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三章
■1.連休初日
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「ぅあああああーふんぐぐぐー!」
「はぁ~~だからいったでしょ、相当面倒だって~~」
「いやそれってご飯だけの話じゃないの!?」
「…うるさい。静かに運べ」
「ははっ、もう少しだから頑張ろう」
私たちは階段をゆっくりと進む。
「…ってか……なんか、これって俺のだけ重いとかじゃない?」
「一緒、一緒。おれのも重いよ。あ~ほら肩抜けそう」
「んが!?ちょっ…うわぁあああ、上に置くなぁああ!?…って絶対こっちのが重いじゃん!?」
「……貴様ら、いい加減にしろ!!」
「あ……はははは…」
シア先輩、フェルド、ノア、そして私。
今は四人それぞれが荷物を持ち、それを空き教室へ運んでいる途中だ。
早い時間から始まった私の一日は、あっという間に寮での午前を終え、午前を迎えた。
朝のうちに食堂で貰っていた軽食を食べ終えてから、自寮以外の生徒…フェルドや、先生方と学園で合流する。
最後にやってきたノアを加え、五月の連休中を学園で共にすごす面々…全員が揃う。
あれだけの人数…マンモス校ともいえる大規模な学園にもかかわらず、集まったのは風紀委員と先生方をいれても、二十人に満たない。
やはり今年の参加者も、異常なほど少ない。
その事に私はくすりと、内心で笑みを浮かべる。
やむを得ない事情以外でも、もちろん学園申請は可能だ。…とはいえ、やはり…休みは、みな遊びたいのだろう。その素直な欲求に…意志に、微笑ましさを覚える。
一般生徒側の申請が少なかった為、最終的に参加する風紀委員の数も調整したとシア先輩がいっていた。
特に女生徒の参加は零だった。だからこそ男女間への配慮…細かい調整を減らせるとの理由から、風紀委員側の女生徒を調整したそうだ。
人数の分……連休中の作業は…大変になってしまうかもしれないが、頑張れば大丈夫だろうと思っている。
そもそも女性に労働を強いるのは気が引けるし……、例え彼女たちが快く引き受けてくれたとしても、私は……花のような…可愛らしい少女たちには…それこそ…休みを満喫して貰う方が嬉しい。
「ぬえ~~~…なんで寝床作ったりとかするわけーー」
最後に階段をのぼり終えたノアが、不満そうに声を漏らす。
「昨日まで通常授業がおこなわれていた以上、今日やらずにいつやれと?それとも今年の首席……貴様諸々の生活準備を誰かにやって貰えるなどと、甘い事を考えていたのか?」
「あーーいやまぁ…ぶっちゃけそこまで、よく考えてなかったっていうか。トワさんとのお泊りが楽しみすぎて…まぁなんとかなるかーって感じでさ」
「あ゛?」
「まぁノアちゃん今日はまだマシよ?問題は明日からだって」
「えーーー?」
「あれ、魚野郎から何も聞いてないの?」
「えーーーあーー。魚?あーセス先生?………手伝うとかってあの話?あ、そういやプリントも貰ってたっけ…え?あれどこやったっけ?」
「なんだ聞いてんじゃん」
「え?まさか」
「そのまさか!まさかだよ!先生~Sの雑用とか…いわゆる奉仕活動?そういうのもがんがんやらされるんだよ何故か~。この学園申請ってやつは~~。うわぁああ面倒。なんでおれここにいんだろ…なんで休みに…楽しい連休なのに学園申請しちゃったんだろ……」
「げぇ!?ど…どーりで参加者が少ないはずだ」
「でっしょーー。家とかに帰れなくても…まぁほらそれなりになんとかするヤツが大半だからさ。参加するのはほんと少ないわけー」
「なぁ~るほど…あーーー…」
「立っている者は親でも使えというだろう。休みで暇そうな労働力の有効活用だろう」
「…鬼風紀は何?Mなの?自分も使われる側でしょうに…何?Mなの?」
「あ゛?」
「お?お?なんだーこのM鬼風紀め図星かーー」
「こら…フェルド……ぅわ!?」
シア先輩とフェルドに視線を向けようと…振り返った私は、後ろからの衝撃に倒された。
「トワさん、隙あり!どーーーん!」
「…んぶ!?」
「お、じゃおれも、かいちょ。はい、どーーーん!!」
「わっぷ…ふ…はははは!……ちょっ」
ノアに突然抱き着かれ、私は持っていた荷物と共に床に転んだ…。
けれど彼が器用に自分の持っていた荷物…寝具を、私の下へと滑り込ませてたおかげで、その上へ荷物ごとぼふりと落ちただけで痛みはなかった。
そうしてさらに、上から…フェルドに掛布団をかけられ、私とノアは廊下で寝るような形になってしまう。
「やだ…トワさんと同衾しちゃった…!」
「やだ!!真っ昼間から、かいちょと、ノアちゃんってばやるぅー!!」
「…もう…。ははっ。二人共冗談はそれくら…い…に……」
「……きーーーーーさーーーーまーーーらーーー!!」
「ひっ」
「…うーわ…すっごい額のしわ」
「何本?何本ある?」
「五本じゃない?」
「え?そんなに?そんなに作れるもんなんだ?」
「あ、その…シア先輩すみませんっ」
「布団が汚れるだろうがーーーー!!廊下だぞここはっ」
窓ガラスをびりびりと震わせるような、怒声を出してから、シア先輩は私へと視線を向ける。
「ひえっ…え……あ」
怒りながらも私を起こそうとしてくれたのか、手がこちらに差し伸べられていた。
「あ…ありがとうございま……」
「どーーーーん」
「な゛っ!?」
「んぐえ!?」
「んぎゅぅっ!?」
変わらず楽しそうなフェルドが、今度はシア先輩も押して…さらにその上にフェルドが………。
そうして私は…最終的に四人の下敷きになった。
「んんんんん……んうぅ………んぁ…」
ぜ……全然動けない。
「おも…これは流石に重い…ちょっと…フェルドさん…ブレイクブレイクっ」
「どけっこっの…無駄にでかい…図体がっ…」
「あん?何Mなんでしょ?嬉しいか?この鬼風紀め!」
「んんんん……んんーー!」
…ぜ……ぜ、…全然動けない……。
その後、セス先生に現場を発見された私たちは、複数人の体重の重さ、一番下へかかる重量の危険性を懇切丁寧に教えられた。
最終的に発端となった二人…ノアとフェルドは、両手に水の入ったバケツも持ち閑散とした廊下に一時間立っている事をセス先生に指示され……、悲鳴をあげていた。
私も渦中にいた身として、その罰に参加すべきだと思ったのだが……、シア先輩に人手がこれ以上なくなるのは困ると制されてしまえば、そうもいかなかった。
少しだけ…残念に思ってしまうのは、私も……これから始まる非日常に、わくわくしているせいだろう。
「はぁ~~だからいったでしょ、相当面倒だって~~」
「いやそれってご飯だけの話じゃないの!?」
「…うるさい。静かに運べ」
「ははっ、もう少しだから頑張ろう」
私たちは階段をゆっくりと進む。
「…ってか……なんか、これって俺のだけ重いとかじゃない?」
「一緒、一緒。おれのも重いよ。あ~ほら肩抜けそう」
「んが!?ちょっ…うわぁあああ、上に置くなぁああ!?…って絶対こっちのが重いじゃん!?」
「……貴様ら、いい加減にしろ!!」
「あ……はははは…」
シア先輩、フェルド、ノア、そして私。
今は四人それぞれが荷物を持ち、それを空き教室へ運んでいる途中だ。
早い時間から始まった私の一日は、あっという間に寮での午前を終え、午前を迎えた。
朝のうちに食堂で貰っていた軽食を食べ終えてから、自寮以外の生徒…フェルドや、先生方と学園で合流する。
最後にやってきたノアを加え、五月の連休中を学園で共にすごす面々…全員が揃う。
あれだけの人数…マンモス校ともいえる大規模な学園にもかかわらず、集まったのは風紀委員と先生方をいれても、二十人に満たない。
やはり今年の参加者も、異常なほど少ない。
その事に私はくすりと、内心で笑みを浮かべる。
やむを得ない事情以外でも、もちろん学園申請は可能だ。…とはいえ、やはり…休みは、みな遊びたいのだろう。その素直な欲求に…意志に、微笑ましさを覚える。
一般生徒側の申請が少なかった為、最終的に参加する風紀委員の数も調整したとシア先輩がいっていた。
特に女生徒の参加は零だった。だからこそ男女間への配慮…細かい調整を減らせるとの理由から、風紀委員側の女生徒を調整したそうだ。
人数の分……連休中の作業は…大変になってしまうかもしれないが、頑張れば大丈夫だろうと思っている。
そもそも女性に労働を強いるのは気が引けるし……、例え彼女たちが快く引き受けてくれたとしても、私は……花のような…可愛らしい少女たちには…それこそ…休みを満喫して貰う方が嬉しい。
「ぬえ~~~…なんで寝床作ったりとかするわけーー」
