双鬼と福姫

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3.双子の鬼

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「………たかは?」
二人が賭けをしている間…もう一人の閉じ込められたたかは、傍観を保っていた。
賭けが終わった今、どうしていると勝敗から話を逸らしたい日出ひのでは彼の事を持ち出す。

「後ろに」
「え」
日出ひので
たかっ」

たかの胸に抱き込まれ、少しだけ日出ひのでの震えがおさまる。

福姫が嫁ぐ相手だ。当然冨治ふじにはたかという、同性の双子のきょうだいがいる。

冨治ふじと…決着はついたのか?」
「ついてない」
「今年も、か」

「姫に無礼だぞ。たか
たかの過度な接触に、冨治ふじは眉を顰める。

「…………冨治ふじ。こんな状態で、本当に儀式をする気か?」
無礼という言葉を無視し、日出ひのでを抱いたまま、たか冨治ふじへと話し掛ける。

「無論だ」
「そうか」
「…おれは納得してない」

「では…おれとだけするか?いつも・・・みたいに・・・・
たか……その話はっ」
たかの言葉を聞き、日出ひのでが泣くとは別の朱を、頬にのせた。

「………どういう事だ」

冨治ふじに睨まれても、素知らぬ顔で、たかは着物の隙間からするりと日出ひのでの胸へと手を寄せる。
「あっ…ん。ちょったか

幾重もの布に包まれた日出ひのでの素肌へは、そう簡単に到達こそ出来ぬものの、ある程度…忍び込めば布の上からでも十分刺激は与えられる。

「あ……っ」
冨治ふじ日出ひのではここを、きつく…こねるように弄ってあげるのが好きなんだ」
「っ」
冨治ふじへと見せつけるように、日出ひのでをじっとりと蕩けさせる。

「…寒いから」
「あ…はぁ……ん」
「服の上からでも、触れてわかる程にとがっている…」
「ん…たかぁ……むずむずする…足りない…」
「もっと強くか?」
「…は…ん…んんっ」

「これ以上は、もっと暖かい部屋でしよう」
「う……ん、いこう。たか

「待て!」
眼前の淫猥さに思考が停止していた冨治ふじは、立ち去ろうとする日出ひのでを強く掴んだ。

「いたっ」
「どっちが無礼だ…引け冨治ふじ
「っ」

「手……いやだ。冨治ふじやだよ」
日出ひのでの拒絶を受けて、冨治ふじの目に怒りが宿る。

たか…どういう事か説明をしろ」
「いい目になってきたじゃないか。いつもすまして感情を隠している冨治ふじはどこにいった?」
「ふざけるな!」

「何が?」
たか…お前は…姫に…手を出したのかっ」
冨治ふじは迸る怒りを、片割れであるたかへ向ける。
実のきょうだいに向けたものとは思えない…殺意を含む怒りだ。

「出した」
「っ」
「やめて、冨治ふじ
「何故!?」
殴りかかろうとする冨治ふじ日出ひのでがとめる。

「おれが許可した。おれが…たかを受け入れたの」
「ま、さか……」
「そういう事だ」

「では…何故…何故私は…駄目なんだ…」
目の前の…姫は…同性との行為が嫌なのだと思っていた。それ故私を拒絶するのだと…そう思っていたのに。
私と同じ性…しかも同じ顔のたかとは…寝ていたのか…。

冨治ふじの腹の底がぐらぐらと煮えていく。
先程も怒っていたが、上限が変わった。水が沸騰する温度から…鉄が溶ける温度へ……。怒りは比べ物にならない勢いで膨れ上がっていく。

「っ」
「や、やだ!?」
日出ひのではさらに腕を引かれ、たかのそばから冨治ふじへと移動する。

「……や…たか…助けっ」
「っ!」
そこでまたたかを呼ぶ…姫に、日出ひので冨治ふじの怒りは勢いを増す。

「口を開け」
「え……んぐ…」
日出ひのでの顔は、無理やり上へ向けられ、呼吸に苦しみ……喘いだところで、口の中を冨治ふじが蹂躙する。

「っ……や……ぁ」
「っ…」
「!」

「ぐ……」
「…は……や!?たかぁ!…たかぁ!」

日出ひのでに噛み切られた冨治ふじの唇に、じわりと血が滲む。

「やはり私は拒絶されるのか…。たか……たかたかたかぁああ!お前は…お前はいいというのに!!」

姫が手に入らないのならば…と、怒りを湛え過ぎておかしくなった冨治ふじは、日出ひのでを絞め殺そうと動いた。

「…あ…が…あ」
あっという間に腕に捕らわれた日出ひのでの体がぎしぎしと…軋んでいく。

「あ…ぐ…」
「………姫…すぐにあとを追う…。私と共にあの世へ逝こう……たかの手の届かないところへ…」

狂い始める鬼…半身を見て、たかは、隠し持っていた得物に手を掛ける。
「ふっ」


スパーーーン!と、とても小気味よい音が、室内に鳴り響いた。


「な、」
衝撃こそ少なかったものの、音とたかの動作に気を取られ冨治ふじは、日出ひのでを解放した。

「…ぐ…がは…げっほえっほ…えほ」
「大丈夫か?日出ひので

「おえ…いき…いきてぅ…?」
「あぁ生きている」
「あ…ひ…」
「足もある」
「せぼえ…」
「背骨も折れてない」

たか…どういうつもりだ」
「正気に戻ったか?」

「っ……そ、れは?」

今しがた自分を叩いたものを、冨治ふじは、見つめた。

「ハリセンだ」

「何故…ハリセン」
「言い直そう」

「……」
「霊験あらたかなハリセンだ」

「霊験あらたかなハリセン……」
そんなものがあってたまるかと、冨治ふじは思ったが、蛇腹に折られた厚紙には…確かに…霊験あらたかそうな古文書のような文字が書かれていた。

「では…落ち着いたところで…移動しよう。日出ひので立てるか?」
「大丈夫」

「待て、どこへ!?」
また二人がいってしまう。そう焦った冨治ふじに返された言葉は普通だった。

「暖房のきいた部屋だ」

「さっむいんだよここ!?わわわわ、もう限界、冨治ふじも、早くいこう」
日出ひのでが寒さを紛らわすために、たすたすたすと足踏みをしながら、冨治ふじを手招く。

「……え。あ…あぁ?」
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