前世を思い出したのでクッキーを焼きました。〔ざまぁ〕

ラララキヲ

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4>> ルイーゼは作る 

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 婚約を解消されたルイーゼには時間ができた。
 もう将来王妃となる為に必要な知識を詰め込む為に王城に行く必要はない。
 侯爵家を継ぐことになるが今の当主が直ぐにルイーゼに家督を譲るとは思えないので今から慌てて当主としての勉強をする必要もない。ルイーゼはそこそこ優秀なので。

 暇になったルイーゼは小説の中の物語を楽しむかのように、熱に浮かされた時に見た『夢』を思い出しては楽しんでいた。何故かその夢が『前世の記憶』だとルイーゼには分かっていた。きっと夢の中の女性が『自分』だからだろう。
 前世に生きていた時はなんて自分の人生はつまらないんだろうかと思っていたのに、生まれ変わった視点から見てみると前世の自分はとても面白く映った。

 そしてある記憶を思い出してルイーゼは動き出した。

 最初は父への我が儘だった。
 自分専用のキッチンが欲しい。時間ができたのでお菓子を作りたい。
 そんなルイーゼの願いを父アントンは可哀想なものを見るような目で見返して、好きにしろと言った。
 カミラが嫁に出ればこのロッチ侯爵家を継ぐのはルイーゼしか居ない。親族に任せる選択肢もあるが、『自分の血を継いだ子供』が侯爵家を継ぐ事は現当主としては当然の望みだった。『我が子』が次期侯爵家当主であり次期王妃となるのだ。こんなに自慢になることはないだろう。だから現当主であるアントンは、ルイーゼを愛してはいなくても、ルイーゼを手元に置いておく価値があるのだ。
 突然平民のような事をしたいと言い出した娘に嫌悪感は感じたが、その程度のことを許すだけでルイーゼの気が済むなら邸にキッチンを増設することなど侯爵家としては安いものだった。

 自分用のキッチンを手に入れたルイーゼは、直ぐに材料を取り寄せた。殆どの物は侯爵家に出入りしている商人に頼めば手に入るが、一番欲しい物は外国にしかなかった。
 ルイーゼは商人の伝手つてを色々頼って目当てのものを手に入れる事ができた。

 それは前世の物で言えばピーナッツの味に近い、外国にしかないナッツだった。

 それをルイーゼが食べたのは王城だった。
 ジャスティン王子とのお茶会の席で出された珍しいお菓子の味が気に入って、ルイーゼはその時支給してくれたメイドにこれはどんな物かと聞いていたのだ。
 前世を思い出した今では懐かしいその味を凄く求めてしまう気持ちがあった。
 ピーナッツのような味のその異国のナッツは『ココムナッツ』という名前だった。

 ルイーゼは乾燥ココムナッツにココムナッツパウダーにココムナッツバターなど、手に入るだけ手に入れてお菓子作りを始めた。

 ルイーゼは前世の記憶からいくつかのお菓子の作り方を知っていた。
 主に焼菓子で、いつかは生クリームたっぷりのケーキを作りたいなんて夢を抱いてルイーゼはお菓子作りに没頭した。

 できたものは侍女やメイドと一緒に食べた。
 その内他の使用人たちも興味を持ち出したので欲しがる人に上げていった。だけど毎日お菓子を作っていたら食べる量より作る量の方が増えてきた。
 どうしようかと悩んだルイーゼにメイドが
「教会や孤児院に配るのはどうですか?」
と聞いてきた。

 ルイーゼはそれはとても良い案だと嬉しそうに笑って受け入れた。




 
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□□■〔 注意 〕
※この話は作者(ラララキヲ)がノリと趣味と妄想で書いた物です。
 なので『アナタ(読者)の"好み"や"好き嫌い"や"妄想"や"考察"』等には『一切配慮しておりません』事をご理解下さい。

※少しでも不快に感じた時は『ブラウザバック』して下さい。アナタ向けの作品ではなかったのでしょう。

■えげつないざまぁを求める人が居たので私的なやつを書いてみました。興味のある方はどうぞ😁↓
◇〔R18〕【聖女にはなれません。何故なら既に心が壊れているからです。【強火ざまぁ】



☆ブクマにしおりにエール、ありがとうございます!

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