41 / 62
裏切りと誤解と優しさの偶然
3
しおりを挟む
「ミラク達はどこ?まだ首長さんたちと宴会でもりあがってるの?こんどはそこに連れてってよ。」
しょうがないから今度は別なお願いをしてみた。
「わかりました。お二人ともこちらにいらっしゃいます。」
ベントスは、そう言い終わる前にそこへと連れていってくれた。さっきと同じように目の前の景色がパッと消えて、すぐにパッと違うところに出て、今度は空がぶわって広がっている一面の窓がある部屋だった。壁の色は淡いクリーム色をしている。床はさっきのとは違う、けれど今度こそ足首までのめりこめるふかふかの絨毯。シックな色使いで綺麗なデザイン。部屋のそこかしこに大なり小なりいろいろな調度品が置かれている。どれも同じ色合いで木目が綺麗な家具は壁の一面に集まって置かれている。
私の部屋もこうしたいなって思っちゃった。
そうしてそこには、ジョジさんとミラクともう一人、背の高いスラーっとした綺麗なドレス姿の女性がいた。ドレスの女性はとても綺麗な髪だ。光沢のある銀色のロング。そういえばうちのお母さんも、ひところがんばって髪を銀色に染めようとしていたっけ。どんな手をつかっても銀色とはほど遠い、色あせた鼠色にしかならなかったけど…。
「やほー。来ちゃった。」
ドレスの女性の綺麗さに気後れしたのと、来たらいけないところへ来たんじゃないかってばつの悪さで、そう言って明るめに声をかけてみた。するとそこにいた三人が一斉にこちらを振り向いた。ドレス姿の女性は、なんだかどこかで見たことがある。あれ?誰だっけ?って考えていると、
「ようこそ、グラン家のレイミリア。はじめまして、私はミラクーロの母のデ・ミゼリト・アイオリアです。」
と、まるでものすごく綺麗な笛の音でも聞いているみたいな声で、ドレス姿の女性が挨拶をしてくれた。この綺麗な人がお母さんなら、お父さんが例えば獣みたいでも、ミラクみたいな天使がそりゃ生まれるわ。
「あ、はじめまして。えーと、グランスマイルです。レイミリア・ブラウンシュタイン・コーネリアス・ラ・グランスマイルと申します。」
「よろしくってよ。どうぞこちらへいらっしゃい。お茶でもいれるわ。」
ああ、このお母さんの声、なんかものすごく癒し効果がある。よろしくてよって、家の名前こっちが間違えているみたいに許されちゃったけど、このお母さんの声ならいいか。
私はそのままお母さんの横に用意されたソファーに腰かけて、そしたらジョジさんとミラクもこっちにやってきて、さっきまで立って話してたんだろうか?私の前にぼやーっと出てきた白いひとりがけのソファーに、二人とも腰を下ろした。
「今日はお二人ともありがとう。どうかこの子のこと、よろしくお願いします。」
お母さんがそう言うと、なんていうのかな、ソファーの前に今度はぼやーっとテーブルがでた。真っ白の。ふわって何もない所から。そしてお母さんの手に、茶器が出てきた。かと思ったらテーブルの上にティーカップ? って、私たちの前に置かれたカップにお茶をそそいでいくお母さん。びっくりしすぎてなんだかわからなくなってつい、
「けれどよかったね、ミラク。お母さんに大事なくて。」
不用意にそう口に出してしまった。するとミラクの表情がこれまで見たことのないくらいおっかない顔になった。口の前に人差し指を立てて『シッ!』だって。そんなも可愛いけど…。
「あらあら、どうしたの。お友達に失礼でしょ、ミラクーロ」
そう言ったお母さんの顔は満面の笑みに満ちている。そしてミラクは、母親にニコっと天使の微笑みを返すと、私には突き刺すような悪魔の目をよこした。これはさすがにちょっと怖かった。
「それでお話の続きですが…。」
ジョジさんが何事もなかったかのようにそう言って話をはじめる。ああ、また難しい話になるのね、と思ったら、私の意識は散漫になっていくのが感じられた。
