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7>>婚約破棄
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「ミレニア・セルス侯爵令嬢!
私は貴女との婚約をこの場で破棄する!!」
学園の卒業式が終った会場でそう叫んだこの国の第一王子に場は騒然となった。
メロディーはこの時ただエイドリックたちに囲まれていた。それで良いとエイドリックたちに言われていたからだ。
『何も心配いらないよ。全て上手くいく。
みんなで幸せになるんだ……』
そう言って微笑むエイドリックに見惚れながら、メロディーはただ頷きみんなを信じて全てを委ねた。
だから卒業式で起こった暴挙にメロディーは当事者であって当事者ではない面持ちでただもうエイドリックたちの言葉を肯定するしかなかった。
「ミレニアは私の寵愛を受けたメロディーに嫉妬し、自らの立場を利用して人を使いメロディーを陰湿に虐めた。そしてそれだけでは飽き足らず、メロディーに暴漢を差し向けて彼女の尊厳を傷付け、そのまま亡き者にしようとしたのだ!!
その所業は許せるものではない!!
未来の国母となる女とは思えぬ浅ましさだ! 恥を知れ!!」
エイドリックは怒気をはらんで言い放つ。その言葉にメロディーは内心目を白黒させていた。
全部初耳だったからだ。
虐められた記憶もない。
令嬢たちにキツく当たられはしたがそれは仕方が無いと受け止めていた。それを虐めとは思っていないし、言葉がキツいだけで虐めだと思う程メロディーは弱くはない。
しかしそんなメロディーを気にすることなくエイドリックやセルジュたちがミレニアたちがメロディーを虐めたと言い放つ。ロンゼンが証拠だと紙の束を持ち出したりアルドーナが剣を持ち出してミレニアたちを威嚇したりした。
メロディーはそれらをただ怯えて見ている事しかできなかった。
何かが動き出してしまったと、それだけが分かった……
「わたくしにはどれも身に覚えのない事です」
ミレニアが凛とした姿勢ではっきりと否定する。
セルジュたちの婚約者たちも口々にハッキリと否定した。
「婚約破棄を受け入れます。
しかし、その理由はそちら側の不貞行為が理由です。全ての証拠も証言も集めております。
この国では婚姻前に妾を作る事は許容されてはおりません」
「メロディーは妾などではない!
私の伴侶! 未来の国母となる女性だぞ!!」
「エイドリック第一王子殿下。
殿下はいつ王太子になられたのですか?」
「なっ!? 不敬だぞ!!」
メロディーはエイドリックに肩を抱かれながらただエイドリックとミレニアのやり取りを聞いていた。エイドリックの初めて見る姿と声の大きさに驚きしかない。
ただ訳が分らないままに話が進み、卒業式にお忍びで参加されていた国王陛下が出て来て会場は更に混乱した。
気付けばメロディーは騎士たちに囲まれて会場を出され、エイドリックとは別の馬車に乗せられた。メロディーと一緒にロンゼンとアルドーナが居た。
ただ怯えるメロディーに二人は優しく寄り添う。
「大丈夫だよメロディー。後はもう怖いことなんかない」
ロンゼンが微笑む。
「俺たちが居る。
信じて待っていてくれ」
メロディーの手を握って力強く頷くアルドーナに、メロディーはただただ困惑した微笑みを浮べて答えるしかできなかった。
──ねぇ? 何が起きてるの?──
その言葉には優しい微笑みしか返っては来なかった。
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「ミレニア・セルス侯爵令嬢!
私は貴女との婚約をこの場で破棄する!!」
学園の卒業式が終った会場でそう叫んだこの国の第一王子に場は騒然となった。
メロディーはこの時ただエイドリックたちに囲まれていた。それで良いとエイドリックたちに言われていたからだ。
『何も心配いらないよ。全て上手くいく。
みんなで幸せになるんだ……』
そう言って微笑むエイドリックに見惚れながら、メロディーはただ頷きみんなを信じて全てを委ねた。
だから卒業式で起こった暴挙にメロディーは当事者であって当事者ではない面持ちでただもうエイドリックたちの言葉を肯定するしかなかった。
「ミレニアは私の寵愛を受けたメロディーに嫉妬し、自らの立場を利用して人を使いメロディーを陰湿に虐めた。そしてそれだけでは飽き足らず、メロディーに暴漢を差し向けて彼女の尊厳を傷付け、そのまま亡き者にしようとしたのだ!!
その所業は許せるものではない!!
未来の国母となる女とは思えぬ浅ましさだ! 恥を知れ!!」
エイドリックは怒気をはらんで言い放つ。その言葉にメロディーは内心目を白黒させていた。
全部初耳だったからだ。
虐められた記憶もない。
令嬢たちにキツく当たられはしたがそれは仕方が無いと受け止めていた。それを虐めとは思っていないし、言葉がキツいだけで虐めだと思う程メロディーは弱くはない。
しかしそんなメロディーを気にすることなくエイドリックやセルジュたちがミレニアたちがメロディーを虐めたと言い放つ。ロンゼンが証拠だと紙の束を持ち出したりアルドーナが剣を持ち出してミレニアたちを威嚇したりした。
メロディーはそれらをただ怯えて見ている事しかできなかった。
何かが動き出してしまったと、それだけが分かった……
「わたくしにはどれも身に覚えのない事です」
ミレニアが凛とした姿勢ではっきりと否定する。
セルジュたちの婚約者たちも口々にハッキリと否定した。
「婚約破棄を受け入れます。
しかし、その理由はそちら側の不貞行為が理由です。全ての証拠も証言も集めております。
この国では婚姻前に妾を作る事は許容されてはおりません」
「メロディーは妾などではない!
私の伴侶! 未来の国母となる女性だぞ!!」
「エイドリック第一王子殿下。
殿下はいつ王太子になられたのですか?」
「なっ!? 不敬だぞ!!」
メロディーはエイドリックに肩を抱かれながらただエイドリックとミレニアのやり取りを聞いていた。エイドリックの初めて見る姿と声の大きさに驚きしかない。
ただ訳が分らないままに話が進み、卒業式にお忍びで参加されていた国王陛下が出て来て会場は更に混乱した。
気付けばメロディーは騎士たちに囲まれて会場を出され、エイドリックとは別の馬車に乗せられた。メロディーと一緒にロンゼンとアルドーナが居た。
ただ怯えるメロディーに二人は優しく寄り添う。
「大丈夫だよメロディー。後はもう怖いことなんかない」
ロンゼンが微笑む。
「俺たちが居る。
信じて待っていてくれ」
メロディーの手を握って力強く頷くアルドーナに、メロディーはただただ困惑した微笑みを浮べて答えるしかできなかった。
──ねぇ? 何が起きてるの?──
その言葉には優しい微笑みしか返っては来なかった。
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