前世を思い出したのでクッキーを焼きました。〔ざまぁ〕

ラララキヲ

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9>>カミラとジャスティン

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 カミラは自分の婚約者となったジャスティンに会う為に王城の庭園のガゼボに来ていた。

 まだジャスティンは来ていない。
 カミラは鼻歌を歌うように侍女やメイドたちに指示を出していた。

「お菓子はこのクッキーにして頂戴。
 お茶はそうね……このクッキーならハニバリー茶が合いそうね。それを用意して頂戴」

 そう言いながらカミラはルイーゼから奪ったクッキーを一枚食べていた。
 あまりこの国では食べないような珍しいクッキーだった。味もカミラが初めて食べた味だった。
 正直言って美味しい……悔しいけどクッキーはとても美味しくてカミラはイラッとした。
 だがクッキーが美味しければ美味しいほどにカミラの株が上がる。今後はこのクッキーはとなるのだ。ルイーゼやその周りが何を言おうとも、ルイーゼが作る焼菓子の称賛は全てカミラの物となる。それか可笑しくてカミラは口角を吊り上げた。


「ごめん。遅れたね」

 ジャスティンがガゼボに現れてカミラは優雅にお辞儀をする。

「ご機嫌よう、ジャスティン様。
 わたくし時間など気にしませんわ。むしろジャスティン様を待っていられる時間が長くてわたくし心が浮き立って幸せですの」

 心から幸せそうに頬を染めて微笑むカミラにジャスティンの頬も緩む。

「ふふ、そんな風に言ってくれると嬉しいよ」

 手が触れ合う位置で向かい合って座る二人は、遠目から見ても仲がわかる程に幸せそうだった。

 そんな、愛し合う二人のお茶会が始まった。





  ◇





「ジャスティン様。
 お恥ずかしながら、今日のお茶請けはわたくしが作った物ですの……」

「これをカミラが?」

 ジャスティンは自分の前の皿の上に置かれたクッキーを見て少し意外そうな表情を作って微笑んだ。

「はい。実はわたくし、昔からお菓子作りが密かな趣味でして……宮廷の料理人の腕には到底及びませんが、食べてくれた人たちみんなに褒められますのよ?
 それを是非ジャスティン様にも食べて頂きたくて……」

「そんな趣味があったなんて知らなかったな。
 そういえば、最近市井しせいで何やらルイーゼのお菓子なるものが話題になると聞いたような気がするが」

 ジャスティンの言葉を聞いて途端にカミラが暗い顔をする。それを見てジャスティンは驚いた。
 カミラは泣き出しそうな顔でジャスティンを見ると少しだけ言い出すのを戸惑う様に唇を振るわせた後、意を決して口を開いた。

「実は……それはお義姉様がわたくしの作ったお菓子を孤児院などに配る時に、作った者をはっきりと伝えなかった所為で起きた間違いなのです!」

「え?」

「わたくしは最近忙しくて孤児院へ行く時間が取れなくて……代わりに時間ができたお義姉様に配っていただけるようにお願いしていたのです……
 それがいつの間にか…………」

 グスンッと鼻を鳴らして目を伏せたカミラをジャスティンは痛ましそうに見つめる。

「ルイーゼがそんなことを……」

 カミラの言葉を聞いて、何が起きているのかジャスティンは我が事のように悔しげに顔をしかめた。
 そんなジャスティンに眉尻を下げた笑みで弱々しく微笑んだカミラが、そっとジャスティンの手に自分の手を添えた。

「良いのです……
 お義姉様は口下手なところがありますから……きっと誤解を受けてしまったんでしょうね……
 わたくしは……気にしておりませんわ……」

 フフッ、と笑ったカミラの笑顔にジャスティンの心が痛む。

「カミラは優しいね」

 それに比べてルイーゼのなんて卑劣な事かとジャスティンはまわしく思った。




 
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