MAXコーヒーから始まる糖度MAXなこじらせ魔法使い達

琉水 魅希

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第1章 MAXコーヒーが繋いだ奇跡

第15話 蕎麦屋の店主夫婦は昭和の香り。そして昭和といえばおせっかい○○

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 「…いやっ」

 あ、これ変な想像した俺が悪い。

 ぱっと目に乗せていたハンカチを退けて左へ首を傾けると…

 
 苦しそうに項垂れている友紀さんの姿があった…

 
 意味深で緊張感はあるけど…

 何か病にかかってそうとかではなく。

 悪夢に項垂れているっぽい。

 いやっとか言ってたし。

 う~ん流石に起こしてあげた方が良いよね、うん。

 でもね、俺童貞だからこういう時身体のどこを揺すって起こして良いのかわからないんだ。

 漫☆○太郎先生だったら往復ビンタで「ぶべらっはべらっ」とかやるんだろうけど。

 でも少し汗をかいている、苦しそうだ。

 「大丈夫?うなされてるようだけど…」

 普通にゆっさゆっさと肩を揺すった。

 すると友紀さんの目がぱっと開いた。ホラー映画の一部みたいでちょっと怖かった。

 「あ、はぁはぁ。だ、大丈夫です。怖かったけど…すんでのところで助けられました。」

 (…貴方に。)
 (夢だとわかっていてもあの出来事は悪夢となってたまに見る。さっきもあと一歩でピンチという所で助けてくれた。)
 (あの男の前に現れたのは貴方だった。その直後目が覚めた。そして目が覚めたら貴方がいた…)

 「悪い夢は忘れた方が良いよ、といっても意識すると難しいよね。年越し蕎麦食べて、寒いけど参拝の列に並べばいつの間にか忘れてるよ。」

 「なにそれ、でもありがとうございます。そういえばいつの間にか寝ちゃってたんですね。」
 (実は最初の頃は嘘寝だったんですけど、紳士でしたね。疲れもあるけどそれで安心して寝ちゃったみたい。)

 「蕎麦は逃げないけど、万一混んだらいけないから行こ。車も何台かあるから開店はしてるはずだし。」

 ミラーに映る顔が赤い。夢から覚ませてもらっただけなのに…



☆☆☆☆

 「へいらっしゃい。」

 ラーメン屋のノリかよ。

 おばちゃんの店員に2人用のテーブルに案内された。当然向かい合って座る。さっきの○っくりドンキーでもそうだったけど。

 座るなり開口一番。
 
 「年越し蕎麦、麺固めで卵も固めで、ネギは青ネギと白ネギ半々で、鳴門は徳島、つゆマシマシで。」

 「かしこまり~」とおばちゃん。

 ってあるのかよ。
 
 鳴門は徳島って当たり前だよ。

 なんかテンションがおかしい。

 「冗談はよしこちゃんにして、お決まりになったらそこのベルをちりんと鳴らしてください。」

 池袋にあったメイド喫茶みたいだなぁオイ

 だからテンションおかしい。

 特に理由はない。

 強いて言えば家族・親族以外と年越し蕎麦は初めてなのだ。

 だから妙な高揚感が蕎麦屋の大将の「へいらっしゃい」で拍車がかかってしまったのだ。

 そうに決まってる。

 「あ、俺は実は決まってるんだ。えびと掻き揚げと鳥天蕎麦。友紀さんはゆっくり考えて良いよ。」

 「あ、ハイ。じゃなくてさっきの良くわからないノリに乗り遅れました。」

 (多分悪夢を忘れさせてくれようとしてるんだ。確かに他の事を考えれば気が紛れる。やっぱり優しい。)

