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セケンシラズとショタとオジサンとが会話して噛みあわないのは偶然?
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「そもそもが、なんだけどね。お嬢ちゃんさ、世間知らずすぎるよね。」
今私たちは、砂漠のど真ん中、砂丘ばかりがぐるりと四方を囲んでいる実に開放的な空間にいる。そこにポツンと黒い馬車。馬車の車輪は砂の中に埋まってしまって、出入り口がちょうどいい感じの高さにあって、これがまた実に心地よい。
「仕方がないですよ、この方は。うちの国で代々続く立派な商家のお嬢さんなんですから。」
私の目の前には、砂の上に置かれた木目のカフェテーブル。テーブルには薄い緑色をしたレース地のクロスがかけられている。クロスがなかなか良い仕事をしていて、上に置かれた陶器のティーセットが滑らないようになっていた。う~ん、カモミールの香りが他の香りに邪魔されることなく、体全体に広がっていく。
「うちの国?お前さん、討伐対象のあの魔王の息子だろ?それがうちの国って、なにか違うんじゃないか?」
「討伐対象になってしまったとは知りませんでした。そもそもうちの父を魔王呼ばわりしていますが、あれのどこが魔王なんでしょうか。家じゃあお母さんに頭があがりませんし、朝のゴミ出しは全部やらされてましたし、お風呂の当番だってあれの仕事です。仕事場に行ったら行ったで威張るしかしらなくて、若い世代の方々に陰口で『使えない』認定をされていました。なのに魔王ですか…。」
う~ん!このクッキーはひょっとしたら外国産ね!美味しい!のっているお皿もものすごくかわいいわ。これは紙なのかしら?綺麗な白でふちにギザギザっとした溝が彫られていて、美しささえ感じてしまうわ。
「そもそもが、お前ら人間とは違う種族だろう?でなきゃあんな風に馬車に追いついてこれやしねえ。それに言わせてもらえば、俺の仲間はあの洞窟でお前の親父の仲間にやられたんだ。もともとは6人いたんだぞ!それを個別に分断して、姑息な罠をはって、奥に着くまでに俺だけになっちまったじゃないか。」
「知りませんよ、そんな大人の事情なんて。そもそも父の事業は、あなた方人間を相手に商いをしていると聞いています。昔はそりゃ、あまりよくない人間とのお付き合いもあって、人を襲ったりさらったりもあったらしいですけど、そんなのは百年以上昔のことですよ!いまどきはそんなことさせようとしたら、従業員の方々がストライキをはじめてしまう時代なんです。」
空がとても綺麗。青い空に流れる雲。どこまでも続く黄色の砂丘が味わいを深くさせているようだわ。けれど鳥が一羽も見えない。見渡しても生き物の気配がしない。そう考えると少しだけ寂しい場所にも思えてくる。
「そんなこと知るか!そんならなんで、俺の仲間はみんなやられちまったんだ!」
「そんなこと知りません!そもそもちゃんとやられているところを見たんですか!?もしかしたら単にはぐれただけってことはありませんか!?」
「うるさいわね!いつまでゴチャゴチャとどうでもいい話をつづけているのよ!それよりカモミールティーのお代わりをちょうだい!」
「それ、ラベンダーとローズのハーブティです。カモミールじゃありません。」
「ったく、お嬢様らしからぬ間違いだな。」
「どっちだってお茶でしょ!うちじゃあお茶のことをカモミールって言うの!!」
それよりもさっさと家に帰らないと。お茶と景色を楽しんだおかげで、少しだけ冷静な判断が戻ってきたような気がする。黒いオジサンは相変わらず馬車の上で座り込んだままだし、お子様はまだ何かを用意しているのか、馬車の中から出てきてない。さっきから聞いてれば、二人して問題を先送りにして、今話す内容じゃあないことにばかり頭が回っている。
「そもそも、あれこれ言いたいことがあるでしょうけど、今はまずどうやって帰るかってことよ!そこを考えて実行してからじゃなきゃ何を言い合ったって無駄じゃないの!」
「どうやってはもう結論が出てるじゃねえか。そっちの銀の鈴をつかって、来た時と同じように戻ればいいんだろ?」
黒いのがうるさい!それを言うならあんたのを使えばいいじゃない。なのにこいつ、自分のことばかり考えていて私の身にもなってみろってんだ!
今私たちは、砂漠のど真ん中、砂丘ばかりがぐるりと四方を囲んでいる実に開放的な空間にいる。そこにポツンと黒い馬車。馬車の車輪は砂の中に埋まってしまって、出入り口がちょうどいい感じの高さにあって、これがまた実に心地よい。
「仕方がないですよ、この方は。うちの国で代々続く立派な商家のお嬢さんなんですから。」
私の目の前には、砂の上に置かれた木目のカフェテーブル。テーブルには薄い緑色をしたレース地のクロスがかけられている。クロスがなかなか良い仕事をしていて、上に置かれた陶器のティーセットが滑らないようになっていた。う~ん、カモミールの香りが他の香りに邪魔されることなく、体全体に広がっていく。
「うちの国?お前さん、討伐対象のあの魔王の息子だろ?それがうちの国って、なにか違うんじゃないか?」
「討伐対象になってしまったとは知りませんでした。そもそもうちの父を魔王呼ばわりしていますが、あれのどこが魔王なんでしょうか。家じゃあお母さんに頭があがりませんし、朝のゴミ出しは全部やらされてましたし、お風呂の当番だってあれの仕事です。仕事場に行ったら行ったで威張るしかしらなくて、若い世代の方々に陰口で『使えない』認定をされていました。なのに魔王ですか…。」
う~ん!このクッキーはひょっとしたら外国産ね!美味しい!のっているお皿もものすごくかわいいわ。これは紙なのかしら?綺麗な白でふちにギザギザっとした溝が彫られていて、美しささえ感じてしまうわ。
「そもそもが、お前ら人間とは違う種族だろう?でなきゃあんな風に馬車に追いついてこれやしねえ。それに言わせてもらえば、俺の仲間はあの洞窟でお前の親父の仲間にやられたんだ。もともとは6人いたんだぞ!それを個別に分断して、姑息な罠をはって、奥に着くまでに俺だけになっちまったじゃないか。」
「知りませんよ、そんな大人の事情なんて。そもそも父の事業は、あなた方人間を相手に商いをしていると聞いています。昔はそりゃ、あまりよくない人間とのお付き合いもあって、人を襲ったりさらったりもあったらしいですけど、そんなのは百年以上昔のことですよ!いまどきはそんなことさせようとしたら、従業員の方々がストライキをはじめてしまう時代なんです。」
空がとても綺麗。青い空に流れる雲。どこまでも続く黄色の砂丘が味わいを深くさせているようだわ。けれど鳥が一羽も見えない。見渡しても生き物の気配がしない。そう考えると少しだけ寂しい場所にも思えてくる。
「そんなこと知るか!そんならなんで、俺の仲間はみんなやられちまったんだ!」
「そんなこと知りません!そもそもちゃんとやられているところを見たんですか!?もしかしたら単にはぐれただけってことはありませんか!?」
「うるさいわね!いつまでゴチャゴチャとどうでもいい話をつづけているのよ!それよりカモミールティーのお代わりをちょうだい!」
「それ、ラベンダーとローズのハーブティです。カモミールじゃありません。」
「ったく、お嬢様らしからぬ間違いだな。」
「どっちだってお茶でしょ!うちじゃあお茶のことをカモミールって言うの!!」
それよりもさっさと家に帰らないと。お茶と景色を楽しんだおかげで、少しだけ冷静な判断が戻ってきたような気がする。黒いオジサンは相変わらず馬車の上で座り込んだままだし、お子様はまだ何かを用意しているのか、馬車の中から出てきてない。さっきから聞いてれば、二人して問題を先送りにして、今話す内容じゃあないことにばかり頭が回っている。
「そもそも、あれこれ言いたいことがあるでしょうけど、今はまずどうやって帰るかってことよ!そこを考えて実行してからじゃなきゃ何を言い合ったって無駄じゃないの!」
「どうやってはもう結論が出てるじゃねえか。そっちの銀の鈴をつかって、来た時と同じように戻ればいいんだろ?」
黒いのがうるさい!それを言うならあんたのを使えばいいじゃない。なのにこいつ、自分のことばかり考えていて私の身にもなってみろってんだ!
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