最後に階段をのぼり終えたノアが、不満そうに声を漏らす。
「昨日まで通常授業がおこなわれていた以上、今日やらずにいつやれと?それとも今年の首席……貴様諸々の生活準備を誰かにやって貰えるなどと、甘い事を考えていたのか?」
「あーーいやまぁ…ぶっちゃけそこまで、よく考えてなかったっていうか。トワさんとのお泊りが楽しみすぎて…まぁなんとかなるかーって感じでさ」
「あ゛?」
「まぁノアちゃん今日はまだマシよ?問題は明日からだって」
「えーーー?」
「あれ、魚野郎から何も聞いてないの?」
「えーーーあーー。魚?あーセス先生?………手伝うとかってあの話?あ、そういやプリントも貰ってたっけ…え?あれどこやったっけ?」
「なんだ聞いてんじゃん」
「え?まさか」
「そのまさか!まさかだよ!先生~Sの雑用とか…いわゆる奉仕活動?そういうのもがんがんやらされるんだよ何故か~。この学園申請ってやつは~~。うわぁああ面倒。なんでおれここにいんだろ…なんで休みに…楽しい連休なのに学園申請しちゃったんだろ……」
「げぇ!?ど…どーりで参加者が少ないはずだ」
「でっしょーー。家とかに帰れなくても…まぁほらそれなりになんとかするヤツが大半だからさ。参加するのはほんと少ないわけー」
「なぁ~るほど…あーーー…」
「立っている者は親でも使えというだろう。休みで暇そうな労働力の有効活用だろう」
「…鬼風紀は何?Mなの?自分も使われる側でしょうに…何?Mなの?」
「あ゛?」
「お?お?なんだーこのM鬼風紀め図星かーー」
「こら…フェルド……ぅわ!?」
シア先輩とフェルドに視線を向けようと…振り返った私は、後ろからの衝撃に倒された。
「トワさん、隙あり!どーーーん!」
「…んぶ!?」
「お、じゃおれも、かいちょ。はい、どーーーん!!」
「わっぷ…ふ…はははは!……ちょっ」
ノアに突然抱き着かれ、私は持っていた荷物と共に床に転んだ…。
けれど彼が器用に自分の持っていた荷物…寝具を、私の下へと滑り込ませてたおかげで、その上へ荷物ごとぼふりと落ちただけで痛みはなかった。
そうしてさらに、上から…フェルドに掛布団をかけられ、私とノアは廊下で寝るような形になってしまう。
「やだ…トワさんと同衾しちゃった…!」
「やだ!!真っ昼間から、かいちょと、ノアちゃんってばやるぅー!!」
「…もう…。ははっ。二人共冗談はそれくら…い…に……」
「……きーーーーーさーーーーまーーーらーーー!!」
「ひっ」
「…うーわ…すっごい額のしわ」
「何本?何本ある?」
「五本じゃない?」
「え?そんなに?そんなに作れるもんなんだ?」
「あ、その…シア先輩すみませんっ」
「布団が汚れるだろうがーーーー!!廊下だぞここはっ」
窓ガラスをびりびりと震わせるような、怒声を出してから、シア先輩は私へと視線を向ける。
「ひえっ…え……あ」
怒りながらも私を起こそうとしてくれたのか、手がこちらに差し伸べられていた。
「あ…ありがとうございま……」
「どーーーーん」
「な゛っ!?」
「んぐえ!?」
「んぎゅぅっ!?」
変わらず楽しそうなフェルドが、今度はシア先輩も押して…さらにその上にフェルドが………。
そうして私は…最終的に四人の下敷きになった。
「んんんんん……んうぅ………んぁ…」
ぜ……全然動けない。
「おも…これは流石に重い…ちょっと…フェルドさん…ブレイクブレイクっ」
「どけっこっの…無駄にでかい…図体がっ…」
「あん?何Mなんでしょ?嬉しいか?この鬼風紀め!」
「んんんん……んんーー!」
…ぜ……ぜ、…全然動けない……。
その後、セス先生に現場を発見された私たちは、複数人の体重の重さ、一番下へかかる重量の危険性を懇切丁寧に教えられた。
最終的に発端となった二人…ノアとフェルドは、両手に水の入ったバケツも持ち閑散とした廊下に一時間立っている事をセス先生に指示され……、悲鳴をあげていた。
私も渦中にいた身として、その罰に参加すべきだと思ったのだが……、シア先輩に人手がこれ以上なくなるのは困ると制されてしまえば、そうもいかなかった。
少しだけ…残念に思ってしまうのは、私も……これから始まる非日常に、わくわくしているせいだろう。
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