妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。

ラララキヲ

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31>> サバサ・1 

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 サバサはイフィム伯爵家の末っ子として生まれた。
 長子に男児のムルダ。その一つ下に長女のヤーナ。そして、ヤーナの2歳下にサバサが生まれた。

 嫡男のムルダが家を継ぐことは決まったも同然で、ムルダ本人もそれを理解し、それにおごることなく真面目に成長していった。
 第二子のヤーナもムルダを見て、真似するように育っていった。
 ヤーナはなんでもそつなくこなす、器用なタイプだった。性格も明るく元気で、感情がすぐに顔に出てしまう困ったところもあったが、誰とでも偏見なく話のできる優しい子だった。
 そして末っ子のサバサは、ヤーナと違って大人しく控えめな子供だった。しかし人見知りとマイナス思考はあったが、末っ子ということもあり両親は緩やかな教育をほどこし、兄と姉はサバサを守るように面倒をみたお陰で、サバサは自分に自信を持った内弁慶な性格に育っていった。

 誰も意図していなかったが、いつの間にかサバサは『守られるお姫様』の様な扱いをされていたのだ。

 だがその扱いはいつまでも続かない。
 サバサが10歳にもなると、自分でできることは自分でしなきゃ駄目でしょ、と言われるようになった。
 サバサはちゃんとやろうとした。
 しかし……

 サバサは残念なことに不器用だった……

 誰も比べてはいない。
 誰もサバサが駄目だとは言っていない。
 誰もサバサを責めたことはない。

 しかしサバサの前には常に器用でなんでもそつなくこなしてしまうヤーナがいた。

 そもそも子供の2歳差というのはとても大きい。ヤーナができることをサバサがすぐできなくても問題ないのだが、サバサ自身がそれに納得できなかった。

 “お姉様はズルい!!”

 サバサはずっと思っていた。
 だがそれを言ったとしても誰も真剣に取り合ってはくれない。

「仕方ないわ。ヤーナはお姉様なんですもの」
「サバサもその内できる」
「ヤーナは器用だから」
「ヤーナができる事をサバサができなくても気にしなくていいんだよ」

「お姉様の真似をしたい年頃なんだよね」

 そう言われることが、に、誰も気付いてくれなかった。

 ヤーナが一回でできることをサバサは一回ではできない。
 ヤーナがやってもいいことをサバサはしてはいけない。
 ヤーナが知っていることをサバサは教えてももらえない。

 全部ヤーナが姉だから。

 『姉』はなんてズルいんだろうとサバサは思った。

 全部サバサの被害妄想だったが、そう思ってしまったサバサがヤーナを嫌いになるのに、大して時間は掛からなかった。

 嫌いになるだけなら良かった。
 サバサに嫌われていると気付いたヤーナは呆れと共にサバサを刺激しないように距離を取った。変に構ってサバサを怒らせないようにした。
 そんな時期に、サバサはある姉妹の存在を知った。

 それは侯爵家の年上の姉妹だった。

 妹を溺愛していつでも妹を優先する姉。
 妹の為なら死んでもいいわと人目もはばからずに宣言する姉。
 妹の為なら金銭を惜しまない姉。
 妹が望むなら靴を舐めてもいいわと言い切る姉。

 そんな『サバサの理想を具現化したかのような姉』の存在を知ってしまったサバサは思った。

 ──あぁ、やっぱり、わたくしのお姉様“異常”なのね!!──

 と。当然異常なのは妹溺愛シスコン姉の方なのだが──そしてそこの妹は、姉にドン引きして嫌がっていたのだが──、サバサがそんな事を考えているなど誰にも分からなかったので、誰も違うあれはおかしいと指摘できなかった。
 自分の姉が異常なのだと思ったサバサは更にヤーナを嫌い、ヤーナはサバサを刺激しないように更にサバサから距離を取った。

 しかしその時期が思春期と重なった事もあり、ヤーナとサバサ、それぞれの活動範囲が広がったこともあって、特にその事に周りが違和感を抱くこともなかった。




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■感想やエールやブクマを頂き、本当にありがとうございました😄
■時々『感想とは判断出来ないもの(作品内容に触れていない)(個人の妄想)(他の人が見たら気分を害しそうな言葉使い)』があり、それは『却下』させてもらっております。こちらも反応にも困るのでスミマセン。






□□■〔 注意 〕
※この話は作者(ラララキヲ)がノリと趣味と妄想で書いた物です。
 なので『アナタ(読者)の"好み"や"好き嫌い"や"妄想"や"考察"』等には『一切配慮しておりません』事をご理解下さい。

※少しでも不快に感じた時は『ブラウザバック』して下さい。アナタ向けの作品ではなかったのでしょう。

■えげつないざまぁを求める人が居たので私的なやつを書いてみました。興味のある方はどうぞ😁↓
◇〔R18〕【聖女にはなれません。何故なら既に心が壊れているからです。【強火ざまぁ】


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