初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ

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Side: イリーナ

6>> みらいのやくそく 

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 ディオルドはイリーナの事を今は妹の様にしか見えていない。
 なんたって7歳も年の差があるのだ。
 ディオルドがイリーナと初めて会ったのはディオルドが15歳、イリーナが8歳の頃だった。それから家同士の付き合いもあり、ディオルドからすれば婚約者だったネミニアの次に親しい令嬢だったのがイリーナだった。
 ネミニアが亡くなった後、自分を現世に引き止めてくれたのもイリーナだったと言っても過言ではない……そんな彼女を今から突然“女性”として見ろと言われると心底困ってしまうのは事実だが、かといってこのまま彼女を突き放して無視出来るかと問われれば無理だと即答出来る自信がある。婚約者に裏切られている彼女を助けたいと思う心は紛れもない本心だ。それが兄心なのかなんなのかディオルドにはまだ分からなかったけれど……

「でも私は君の7歳も年上だよ?
 再婚するにしてももっと他に良い人がいるんじゃないか?」

「あら? 公爵家当主様以上に良い嫁ぎ先が御座いまして?」

 お茶目な顔をしてそんな事を言うイリーナにディオルドは笑ってしまう。イリーナが本心から家格で嫁ぎ先を選ぶ事が無いと分かっているからそんな言葉もお巫山戯ふざけと取れる。

「わたくしにとって“素敵な男性”と言えばディオルド様でした。そう思う気持ちが恋心なのか、実のところわたくしにも分かりません。
 ですが誰かの元に嫁がなければならないのだと言われれば、ディオルド様の元に嫁ぎたいと思うのです。
 ニア姉様をたくさん愛しておられるディオルド様だからこそ信じられるのです。
 ……この想いが、コザック様たちの行為と変わらない不貞行為だと言われるのかもしれませんが……」

「ん? ちょっと待って?」

 イリーナの言葉から不思議な言葉が聞こえた気がしてディオルドは聞き返した。

「はい?」

 イリーナも何故止められたのか分からず不思議そうな顔でディオルドを見返す。

「不貞行為?? に、なるのかい?」

 ディオルドは内心だいぶ困りながらイリーナに聞き返す。しかしイリーナの方も困った様にディオルドに聞き返した。

「どうなのでしょう? 『好きな人が居るのに他の人に手を出す』事を不貞行為だと言うのならわたくしがやろうとしている事もそうなのかなって???」

「……それを言われてしまうと私は誰とも再婚出来ずに後継者を作れなくなってしまうな……」

 こめかみを押さえて困った様に笑うディオルドにイリーナは『やっぱり!』と言う様に焦り顔のまま口元に笑みを作って自分の考えが内心間違ってなかったのだと安堵した。

「そ、そうですよね?! どうなのかしらって思ってましたの! 良かった…ディオルド様と同じ考えで……」

 照れ笑いしてフフフと笑うイリーナにディオルドは目を細めた。昔からこの子の事は可愛らしいと思っていた。だがそれは“妹”として見ている気持ちと変わらなかった。だが同時に“彼女は自分の妹ではない”という事もちゃんと理解していた。思い返せば2人の関係はとても不思議なものだった。ただ、お互いがお互いの立場をちゃんと理解していただけ……
 その互いの立場が変わったのであれば、今までの関係が変わっていく事は自然な事なのかもしれない……


「……イリーナ」

 不意に居住まいを正したディオルドにイリーナも姿勢を正してその目を見た。

「貴女が離婚するのであれば、その時は……
 私と再婚していただけますか?」

 お巫山戯ふざけの様でいてその真剣な眼差しにイリーナの心臓はトクンと小さく弾んた気がした。
 イリーナが言い出した事をこんな風に男性側から申し出てくれたかの様に投げかけてくれる。
 そんなディオルドの優しさがイリーナの心を包んでくれた。

「……はい‥…宜しくお願いいたします……」

 頬を染めてはにかみながら頭を下げたイリーナにディオルドも微笑む。

 まだ手も繋げない様な関係だ。

 これは不貞行為ではなく次に繋げる為の約束だった。

 これからコザックに裏切られて陰で笑い者にされる事が目に見えているイリーナにとってはこの約束が自分を強く持ち胸を張って前を向ける何よりも大切な心の支えとなる。



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□□■〔 注意 〕
※この話は作者(ラララキヲ)がノリと趣味と妄想で書いた物です。
 なので『アナタ(読者)の"好み"や"好き嫌い"や"妄想"や"考察"』等には『一切配慮しておりません』事をご理解下さい。

※少しでも不快に感じた時は『ブラウザバック』して下さい。アナタ向けの作品ではなかったのでしょう。

■えげつないざまぁを求める人が居たので私的なやつを書いてみました。興味のある方はどうぞ😁↓
◇〔R18〕【聖女にはなれません。何故なら既に心が壊れているからです。【強火ざまぁ】



☆ブクマにしおりにエール、ありがとうございます!

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