうのよ」
そういって、みゆりのふくらはぎをぽんと叩いただけだった。
「……ありがと」
一拍の沈黙を挿入し、みゆりは小さく礼を述べた。
それから、気持ちを切り替えるように勢いよく水道のコックを捻る。
「さあ! 今日から再オープンだよ!」
景気の良い音を立てて、水が浴槽に溜まってゆく。
「にゃ⁉ 水がはねるでしょ!」
驚いたさくらは、慌てて脱衣所へと逃げていった。
あやかしになっても猫は猫。
水は苦手なのである。
◇
しかし、残念ながらみゆりの入れた気合いは空回りしてしまった。
客がこないのである。
けっして立地が悪いわけではない。
『昭和湯』のある函館市の昭和一丁目界隈というのは昔からの住宅地であり、大型のショッピングモールや高校なども近くに存在している。
函館の中でも、比較的人口の多い地域なのだ。
ちなみにその高校というのが函館商業高校。通称、『函商』で、ご当地出身ロックバンドのボーカルの出身校としても有名である。
高校があるから、部活帰りの学生などが汗を流しにくるのではないかと期待していたのだが、期待は半グラムも達成されることはなかった。
考えてみれば、いまどき部活帰りに銭湯に入りたがる高校生などいるはずがない。ちょっと客層の統計をインターネットで調べればわかる話で、自分でも驚くほどの見通しの甘さである。
五百円玉を手渡された場合を想定して番台の中に積んだ釣り銭用の五十円玉のタワーが、ただただむなしい。
『昭和湯』の入浴料は四百五十円。
というのも、各自治体によって銭湯の料金というのは決まっていて、北海道の場合は四百五十円が上限なのだ。これは公衆浴場法という法律に基づいてのこと。
健康ランドやスーパー銭湯なら入場料だけで千円以上するところもあるから、客単価で比較すると普通の銭湯の方がはるかに不利だ。
しかし、水道代がほとんどかからなかったり、固定資産税も三分の二が免除されていたり、一般公衆浴場はかなり保護されている。
絶滅の危機にある銭湯を救うために、国も地方自治体もかなり力を注いでいるのだ。
にもかかわらず、減少に歯止めはかかってない。
一九九〇年には全国に一万以上あった銭湯は、二〇一七年には四千軒を割り込んでしまった。完全な絶滅危惧種といえるだろう。
「そりゃあ、たたみたくもなるよね……」
閑散としたロビーを眺め、みゆりはため息をついた。
季太郞が経営していた頃は黒字だったというが、とても信じられない。どうやって利益を上げていたのだろう。
銭湯が利益を出すために必要な一日の客数は百二十人といわれている。
具体的な売上額としては五万三千円ほどだ。
『昭和湯』は、その百二十人まで遠く及ばない。
暖簾を出すと同時に、古くからの常連であるご老体が十人ばかり入ってくれた。ただそれだけだ。
そこからは、ぽつりぽつりと流しの客がくる程度。
「昭和湯さんが亡くなったから、ここもたたんでしまうのかと思ったわ。お孫さんが継いでくれるなんて。昭和湯さんも喜んでるわね」
などと、近所のおばあちゃんから嬉しい言葉もかけられたりもしたが、嬉しいだけでは売上は伸びない。
いっそ賽銭箱でも置いて、『昭和湯』存続にご協力をとでも書いておこうか。
「暇すぎて思考がおかしなことになってるわよ。みゅり」
番台の上に置かれた小さな座布団にちょこんと鎮座したさくらが、呆れたような声で言った。
「そうだけどさ……」
情けない顔をさくらに向けるみゆりである。
利益の出る百二十人どころか、開店してから五時間を経過して、客の総数はいまだ四十人に届いていない。
そしてみゆりは即座に了承する。
胸を叩いてみせるみゆりに、さくらがふにゃっと気の抜けた顔をした。
呆れたというより、ずっこけてしまった感じである。
