8 / 17
8>> 義母の命令
しおりを挟む義母ナヴィアは、到底家族に向けるものとは思えないような見下した目でルイーゼを見て語りかける。
「カミラは王子に捨てられた義姉を可哀想に思ってそれを許していただけよ?
それなのに、平民にチヤホヤされてそれを忘れてしまった義姉に、困ったカミラが自分の権利を取り戻すと言い出しただけなのよ。
分かる?
本来カミラが受け取るはずの称賛や礼賛を貰って、調子に乗ってしまった様だけれど、それもここまで。
下賤の民の声であっても、それは次期王妃のカミラに向けられなければいけないものなのよ。
だから分かるわよね?
ロッチ侯爵家で作られた焼菓子は全てカミラが作った物。
貴女はそれを自分が作ったと嘘を吐いていたの。
本来ならば罰を与えるところだけど、カミラの為に大目に見てあげるわ。
だから貴女も理解してわきまえなさい。
貴女はカミラを手伝っただけ。
これから誰に何を聞かれても、焼菓子はカミラが作ったものだと言いなさい。
いいわね?」
ナヴィアの圧の籠もったその言葉にルイーゼは反論することもできずに口を閉ざす。唇を噛み締めていなければ震えてしまいそうだった。
「…………」
悲痛な顔で何も言えなくなってしまったルイーゼを侍女やメイドたちが心配する。
「そ、そんな……お嬢様……」
しかしそんな使用人の態度にナヴィアは眉間にシワを寄せて不満を示した。
そして、侍女たちを見渡して声をかける。
「貴女たちも。使用人が誰に雇われているか思い出しなさい。
カミラの邪魔になるのなら、貴女たちなど直ぐにクビにしてやるから」
「「ヒッ……!」」
ナヴィアの言葉に侍女たちは恐怖に顔を引きつらせた。小さく上がった悲鳴にルイーゼは強張らせた顔を上げてナヴィアを見て叫んだ。
「お止め下さい! 彼女たちはただわたくしを手伝ってくれているだけです!」
「なら、全て貴女の責任ということね。
で? どうするの? 貴女の選択次第では彼女たちも無関係という訳にはいかないでしょう? だって彼女たちは『貴女の』手伝いをしているのですものねぇ」
目を細めてルイーゼを見るナヴィアの目を見ていられなくてルイーゼは視線を逸らす。心配げに自分を見てくる侍女たちの視線が痛いほど分かってルイーゼは一度目を閉じた。
そして眉間にシワを寄せたままで目を開けたルイーゼは、しっかりとナヴィアと目を合わせた。
「……わかりました。
“お菓子はカミラが作った物”です。
わたくしはただ“その手伝いをしていた”だけ……そうちゃんと、皆に伝えます……」
そう言ったルイーゼの言葉に、ナヴィアはニンマリと笑った。
「そうよ。分かっているわね。
素晴らしいのはカミラなの。
皆に褒めそやされるのはカミラただ一人。
貴女じゃないわ」
釘を差すように言われた言葉にルイーゼは目を閉じる。
「はい」
弱々しく紡がれた返事を侍女たちは沈痛な面持ちで聞いていた。
キッチン内に満ちた悲愴感など全く意に介さずに、ナヴィアはルイーゼの返事を聞いて口元に弧を描いて笑っていた。
「分かっているのならいいのよ。
じゃぁこれからもカミラの手伝いとしてお菓子作りを頑張りなさい。
カミラの為にね」
「はい、お義母様……」
ルイーゼは去っていくナヴィアの後ろ姿に頭を下げて見送ることしかできなかった。
嫌がったところで勝つ見込みはないどころか、最悪侍女たちが解雇される恐れがあった。
侍女やメイドたちも頭を下げながら何もできない悔しさに顔を歪ませていた。
123
□□■〔 注意 〕
※この話は作者(ラララキヲ)がノリと趣味と妄想で書いた物です。
なので『アナタ(読者)の"好み"や"好き嫌い"や"妄想"や"考察"』等には『一切配慮しておりません』事をご理解下さい。
※少しでも不快に感じた時は『ブラウザバック』して下さい。アナタ向けの作品ではなかったのでしょう。
■えげつないざまぁを求める人が居たので私的なやつを書いてみました。興味のある方はどうぞ😁↓
◇〔R18〕【聖女にはなれません。何故なら既に心が壊れているからです。【強火ざまぁ】】
☆ブクマにしおりにエール、ありがとうございます!
お気に入りに追加
1,742
あなたにおすすめの小説

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作

義妹が勝手に嫉妬し勝手に自滅していくのですが、私は悪くありませんよね?
クレハ
恋愛
公爵家の令嬢ティアの父親が、この度平民の女性と再婚することになった。女性には連れ子であるティアと同じ年の娘がいた。同じ年の娘でありながら、育った環境は正反対の二人。あまりにも違う環境に、新しくできた義妹はティアに嫉妬し色々とやらかしていく。
愛を語れない関係【完結】
迷い人
恋愛
婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。
そして、時が戻った。
だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

赤の他人から婚約破棄を迫られた話~恥ずかしがり屋の王子殿下は、溺愛していることを隠しておきたい~
キョウキョウ
恋愛
ある日突然、無関係な人から婚約を破棄しろと迫られた。
私は、冷静に対処しながら彼が助けに来てくれるのを待った。

ローザとフラン ~奪われた側と奪った側~
水無月あん
恋愛
私は伯爵家の娘ローザ。同じ年の侯爵家のダリル様と婚約している。が、ある日、私とはまるで性格が違う従姉妹のフランを預かることになった。距離が近づく二人に心が痛む……。
婚約者を奪われた側と奪った側の二人の少女のお話です。
5話で完結の短いお話です。
いつもながら、ゆるい設定のご都合主義です。
お暇な時にでも、お気軽に読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる