上 下
26 / 48
三章

5.阿吽*

しおりを挟む
犬と猿で仲が悪そう…だなんて思ったのに、その言葉はすぐ撤回するはめになってしまった。

「ん…ふ…」
カーテンの隙間から、薄い光が漏れて…今がまだ午前だといやでもわかってしまう。
その現実から目を擦らす為に、目の前のものに必死で舌を這わせる。
「っ…んぅ…は…っ」
「あは、いいねえ。この角度」
以前、兄先生のものを舐めた事が…あるとはいえ…。
今回は意識がはっきりした状態だから、前回とは感覚が違う。
それでも不快感はなくて、それどころかおいしさを感じてしまうのだから、本当にもう…俺の体はどうかしている。
「くぅ……ふ…」

手は体を支えるのに使っているので……こちらには使えない。
だから舌を這わせるしか出来なくて、ともすれば逃げそうになる陰茎を必死で追いかける。
俺の動きで徐々に固くなっていくのが、ちょっと嬉しい。
「は…っ…ん…ん」
行動を褒めるように頭を撫でられ、くぅと喉の奥が鳴る。
「いいねえ。視覚の暴力」

「こっちも、舐めてやる」
「んあっ!?」
驚いた拍子に口から外れてしまった兄先生の陰茎が、顔にあたる。
「ほらクロチャンもう一回」
「ん………ぁああア!?」
口に入れようとした所で、それを阻まれるように後ろに刺激が与えられた。
「ちょっとワンコロお?」
「んん……舌…っあ…う」
「ふっ…」
「いーじーわーるだー」
先生に後孔を舐められるのも…初めてじゃない…。
けど同時は初めてで、刺激が強すぎる。俺の戸惑いを感じ、二人が満足そうにしているのがわかる。

…これは罰だそうだから。そういう意味では目的を達成出来ているんだろう。
罰……。あの後、全てを話した俺は、当然ここのつから受けた、プロポーズもどきの話もしてしまった。
俺としては子どもの言った微笑ましいレベルの話だったのに…聞いた途端…二人して大人げないと思う。
前もそうだったけど、こういう時に妙に連携が取れているのが困る。犬猿じゃなくて阿吽じゃないか。
「ん…んん…っぁあ」
…二人のこれが嫉妬じゃないとわからない程、鈍感じゃない。
だからこそ思う。やっぱり大人げなさすぎないかと。

しかも浮気と言われた。これは浮気した俺への罰らしい。
浮気って…。浮気ってなんだ。いや浮気の意味がわからないって話じゃなくて…。
どうしてあれが浮気になるのか…と…いう事で…。
もう二人の中では俺=嫁が確定していて怖い。でもなんだろう。そういう反応をされて悪い気がしていないのだから、俺も二人に参ってしまったのかもしれない。

以前は殺気を向けられたりで、求婚への拒否が出来ない雰囲気だったけど、今はちょっと違う。昨日のここのつと比べれば違いがわかってしまう。
そうなんだ。妙な事に、ここのつの時にはすぐ出た断りの言葉を、今の俺は二人に言う気がない。脅されていなくても…だ。そして二人に寄られれば、俺自身が彼らを求めてしまうのもわかる。
ただそれが体のせいなのか…、心から…二人を好きになってきているからなのかは正直わからない。

だって俺は人を好きになったような、経験がないから。
好きだなと思った事はある。けど、それは違うと言われた。それは恋愛感情じゃないと。
あっちでの俺は割と淡泊だったように思う。会えないならそれまでと関係が切れた人は数知れなかったし、そういうのも、私の事好きじゃないよねと言われてしまう所以だったんだろう。
確かに、寂しい、会いたい。そんな気持ちは抱けなかった。用事があるならそれを優先していい。じゃあそれぞれ好きに過ごそう。そんな事を言えば、気がつけば関りあう人は、仕事関係の人しかいなくなっていた。

二人の事は嫌いじゃないと思う。出会ってそんなに時間がたった訳じゃないけど。
これだけ好意を示されて、迷惑と思わないって事はそうなのかな?やっぱりよくわからない。
でも寂しさはあるような気がする。二人に会えばそれが埋まるような……。
「ん…ふぅ…」
答えを求めるように再度舌を這わせれば、確かに満たされてしまうものがある。
そして後ろに与えられている熱も、いやなんかじゃ…なく…て…むしろ…。
「…っんぅ」

「あーらら」
「罰にならなくなったな…」
戸惑いは消えて、いつの間にか発情してしまった俺がいる。

「あっ!」
指を入れられ、いつものように後孔を広げられていく。
「今日はこっちも頑張ろうねえ」
「ん…ふ…は……ん…うん…がんば…る」
後ろをかき回されて、前を舐めて。必死でやれば、両方から褒められるように熱が与えられる。
「あう…は……ん」
先生のが後ろに入っている。兄先生のが口の中に入っている。
…どっちも……どっちかじゃない。どっちも、だ。両方俺に入っている。喉の奥を押されるように突き入れられ、胎の中を突き破るように挿し込まれ…。二人は先程のように器用に呼吸を合わせ、前で…後ろで…後ろと前で…それぞれ動く。

「ん…ぐ……ぁ…」
こんな事あり得るのかと思ったけど、実際にそれは起きて…、俺達は三人同時に射精した。
「ん…ふぅ…」
やっぱりおいしい。口に出されたものを飲み下せば、多幸感が増す。
「は~~そんなにおいそうに飲んじゃってまー」
「ん…おいし…い…から」
「うわーーーー好きです!結婚してください!!」
「…おい馬鹿」
「あっあっあっ!?」
先生が後ろから引き抜かれてしまう。あぁ…こっちは全部飲めてないな。
足を伝って先生の精液が出ていってしまうのが、残念で仕方がない。
「ぁあ…」
「また注いでやる」
「ありがと……ございます…」

「ちょっ!?え、またワンコロのターンなの」
「お前も出しただろう」
「出したけども!?違うでしょ!?」
「……うるせぇ」
「え?なんか凄く納得出来ないんですけど」
「………」
「クロチャン!クロチャンおれのも欲しいよね」
「ん…ほし…」
「ほらあ!!見ろ!」
「…また前からなら許してやる」
「おおおい!?」
「ん…?」
駄目なのかな…欲しいんだけど。兄先生のも後ろから飲みたい。そして先生のも前から飲みたい。
「せんせ…の前からも…の…みた……」
「!」
「うわ…はっやー」
「ん…ふぅ…」

簡単に向きを変えられた俺は、先生の陰茎を口に迎え入れる。
これがさっきまで俺の後ろに入っていたのか…。異常なのかもしれないけど、嫌悪感はやっぱりなくて、むしろ先程まで自分に入っていたという事実に興奮を覚える。
「はっクロチャン。じゃ、こっちもいくよ」
「ん…ぁ……ひ…て」
「おれは嫉妬深くなんかないからねえ、ワンコロのそのままでも別に気にしないよ」
「ん…ふぁ…っあっァアッ」
「…出すんじゃなくて、塗り替える位注いであげるね」
「それで、どの口が嫉妬深くないとか抜かすんだ」
「あはっこの口?」
「あっ…ぃっ…んん!?」
兄先生に、後ろから抱き込まれるよう挿し込まれ、背中に噛みつかれる。
「っ」
「あーごめんねワンコロ、クロチャンに噛まれちゃった?」
「…………」
「なんだ無事か」
咄嗟に口を離したからよかったものの、危ない所だったと思う。
「ん…ぅ…」
「じゃ、今度は逆で楽しもうか…クロチャン」

「あ…ああ…ッは!?…ん…ぁッ」
兄先生に揺すりながら突き入れられ、先生の陰茎が咥えられない。
「下手くそ…」
「失礼だな。…ん…はい…もういいよ。…そっちにも合わせてちゃんと動くよ」
「どうだか」
「…………は…ん」
再び口元へ差し出され、口内に入れる。

「ん~~…ふ……ぁ…んっんっ」
兄先生のが後ろに入っている。先生のが口の中に入っている。
二人はまた器用に呼吸を合わせ、前で…後ろで…後ろと前で…それぞれ動き出す。
また同じようなタイミングでそれぞれが果てて、それがあまりに気持ちよくて…自分から出たとは思えないような高い音が出た。
「………うわああもう…可愛い」
「………あぁ」

二人から蕩けるような笑みを向けされ、それが嬉しくて自分も笑い返す。……これが好き・・なのかなぁ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ザ・兄貴っ!

BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は… 平凡という皮を被った非凡であることを!! 実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。 顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴… けど、その正体は――‥。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

屈強冒険者のおっさんが自分に執着する美形名門貴族との結婚を反対してもらうために直訴する話

信号六
BL
屈強な冒険者が一夜の遊びのつもりでひっかけた美形青年に執着され追い回されます。どうしても逃げ切りたい屈強冒険者が助けを求めたのは……? 美形名門貴族青年×屈強男性受け。 以前Twitterで呟いた話の短編小説版です。 (ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結】ワンコ系オメガの花嫁修行

古井重箱
BL
【あらすじ】アズリール(16)は、オメガ専用の花嫁学校に通うことになった。花嫁学校の教えは、「オメガはアルファに心を開くなかれ」「閨事では主導権を握るべし」といったもの。要するに、ツンデレがオメガの理想とされている。そんな折、アズリールは王太子レヴィウス(19)に恋をしてしまう。好きな人の前ではデレデレのワンコになり、好き好きオーラを放ってしまうアズリール。果たして、アズリールはツンデレオメガになれるのだろうか。そして王太子との恋の行方は——?【注記】インテリマッチョなアルファ王太子×ワンコ系オメガ。R18シーンには*をつけます。ムーンライトノベルズとアルファポリスに掲載中です。

処理中です...