 「私はえびと掻き揚げとたこ天蕎麦で。」


 
 蕎麦のトッピングである○○天というのは意外と何でもある。

 蕎麦屋の天ぷら事情は舐めたらいけないってことだ。

 今日は邪道なものは頼まないけど。

 「はい、お待たせ、」

 数分もすれば注文した蕎麦が届いた。湯気が立ち昇り、蕎麦と天ぷらの香りが食欲を一層掻き立てる。

 「では、ちょっと早いけど本年が良き年であったなら其れは幸い、新年は更なる良き年でありますように。」

 長い口上を垂れたが、今年お疲れ様、新年よろしくということだ。

 「私は良い年でした。(年齢もナ)来年はもっと良い年でありたい。うぅん。良い年にしたい、する。」

 どこか決意表明にも聞こえたが、互いにとって今年は良い年であったようだ。

 良い年だからこそ、これまででは考えられなかった家族親族以外との年越し蕎麦であるし。

 決意することで来年はもっと良い年になるよう努力尽力出来るというもの。

 「えびくいてぇ えびくいてぇ えびくいてぇ」

 真っ先にエビ天を頬張る。

 「うまー。甘いものと年越し蕎麦は夕飯の後でも食べられるね。」


 「そうですね。別腹というストレージは最強です。」

 友紀さんは掻き揚げからいった。さくっさくっという音が心地いい。

 良い掻き揚げだな。

 


 「美味かった。」

 「おいしかったです。」

 「多分誰かと食べるってエッセンスがあったのもあるけどね。」

 「もー何言っちゃってるんですか。」

 ぱんっと軽く腕を叩いてくる友紀さん。

 「実際家族以外と食べた記憶がないから…」

 「私も…」

 どよ~ん

 空気を読まない店員のおばちゃんがやっていた。
 
 「はい、これサービス。」

 そう言って差し出されたのは杏仁豆腐。

 「お客さん前一人で来ただろう?でも今日はこんな別嬪な彼女さん連れてきて、旦那からのおごりだよっ」

 ボンッ

 と鳴った気がした、友紀さんから。

 「べべべ、ベッピンサンナンテナンテ…カカ、カノジョサンナンテ…ソレナンテエロゲ?」

 友紀さんが真っ赤になって壊れた。

 「お、おばちゃん、俺達まだ付き合ってないって。」

 「あれ?でも端から見ると初々しい中学生みたいなカップルに見えるけど?」

 (ま、まだって事はそれってつまり・・・?)

 「まーがんばんなさい、童貞青年。どうしようもなくなったらおばちゃんひと肌脱いだげるから。」

 「のし付けてお返しします。」

 
 「つれないねぇ。おばちゃん若い子もいけるんだけどなぁ」

 そういって下がっていった。

 ちなみに友紀さんはまだ固まっていた、心のウインドウズは再起動中で止まっている。

 それにしても今日一日で色々急接近しすぎだ、一年分の運をここで使ったのか?

 来年はないのか?



 蕎麦屋のおかげで嫌でも意識してしまった両人。

 恋愛度パラメーターが存在するならば、仮装大賞でういうところの一気に最高得点になった感じだろうか。


 その後どうにか再起動を果たした友紀さんと美味しく杏仁豆腐はいただきました。

 
 蕎麦屋を出た俺達は神社の方に向かって歩き出した。

 周囲には同じ目的の人達をちらほらと見かける。

 「あ、あの…お友達からお願いします。」

 友紀さんまだ再起動していなかった。

 しかし考えてみれば冬○ミの時点ではせいぜいイベントで会えたら撮影しましょうと言った程度、名前と顔を知る程度の関係だった。

 知り合いからお友達にクラスアップ。

 悪くない。せっかく敬語はやめてタメ口でと言ったり、それこそ近いからとはいえ家まで送る約束。

 これはもう友達と言っても過言ではない。

 「そうだね。おばちゃんの事はともかく、友達良いんじゃないかな。一緒にご飯食べて年越し蕎麦食べて、この後神社で参拝して家まで送るんだ。」

 「それで知り合いってだけじゃ寂しいかも。うん、既にこれは友達の定義には充分だよ。」

 俺の友達の定義って…

 「うん。よろしくというのも変だけど、これからよろしくお願いします。」

 友紀さんが少しだけ敬語をやめた。性格の問題もあるから一概には言えないけど、やはり友達なら敬語は不要だ。

 「じゃ、行こうか。」

 「うん。」

 友紀さんは俺の左袖を掴んだ。

 相変わらず頬が赤いままだ、照れてるところが可愛いと思った。

 恋人ではなく友達になったと認識しただけなのに。

 こうして俺達はたった数時間で晴れて友達となった。

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