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銀の鈴の章

第5話 砂漠に揺らめく焚火 3

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 突然の声にキョトンとするレイミリア。しかし目の前のミラクーロは、なんのことだかわからないという顔でレイミリアを見ている。

――余の声が聞こえたか。ふむ、面白い。その方、恐ろしいほどの純粋さだのう。

 また、聞こえた。レイミリアはいよいよ怖くなって、辺りをきょろきょろと見回している。

――なんなのいったい。私にしか聞こえない幻聴?なによ、どういうことよ?

 混乱しあたりをきょろきょろとしだすレイミリア。ミラクーロがその様子を見て首を傾げている。

 するとそこに、音もなく徐次郎がやって来た。
 「おい、小僧。寝るところの準備は整った。飯の用意ももう終わるだろう。そうしたらこれがどういうことなのか説明してくれ。」
 徐次郎は右手に青い扉を浮かべ、ミラクーロを睨みつけるように見下ろしてそう言う。顔を覆っていた布は首元まで下げたようだ。その顔は彫が深く、整った鼻筋に斜めに傷が見える。眉は濃く、目は切れ長で大きい。
 「こいつが何かってこともだが、あの洞窟で何が起こったのかも。そいつもちゃんと説明しろ。」
 砂漠はすっかりと夜になり、風もなく星空が瞬いている。焚火の火がときどきパチンと爆ぜる音をたてた。用意したものが乾いた木材ばかりではないのだろう。
 「最初からそのつもりです。ですがまずは食事にしましょう。せっかく用意したんですから、変なものも入っていないはずですし、遠慮なくどうぞ。」
 徐次郎の目を見ながらそう答えると、ミラクーロは鍋の中に手にした棒をジャブンと入れ、かき回しはじめた。あたりにふわりと魚介出汁の匂いが香り立つ。香ってきたのが懐かしい出汁の匂いだと気がつき、徐次郎は少し気を緩めた。里を出て精鋭を集めるのに既に二年が過ぎている。もうずいぶんと日本食を食べていない。
 徐次郎はそう考えて、ミラクーロからの提案を受けることにした。





 「レイミリアさん、食べ過ぎです。そんなに食べると太りますよ!」
 「うるさいわね。その分運動するし、食物繊維もたっぷり摂っているから問題なんてないわよ!」
 もう鍋の中はすっかりと無くなっている。一緒に食べた時間の分すっかりと打ち解けた様子で、ミラクーロとレイミリアが最後に残る肉を奪い合っていた。それを見て、既に食事を終えている徐次郎がぼそりと言う。
 「…もう一回出せばいいだろうに。」
 そのつぶやきを聞き、ミラクーロとレイミリアの二人が動きを止める。そしてすぐにレイミリアが鈴をポケットから出すと、ミラクーロが手を合わせつぶやいた。不思議なことに再び鍋の中が食材で満たされていく…。
 「便利なもんだな、追加もできるのか…。」
 半ば呆れ顔で徐次郎が、今度はそうつぶやいた。レイミリアは何故なのか手にしたフォークを鍋の中に突っ込んでいる。
 「まだ煮えてませんよ…。」
 ミラクーロがそう言って呆れた顔でレイミリアを見た。その目を睨み返しながら、レイミリアは胸を張って答える。
 「予約よ、予約。これは私が食べるのよ。」
 そう答えるレイミリアに、ミラクーロは大きくため息をついた。そうしてから、徐次郎を見た。
 「では、次の鍋が煮えるまでの間、お話します。どういうことなのかを。」


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