しょうがないから今度は別なお願いをしてみた。
「わかりました。お二人ともこちらにいらっしゃいます。」
ベントスは、そう言い終わる前にそこへと連れていってくれた。さっきと同じように目の前の景色がパッと消えて、すぐにパッと違うところに出て、今度は空がぶわって広がっている一面の窓がある部屋だった。壁の色は淡いクリーム色をしている。床はさっきのとは違う、けれど今度こそ足首までのめりこめるふかふかの絨毯。シックな色使いで綺麗なデザイン。部屋のそこかしこに大なり小なりいろいろな調度品が置かれている。どれも同じ色合いで木目が綺麗な家具は壁の一面に集まって置かれている。
私の部屋もこうしたいなって思っちゃった。
そうしてそこには、ジョジさんとミラクともう一人、背の高いスラーっとした綺麗なドレス姿の女性がいた。ドレスの女性はとても綺麗な髪だ。光沢のある銀色のロング。そういえばうちのお母さんも、ひところがんばって髪を銀色に染めようとしていたっけ。どんな手をつかっても銀色とはほど遠い、色あせた鼠色にしかならなかったけど…。
「やほー。来ちゃった。」
ドレスの女性の綺麗さに気後れしたのと、来たらいけないところへ来たんじゃないかってばつの悪さで、そう言って明るめに声をかけてみた。するとそこにいた三人が一斉にこちらを振り向いた。ドレス姿の女性は、なんだかどこかで見たことがある。あれ?誰だっけ?って考えていると、
「ようこそ、グラン家のレイミリア。はじめまして、私はミラクーロの母のデ・ミゼリト・アイオリアです。」
と、まるでものすごく綺麗な笛の音でも聞いているみたいな声で、ドレス姿の女性が挨拶をしてくれた。この綺麗な人がお母さんなら、お父さんが例えば獣みたいでも、ミラクみたいな天使がそりゃ生まれるわ。
「あ、はじめまして。えーと、グランスマイルです。レイミリア・ブラウンシュタイン・コーネリアス・ラ・グランスマイルと申します。」
「よろしくってよ。どうぞこちらへいらっしゃい。お茶でもいれるわ。」
ああ、このお母さんの声、なんかものすごく癒し効果がある。よろしくてよって、家の名前こっちが間違えているみたいに許されちゃったけど、このお母さんの声ならいいか。
私はそのままお母さんの横に用意されたソファーに腰かけて、そしたらジョジさんとミラクもこっちにやってきて、さっきまで立って話してたんだろうか?私の前にぼやーっと出てきた白いひとりがけのソファーに、二人とも腰を下ろした。
「今日はお二人ともありがとう。どうかこの子のこと、よろしくお願いします。」
お母さんがそう言うと、なんていうのかな、ソファーの前に今度はぼやーっとテーブルがでた。真っ白の。ふわって何もない所から。そしてお母さんの手に、茶器が出てきた。かと思ったらテーブルの上にティーカップ? って、私たちの前に置かれたカップにお茶をそそいでいくお母さん。びっくりしすぎてなんだかわからなくなってつい、
「けれどよかったね、ミラク。お母さんに大事なくて。」
不用意にそう口に出してしまった。するとミラクの表情がこれまで見たことのないくらいおっかない顔になった。口の前に人差し指を立てて『シッ!』だって。そんなも可愛いけど…。
「あらあら、どうしたの。お友達に失礼でしょ、ミラクーロ」
そう言ったお母さんの顔は満面の笑みに満ちている。そしてミラクは、母親にニコっと天使の微笑みを返すと、私には突き刺すような悪魔の目をよこした。これはさすがにちょっと怖かった。
「それでお話の続きですが…。」
ジョジさんが何事もなかったかのようにそう言って話をはじめる。ああ、また難しい話になるのね、と思ったら、私の意識は散漫になっていくのが感じられた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる