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コザックの第二の人生・中
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次の日の朝食はバイド伯爵家族とアイザックとコザック、皆で食卓を囲んだ。
「今日は……モグッ、忙しいですぞ!ンぐっ、バイド伯爵領は、小さい領ではありますが、モグッ、……見る所がたくさんあります、からなぁ! ングングッ、パァ~。紹介したい所が、モグッ、……たくさんありますよ!ハハハ!モグッ」
食器の当たる音もしない貴族の食事の席でバイド伯爵の喋り声だけが響く。その声を聞きながら無言で頷き返すアイザックの姿を見てもハンセルは喋り続ける。食べ物を口に入れて直ぐに飲み込める技を披露しているかの様に、ある意味器用に食事をするハンセルにコザックは何とか貴族の笑みを崩さずにいた。
向かい側の席に座るキャロルとトイセルに、不自然にならない様に視線を向ける。キャロルは食事を減らされているのではないかと思ったが、見える限りでは取り立てて少ない様には見えなかった。逆にトイセルは5歳児にしては多目の朝食をせっせと食べている。一生懸命……時々嘔吐きながらも食事を口に運ぶ姿は異常に思えた。だがそれを誰も気にしない。時折母親のキャロルが心配げな視線を投げるもののトイセルを止める事はなかった。
父親のハンセルはそもそもが大食漢なのか、喋りながら食べている筈なのに誰よりも早く皿を空にしては添え物のパンをジャムまみれにして食べていた。
「トイセル、今日のジャムはまた一段と甘いぞ。たくさん食べなさい」
ニコニコしながらそんな事を言うハンセルにトイセルは口に入れた物を何とか飲み込んでから「はい。お父様」と答えてパンとジャムを自分の皿へと支給係に取ってもらっていた。
吐いてしまうんじゃないか? と心配になるコザックの目には平然としているバイド伯爵家の両親と使用人たちの顔が見える。
何故だが異常な空間に自分が居る様な気がしてコザックは気分が悪くなった。
実際にコザックの顔は青くなっていたのだろう。アイザックとコザックを連れて領内を周ろうとしていたハンセルもコザックの顔を見て「今日は邸でゆっくりしたい」という申し出をあっさりと受け入れた。
元々前侯爵当主であるアイザックだけが居ればいいと思っていたのだろうハンセルは、ニコニコしながらアイザックを連れて外出して行った。
アイザックはコザックに一言だけ「トイセルを見てあげなさい」と言って、こちらは愛想笑いのニコニコ顔で外出して行った。
キャロルやトイセルと一緒に玄関先で親を見送ったコザックは息子を連れて下がろうとするキャロルに声をかけた。
「お二人は今から何を?」
「……トイセルの勉強です」
「では奥様のご予定は?」
「…………お恥ずかしながら我が家には住み込みの家庭教師を雇う余裕が御座いませんので、息子の勉強はわたくしが見ております」
「あぁ……そうなのですね」
予想外の返事をされてコザックは返事に困った。
資金繰りに困って不正を働いていると聞いていたが実際に目にしたバイド伯爵も家も料理も裕福そうに見える物ばかりだった。ハンセルは息子に勉強を強要している様だったから、てっきり家庭教師には金をかけていると思ったが……
「では私が見て上げましょうか?」
「え?」
突然のコザックの申し出にキャロルは声を出して驚き、トイセルも目を見開いて驚いていた。
「これでも“勉強だけは出来る”と父にも褒められているのですよ。軽い家庭教師の真似事なら私にも出来るでしょう」
「そ、そんな……お手を煩わせる事など出来ませんわ……っ
それにコザック様の体調もすぐれませんし、トイセルも食事の後は……」
ハッと、言葉を止めて唇を手で隠したキャロルにコザックは目を細める。『食事の後は』の後の言葉は想像が付く。そんなのはトイセルを見れば一目瞭然だった。
ハンセルはコザックの顔色の悪さには気付いたが、自分の息子の顔色の悪さには気付かなかった様だ……。
トイセルは、本当ならお腹を手で押さえたいだろうに、両手を両脇に下ろして、その両の手をグッと握っている。口をしっかりと閉じているのはそうしないといけない状態であるかの様にも見える。早く横になりたいだろうと察したコザックは了承も得ずにトイセルを横抱きに抱きかかえた。
「っ!?」
「なっ?! 何をなさいます?!」
「部屋が良いですか? それとも談話室のソファに?」
答えず自分の質問を投げかけたコザックにキャロルは一瞬、ほんの一瞬睨む様な目をした後、コザックに従う様にスッと頭を下げた。
「……トイセルの部屋に……お願いします……」
そう言って先に歩き出したキャロルの後をコザックは付いていく。自分を驚いて見上げてくるトイセルにコザックはどんな表情を見せればいいのか分からず、何とか作った笑顔で微笑んで見せた。
自室のベッドで、上半身が少し高くなる様にして寝かされたトイセルはお腹の負担にならない様にか、目を閉じ、ゆっくりとした呼吸を繰り返していた。
「食事の量は伯爵が?」
コザックの不躾な質問にキャロルが一瞬息を呑む。
「……はい。そうです……」
彼女には、『答えない』という選択肢はないのだろうとコザックは思った。
今のキャロルを見ていると何故か隠れ家に入って一年ほど経った頃のリルナを思い出した……
当時は気付かなかったが、あの時のリルナはコザックからの話をただ聞き、質問されれば答えていた。あの姿は……全てを諦めた者の姿だったんだと……今なら分かる……
そんなリルナを彷彿とさせるキャロルの表情がコザックは気になって仕方がない……彼女もまた……何かを諦めているのだ……
「……毎日こうなのですか?」
「……はい」
「トイセルが吐いた事は?」
「……あります」
「この事をバイド伯爵には?」
「……吐いても食べ続ければその内もっとたくさん食べられる様になると言われました」
「……トイセルの体は大丈夫なのですか?」
「………………ません」
「え?」
「…………お医者様には診てもらっておりません……。旦那様は“食べ過ぎで吐いて医者を呼ぶ馬鹿がいるか”とおっしゃいましたので……」
「……そう……ですか……」
質問すれば何でも答えてくれそうな彼女に質問していたら、返事に困る言葉が返ってきてコザックは言葉に詰まった。
「……何故……バイド伯爵はトイセルにたくさん食べさせるんだ……」
それは質問ではなくつい漏れてしまったコザックの呟きだった。
愛しているならその行動も分かる。自分の子供にお腹いっぱいに食べさせたいと思うのは子がいないコザックにも自然な事だと思える。だがハンセルは昨日の話を聞く限り息子を大切にしている様には思えない。それにトイセル自身が食事を楽しんでいる様には思えなかった。なら何故……?
「……見栄の為です」
コザックの疑問にキャロルが答えた。
「裕福な子供は太っているのです。平民の子の様に痩せていては見栄えがしません。それに父親に似ていればそれだけ、親子関係が円満に見えるのです。
……トイセルは元々食が細い子でした。劣ったわたくしに似てしまった所為で旦那様にはご苦労をかけてしまっております……
旦那様に似た子に産んであげられていれば、トイセルはこんな苦労をしなくても良かったのです……
母がわたくしなばっかりに……必要の無い苦労をさせてしまっていて……わたくしは申し訳なく思います……」
ジッと自分の手元だけ見てそう言ったキャロルを、コザックは唖然として見つめるしか出来なかった。
彼女の言った言葉の意味が、すぐには理解出来なかったからだ。
「そ」
「う……っ……」
「トイセル、もう起きて大丈夫なのですか?」
コザックが何か言葉をかけねばと思ったと同時にトイセルがベッドから上半身を起こした事で、キャロルはトイセルの側へ駆け寄った。
その後、トイセルの前でキャロルの言葉の真意を聞く訳にもいかずにコザックは胸に蟠る気持ちを笑顔の裏に隠してトイセルに勉強を教えた。
ずっと暗い顔をしていると思っていたキャロルが、トイセルがずっと理解しなかった問題をコザックが分かりやすく説明した事に、初めて柔らかく笑ったのだった。
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次の日の朝食はバイド伯爵家族とアイザックとコザック、皆で食卓を囲んだ。
「今日は……モグッ、忙しいですぞ!ンぐっ、バイド伯爵領は、小さい領ではありますが、モグッ、……見る所がたくさんあります、からなぁ! ングングッ、パァ~。紹介したい所が、モグッ、……たくさんありますよ!ハハハ!モグッ」
食器の当たる音もしない貴族の食事の席でバイド伯爵の喋り声だけが響く。その声を聞きながら無言で頷き返すアイザックの姿を見てもハンセルは喋り続ける。食べ物を口に入れて直ぐに飲み込める技を披露しているかの様に、ある意味器用に食事をするハンセルにコザックは何とか貴族の笑みを崩さずにいた。
向かい側の席に座るキャロルとトイセルに、不自然にならない様に視線を向ける。キャロルは食事を減らされているのではないかと思ったが、見える限りでは取り立てて少ない様には見えなかった。逆にトイセルは5歳児にしては多目の朝食をせっせと食べている。一生懸命……時々嘔吐きながらも食事を口に運ぶ姿は異常に思えた。だがそれを誰も気にしない。時折母親のキャロルが心配げな視線を投げるもののトイセルを止める事はなかった。
父親のハンセルはそもそもが大食漢なのか、喋りながら食べている筈なのに誰よりも早く皿を空にしては添え物のパンをジャムまみれにして食べていた。
「トイセル、今日のジャムはまた一段と甘いぞ。たくさん食べなさい」
ニコニコしながらそんな事を言うハンセルにトイセルは口に入れた物を何とか飲み込んでから「はい。お父様」と答えてパンとジャムを自分の皿へと支給係に取ってもらっていた。
吐いてしまうんじゃないか? と心配になるコザックの目には平然としているバイド伯爵家の両親と使用人たちの顔が見える。
何故だが異常な空間に自分が居る様な気がしてコザックは気分が悪くなった。
実際にコザックの顔は青くなっていたのだろう。アイザックとコザックを連れて領内を周ろうとしていたハンセルもコザックの顔を見て「今日は邸でゆっくりしたい」という申し出をあっさりと受け入れた。
元々前侯爵当主であるアイザックだけが居ればいいと思っていたのだろうハンセルは、ニコニコしながらアイザックを連れて外出して行った。
アイザックはコザックに一言だけ「トイセルを見てあげなさい」と言って、こちらは愛想笑いのニコニコ顔で外出して行った。
キャロルやトイセルと一緒に玄関先で親を見送ったコザックは息子を連れて下がろうとするキャロルに声をかけた。
「お二人は今から何を?」
「……トイセルの勉強です」
「では奥様のご予定は?」
「…………お恥ずかしながら我が家には住み込みの家庭教師を雇う余裕が御座いませんので、息子の勉強はわたくしが見ております」
「あぁ……そうなのですね」
予想外の返事をされてコザックは返事に困った。
資金繰りに困って不正を働いていると聞いていたが実際に目にしたバイド伯爵も家も料理も裕福そうに見える物ばかりだった。ハンセルは息子に勉強を強要している様だったから、てっきり家庭教師には金をかけていると思ったが……
「では私が見て上げましょうか?」
「え?」
突然のコザックの申し出にキャロルは声を出して驚き、トイセルも目を見開いて驚いていた。
「これでも“勉強だけは出来る”と父にも褒められているのですよ。軽い家庭教師の真似事なら私にも出来るでしょう」
「そ、そんな……お手を煩わせる事など出来ませんわ……っ
それにコザック様の体調もすぐれませんし、トイセルも食事の後は……」
ハッと、言葉を止めて唇を手で隠したキャロルにコザックは目を細める。『食事の後は』の後の言葉は想像が付く。そんなのはトイセルを見れば一目瞭然だった。
ハンセルはコザックの顔色の悪さには気付いたが、自分の息子の顔色の悪さには気付かなかった様だ……。
トイセルは、本当ならお腹を手で押さえたいだろうに、両手を両脇に下ろして、その両の手をグッと握っている。口をしっかりと閉じているのはそうしないといけない状態であるかの様にも見える。早く横になりたいだろうと察したコザックは了承も得ずにトイセルを横抱きに抱きかかえた。
「っ!?」
「なっ?! 何をなさいます?!」
「部屋が良いですか? それとも談話室のソファに?」
答えず自分の質問を投げかけたコザックにキャロルは一瞬、ほんの一瞬睨む様な目をした後、コザックに従う様にスッと頭を下げた。
「……トイセルの部屋に……お願いします……」
そう言って先に歩き出したキャロルの後をコザックは付いていく。自分を驚いて見上げてくるトイセルにコザックはどんな表情を見せればいいのか分からず、何とか作った笑顔で微笑んで見せた。
自室のベッドで、上半身が少し高くなる様にして寝かされたトイセルはお腹の負担にならない様にか、目を閉じ、ゆっくりとした呼吸を繰り返していた。
「食事の量は伯爵が?」
コザックの不躾な質問にキャロルが一瞬息を呑む。
「……はい。そうです……」
彼女には、『答えない』という選択肢はないのだろうとコザックは思った。
今のキャロルを見ていると何故か隠れ家に入って一年ほど経った頃のリルナを思い出した……
当時は気付かなかったが、あの時のリルナはコザックからの話をただ聞き、質問されれば答えていた。あの姿は……全てを諦めた者の姿だったんだと……今なら分かる……
そんなリルナを彷彿とさせるキャロルの表情がコザックは気になって仕方がない……彼女もまた……何かを諦めているのだ……
「……毎日こうなのですか?」
「……はい」
「トイセルが吐いた事は?」
「……あります」
「この事をバイド伯爵には?」
「……吐いても食べ続ければその内もっとたくさん食べられる様になると言われました」
「……トイセルの体は大丈夫なのですか?」
「………………ません」
「え?」
「…………お医者様には診てもらっておりません……。旦那様は“食べ過ぎで吐いて医者を呼ぶ馬鹿がいるか”とおっしゃいましたので……」
「……そう……ですか……」
質問すれば何でも答えてくれそうな彼女に質問していたら、返事に困る言葉が返ってきてコザックは言葉に詰まった。
「……何故……バイド伯爵はトイセルにたくさん食べさせるんだ……」
それは質問ではなくつい漏れてしまったコザックの呟きだった。
愛しているならその行動も分かる。自分の子供にお腹いっぱいに食べさせたいと思うのは子がいないコザックにも自然な事だと思える。だがハンセルは昨日の話を聞く限り息子を大切にしている様には思えない。それにトイセル自身が食事を楽しんでいる様には思えなかった。なら何故……?
「……見栄の為です」
コザックの疑問にキャロルが答えた。
「裕福な子供は太っているのです。平民の子の様に痩せていては見栄えがしません。それに父親に似ていればそれだけ、親子関係が円満に見えるのです。
……トイセルは元々食が細い子でした。劣ったわたくしに似てしまった所為で旦那様にはご苦労をかけてしまっております……
旦那様に似た子に産んであげられていれば、トイセルはこんな苦労をしなくても良かったのです……
母がわたくしなばっかりに……必要の無い苦労をさせてしまっていて……わたくしは申し訳なく思います……」
ジッと自分の手元だけ見てそう言ったキャロルを、コザックは唖然として見つめるしか出来なかった。
彼女の言った言葉の意味が、すぐには理解出来なかったからだ。
「そ」
「う……っ……」
「トイセル、もう起きて大丈夫なのですか?」
コザックが何か言葉をかけねばと思ったと同時にトイセルがベッドから上半身を起こした事で、キャロルはトイセルの側へ駆け寄った。
その後、トイセルの前でキャロルの言葉の真意を聞く訳にもいかずにコザックは胸に蟠る気持ちを笑顔の裏に隠してトイセルに勉強を教えた。
ずっと暗い顔をしていると思っていたキャロルが、トイセルがずっと理解しなかった問題をコザックが分かりやすく説明した事に、初めて柔らかく笑ったのだった。
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