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 浅はかな両親はこうなってしまってもまだ、自分たちの落ち度に気付きもしません。
 、自分たちが悪いというのに……

 きっと両親やはこう考えていたのでしょう。
『エカテリーナの“全て”を奪えば、ベアトリーチェがのままに、健康になり・知識を持ち・マナーを身に着け・分別がつき・好き嫌いもなくなり・我が儘が減り、“完璧な外見と知性を持った侯爵令嬢”になる』と。
 きっとエカテリーナが消えようが消えまいが、この人たちにとってはどうでもいい事だったでしょうから、『ベアトリーチェが完璧になる』ことだけを考えていたのでしょう。
 しかし、ならばこそ、願い事は
 『全てが欲しい』なんて言えば『こうなること』など、簡単に想像できたでしょうに……

 そんなことすら想像もできなかった両親が、自分たちが願ったことに対して、今更ながらに悔やみ、嘆いています。

 わたくしはそんな両親を見ていても、あきれの感情しか湧いてはきません。

 自分の目がしらけた視線になるのが分かったわたくしは、両親から視線を離して悪魔を見ました。そんなわたくしの視線に気付いた悪魔もわたくしを見ました。
 可笑しそうに微笑んでいる悪魔にわたくしは一つの気になっていたことを聞きました。

はどうなったのですか?」

 おかしな言葉です。
 『妹』は今はもう『わたくし』であり、今はもう『わたくし』は『妹』ですらありません。姉という存在が居なくなったのですから。
 とてもややこしい状態ですが、エカテリーナの全て、を奪った今のわたくしは『魂すらもエカテリーナ』となっています。記憶も引き継いでいるわたくしには『妹が居た記憶』もあるのです。わたくしにとっては『妹は“妹”』なのです。
 ですから、『今は居なくなってしまった妹』のことを悪魔に問いました。

「ん? 
 彼女は『君』になったんだ。だから『君が』だよ」

「それは……」

 謎掛けのようで混乱してきました。
 それを悪魔も分かったのでしょう。楽しそうに笑って言葉を続けました。

「絵を想像してごらん? 絵画だよ。
 真っ白な紙に人物が描かれていた。それがだった。君はその上からことになる。
 絵の題名は『ベアトリーチェ』。最初の絵はだったけれど、、君が上から描き足された。そんな感じかな?」

「では……」

 悪魔の言葉を聞いて、ある可能性にわたくしは気付きました。

「そうだよ。上から描き足されただけだから、彼女のは消えたわけじゃない」

 悪魔が言った『もと』という言葉が、わたくしには『魂』という言葉に聞こえました。
 自然とわたくしの視線は自分の下腹部を見ていました。今はまだ、膨らむ予定すら無い、いつかは必ず“わたくしとは別の命を宿す”器官がある場所を……
 そんなわたくしの耳に悪魔の言葉が届きます。

「消えた訳じゃないけど、が君になっちゃったから。
 ができたら、またくるんじゃない?」

 可笑しそうにそう言った悪魔の言葉に、わたくしは何故だが安堵するかのような気持ちになって、目を閉じました。

 ──は、わたくしの中に居るのね……──













<※:一度決定すると元には戻せない、それが恐怖の上書き保存……_(┐「ε:)_>
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