上 下
19 / 30
二章

☆3. フェルド・アンヴィルと人間

しおりを挟む
「おっとぉ…」
「…え…!きゃぁっ」
「…あ」

おれの目に飛び込んできたピンク色の世界は、おれが目撃しちゃった事で終了した。

「あーーーごめんねぇ」

走り去った彼女とは別……残された相手にとりあえず謝る。や、邪魔する気はなかったしさ。一応ね。

「あーーーまぁ…別に。それより」
「ん?」
「あんたも逃げられちゃったみたいだけど?」
「えーーーマジで?」
「マジで」

そういって後ろを見てみれば、確かに。おれのツレもいなくなってた。

「どうする?残された同士楽しむ?」
「冗談」
「だよね~」

もちろん、おれだって冗談。
顔だけなら結構好みなんだけどね、ノアちゃん。それに…。

「ノアちゃんおれの事、嫌いだもんね」
「へぇ?わかるんだ」
「うん、だっておれもノアちゃんあんま好きじゃないし。あっ顔じゃなくてね」
「あっはっ!素直じゃん。性格がでしょ?」
「そそっ」
「おれも顔だけ・・はおキレイでいいと思うよ、フェルドさん」
「あはははっ」

ノアちゃんとは生徒会の仕事で何度も会ってるし、その点は助かってる。
けど…仕事一緒に出来てもプライベートで付き合えるかはまた別だもんね。
あははは、無理!
ってかこれって同族嫌悪に…なんのかねぇ?ノアちゃんとは同族じゃないのに?


「で?…ノアちゃん。夢魔でもないくせに…なんでそうアグレッシブなのかな?何度目これ?」
「三度目」

「だっよねーおれの記憶とも一致した!もう三度目だよ、こういう現場がかち合うの」
「こっちの台詞だし、三度とも同じ場所じゃないのにさ。なんでかち合うかな…」
「は~…ほんと勘弁して」

だからどうってわけじゃないけど。夢魔にとってそういう事・・・・・は、遊ぶ食べる寝る!と同じくらい自然にやる事だから…三度妨害されたとなると、ちょっとイラつくっていうか…、ストレスっていうか…。
しゃがんだおれが、落ち込んだって思ったのか、ノアちゃんがちょっと気まずそうに問いかけたきた。

「何?あんた夢魔だし、そういう事しないと、干からびちゃったりすんの?」
「うっわ!?」
「え、何?」
「あーーーあーーーあーー人間ってヤバい」

そっか、これかー。これかよーあーーもーーー。これが…人間が数を減らしても放っておかれてる原因の一つってやつねー。はいはい。
身をもってセクハラされて理解した。

種族特性を持たない人間は、種族特性を持ってる人にたいして驚くほどデリカシーがない。
おれたちが自然と持ってる…種族特性を言葉にする事への、忌避感や嫌悪感が全然ない。
訊いちゃうかな!?訊く普通!?
種族特性が未発達な子どもならまだしも…この年でそれはない~~~。しかも…自分の種族の事じゃなくて…夢魔他種族のおれの事いったからね。

おれは不快で歪んだままの顔で、口を開く。

「ノアちゃんさぁ…」
「ん?」
「種族特性について、話しちゃだめとかって教わってないの?」

人間がわからないのは百歩譲って仕方ないけど…、それを教える事は出来んじゃないの?

「ダメ?なんで?」
「…………あーー」

だめだ。その反応。そっかー種族特性がないって。こんなにも伝わらない・・・・・んだ。
感情が共有出来ない。溝がある。
あれ…でもこの感じ…なんだろ…ちょっとかいちょと似てんな?いやいや気のせいか。気のせいだね。あの人はただ性格がぽややんで色々と抜けてるところがあるだけだから。
まぁでも……ノアちゃんへの不快を緩める為に、思い出しついでに…相手はかいちょ…相手はかいちょと心を誤魔化すように念じる。

「……神社の御神体盗める?」
「は?何突然?」
「鳥居に落書き出来る?」
「え、は?」
「なんかイヤだなぁ~って思わない?」
「…そりゃ…まぁ祟られそうだし」
「おれたちにさっきみたいな事訊くのは、そういう感じ」
「は?なんで?」
「そこを説明は出来ないね。そういうもんだし」

「へぇ…でも俺、これまで特にあんたみたいな反応された事ないけど?」
「前科持ちかーーい!……んーそれは相手が、見逃してくれてたんじゃないの?」

忌避感も嫌悪感も、個々人の種族特性の強弱…その人との距離感…仲のよさとかでも多少変わるし。

「…へぇ?……でもさ、訊かなきゃわかんないじゃん?ネットにも本にものってないし」
訊かなきゃ・・・・・わからない・・・・・
「うん」
「……種族が…違う……」
「え?何をいまさら…」

人間ヤバい。
ちなみにおれは別にそういう事しなくても干からびない…でもそれを…言葉にして話す気はない!
はぁああああ…。もうとんだセクハラ案件、いやモラハラなのかなぁ…。


「同じ生徒会の先輩として忠告するね」
「ん?」
「この学園は種族特性の強い・・人が多いから……、今回みたいな事…またしたら命の危険もあると思った方がいいよ」
「はぁ?冗談」

「冗談だと思うならそれでもいいよ」
「…………そっか、わかった」
「お?」

あれ?素直だな。納得したのかな。あーー黙ってそういう顔してりゃ、ほんと好みなんだけどな…。

「ゴキブリ見て、気持ち悪いって思うのと同じような原理って事だな!」
「……あーー……まぁそうね…そうですね…。そういう生理的嫌悪に近いっちゃ…近いねえ…」

種族特性をゴキブリに例えるとかいい度胸してんな……ノアちゃん。
でも人間なりに理解しようとしてくれたんだよね…そうだよね。
おれは、握った拳を…ただかたく握りしめるだけで我慢した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したが弟が可愛すぎた!

ルカ
BL
悪役令嬢に転生したが男だった! ヒロインそっちのけで物語が進みゲームにはいなかった弟まで登場(弟は可愛い) 僕はいったいどうなるのー!

転生したらBLゲームの攻略キャラになってたんですけど!

朝比奈歩
BL
ーーある日目覚めたら、おれはおれの『最推し』になっていた?! 腐男子だった主人公は、生まれ変わったら生前プレイしていたBLゲームの「攻略対象」に転生してしまった。 そのBLゲームとは、本来人気ダンスヴォーカルグループのマネージャーになってメンバーと恋愛していく『君は最推し!』。 主人公、凛は色々な問題に巻き込まれながらも、メンバー皆に愛されながらその問題に立ち向かっていく! 表紙イラストは入相むみ様に描いていただきました! R-18作品は別で分けてあります。 ※この物語はフィクションです。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

BLゲームの脇役に転生した筈なのに

れい
BL
腐男子である牧野ひろはある日、コンビニに寄った際に不慮の事故で命を落としてしまう。 その朝、目を覚ますとなんと彼が生前ハマっていた学園物BLゲームの脇役に転生!? 脇役なのになんで攻略者達に口説かれてんの!? なんで主人公攻略対象者じゃなくて俺を攻略してこうとすんの!? 彼の運命や如何に。 脇役くんの総受け作品になっております。 地雷の方は回れ右、お願い致します(* . .)’’ 随時更新中。

-悪役兄様ルートのフラグの折り方-

青紫水晶
BL
乙女ゲームの世界に転生したら悪役キャラの少年に拾われて義理の兄が出来ました。 まだ闇堕ち前の兄の悪役フラグをへし折るために奮闘します! 魔法使いと人間が暮らすファンタジーな世界、差別が当たり前の世界で特殊な魔法使いの兄と転生少年のラブストーリー。 二種魔法使いクール美形×武術が得意の健気平凡 兄の溺愛が過激すぎてちょっと困っています。 ※現在大幅修正中のため、ページを順次公開していきます。

