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5>> カミラの嫉妬
しおりを挟む人に上げるのなら食べやすい物の方が良いだろうとルイーゼは作る物をクッキーに絞って作り始めた。
外国から取り寄せているココムナッツはさすがに高い物なので使わない。それでも甘い甘いクッキーは教会関係者や孤児院の子どもたちにとてもとても喜ばれた。
特に乾燥果物を小さく切って入れたクッキーは取り合いになる程に受けた。
ルイーゼは自分が使ってもよいと言われていたお金の殆どをお菓子作りの為に使った。
そんな事をしていれば家族や周りの貴族からは『王子に捨てられて頭がおかしくなったのかもしれない』と思われたりもしたのだが、そんな貴族たちの思いとは裏腹に平民たちの中でのルイーゼの知名度は上がっていった。
それに苛立ちを覚えたのがカミラだった。
自分が次期王妃となるのに平民はルイーゼ様ルイーゼ様と笑っている。いくらそれを言っているのが孤児や施しを求める程の下賤な者たちでも自国の国民には変わりはない。
本来ならば次期王妃であるカミラを賛美すべき口でルイーゼを称賛している人たちにカミラは不満を募らせていった。
ルイーゼは積極的に自分の足でクッキーを配っていた。
教会のバザーで自ら接客する侯爵令嬢を平民たちは心優しき聖女を見るような目で見守った。
街に出る時のルイーゼは自分の身分がバレないように侍女たちと一緒に平民の女性の服装をしていたのだが、その立ち振る舞いや肌や髪の美しさから見た人全員に直ぐにバレていた。直ぐ側に冒険者風の屈強な男たち──立ち振る舞いがどう見ても騎士──がいた事もバレる理由ではあったが。
だがそんな風に『貴族をひけらかして施しをする』のではなく、『皆に馴染む努力をして平民では手に入り難い物を格安で売ってくれる』ルイーゼの行いに、平民たちは親近感と感謝の気持ちを募らせていった。
「ロッチ侯爵家のルイーゼ様って素敵ね」
「ルイーゼ様のクッキーは世界一美味しいの」
「ルイーゼ様ほど優しい貴族様はいないんじゃないか?」
「え? ルイーゼ様が傷物? 何言ってんだ。それが本当なら相手の男は見る目がないな」
「ルイーゼ様が次期当主様になるならロッチ侯爵領に移り住もうかしら」
「ルイーゼ様は俺たちの目線に立ってくれるんだ」
人々の口から口に伝わるルイーゼの話はいつの間にかルイーゼを特別な存在のように語り始めた。ルイーゼはクッキーをメインに焼菓子しか配ってはいないのに、だ。
それには流石にルイーゼも持ち上げ過ぎだと、過大評価が過ぎると注意をしたのだが、そんな姿もまた控え目で高位貴族の令嬢とは思えないと言われて褒められた。
そんな風に周りに持て囃されてルイーゼは困ったように照れ笑いをした。
そんなルイーゼの顔を偶然見てしまったカミラはその不愉快極まりないルイーゼの照れ笑いに気分を害して顔を顰めた。
「お義姉様が褒めそやされるなんて、なんて悪い冗談なのかしら。
次期王妃であるわたくしに楯突く行為だと自覚はないの?」
持っていた扇子をギリギリと握りながらカミラは自分の存在には気付きもせずに侍女たちと馬鹿のように笑っているルイーゼを睨みつけた。
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□□■〔 注意 〕
※この話は作者(ラララキヲ)がノリと趣味と妄想で書いた物です。
なので『アナタ(読者)の"好み"や"好き嫌い"や"妄想"や"考察"』等には『一切配慮しておりません』事をご理解下さい。
※少しでも不快に感じた時は『ブラウザバック』して下さい。アナタ向けの作品ではなかったのでしょう。
■えげつないざまぁを求める人が居たので私的なやつを書いてみました。興味のある方はどうぞ😁↓
◇〔R18〕【聖女にはなれません。何故なら既に心が壊れているからです。【強火ざまぁ】】
☆ブクマにしおりにエール、ありがとうございます!
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