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裏切りと誤解と優しさの偶然

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 「ミラク達はどこ?まだ首長さんたちと宴会でもりあがってるの?こんどはそこに連れてってよ。」

 しょうがないから今度は別なお願いをしてみた。

 「わかりました。お二人ともこちらにいらっしゃいます。」

 ベントスは、そう言い終わる前にそこへと連れていってくれた。さっきと同じように目の前の景色がパッと消えて、すぐにパッと違うところに出て、今度は空がぶわって広がっている一面の窓がある部屋だった。壁の色は淡いクリーム色をしている。床はさっきのとは違う、けれど今度こそ足首までのめりこめるふかふかの絨毯。シックな色使いで綺麗なデザイン。部屋のそこかしこに大なり小なりいろいろな調度品が置かれている。どれも同じ色合いで木目が綺麗な家具は壁の一面に集まって置かれている。

 私の部屋もこうしたいなって思っちゃった。

 そうしてそこには、ジョジさんとミラクともう一人、背の高いスラーっとした綺麗なドレス姿の女性がいた。ドレスの女性はとても綺麗な髪だ。光沢のある銀色のロング。そういえばうちのお母さんも、ひところがんばって髪を銀色に染めようとしていたっけ。どんな手をつかっても銀色とはほど遠い、色あせた鼠色にしかならなかったけど…。

 「やほー。来ちゃった。」

 ドレスの女性の綺麗さに気後れしたのと、来たらいけないところへ来たんじゃないかってばつの悪さで、そう言って明るめに声をかけてみた。するとそこにいた三人が一斉にこちらを振り向いた。ドレス姿の女性は、なんだかどこかで見たことがある。あれ?誰だっけ?って考えていると、

 「ようこそ、グラン家のレイミリア。はじめまして、私はミラクーロの母のデ・ミゼリト・アイオリアです。」

 と、まるでものすごく綺麗な笛の音でも聞いているみたいな声で、ドレス姿の女性が挨拶をしてくれた。この綺麗な人がお母さんなら、お父さんが例えば獣みたいでも、ミラクみたいな天使ショタがそりゃ生まれるわ。

 「あ、はじめまして。えーと、グランスマイルです。レイミリア・ブラウンシュタイン・コーネリアス・ラ・グランスマイルと申します。」

 「よろしくってよ。どうぞこちらへいらっしゃい。お茶でもいれるわ。」

 ああ、このお母さんの声、なんかものすごく癒し効果がある。よろしくてよって、家の名前こっちが間違えているみたいに許されちゃったけど、このお母さんの声ならいいか。

 私はそのままお母さんの横に用意されたソファーに腰かけて、そしたらジョジさんとミラクもこっちにやってきて、さっきまで立って話してたんだろうか?私の前にぼやーっと出てきた白いひとりがけのソファーに、二人とも腰を下ろした。

 「今日はお二人ともありがとう。どうかこの子のこと、よろしくお願いします。」

 お母さんがそう言うと、なんていうのかな、ソファーの前に今度はぼやーっとテーブルがでた。真っ白の。ふわって何もない所から。そしてお母さんの手に、茶器が出てきた。かと思ったらテーブルの上にティーカップ? って、私たちの前に置かれたカップにお茶をそそいでいくお母さん。びっくりしすぎてなんだかわからなくなってつい、

 「けれどよかったね、ミラク。お母さんに大事なくて。」

 不用意にそう口に出してしまった。するとミラクの表情がこれまで見たことのないくらいおっかない顔になった。口の前に人差し指を立てて『シッ!』だって。そんなも可愛いけど…。

 「あらあら、どうしたの。お友達に失礼でしょ、ミラクーロ」

 そう言ったお母さんの顔は満面の笑みに満ちている。そしてミラクは、母親にニコっと天使の微笑みを返すと、私には突き刺すような悪魔の目をよこした。これはさすがにちょっと怖かった。

 「それでお話の続きですが…。」

 ジョジさんが何事もなかったかのようにそう言って話をはじめる。ああ、また難しい話になるのね、と思ったら、私の意識は散漫になっていくのが感じられた。

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