加筆修正中 モブで平凡に転生したのに攻略対象がほっといてくれない

リョウ
BL
ルカ・フォン・グレーフェンベルク 18歳 乙女ゲーム 彼方を見つめてフォーリンラブ の世界に生きるモブである 今日は学園の卒業式 さっさとうちに帰って甘いものを食べたい! 平穏な日々を送りたいと思うのに 攻略対象は今日もやってくる! 登場キャラにヤンデレというか割とやばいタイプの攻めが出てくるのでご注意ください。 今後の展開で無理やりの挿入なし描写もあります 注意書きになります 旧題名 攻略対象の恋愛対象 腐女子出てきますので注意 勢いとノリで書いてるだけなのでご都合主義になります。 ゆるりと加筆修正中です

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

推しの悪役令息に転生しましたが、このかわいい妖精は絶対に死なせません!!

もものみ
BL
【異世界の総受けもの創作BL小説です】 地雷の方はご注意ください。 以下、ネタバレを含む内容紹介です。 鈴木 楓(すずき かえで)、25歳。植物とかわいいものが大好きな花屋の店主。最近妹に薦められたBLゲーム『Baby's breath』の絵の綺麗さに、腐男子でもないのにドはまりしてしまった。中でもあるキャラを推しはじめてから、毎日がより楽しく、幸せに過ごしていた。そんなただの一般人だった楓は、ある日、店で火災に巻き込まれて命を落としてしまい――――― ぱちりと目を開けると見知らぬ天井が広がっていた。驚きながらも辺りを確認するとそばに鏡が。それを覗きこんでみるとそこには―――――どこか見覚えのある、というか見覚えしかない、銀髪に透き通った青い瞳の、妖精のように可憐な、超美少年がいた。 「えええええ?!?!」 死んだはずが、楓は前世で大好きだったBLゲーム『Baby's breath』の最推し、セオドア・フォーサイスに転生していたのだ。 が、たとえセオドアがどんなに妖精みたいに可愛くても、彼には逃れられない運命がある。―――断罪されて死刑、不慮の事故、不慮の事故、断罪されて死刑、不慮の事故、不慮の事故、不慮の事故…etc. そう、セオドアは最推しではあるが、必ずデッドエンドにたどり着く、ご都合悪役キャラなのだ!このままではいけない。というかこんなに可愛い妖精を、若くして死なせる???ぜっったいにだめだ!!!そう決意した楓は最推しの悪役令息をどうにかハッピーエンドに導こうとする、のだが…セオドアに必ず訪れる死には何か秘密があるようで―――――?情報を得るためにいろいろな人に近づくも、原作ではセオドアを毛嫌いしていた攻略対象たちになぜか気に入られて取り合いが始まったり、原作にはいない謎のイケメンに口説かれたり、さらには原作とはちょっと雰囲気の違うヒロインにまで好かれたり……ちょっと待って、これどうなってるの!? デッドエンド不可避の推しに転生してしまった推しを愛するオタクは、推しをハッピーエンドに導けるのか?また、可愛い可愛い思っているわりにこの世界では好かれないと思って無自覚に可愛さを撒き散らすセオドアに陥落していった男達の恋の行く先とは? ーーーーーーーーーー 悪役令息ものです。死亡エンドしかない最推し悪役令息に転生してしまった主人公が、推しを救おうと奮闘するお話。話の軸はセオドアの死の真相についてを探っていく感じですが、ラブコメっぽく仕上げられたらいいなあと思います。 ちなみに、名前にも植物や花言葉などいろんな要素が絡まっています! 楓『調和、美しい変化、大切な思い出』 セオドア・フォーサイス (神の贈り物)(妖精の草地)

処理中です...