前世を思い出したのでクッキーを焼きました。〔ざまぁ〕

ラララキヲ

文字の大きさ
上 下
5 / 17

5>> カミラの嫉妬 

しおりを挟む
 




 人に上げるのなら食べやすい物の方が良いだろうとルイーゼは作る物をクッキーに絞って作り始めた。
 外国から取り寄せているココムナッツはさすがに高い物なので使わない。それでも甘い甘いクッキーは教会関係者や孤児院の子どもたちにとてもとても喜ばれた。

 特に乾燥果物を小さく切って入れたクッキーは取り合いになる程に受けた。
 ルイーゼは自分が使ってもよいと言われていたお金の殆どをお菓子作りの為に使った。
 そんな事をしていれば家族や周りの貴族からは『王子に捨てられて頭がおかしくなったのかもしれない』と思われたりもしたのだが、そんな貴族たちの思いとは裏腹に平民たちの中でのルイーゼの知名度は上がっていった。

 それに苛立ちを覚えたのがカミラだった。
 自分が次期王妃となるのに平民はルイーゼ様ルイーゼ様と笑っている。いくらそれを言っているのが孤児や施しを求める程の下賤な者たちでも自国の国民には変わりはない。
 本来ならば次期王妃であるカミラを賛美すべき口でルイーゼを称賛している人たちにカミラは不満を募らせていった。

 ルイーゼは積極的に自分の足でクッキーを配っていた。
 教会のバザーで自ら接客する侯爵令嬢を平民たちは心優しき聖女を見るような目で見守った。
 街に出る時のルイーゼは自分の身分がバレないように侍女たちと一緒に平民の女性の服装をしていたのだが、その立ち振る舞いや肌や髪の美しさから見た人全員に直ぐにバレていた。直ぐ側に冒険者風の屈強な男たち──立ち振る舞いがどう見ても騎士──がいた事もバレる理由ではあったが。
 だがそんな風に『貴族をひけらかして施しをする』のではなく、『皆に馴染む努力をして平民では手に入り難い物を格安で売ってくれる』ルイーゼの行いに、平民たちは親近感と感謝の気持ちを募らせていった。

「ロッチ侯爵家のルイーゼ様って素敵ね」
「ルイーゼ様のクッキーは世界一美味しいの」
「ルイーゼ様ほど優しい貴族様はいないんじゃないか?」
「え? ルイーゼ様が傷物? 何言ってんだ。それが本当なら相手の男は見る目がないな」
「ルイーゼ様が次期当主様になるならロッチ侯爵領に移り住もうかしら」
「ルイーゼ様は俺たちの目線に立ってくれるんだ」

 人々の口から口に伝わるルイーゼの話はいつの間にかルイーゼを特別な存在のように語り始めた。ルイーゼはクッキーをメインに焼菓子しか配ってはいないのに、だ。
 それには流石にルイーゼも持ち上げ過ぎだと、過大評価が過ぎると注意をしたのだが、そんな姿もまた控え目で高位貴族の令嬢とは思えないと言われて褒められた。
 そんな風に周りに持てはやされてルイーゼは困ったように照れ笑いをした。

 そんなルイーゼの顔を偶然見てしまったカミラはその不愉快極まりないルイーゼの照れ笑いに気分を害して顔をしかめた。


「お義姉様が褒めそやされるなんて、なんて悪い冗談なのかしら。
 次期王妃であるわたくしに楯突く行為だと自覚はないの?」

 持っていた扇子をギリギリと握りながらカミラは自分の存在には気付きもせずに侍女たちと馬鹿のように笑っているルイーゼを睨みつけた。




 
しおりを挟む




□□■〔 注意 〕
※この話は作者(ラララキヲ)がノリと趣味と妄想で書いた物です。
 なので『アナタ(読者)の"好み"や"好き嫌い"や"妄想"や"考察"』等には『一切配慮しておりません』事をご理解下さい。

※少しでも不快に感じた時は『ブラウザバック』して下さい。アナタ向けの作品ではなかったのでしょう。

■えげつないざまぁを求める人が居たので私的なやつを書いてみました。興味のある方はどうぞ😁↓
◇〔R18〕【聖女にはなれません。何故なら既に心が壊れているからです。【強火ざまぁ】



☆ブクマにしおりにエール、ありがとうございます!

感想 66

あなたにおすすめの小説

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!

ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。 え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!! それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

赤の他人から婚約破棄を迫られた話~恥ずかしがり屋の王子殿下は、溺愛していることを隠しておきたい~

キョウキョウ
恋愛
ある日突然、無関係な人から婚約を破棄しろと迫られた。 私は、冷静に対処しながら彼が助けに来てくれるのを待った。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

義妹が勝手に嫉妬し勝手に自滅していくのですが、私は悪くありませんよね?

クレハ
恋愛
公爵家の令嬢ティアの父親が、この度平民の女性と再婚することになった。女性には連れ子であるティアと同じ年の娘がいた。同じ年の娘でありながら、育った環境は正反対の二人。あまりにも違う環境に、新しくできた義妹はティアに嫉妬し色々とやらかしていく。

なんでも欲しがる妹が、姉の婚約者を奪おうとした結果

柚木ゆず
恋愛
 あたしの姉さん・サーラは、昔から物分かりが悪くて意地悪な人。小さな頃はヌイグルミを欲しいってねだっても譲らないし、今は婚約者のフェリックス様が欲しいと頼んでも言うことを聞かないの。  だからあたしは魅了の魔法をかけて、サーラ姉さんから婚約者を奪うことにした。  ふふふっ。魅了は大成功で、今のフェリックス様はあたしに夢中。もうすぐ、姉さんはポイッと捨てられちゃう――あれ……?  フェリックス様の、様子がヘン……?

【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には

月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。 令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。 愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ―――― 婚約は解消となった。 物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。 視点は、成金の商人視点。 設定はふわっと。

処理中です...