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第12話 真白君は前と後ろの両方で抱く(意味深)
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周囲の声援と悲鳴が響く中、コース上から立ち上がれない二人は未だに微動だにしない。
こうしている間に全てのグループが追い抜いていった。
小倉チームが一着でゴールを決めたところを横目ではあるが確認出来ていた。
小刻みに震えている種田を見るととても悔しそうだ。
賭けがどうとかではないんじゃないかなと思う。
ヤンキーだしオラオラだしそういったプライド的なものもあったと思う。
せっかく自分に向けられた声援に応えられなかったのもあると思う。
一概に決めつけられないけど、練習してここまできてあと少しで手が、足が届かなかったという悔しさは。
スポーツをやっている自分には理解出来るつもりだ。
すると俺は種田に近づきしゃがみ込むと
右手に背中を抱き腕を掴み、左手を両膝裏から腕を通し太腿を掴み立ち上がるとそのまま救護室の方へと走り出した。
「うわなにをするくぁwせdrftgyふじこlp」
何を言っているのか理解出来ないが、テンパってるのはわかった。
俺も何をしているのかよくわかっていない。
ただ、一秒でも早く保健の先生に見せないといけないという思いだけで行動している。
だからこういう時は
「だまって運ばれろ。舌噛むぞ。」
「あ、ハイ。」
そのあと何か聞こえない呟きが聞こえたが、無我夢中で走る。
しかしすぐに意識し始めてしまう。
腕に伝わる背中と腿裏と膝裏の感触と汗の感触と体温と、自分の胸に当たる左半身の感触が……
いや、今は余計な事を考えている時ではないはずだ。
ここで躓いた方が余計危険だ。
二次災害を起こすわけにはいかない。
至る所から、きゃぁぁぁぁぁとかしねぇぇぇぇぇとかお姫様抱っこうらやましーーーーとかの声が聞こえていた。
他にも俺と替われぇぇぇとか、ヤンキーがお姫様にジョブチェンジだーーーとかも聞こえる。
「はぁはぁ、着いた。」
種田をゆっくりシートに下ろすと後は先生に診てもらう。
「ご苦労、かっこよかったぞ少年。」
それだけ言うと保健の先生は応急処置を施していた。
俺には何をしているかわからなかったが。
「こんなん唾つけとけば治る」
とか聞こえたのは気のせいだろうか。
俺たちがコースから消えたため、次の競技へと進んでいった。
「あぁ、あとの処置は保健室でだな。少年、彼女を保健室まで連れて行ってやってくれ。私は先に向かっておく。」
言いたいことを言うと先生は出て行ってしまった。
俺は種田へ視線を向けたが、彼女は顔を蒸気させてこちらを見てくれない。
「ほら、行くぞ。」
「ややややや、やだ。またあんなのは嫌だ、ははは、恥ずか死ぬ。」
体育座りをして、真っ赤になって唇を尖らせてそっぽを向くその姿は、子供っぽくもあり可愛くもあった。
「俺だってあれはもう一回やれと言われても恥ずか死ぬわ。じゃぁおぶってくから、ほれ。」
俺はしゃがんで背中におぶさるように促す。
「……まぁ、このくらいなら。」
んしょ、と言いながらゆっくり立ち上がると、真白の背中にもたれ掛かり恵は腕を前に回す。
落ちないように首の下で抱きしめるように。
そしてやはり腿を掴んで持ち上げる。
「あ、ない。」
それが意味するものは……
ごんっ
「いでぇっ」
恵が真白の頭にげんこつを落とした音。
「何がないってぇ?」
「ナンデモゴザイマセン。」
ないと言ったが全くではない、背中に感じる少しの弾力と突起……は?
(今日ノーブラだとは言えない。慌てていて着けるの忘れてたとか言えない。運動会が楽しみで舞い上がってたなんて言えない。)
種田恵、心の声である。
「じゃぁ、ゆっくり歩くからな。」
幾人かが見ているが、見世物じゃないので勘弁して欲しい。
これら一部始終を保健委員の生徒やすぐ傍にある放送席の生徒達にばっちり見られて聞かれていた事に気付いていなかった。
歩く度に擦れていて種田から小さな声が漏れていたのだが、足の痛みを耐えているものだと思い性的な方は気にしなかった。
それよりも早く保健室へ連れて行き、さらなる治療をしてもらわないとという思いしかなかった。
☆☆☆
どうにかして保健室まで行く事が出来た。
周囲の歓声も冷やかしも毒にしかならない。
歓声はありがたいけど、意識しちゃうから。
女子の身体を触ってると意識しちゃうから。
ガララララ
保健室のドアを開けると先生が待っていた。
先生は彼女を椅子に座らせると、こちらに向かってくる。
「ちょっとこの先は男子禁制なのでな、終わったら呼ぶから廊下で待っていてくれないだろうか。」
俺は廊下まで押されてそのままポイされた。
それから五分くらい経った頃、先生が呼びに来た。
「もう良いぞ。色男。」
その言い方にツッコミはしたくなるが
保健室の中に入ると、今日一で真っ赤になっている種田恵が頭をふらふらさながら椅子に座っていた。
―――――――――――――――――――――――――――
後書きです。
脳内選択肢、結局両方採用でした。
本当なら多かったどちらかにすべきでしたが、どっちも見てみたいと思った次第です。
ちなみに本気で真白はエロい気持ちでお姫様抱っこしてません。
おんぶの時はちょっとだけ……
意識しちゃった後だから仕方ないのです。
でもこうなると前みたいにブイブイ言えなくなりますよね。
もっとも停学とかサボりとかで噂先行型ヤンキーですが。
入学当時パイセンボコってるけども。
少しはクラスでの対応変わるかもしれません。
こうしている間に全てのグループが追い抜いていった。
小倉チームが一着でゴールを決めたところを横目ではあるが確認出来ていた。
小刻みに震えている種田を見るととても悔しそうだ。
賭けがどうとかではないんじゃないかなと思う。
ヤンキーだしオラオラだしそういったプライド的なものもあったと思う。
せっかく自分に向けられた声援に応えられなかったのもあると思う。
一概に決めつけられないけど、練習してここまできてあと少しで手が、足が届かなかったという悔しさは。
スポーツをやっている自分には理解出来るつもりだ。
すると俺は種田に近づきしゃがみ込むと
右手に背中を抱き腕を掴み、左手を両膝裏から腕を通し太腿を掴み立ち上がるとそのまま救護室の方へと走り出した。
「うわなにをするくぁwせdrftgyふじこlp」
何を言っているのか理解出来ないが、テンパってるのはわかった。
俺も何をしているのかよくわかっていない。
ただ、一秒でも早く保健の先生に見せないといけないという思いだけで行動している。
だからこういう時は
「だまって運ばれろ。舌噛むぞ。」
「あ、ハイ。」
そのあと何か聞こえない呟きが聞こえたが、無我夢中で走る。
しかしすぐに意識し始めてしまう。
腕に伝わる背中と腿裏と膝裏の感触と汗の感触と体温と、自分の胸に当たる左半身の感触が……
いや、今は余計な事を考えている時ではないはずだ。
ここで躓いた方が余計危険だ。
二次災害を起こすわけにはいかない。
至る所から、きゃぁぁぁぁぁとかしねぇぇぇぇぇとかお姫様抱っこうらやましーーーーとかの声が聞こえていた。
他にも俺と替われぇぇぇとか、ヤンキーがお姫様にジョブチェンジだーーーとかも聞こえる。
「はぁはぁ、着いた。」
種田をゆっくりシートに下ろすと後は先生に診てもらう。
「ご苦労、かっこよかったぞ少年。」
それだけ言うと保健の先生は応急処置を施していた。
俺には何をしているかわからなかったが。
「こんなん唾つけとけば治る」
とか聞こえたのは気のせいだろうか。
俺たちがコースから消えたため、次の競技へと進んでいった。
「あぁ、あとの処置は保健室でだな。少年、彼女を保健室まで連れて行ってやってくれ。私は先に向かっておく。」
言いたいことを言うと先生は出て行ってしまった。
俺は種田へ視線を向けたが、彼女は顔を蒸気させてこちらを見てくれない。
「ほら、行くぞ。」
「ややややや、やだ。またあんなのは嫌だ、ははは、恥ずか死ぬ。」
体育座りをして、真っ赤になって唇を尖らせてそっぽを向くその姿は、子供っぽくもあり可愛くもあった。
「俺だってあれはもう一回やれと言われても恥ずか死ぬわ。じゃぁおぶってくから、ほれ。」
俺はしゃがんで背中におぶさるように促す。
「……まぁ、このくらいなら。」
んしょ、と言いながらゆっくり立ち上がると、真白の背中にもたれ掛かり恵は腕を前に回す。
落ちないように首の下で抱きしめるように。
そしてやはり腿を掴んで持ち上げる。
「あ、ない。」
それが意味するものは……
ごんっ
「いでぇっ」
恵が真白の頭にげんこつを落とした音。
「何がないってぇ?」
「ナンデモゴザイマセン。」
ないと言ったが全くではない、背中に感じる少しの弾力と突起……は?
(今日ノーブラだとは言えない。慌てていて着けるの忘れてたとか言えない。運動会が楽しみで舞い上がってたなんて言えない。)
種田恵、心の声である。
「じゃぁ、ゆっくり歩くからな。」
幾人かが見ているが、見世物じゃないので勘弁して欲しい。
これら一部始終を保健委員の生徒やすぐ傍にある放送席の生徒達にばっちり見られて聞かれていた事に気付いていなかった。
歩く度に擦れていて種田から小さな声が漏れていたのだが、足の痛みを耐えているものだと思い性的な方は気にしなかった。
それよりも早く保健室へ連れて行き、さらなる治療をしてもらわないとという思いしかなかった。
☆☆☆
どうにかして保健室まで行く事が出来た。
周囲の歓声も冷やかしも毒にしかならない。
歓声はありがたいけど、意識しちゃうから。
女子の身体を触ってると意識しちゃうから。
ガララララ
保健室のドアを開けると先生が待っていた。
先生は彼女を椅子に座らせると、こちらに向かってくる。
「ちょっとこの先は男子禁制なのでな、終わったら呼ぶから廊下で待っていてくれないだろうか。」
俺は廊下まで押されてそのままポイされた。
それから五分くらい経った頃、先生が呼びに来た。
「もう良いぞ。色男。」
その言い方にツッコミはしたくなるが
保健室の中に入ると、今日一で真っ赤になっている種田恵が頭をふらふらさながら椅子に座っていた。
―――――――――――――――――――――――――――
後書きです。
脳内選択肢、結局両方採用でした。
本当なら多かったどちらかにすべきでしたが、どっちも見てみたいと思った次第です。
ちなみに本気で真白はエロい気持ちでお姫様抱っこしてません。
おんぶの時はちょっとだけ……
意識しちゃった後だから仕方ないのです。
でもこうなると前みたいにブイブイ言えなくなりますよね。
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