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砂漠で盗賊と砂嵐とオアシスとにめぐりあう偶然
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「ねえ、この暑さなんとかならない?」
馬車の中で御者台に向かい、私は大声でそう叫んだ。すると、まだ声変わりしていない天使の声が、目の前に座る金髪のお子様から返ってきた。
「申し訳ありません、もう少しいけばオアシスがあるみたいなので、もう暫くだけ我慢していただけないでしょうか?」
そう答える声に隠れて、御者台からチッと舌打ちの音が聞こえる。
「ちょっとオジサン!?なによ、文句あんの?!座り順はコインで決めたでしょう?オジサン負けたでしょう?いさぎ良くないなぁ。」
「まあまあ、道中は長いんですし、仲良くいきましょう。」
本当に目の前のこの子は、いい子だ。例え父親が、魔王と呼ばれていてゲームもどきの勇者様ご一行に討伐対象とされてしまった相手の子だとしても。例え実年齢が、三百歳を越える人外のものであるとしても。見た目の愛らしさが全部帳消しにしてしまって私なんかじゃ太刀打ちもできない。
「御者、辛くなったらいつでも交代します。あまり無理はしないでください。」
「おう、ありがとさん。」
それでもまだ日が昇ってから1時間ほどの時間帯だ。日が昇る少し前に、昨日のテントをたたんで、馬たちに食事をとらせて、目の前に座っている天使みたいな魔王の息子が両手でずいっと、砂に埋まっていた馬車を簡単に持ち上げるのを見て私は驚いた。それはもう簡単にひょいっと…。だからといって愛らしく思う気持ちはなかなかは萎えていかない。
昨日の話もあって、とりあえずはどこか電話のできるところまで移動しようと、そういうことで落ち着いた。落ち着いたら落ち着いたで、今度は馬車の中の不快指数が気になってしかたない。
「水分は多めに摂ってくださいね。あと塩分も用意してあります。お渡しした塩飴を、我慢せずに舐めてください。」
「これが飴なの?なかなかうちの国では見ない包みね。」
砂漠の真ん中に何の準備もなくやってきたはずなのに、目の前のお子様は次から次へと、これまで国では見たことのないような物を出してくる。その種明かしを昨夜聞いて驚いたのだが、そうなると今度は具体的に、どっちの道具でどうやって用意したのがが気になってくる。
「ね、これどうやって出すの?」
そう聞いた私に、お子様は目を輝かせてこう聞いてきた。
「つかってみますか?!というか、お姉さんもやってみませんか?!」
そうだった。この子にしてみたらこれらの行為は、いわゆる実演販売なんだ。そう悟ったのでちょっとだけトーンを変えてみた。お姉さんという言い回しはベリーグッド!
「そうね、考えてもいいかな。でもそのためには、具体的にあなたがどうやっているのか見てみたいなと思ったの。やり方わからないとほら、こうやってとんでもない結果になっちゃったりするでしょ。」
「わかりました!では早速ご説明させていただきます!」
キラキラした純真な目が、すれてこすれた私の心を突き刺す。ごめんね、僕ちゃん。お姉さんは最初っから買う気なんてない冷やかしのお客様なの。でもね、でもね、言い訳してもいい?大抵のお客なんてそんなもんなのよ。十人来たら十人は冷やかしだと思わなくちゃ。百人集められたらその中の一人二人は買うかも。千人に見せられたら実演販売はほぼ成功、次の日からはただ立ってるだけで売れていくわ。…物がよければだけど。
「銀の鈴の名称は、銀鈴トランセンデンスと申します。トランセンデンスとは超越を意味する、もともとはラテン語なのですが、私共の用意したこれは発音のしやすい英語つづりにて命名をさせていただいております。」
あきらかに、営業が契約をクローズしにいく時の口調だ。それも、入社してまだ2、3年というところか。まだまだ甘いしクローズには早すぎる。
馬車の中で御者台に向かい、私は大声でそう叫んだ。すると、まだ声変わりしていない天使の声が、目の前に座る金髪のお子様から返ってきた。
「申し訳ありません、もう少しいけばオアシスがあるみたいなので、もう暫くだけ我慢していただけないでしょうか?」
そう答える声に隠れて、御者台からチッと舌打ちの音が聞こえる。
「ちょっとオジサン!?なによ、文句あんの?!座り順はコインで決めたでしょう?オジサン負けたでしょう?いさぎ良くないなぁ。」
「まあまあ、道中は長いんですし、仲良くいきましょう。」
本当に目の前のこの子は、いい子だ。例え父親が、魔王と呼ばれていてゲームもどきの勇者様ご一行に討伐対象とされてしまった相手の子だとしても。例え実年齢が、三百歳を越える人外のものであるとしても。見た目の愛らしさが全部帳消しにしてしまって私なんかじゃ太刀打ちもできない。
「御者、辛くなったらいつでも交代します。あまり無理はしないでください。」
「おう、ありがとさん。」
それでもまだ日が昇ってから1時間ほどの時間帯だ。日が昇る少し前に、昨日のテントをたたんで、馬たちに食事をとらせて、目の前に座っている天使みたいな魔王の息子が両手でずいっと、砂に埋まっていた馬車を簡単に持ち上げるのを見て私は驚いた。それはもう簡単にひょいっと…。だからといって愛らしく思う気持ちはなかなかは萎えていかない。
昨日の話もあって、とりあえずはどこか電話のできるところまで移動しようと、そういうことで落ち着いた。落ち着いたら落ち着いたで、今度は馬車の中の不快指数が気になってしかたない。
「水分は多めに摂ってくださいね。あと塩分も用意してあります。お渡しした塩飴を、我慢せずに舐めてください。」
「これが飴なの?なかなかうちの国では見ない包みね。」
砂漠の真ん中に何の準備もなくやってきたはずなのに、目の前のお子様は次から次へと、これまで国では見たことのないような物を出してくる。その種明かしを昨夜聞いて驚いたのだが、そうなると今度は具体的に、どっちの道具でどうやって用意したのがが気になってくる。
「ね、これどうやって出すの?」
そう聞いた私に、お子様は目を輝かせてこう聞いてきた。
「つかってみますか?!というか、お姉さんもやってみませんか?!」
そうだった。この子にしてみたらこれらの行為は、いわゆる実演販売なんだ。そう悟ったのでちょっとだけトーンを変えてみた。お姉さんという言い回しはベリーグッド!
「そうね、考えてもいいかな。でもそのためには、具体的にあなたがどうやっているのか見てみたいなと思ったの。やり方わからないとほら、こうやってとんでもない結果になっちゃったりするでしょ。」
「わかりました!では早速ご説明させていただきます!」
キラキラした純真な目が、すれてこすれた私の心を突き刺す。ごめんね、僕ちゃん。お姉さんは最初っから買う気なんてない冷やかしのお客様なの。でもね、でもね、言い訳してもいい?大抵のお客なんてそんなもんなのよ。十人来たら十人は冷やかしだと思わなくちゃ。百人集められたらその中の一人二人は買うかも。千人に見せられたら実演販売はほぼ成功、次の日からはただ立ってるだけで売れていくわ。…物がよければだけど。
「銀の鈴の名称は、銀鈴トランセンデンスと申します。トランセンデンスとは超越を意味する、もともとはラテン語なのですが、私共の用意したこれは発音のしやすい英語つづりにて命名をさせていただいております。」
あきらかに、営業が契約をクローズしにいく時の口調だ。それも、入社してまだ2、3年というところか。まだまだ甘いしクローズには早すぎる。
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