「さくらのためだったら、心臓でも肝臓でも売ってみせるよ」
「怖いから。重いから。あと心臓なくなったら死んじゃうから」
漫才のようなやりとりにくすりと笑ったあと、さくらが本題を切り出す。
「おじいちゃんの銭湯をなくさないでほしいのよ」
「へ?」
予想の外側にあったお願いに、思わずみゆりは間抜けな声を出す。
さくらと『昭和湯』との間には繋がりがない。
そもそも祖父の季太郞との面識だってないはずである。
「単刀直入に言うとね。みゅりに『昭和湯霊泉』の守り手になってほしいの」
「霊泉?」
昭和湯霊泉なんて聞いたこともない。昭和湯は水道水を沸かしているだけの普通の銭湯だ。いわゆる温泉ですらないのである。
「さくたちあやかしにとって気持ちのいい場所、という解釈で問題ないわ。ざっくりと」
「本当にざっくりだよ! びっくりだよ!」
いくらなんでも説明をはしょりすぎだろう。
「きちんと説明すると長くなっちゃうんだけど」
そう言い置いて、さくらはてしてしと後ろ足で頭を掻いた。
霊泉というのは、人間でいうところのパワースポットで、あやかしたちはそこからエネルギーを得ているのだという。
風呂に浸かって気持ちがいいというのは、人間でもあやかしでも神様でも変わらないらしいとみゆりは解釈しておく。けっこうふんわりとした理解度だ。
「えらく庶民的な話ね」
「でも判りやすいでしょ? で、『昭和湯霊泉』ってのは銭湯が霊泉っていう日本で唯一の場所なのよ」
消滅させてしまうのはもったいないし、霊泉から霊力を得ないと存在が保てなくて消えてしまうあやかしもいるのだと締めくくる。
「あれ? 『昭和湯』って三年くらい休業してるよ? おじいちゃん入院してたし」
「ええ。かなりまずい状況だといっていいわね。実際、消えかかってるあやかしもいるわ」
「なるほど……」
「ちなみに、さくも消滅するわよ。完全に霊泉がなくなってしまったら」
怖ろしいことを言うから、みゆりはぎょっと目を剥いた。
猫又は猫のあやかしなので風呂に浸かるということはないが、霊泉の近くに行って霊力を吸収しなくてはいけないのだという。
「もちろん、いますぐって話じゃないわ。さくは生まれたばかりだから充分に霊力を蓄えているし」
あやかしというのは誰かの願いや、共通認識などから生まれてくるのだとさくらが解説を始めるが、みゆりはまったく聞いていなかった。
「そういう問題じゃないでしょ」
思わずぐっとさくらに顔を近づけてしまう。
お願い、などという可愛らしい次元の話ではなく死活問題だ。
もとより聞き流すつもりはないが、絶対に見過ごすことはできない。
せっかく戻ってきてくれたさくらが消滅するなど、あってはならない事態だ。何を置いても阻止しなくてはならないのである。
「さくらと一緒にいるためなら私はなんでもやる。それが『昭和湯』の存続だというなら、喜んで引き受けるよ」
白い毛並みを一撫でして、みゆりは宣言した。
そのために必要なのが、まずは周囲の人々の説得だった。
みゆりの継承宣言によって、親戚たちはあっさりと相続権を放棄した。後で相続放棄の書類に署名と捺印をもらえば完了である。
問題は父親だ。
相続の関係上、父が『昭和湯』に関するすべてを相続することに決まったが、それを喜んでいる様子はまったくない。
むしろ娘の暴走に面食らっているようだ。
「お前、東京でなんかあったのか? 失恋でもして自棄になっているんじゃないのか?」
「恋人なんて、人生で一度もいたことがありません」
「一度もって……いや、べつに良いけどな」
はっきりと言い切ったみゆりに父親がため息を吐く。年頃の娘としてそれは寂しすぎると思ったのだろう。
「べつに東京の仕事で悪いことがあったわけじゃないよ。良いことがあったわけでもないけど」
「嫌なことがあったわけでもないのに、そんでも仕事を辞めて戻ってくるってか? 『昭和湯』に対して、みゆりはそったらに思い入れがあったか?」
「……うん」
一拍の沈黙を挟む。
大切なのは『昭和湯』ではなくさくらだ、と、まさか言うわけにはいかない。
その沈黙の意味を、父は少しだけ誤解したらしい。
やはり東京で仕事を辞めて郷里に逃げ帰りたくなるような出来事があったのだろう。だから銭湯を継ぐなどと突飛なことを言い出したのだ、とでもいうような表情が父の顔をよぎった。
正面切って訊ねても、みゆりの口に見えないかんぬきをかけるだけだと思ったのだろう、口にしたのは別のことだ。
「まあ、やってみればいいっしょ」
「へ?」
さきほどまでとは違う暖かな父のまなざしに、今度はみゆりが面食らった。
強硬に反対されるものだろうと思っていたし、最悪、大げんかをしてでも奪い取ろうと決めていた。
「でもな、銭湯の経営ってのはお前が考えてるよりずっと厳しいんだぞ。俺はガキの頃から親父を見てきたからよく知ってんだ」
「うん。覚悟はしてるつもりだよ」
「したらやってみ。なんでも経験だからな。ただ、いつまでも無制限にってわけにはいかないぞ。一年で軌道に乗せてみれ。具体的には黒字で終わるってことだな」
「一年……」
「できなかったら『昭和湯』は取り壊して更地に戻す。んで、お前は函館で仕事に就けばいいべさ。口きいてやっから」
「ちょっと条件厳しくない? お父さん」
「お前はむかしっからケツに火がつかねえと本気を出さないからなあ」
笑いながら父親が言う。
ぐう、と、みゆりは黙り込んだ。
昔のことを持ち出されては分が悪い。
ともあれ、『昭和湯』を手に入れるという目的は達することができた。
しかし、それは新たなミッションの幕開けも意味する。
斜陽産業である銭湯を、一年後黒字決算で〆るという、なかなかにインポッシブルなミッションだ。
そしてみゆりは会社を辞めて函館に戻る。七年ぶりの、一時的ではない帰郷だった。
◇
さくらによると、霊泉というのは日本各地にあるという。
形状もさまざまで、たとえば『道後霊泉』などは温泉が霊泉になっているし、『富士五湖霊泉』は湖が霊泉だ。
遠野では土地そのものが霊泉としての機能を持っている。
その中にあって『昭和湯霊泉』は唯一無二の人工的に作られた霊泉だった。
そんな昭和湯を潰してしまうのは日本全体の損失になる。なぜなら、立花季太郞がどのようにして人工霊泉を作り上げたかというノウハウも伝わっていないから。
これを維持し次代に伝えなくてはいけないのだとさくらは話した。
「ごめんね。東京の生活を捨てさせてしまって」
話し終えたさくらが申し訳なさそうに頭を下げた。
「いまさらそんなこと気にしなくていいよ」
デッキブラシで浴室の床をゴシゴシ掃除しながらみゆりが笑う。
もう一度さくらを失うなど耐えられない。今度こそ本当に心が壊れてしまうだろう。
「もちろん、未練がないって言ったら嘘になるけどさ」
東京にはなんでもあった。
比較してしまったら、函館など何もないと評したほうがしっくりくるほどだ。
もちろんそれは、函館という都市に魅力がないという意味ではない。
景色は良いし、土地も広いし、ガイドブックに記載されるような観光スポットだっていくつもある。
函館山からの夜景は、タイヤメーカーが発行している有名なガイドブックで三つ星を獲得しているほどだ。
金と時間をかけて出向く価値がある、という最高評価である。
しかし、それこそがこの街が暮らす場所ではなく観光地であるという、なによりの証明だろう。
生活をするという部分に絞って話をすれば、職業選択の幅、教育機関や医療機関の充実度、福祉施設の数や公共サービスの質、どれを取っても函館は東京に遠く及ばない。
それでもみゆりは東京の生活を捨てた。
「さくらと一緒に暮らせるなら、私は東京なんて簡単に捨てられるよ」
「みゅりって微妙に重い女ね」
「誰かに取られるくらいなら、さくらを殺して私も死ぬ!」
「それは重いを通り越してサイコパスよ」
やや重くなりそうな話題を冗談で紛らわし、みゆりは風呂掃除を続ける。
みゆりどころか、父が生まれるはるか前からある『昭和湯』の建物は、築百年に届こうかという老兵だ。
もともと祖父の季太郞が創業したのではなく、誰かから譲り受けたらしいということを、先日父から聞かされている。
しかし、古い建物なのに汚らしいや、怖いなどといった感想を抱いたことは、子供の頃から一度もなかった。
色あせた紺色の暖簾も、昔ながらのタイル張りの浴室の床も、男女ひとつずつしかない浴槽も、固定式のシャワーがついた洗い場がずらりと並んでいる様子や、壁に描かれた函館山だって、いつもみゆりの心を温かくしてくれた。
それは、祖父が真剣に、愛情をもってこの銭湯を手入れしていたからなのだろう。おそらく入院するその直前まで。
無骨で不器用だが、けっして仕事に手を抜かない季太郞の為人が、そのまま現れたような場所だった。
だからみゆりの思い出の中にある『昭和湯』は、いつもぴかぴかに清潔で良い匂いのする最高にくつろげる場所だった。あやかしや神様にとってもくつろげる場所だというのも充分に納得できる。
ふと、ブラシを動かすみゆりの手が止まった。
高校の頃まで、みゆりは優秀な生徒だった。地元で一番の進学校に通っていたし、成績の順位は学年一桁より下がったことなど一度もなかった。
神童といえば褒めすぎだが、両親も彼女の将来に期待してくれていた。
だから札幌ではなく東京を進学先に選んだのだ。
しかし東京の大学には、みゆり程度の優秀さを持った学生などいくらでもいて、自分が井の中の蛙だったことを思い知らされた。
首席からはほど遠い平凡な成績で卒業し、就職先は小さなイベント企画会社だった。第一志望の会社ではなかったが、それでも就職浪人するよりはマシとの思いで入社した。
そして朝早くから夜遅くまで働く。
ブラック企業というわけではないけれど、小さな会社というのは往々にして社員一人一人の負担が大きい。
もともとやりたかった広告デザインの仕事など、ほとんどできないまま雑用に追いまくられる日々。
そんな中でもめきめきと頭角を現し、もっと華やかな会社へと移っていく同期や後輩。
結局のところ、みゆりにはそこまでの能力はなかったのだ。
十人並み、十把一絡げ、一山いくらで売っているような、表現はいろいろあるが、ようするにみゆりに突出した才能などは何もなかった。
であれば一生懸命さや真面目さでアピールするしかない。
誰よりも早く出勤し、誰よりも多くの仕事をこなす。
そんな生活が三年。
いつしか、自分でも気づかないうちに疲れ果てていた。
退職するのも時間の問題だったかもしれない。
そのタイミングで登場したのがさくらだった。
自分はさくらの願いを口実にして逃げたのだろうか、と、そんなことまで考えてしまう。
「どうしたの? みゅり」
床からさくらが見上げている。
やや心配そうな顔だ。
「なんでもないよ」
世界で一番説得力のない言葉を吐いて、みゆりはふたたびブラシを動かし始める。
その姿を、さくらは青い瞳に優しげな光を浮かべて見つめていた。
猫又となったさくらが、どうしてみゆりを頼ったのか。
程度の差こそあれ、立花家の人々は誰しもさくらを愛しているのだから、父親でも母親でも、いっそ弟でも良かったのである。
しかしさくらは、みゆりに白羽の矢を立てた。
このままでは、彼女の大切な妹は焼き切れてしまうと思ったから。
もちろんその思いにみゆりは気づいていないし、さくらも口にするつもりはない。
「つらくなったら、いつでもいうのよ」
そういって、みゆりのふくらはぎをぽんと叩いただけだった。
「……ありがと」
一拍の沈黙を挿入し、みゆりは小さく礼を述べた。
それから、気持ちを切り替えるように勢いよく水道のコックを捻る。
「さあ! 今日から再オープンだよ!」
景気の良い音を立てて、水が浴槽に溜まってゆく。
「にゃ⁉ 水がはねるでしょ!」
驚いたさくらは、慌てて脱衣所へと逃げていった。
あやかしになっても猫は猫。
水は苦手なのである。
◇
しかし、残念ながらみゆりの入れた気合いは空回りしてしまった。
客がこないのである。
けっして立地が悪いわけではない。
『昭和湯』のある函館市の昭和一丁目界隈というのは昔からの住宅地であり、大型のショッピングモールや高校なども近くに存在している。
函館の中でも、比較的人口の多い地域なのだ。
ちなみにその高校というのが函館商業高校。通称、『函商』で、ご当地出身ロックバンドのボーカルの出身校としても有名である。
高校があるから、部活帰りの学生などが汗を流しにくるのではないかと期待していたのだが、期待は半グラムも達成されることはなかった。
考えてみれば、いまどき部活帰りに銭湯に入りたがる高校生などいるはずがない。ちょっと客層の統計をインターネットで調べればわかる話で、自分でも驚くほどの見通しの甘さである。
五百円玉を手渡された場合を想定して番台の中に積んだ釣り銭用の五十円玉のタワーが、ただただむなしい。
『昭和湯』の入浴料は四百五十円。
というのも、各自治体によって銭湯の料金というのは決まっていて、北海道の場合は四百五十円が上限なのだ。これは公衆浴場法という法律に基づいてのこと。
健康ランドやスーパー銭湯なら入場料だけで千円以上するところもあるから、客単価で比較すると普通の銭湯の方がはるかに不利だ。
しかし、水道代がほとんどかからなかったり、固定資産税も三分の二が免除されていたり、一般公衆浴場はかなり保護されている。
絶滅の危機にある銭湯を救うために、国も地方自治体もかなり力を注いでいるのだ。
にもかかわらず、減少に歯止めはかかってない。
一九九〇年には全国に一万以上あった銭湯は、二〇一七年には四千軒を割り込んでしまった。完全な絶滅危惧種といえるだろう。
「そりゃあ、たたみたくもなるよね……」
閑散としたロビーを眺め、みゆりはため息をついた。
季太郞が経営していた頃は黒字だったというが、とても信じられない。どうやって利益を上げていたのだろう。
銭湯が利益を出すために必要な一日の客数は百二十人といわれている。
具体的な売上額としては五万三千円ほどだ。
『昭和湯』は、その百二十人まで遠く及ばない。
暖簾を出すと同時に、古くからの常連であるご老体が十人ばかり入ってくれた。ただそれだけだ。
そこからは、ぽつりぽつりと流しの客がくる程度。
「昭和湯さんが亡くなったから、ここもたたんでしまうのかと思ったわ。お孫さんが継いでくれるなんて。昭和湯さんも喜んでるわね」
などと、近所のおばあちゃんから嬉しい言葉もかけられたりもしたが、嬉しいだけでは売上は伸びない。
いっそ賽銭箱でも置いて、『昭和湯』存続にご協力をとでも書いておこうか。
「暇すぎて思考がおかしなことになってるわよ。みゅり」
番台の上に置かれた小さな座布団にちょこんと鎮座したさくらが、呆れたような声で言った。
「そうだけどさ……」
情けない顔をさくらに向けるみゆりである。
利益の出る百二十人どころか、開店してから五時間を経過して、客の総数はいまだ四十人に届いていない。
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